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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/11/13 00:00  | 今週の動き |  コメント(3)

今週の動き(11/13~19)


週末は快晴でしたね。先週末の安倍首相・トランプ大統領のゴルフのときと同様、絶好のゴルフ日和でした。

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先週の動き
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11/4(土)
・サウジアラビア政府が富豪のワリード王子、ムトゥイブ国家警備隊相ら11人の王族と4人の現職閣僚を含む約50人を逮捕
・イエメンがサウジのリヤドに向けて弾道ミサイル発射
・レバノンのハリーリ首相がサウジ訪問中に辞任

11/5(日)
・トランプ大統領が訪日(~7日)
・国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が「パラダイス文書」を公開、ロス商務長官の関連企業が経済制裁対象のロシア企業と取引していると指摘
・テキサス州サザーランドスプリングスの教会で銃乱射事件
・ベルギー検察がプチデモン前カタルーニャ州首相を拘束

11/6(月)
・日米首脳会談(東京)
・トランプ大統領が拉致被害者(曽我ひとみさん)と拉致被害者の家族と面会(東京)
・米国とトルコがビザ発給を限定的に再開
・COP23(ボン、〜17日)

11/7(火)
・トランプ大統領が訪韓(~8日)
・バージニア州知事選(民主党が勝利)
・ニュージャージー州知事選(民主党が勝利)
・トルコのユルドゥルム首相が訪米

11/8(水)
・トランプ大統領が訪中(~10日)
・APEC閣僚会合(ダナン、〜9日)
・スペインの憲法裁判所がカタルーニャの独立宣言を無効とする判決

11/9(木)
・米上院共和党が税制改革法案を発表
・アラバマ州上院補選の共和党候補ロイ・ムーアが14歳の少女と性的関係があったとの報道
・サウジがレバノンの自国民に退避勧告
・フランスのマクロン大統領がサウジを訪問、レバノン問題を協議
・シリアのアサド政権軍が「イスラム国」からアブカマルを奪還、勝利宣言
・TPP11が大筋合意(ダナン)
・BREXIT交渉(ブリュッセル、〜10日)

11/10(金)
・トランプ大統領がベトナム(ダナン、ハノイ)訪問(~12日)
・APEC首脳会議(ダナン、~11日)
・日ロ首脳会談(同)

11/11(土)
・TPP11の大筋合意の閣僚声明が発表(ダナン)
・日中首脳会談(同)
・中韓首脳会談(同)
・米韓海軍合同演習(日本海、〜14日)

11/12(日)
・米越首脳会談(ハノイ)
・トランプ大統領がフィリピン訪問(~14日)

「トランプ・ウィーク」でしたが、アジア、米国内政、中東でも色々ありました。順にみていきましょう。

●トランプのアジア歴訪

まず総論としては、以下の記事で示した見通しのとおりでした。

「トランプのアジア歴訪と北朝鮮」

以下、各論を述べます。

(日本)

安倍首相とトランプ大統領が蜜月を演出、日本のアイディアである「自由で開かれたインド太平洋戦略」に米国が乗っかる、経済対話は日米FTA含め前進なし・・ということで、この上記記事や以下の記事で繰り返し述べてきたとおりの結果でした。

「トランプ時代の日米関係」

特にサプライズもなかったので、今週は、軽い余談だけすることにします。

また、ドゥテルテ、トランプと天皇陛下の会見が続いたことから、皇室にまつわる話も書く予定です。

(韓国)

北朝鮮への対応は足並みをそろえたものの、DMZ共同訪問は悪天候のため不運なことに失敗。これは日本の完璧なロジと比べると情けないですね。

元慰安婦の夕食会出席、「独島エビ」の提供という珍事もありました。まあ、これはスルーしましょう。

トランプの北朝鮮に関する発言が過激とか、いや抑えていたとか、色々な評価が出ていますが、これもすでにここで述べてきたとおりのラインから一歩も外れていません。

「トランプ政権の北朝鮮外交」

(中国)

一方、中国は「国賓以上」の待遇ということで、軍事パレードのような出迎え、2500億ドルの契約も用意・・完璧なおもてなしを披露しました。

ただ、2500億ドルの内容をみると、その多くはMOU(覚書)。正式な契約ではなく、法的拘束力はありません。習近平外交の定番ともいえるセレモニー的なおみやげです。実より名を重視する中国の常套手段です。

こちらも予想どおりの展開でしたが、双方がお互いのメンツを立てて上々の仕上がりだったといえるでしょう。特に習近平は「皇帝」として自信と落ち着きを見せていた気がします。

ただ、これで米中の貿易問題が鎮静化することは・・もちろんありません。

以下の記事で述べたとおり、トランプが「アメリカ・ファースト」を唱える前から、米国の議員・ビジネス界には中国に対するフラストレーションがたまっていました。それは、米国企業の進出を阻む「アンフェアな」事業環境(80年代に日本が言われたことに通じる問題)、中国企業の情報窃盗、米国の半導体分野への大規模な投資・・など、極めて根深い問題です。

「王岐山とバノンの秘密会談」

前述の2500億ドルの契約も、その半分は売買契約ではなく米国のエネルギー事業への投資ですから、雇用は生み出すかもしれませんが、貿易不均衡の是正につながるものではありません。米国のプレッシャーは続くでしょう。

(東南アジア)

こちらはまだ終わっていないのではっきりしたことが言えないですが、以下の記事で述べたとおり、トランプの東アジア外交がどのように示されるかが気になるところでした。

「トランプのアジア歴訪と北朝鮮」

トランプが打ち出したのは、事前に報道されていたとおり「インド太平洋戦略」でした。

これは、先週述べたように、ティラーソン国務長官が南アジア訪問の前に述べたインドとの戦略的提携路線と安倍首相が発表したキーワードが組み合わさったものです。

「今週の動き(11/6~12)」

日米が一致した構想を米国の大統領がアジアに向けて語るのも意義深いことですが、こうしてみると、やはり当初の孤立主義的な「アメリカ・ファースト」のイメージは後退していることが読み取れます。

「トランプの国連演説①

とはいえ、TPP離脱に象徴される多国間主義に背を向ける姿勢は変わりません。米越首脳会談では南シナ海問題について中国との間の「仲介」を提案したとのことですが、中東和平と同じで、具体的にどこまで有効な手があるのか、中国と取引するつもりなのかという疑問も浮かび、真意が測りかねます。

アジアへのコミットメントと中国への対抗という姿勢は示されていますが、どこまでの責任感と覚悟があるのかという点は相変わらず不透明で、中国との主導権争いにおいて後手に回っている感は否めません。

(日中関係)

なお、日中首脳会談では、習近平が笑顔で握手、国旗が写真に入っていたことが注目されています。

以下の記事で述べたとおり、習近平が権力基盤を固めれば、日本との関係を安定させることが可能になります。

「中国共産党大会と習近平体制2期目の展望」

そこで今回、早速に関係改善に向けたシグナルを送ったとみられます。見極めにはもう少し時間が必要でしょうが、このテーマも近いうち取り上げたいと思います。

●TPPの大筋合意

TPPといえば、TPP11の大筋合意が実現しました。

これ自体はもちろん良いことですが、ここで「いずれ米国が帰ってくるのを待つ」という期待を強調するのは得策ではないでしょう。トランプ政権においてTPP復帰が期待できない以上、こういったメッセージはトランプの外交を否定し、トランプを挑発するおそれがあるからです。

●パラダイス文書とロシアゲート

ウィルバー・ロス商務長官にもロシアゲートが拡大。

ロスほどの弁護士であれば違法行為には最大限の注意を払っているはずであり、違法性が立証される可能性は低いでしょうが、政権のレピュテーションにはダメージになります。

ただ、ここで注意すべきは、マナフォートやロスのロシアとのつながりは、トランプの選挙チームに加わる以前からのものということです。何度もお伝えしているとおり、トランプに関わる人たちの違法行為や疑惑はトランプ自身のロシアとの共謀につながるわけではありません。

むしろ、先週お伝えしたとおり民主党にもロシアの接近があったこと、さらに今回、ロスのような実績ある人物まで疑惑が及ぶことは、ロシアゲートはもはやトランプのみならず米国という国家そのものに関わる問題であることを感じさせます。

「今週の動き(11/6~12)」

こうなると、モラーの捜査は米国全体を混乱に陥らせるかもしれません。そうなると、かつて取り上げたモラー解任のシナリオが現実味を帯びてきます。

「ロシアゲートとトランプ弾劾の行方」

モラーはオバマ政権下でFBI長官でしたから、ヒラリーが国務長官であったときロシアゲートが関係しているとすれば、モラーを不適格として忌避させるロジックも出てきます。トランプであればこういうチャンスを見逃さず、最大限に活用しようとするでしょう。

(米・トルコ関係)

なお、ロシアゲートの次の標的はマイケル・フリン前大統領補佐官と噂されています。

フリンは、トルコのエルドアン大統領と仲が良く、トルコ政府との間でも不正なつながりが指摘されてきた人物です。先週は、ギュレン引き渡しを実現する見返りにトルコから報酬を受け取る計画があったとの報道もありました。

米国とトルコとの関係は、すでにお伝えしたように、近年大きく悪化しています。

「米・トルコのビザ発給停止」

先週、両国はビザ発給を限定的に再開し、ユルドゥルム首相の訪米があり、関係の修復をはかっていますが、仮にフリンが訴追され、トルコとの関係も明るみに出れば、これも米・トルコ関係の悪化材料になる可能性が大いにあります。

●バージニア州知事選

注目のバージニア州知事選は、民主党のラルフ・ノーザムが勝ちました。

「バージニア州知事選と共和党・民主党の将来」

上記記事で述べたとおり、バージニアでは元々トランプは嫌われています。共和党候補のエド・ギレスピーがトランプと距離を置き、トランプがバージニアに一度もキャンペーンをしなかったのはそのためです。したがって、接戦になったとはいえ、最終的に民主党が勝利したことにそれほどの驚きはありません。

ただ、今回の結果で特筆すべきは、ノーザムが9ポイントもの大差をつけて勝ったことです。しかも、バージニアの富裕層という伝統的に共和党を支持する人々の60%、それと若年層の70%もの票を獲得したことは注目に値します。

ノーザムは、もともと医者で、堅実なキャリアを歩んでおり、どちらかといえば地味なタイプです。大統領選でのトランプの勝利、その後の「トランプ主義」の勢いをみると、こういう派手なタイプの政治活動がこれからは必要なのか・・と思われていたところで、こうした人物がソリッドな勝利をおさめたことは、今後の米国政治を見る上で参考になるポイントです。

また、今回、民主党は指導部や全国委員会が一体となってノーザムに手厚い支援を行いました。これもうまく機能したといわれています。

民主党にとって明るい材料であることは疑いありませんが、この教訓を生かして、これから共和党・トランプ主義にどのように対処していくのかが問われることになります。

なお、ニュージャージー州知事選は、民主党勝利は織り込み済みの結果であり、特に驚きはありません。

そして、バージニア州知事選に続き、もう一つ共和党にとって大きな打撃になるイベントが発生しました。

●アラバマ州上院補選のスキャンダル

先月、アラバマ州上院補選の共和党予備選でスティーブ・バノンが支持する超保守のロイ・ムーアが勝利したことは以前お伝えしていました。

「今週の動き(10/2~8)」

このムーアが32歳だったときに14歳の少女と性的関係があったことがワシントン・ポストにより報道され、大変な騒ぎになっています。ムーアはこれを否定し、民主党の政治攻撃と非難していますが、この女性は昨年の大統領選でトランプに投票しており、事実であることは間違いないと言われています。

アラバマの共和党員はムーアを擁護していますが、共和党議員の中にはムーアに撤退を求める者も出てきています。ここでムーアを残すと共和党が受ける打撃は計り知れず、おそらくムーアは撤退せざるを得なくなる見方が有力です。

●サウジの強権発動

サウジアラビア政府が、富豪のワリード王子、ムトゥイブ国家警備隊相ら11人の王族と4人の現職閣僚を含む約50人を逮捕するという衝撃の報道。

この逮捕劇を主導したのは設置したばかりの腐敗防止最高委員会で、そのトップに立つのはムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子。

さらにムクリン元皇太子の息子マンスールが謎の墜落死。

著名な投資家であるワリード王子の逮捕が大きく取り上げられていますが、それ以上に気になるのは、このメルマガの読者の方たちであればお馴染みのMbS、ムトゥイブ、ムクリンですね・・何度も取り上げてきた重要なキャラクターたちが一気に事件に巻き込まれました。

このメルマガを読んでこられた方たちであれば何が起こっているか察しがつくと思いますが、今週詳しく解説します。

●レバノンの混乱

レバノンのサード・ハリーリ首相がサウジ訪問中に暗殺のおそれがあるということを理由に突然辞任を発表。

ハリーリ首相の父親のラフィーク・ハリーリ元首相は2005年に在任中に暗殺されています。真相は不明ですがシリアによる犯行という説が有力です。

レバノンは民族宗派のモザイク国家といわれ、主要宗派であるキリスト教マロン派、イスラム教スンニ派、同シーア派がバランスを保つよう統治機構がデザインされています。このため、常に複雑な政治闘争が展開されており、それにシリア(かつてレバノン国内に軍を駐留)、イラン、サウジという地域の有力国が干渉するという状況が続いています。

シリアが内戦に陥ると、サウジとイランの一騎打ちの様相を呈しました。スンニ派のハリーリはサウジ、シーア派のヒズボラはイランのバックアップを受け、対立が続きましたが、ハリーリ政権は連立を維持してきました。

それが、イエメンからのサウジへのミサイル攻撃もあり、サウジとイラン・イエメン・ヒズボラとの対立が激化し、サウジがハリーリにヒズボラとの手を切るよう要求した・・とみられていますが、状況は流動的で、不確定な部分が多いです。

ただ、この裏にも、MbSの強いリーダーシップがあるとみられます。レバノンは小国ですが、イエメンなどと同様、中東のパワーゲームの中で主戦場になるため、フォローが必要です。どこかのタイミングで取り上げたいと思います。

なお、マクロン大統領が急遽サウジを訪問し、レバノン問題を協議したことに驚いた方もいるかもしれませんが、フランスはレバノンの旧宗主国で、伝統的に強い政治的なつながりがあります。シラク大統領と暗殺されたハリーリ元首相の親交はよく知られています。

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今週の動き
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11/13(月)
・ASEAN首脳会議(マニラ)
・米ASEAN首脳会議(同)
・米比首脳会談(同)

11/14(火)
・東アジアサミット(マニラ)
・ASEAN+3首脳会議(同)
・RCEP首脳会議(同)

11/15(水)
・ティラーソン国務長官がミャンマー政権幹部と会談

11/17(金)
・NAFTA再交渉第5回会合(メキシコシティ、~21日)

●米比関係

すでにお伝えしているとおり、最近の米比関係の改善を受け、ドゥテルテとトランプが手を握り合い、友好関係を強調することが予想されます。

「ドゥテルテとトランプ」

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あとがき
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3 comments on “今週の動き(11/13~19)
  1. ぺルドン より
    サンクス

    読むと一段と頭脳明晰になる気分・・

    パソコントラブル2週間入院・・予備も不調/・メール駄目・・コメントのみ・・
    次の予備埃マミレ動かず・・ニ週間コラム閉鎖・・
    コメントで嫌がらせするぞ・・・「笑」

  2. ぺルドン より
    JDさん

    磯部さんの知恵を拝借・・
    問い合わせ欄を利用・・原稿だけは送れるようになりました。
    お騒がせしました・・・

  3. KB より
    ここにくると

    前後一週間のアジア、米国、中東・・・世界の動きがまるわかりで、とてもありがたいです。

    守備範囲が広く、さらにテーマごとにメルマガで丁寧に深堀されていて、新聞やTVを見るくらいなら、ここに来たほうがよほど良いのでは・・・。と思う今日この頃です。

    しばらくお忙しそうですが、軽めでもいいので、ホットな情報お待ちしています!

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