2017/06/22 00:00 | 中東 | コメント(1)
イランでのテロと「イスラム国」の終焉
■ イラン国会議事堂とホメイニ師の廟で銃撃と爆発 12人死亡(6月8日付BBC)
イランは、国境地帯など一部の地域を除けば、基本的に非常に治安の良い国で、テロが起こることは極めてまれです。
それだけに今回のテロは衝撃でした。
「イスラム国」がイランを攻撃すること自体は特に違和感はありません。「イスラム国」はスンニ派の組織であり、シーア派国家のイランを敵視していることは自明の事実でした。
しかし、これまでイランに一度もテロを仕掛けることがなかった、あるいはテロを計画しても事前に制圧されてきたにもかかわらず、このタイミングで同時テロを成功させたことは、なぜ?という疑問を呼び起こします。
一つの考えられる理由は、「イスラム国」の本拠地の後退です。
■ 米支援のシリア民兵組織、IS拠点ラッカの奪還作戦を開始(6月7日付BBC)
■ ロシアがイスラム国指導者殺害か(6月16日付ロイター)
「『イスラム国』の後退」で述べたとおり、1年以上前から、「イスラム国」の勢力は後退を続けていますが、今年に入って、その掃討作戦は相当の成果を挙げています。
ラッカとモスルの奪還は最終局面に入っており、実現すれば「イスラム国」はほぼ壊滅します。
とはいえ、シリアの内戦は続きますし、ロシアとアサド政権の影響力が増大していることは、さらに状況を不透明にさせる面があります。
また、「イスラム国」の後退が、皮肉にも海外のテロの活発化につながるという現実もあります。
一つには、イラク・シリアで拠点を失うことで、テロリストが海外に流出することがあります。アジアでは、「ドゥテルテの戒厳令」で述べたとおり、ミンダナオ島に新たな拠点を作ろうとする動きもあります。
また、海外でテロを起こすことで、失いつつある求心力を回復させようという狙いもあるとみられます。最近の欧州やアジアでのテロ、そして今回のイランでのテロも、背景にはこうした事情があると考えられます。
特に、イランについては、シーア派の本山というシンボリックな場所を攻撃することで、「イスラム国」の威信を高めるとともに、スンニ派対シーア派という宗派対立の構図を作り出すことで、スンニ派諸国のイスラム教徒の支持を得る、という意図があるのでしょう。
実際、今回のテロによって、イランが、テロの背後にあるのはスンニ派諸国、特に宿敵サウジではないか・・・と考えるのではないかとの危惧を指摘する人もいます。
幸い、イランは、非常に合理的・現実的な人たちなので、そうした見方はとっていないようです。公式の声明など見る限り、サウジらを挑発するような言動は行っていません。
■ イラン、シリア東部へミサイル攻撃 ISISに報復(6月19日付CNN)
「イスラム国」は、近い将来、終焉を迎えることになるでしょう。
しかし、これによってグローバルなテロの脅威は消えることはなく、かえって、少なくとも短期的には、上記の事情により、世界各地でのテロはこれまで以上に頻発化する可能性があります。
と、書いていたら、今度は、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(MbS)が皇太子になるという衝撃のニュースが・・・これは明日書きます。
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One comment on “イランでのテロと「イスラム国」の終焉”
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トランプと組み(イスラエルも秘密裏に)・・
イランと敵対する態度・・
公然と・・
イランは米大使館占拠の代価を・・
まだ真には払っていない・・( ^ω^)・・・(笑