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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/10/23 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(10/23~29)


あいにくの天気が続いてますね。だんだん冬が近づいてきた感じがします。

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先週の動き
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10/15(日)
・オーストリア下院選(国民党が勝利)

10/16(月)
・イラク軍がクルドが支配していたキルクーク油田に進軍、制圧
・米軍がイエメンの「イスラム国」を空爆
・日米経済対話・第2回会合(ワシントンDC)

10/17(火)
・クルド人を主体とする武装勢力が「イスラム国」が支配していたシリアのラッカを制圧
・フィリピンのドゥテルテ大統領がマラウィ市の解放を宣言(マラウィ)
・NAFTA再交渉第4回会合が終了(ワシントンDC)
・米・ギリシャ首脳会談(ワシントンDC)

10/18(水)
・中国共産党大会(北京、〜24日)
・イラク軍がクルドとの係争地を制圧

10/19(木)
・米上院が予算決議案を可決
・ケリー首席補佐官がトランプ大統領の米兵遺族への発言について大統領を擁護
・アル・スミス夕食会(NY)
・EU首脳会議(ブリュッセル、~20日)
・NZファーストが労働党と連立を組むと発表

10/20(金)
・イラク軍がキルクーク北郊の町に進軍、ペシュメルガと衝突
・ティラーソン国務長官がサウジ、カタール、インド、パキスタン、スイスを訪問(〜27日)
・チェコ下院選(〜21日)

10/21(土)
・スペイン政府がカタルーニャ州の自治権停止手続き開始

10/22(日)
・衆院選

先週もイベント盛りだくさんでした。時系列に従ってコメントします。

●オーストリア下院選

先週お伝えしたとおり、国民党が勝利。これにより次期首相に就任するセバスチャン・クルツは31歳。若いですね。しかもなかなかのイケメン。

最近は、フランスのマクロン(39)、カナダのトルドー(45)、ギリシャのチプラス(43)、イタリアの前首相のレンツィ(42)と欧州を中心に先進国で若いリーダーが次々と現れています。

成熟した社会が行き詰まりを見せる中で、良かれ悪しかれ、新しい刺激が求められている、ということでしょう。まあ、イケメンに関していえば、トルドーがダントツですが(笑)。

●クルド独立問題

独立投票を受け、イラク軍がキルクークなどクルドとの係争地に進軍してこれを制圧。

ペシュメルガの抵抗はありましたが、今のところ大規模な衝突には至らず、クルドが実効支配していた領域を失うかたちで決着しそうです。

この背景には、クルド内部での政治闘争とイランの暗躍があります。その内情と今後の展望を今週解説します。

●「イスラム国」の崩壊

イラクでのモスル陥落に続き、シリアでもラッカが陥落。

本HPでは、6月にモスルとラッカの奪還が目前であること、7月にモスルが陥落してイラク首相が勝利宣言を出したことをお伝えしていました。

「イランでのテロと「イスラム国」の終焉」(6/22)
「今週の動き(7/17~23)」(7/17)

今回のラッカ陥落により、イラクとシリアでの「イスラム国」は完全に崩壊しました。

ただ、上記記事で述べたとおり、「イスラム国」は中東以外の地域で新たな拠点を作ろうとしています。

その活動は、アフガン、シナイ半島、リビアで活発化していますが、東南アジアでも、フィリピンのマラウィ市が標的になり、5月、マウテとアブ・サヤフによる占拠事件が発生しました。

「今週の動き(5/29~6/4)」(5/29)
「ドゥテルテの戒厳令」(6/8)

●フィリピンのマラウィ市の解放

しかし、マラウィ市の占拠事件は、5か月にわたる戦闘の末、今週、ようやく終結しました。

特筆すべきは、「イスラム国」と直接のリンクをもち、東南アジアで最大の脅威といわれた大物テロリストであるイスニロン・ハピロンマウテ兄弟の殺害に成功したことです。

イラクとシリアで駆逐され、新たな拠点を探している中、アジアにおける「イスラム国」の先兵を叩き、東南アジアでの拠点作りを挫いたことは、テロとの戦いを進める上で大きな意味があります。

米国との共闘の文脈でも意義深いイベントでした。これについては先週の記事をご覧ください。

「ドゥテルテとトランプ」(10/10)

●NAFTA再交渉と日米経済対話

NAFTAは4回目の会合ですが、これまでの会合の中で最も成果が乏しかったといわれます。

当初予定していた年内の妥結はこれで断念。来年3月末が新たな期限となりますが、このタイミングはメキシコ大統領選の予備選の直前。また、署名は、米国内法上、署名の90日前に議会への通知が必要になるので、6月以降となり、これも大統領選の本選の直前となります。こうなると、メキシコ側も妥協の幅が狭まります。

日米経済対話では、日米FTAが議題に出されたことが話題を呼びましたが、これまで以下の記事などでお伝えしているように、米側にはFTA交渉を行うだけの体制が整っていません。

「トランプ時代の日米関係」(8/17)

NAFTAの交渉が長期化すれば、ますます米側にはリソースの余裕がなくなるので、日本にとっては良い話といえます。

一方、交渉が難航することで、あらたに懸念されるのは、米国のNAFTAからの離脱リスクです。

トランプは何度も離脱の可能性に言及していますが、何らかのかたちで妥協が成立することを見込んだ上での交渉上のブラフととらえられてきました。しかし、交渉がまとまらないとなると、本気で踏み切るかもしれません。

協定の修正は議会の承認が必要になるので、米国内の手続き上、容易なことではないのですが、離脱は大統領の権限で決定できるので、やろうと思えばできてしまうのです。

トランプならば・・やるかもしれません。そうなると、自動車産業をはじめ、サプライチェーンをメキシコまで広げている日系企業のグローバル・ビジネスに大きな影響が及びます。

●中国共産党大会

中国の政治を決める最重要イベントの開幕です。これについては先週の記事をご覧ください。チャイナ・セブンの予想もしています。

「中国共産党大会と習近平体制2期目の展望」(10/20)

●トランプ政権

トランプが、17日、ニジェールで戦死した米兵の遺族に電話で弔意を伝えたのですが、これが遺族にとって失礼なものだったということで、遺族と一緒にいた民主党のフレデリカ・ウィルソン議員がトランプを批判。これに対し、トランプは、ウィルソン議員の言っていることはウソだと反撃。

さらに、ジョン・ケリー首席補佐官が記者会見に登場、トランプを擁護し、ウィルソンを批判するという事態に発展しました。

これも、トランプ政権には見慣れた光景です。トランプはブッシュやオバマは遺族に弔意を伝えることをしなかったと自慢して、自己アピールのために遺族に電話したのですが、これが下手くそな言葉で気持ちを傷つけたのでしょう。ウィルソン議員への批判には、例によって敵をみつけたということでここぞとばかりに攻撃しますが、トランプらしい出まかせが入っています。

しかも今回はケリーまで傷つける結果になりました。これは、海兵隊大将という輝かしい軍歴、子息をアフガンで亡くしているケリーならばトランプを防御できるという判断ですが、ケリーのウィルソン批判には、ウィルソンは会話を盗み聞きしていた、といった誤解に基づく批判が入っており、ウィルソンに足をすくわれる展開になりました。

要するに、どうでもいいことでお互いに揚げ足をとり、関わった人たちすべての信用が傷つくことになる。敵味方をつくり、対立をあおるトランプの手法が悲劇と喜劇を生み出す典型的な場面といえます。

先週は、マケイン、オバマ、ジョージ・W・ブッシュがそれぞれスピーチを行い、トランプを名指しこそしないものの、昨今の政治が対立をおあるものになっており、連帯感を傷つけ、建設的な議論を妨げていると嘆きました。特にブッシュは、自身の政策を激しく批判したオバマに対しても一切批判を行ったことがなく、こういう発言をすることは異例です。

もっとも、本メルマガで何度もお伝えしているとおり、共和党でこうした発言をしているのは、ジョン・マケイン、ボブ・コーカーベン・サスなど数人に過ぎません。

●ライアンのトランプ批判

ただ、その一方で、19日のアル・スミス元州知事記念基金のための夕食会では、共和党指導部のポール・ライアン下院議長がジョークでトランプを批判しました。

いわく、この夕食会の後には、色々な報道が出るだろうが、大統領は「昨日の夕食会では30万人が自分を讃えた」とツイートするだろうと(スピーチの動画)。

就任式の聴衆の数をふくらました「オルタナティブ・ファクト」騒動とトランプのツイッターへの妄執を皮肉っているわけです。

「トランプ新政権の最初の1週間」(1/31)

ちなみに、このアル・スミス夕食会は、毎年、自嘲的な(self-deprecating)ジョークで盛り上がります。

今回のライアンのジョークも、上記の箇所意外にも面白いポイントがたくさんあり、人間性と知性を感じさせる素晴らしいものでした。英語のスピーチの勉強にもなるので、興味を感じた方は見てみると良いでしょう。

しかし、この夕食会が、例外的にひどい批判の応酬の場となったのが去年、トランプとヒラリーが出席したときです。これについては昨年書いた記事をご覧ください。

「米国大統領選:第3回テレビ討論会」(16/10/25)

夕食会を盛り上げるためのスピーチとはいえ、こうした共和党指導部のトランプ批判の言動は今後の動きをうらなう重要なシグナルとなるため、注意が必要です。

●税制改革

予算決議案が上院で可決され、上院で60議席ではなく過半数の支持で税制改革法案を成立させることが可能になりました。まずは最初のハードルをクリアしたといえます。

ただ、これからの議会の審議は大変です。先月の記事で解説したとおり、先送りした予算案と債務上限の引き上げも12月15日までに対応しなければならないからです。

「ペローシ・シューマー・トランプ合意」(9/12)

●ティラーソンの中東・南アジア訪問

ティラーソン国務長官のサウジ、カタール訪問では、カタールの断交問題が前進するか注目です。

「カタールの国交断絶とトランプ政権の混沌①/」(6/14・15)

その後のインド、パキスタン訪問では、インドとの連携強化とパキスタンへの圧力強化、関係修復が課題となります。

訪問に先立つ18日、ティラーソンはCSISでインドとの連携をテーマとする演説を行いました。

これがインド訪問に向けたメッセージであることは明らかですが、注目すべきは、中国への対抗を強く打ち出していることです。この背景には、以前の記事で詳しく解説した中国とインドのパワーゲームがあります。

「中国とインドの対立①/」(9/14・19)

さらに、演説の中で、ティラーソンは、中国の海外インフラ投資はその国の経済発展の役に立っていない、と痛烈に批判しています。これは今回のパキスタン訪問に向けた強いメッセージとみることができます。なぜなら、今のパキスタンは中国のインフラ投資が最もさかんな国だからです。

すなわち、ティラーソンは、上記記事で述べた米国・インド vs 中国・パキスタンという勢力争いの構図を明確に意識した上で、インドとパキスタンに向かうわけです。このことを念頭に置いて、現地の会談をフォローすると色々なものが見えてくるでしょう。

●チェコ下院選

先週お伝えしたとおり、「チェコのトランプ」ともいわれる実業家出身のアンドレイ・バビシュ率いる新興政党「ANO2011」が1位になる見通し。

ただ、バビシュは、バックグラウンドと反エリートの言動はトランプと似ているものの、基本的に中道、反移民ですが過激なナショナリズムに訴えているわけではありません。これをもって他の欧州のポピュリズム・極右勢力の興隆と同一視すべきではないでしょう。

むしろ、日系のトミオ・オカムラが率いる極右新党や新興の「海賊党」の躍進が気になります。

海賊党は、名前のインパクトが大きいですが、著作権や個人情報保護の問題を取り上げる国際的な政治運動なんですね。

政党といえば、最近、豪州では「SA(サウス・オーストラリア)ベスト」という政党ができました。SA州の利益を強調する意味で、都民ファーストみたいなものですが、ファーストの次はベストか・・流行るのかな・・?と思いましたね。そういえば、ファーストの元祖も「NZファースト」でした。

日本はといえば、「立憲民主党」・・なんだか戦前に戻ったような、アナクロニズムの印象を与える気もしますが・・おそらく未来の学生は「立憲民政党」と混乱するでしょうね。まあ、今回は予想外の神風に救われたとはいえ、そもそも教科書にも残らないかもしれませんが。

●カタルーニャ州独立問題

中央政府とカタルーニャ州政府の激しい対立が続きます。これについては読者の方からの関心も高く、どこかのタイミングで取り上げたい思っています。

●衆院選

これは、まあ予想どおりの結果でしたね。雨と風が強い中、投票率はどうだったでしょうか。

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今週の動き
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10/23(月)
・米・シンガポール首脳会談(ワシントンDC)
・ASEAN国防相会議(フィリピン・クラーク)

10/24(火)
・中国共産党大会が閉幕(北京)

10/25(水)
・1中全会(北京)
・タイのプミポン前国王の国葬(~29日、火葬は26日)

10/26(木)
・ECB理事会(フランクフルト)

●中国共産党大会

さて、どんな結果になるでしょうか。

結果が出たところでコメントしますが、その際、私なりの中国政治の読み解き方についても解説する予定です。

●タイの前国王の国葬

昨年10月に逝去されたプミポン前国王(ラーマ9世)の国葬が行われ、その後、ワチラロンコン新国王(ラーマ10世)の戴冠式が行われる予定です。

昨年の記事で解説したとおり、これからのタイ王室には不安があります。

「タイのプミポン国王の逝去」(16/10/14)

現在の軍が実権を握る体制は、来年11月に予定される総選挙後も維持され、盤石といえますが、新国王をめぐる状況はかなり不透明です。新国王は、かねてから奇矯な言動で知られますが、その後の動向をみると、意外にも、政治にも介入する構えをみせているからです。

この1年の間で、新国王の要望により、国王の権限を強化する措置がとられています。このへんはタイには不敬罪があることもあり、書きにくいのですが、いずれ取り上げたいと思っています。

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あとがき
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オーストリア下院選の箇所で述べたように、先進国で30~40代のリーダーが続々と登場しています。頼もしく感じる一方、自分も頑張らなければと思います。

まあ、私は昔から人より成長が遅く、自分のペースでやるしかないと思ってやってきました。40歳でも30歳の気持ちです。同世代で活躍する人を見て焦ることもありましたが、人生も100年の時代、修行も勉強も時間をかけてじっくりやってもいいんじゃないかなと思っています。

ミドルエイジの研鑽は、今後の世界の大きなテーマになっていくと思います。このメルマガも、購読されている方の年齢層は比較的高いようなので、その意味でも貢献できれば良いなと思いつつ執筆に励んでいます。

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2 comments on “今週の動き(10/23~29)
  1. ペルドン より:
    バートンすかさず集会演説で・・

    ブッシュを罵倒・・
    自分はトランプと同体だと演説・・

    王岐山に関しては・・
    中国メディアも引退説を打ち出したが・・
    日本の新聞を引用・・(笑
    全人代が終わった後・・
    経済の部署とか・・新設の大きな倫理組織にとか
    ・・姦しい・・
    終わった後のJDの解説・分析が楽しみ・・・
    ( ^ω^)・・・(笑

  2. KB より:
    知らなかった!

    ここを訪れていなければ、Remarks on “Defining Our Relationship With India for the Next Century”を耳にすることはなかったです!
    ライアンのジョークも面白い動画でしたが、こういうことも含めて見ていくことで、指標やデータだけではわからない、本心や思惑、意向をくみ取ることができるんですね。

    簡単に読み解くレベルには達しないので(笑)、引き続きご指導ください!!

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