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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/10/30 00:00  | 今週の動き |  コメント(1)

今週の動き(10/30~11/5)


台風一過で好天に恵まれたと思ったら、また雨と台風・・寒いのは何とでもなりますが、雨は勘弁して欲しいところですね。

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先週の動き
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10/22(日)
・サウジ・イラク首脳会談(リヤド)
・ティラーソン国務長官がサウジのサルマン国王と会談(同)
・アルゼンチン議会選(与党カンビエモスが勝利)
・衆院選(自民党が大勝)

10/23(月)
・ティラーソン国務長官がカタール、アフガン、イラクを訪問
・米国務省がロヒンギャ問題に対する懸念と制裁の検討を発表
・米・シンガポール首脳会談(ワシントンDC)
・フィリピンの国防相がマラウィ市での戦闘の終結を宣言
・ASEAN国防相会議(フィリピン・クラーク)

10/24(火)
・中国共産党大会が閉幕(北京)
・ジェフ・フレーク上院議員が次期選挙への不出馬を表明
・ティラーソン国務長官がパキスタンを訪問

10/25(水)
・1中全会(北京)
・クルド自治政府がイラク政府に対して住民投票凍結を提案
・ティラーソン国務長官がインドを訪問
・タイのプミポン前国王の国葬(~29日、火葬は26日)

10/26(木)
・イラク首相がクルドの提案を拒否
・オランダで第3次ルッテ内閣が発足
・ECB理事会(フランクフルト)

10/27(金)
・スペイン上院がカタルーニャ州の自治権停止を承認、ラホイ首相がプチデモン州首相を解任
・ホワイトハウスがトランプ大統領が国防次官補にランディ・シュライバー氏を指名する方針と発表

10/29(日)
・フィリピンのドゥテルテ大統領が訪日(~31日)

中国、米国、中東、アジアと、先週も色々ありました。

●中国共産党大会

先週の最大注目イベントでした。

速報でもお伝えしたとおり、おおむね私の予想どおりでしたが、正式な結果が出たことをふまえ、今週、習近平2期目体制の展望について、より踏み込んだ分析をお伝えします。

「中国共産党大会の速報」(10/26)

●トランプ政権と共和党

ジェフ・フレークの不出馬表明は、トランプ政権と共和党、バノンの影響力について考察する上で意義深いイベントです。これについては先週の記事で解説しました。

「バノン主義とトランプ政権・共和党①/」(10/26・27)

これにより、ボブ・コーカーの不出馬、それにジョン・マケインがすでに引退確実であることを考えると、共和党の有力なアンチ・トランプがそろって姿を消すことになります。

現在、共和党は税制改革を実現させ、中間選挙で勝利することに躍起になっており、このためにほとんどの議員がトランプを支える以外に選択肢がないと考えています。上記3名のようにトランプを正面から批判する議員は例外でしたが、その数少ない議員が影響力を失うことになります。

中間選挙に向けてトランプ・バノンは共和党議員へのプレッシャーをさらに高め、自分たちの支配下にある議員を増やそうとしています。共和党の重鎮ボブ・コーカーは、かつてテネシー州で共和党員の支持率が60%超でしたが、トランプから攻撃されると37%に半減しました。

トランプの振る舞いは相変わらず無茶苦茶で、共和党を混乱させていますが、皮肉なことに、結果として政権の求心力が高まっている面があります。

これがどこに至るかですが、まずは中間選挙で一つの結果が示されることになります。共和党内のトランプ支持は相変わらず盤石で、党内の不満はむしろ指導部や重鎮に向かっていますが、一方、世論調査によっては、共和党員の多くが次の選挙では民主党に投票するという結果も出ています。

つまり、共和党内の求心力の高まりと選挙の勝利は別の問題であり、ここはこれから丁寧にフォローする必要があります。

もっとも、以下の記事で指摘したとおり、基本的な構造として、次の中間選挙が共和党有利である点は忘れてはなりません。上院の改選議席が民主党25(無所属2含む)に対して共和党8と大幅に少なく、しかも、民主党の改選議席がある州は、トランプが大統領選で勝利したラスト・ベルトの州を含んでいるからです。

「ロシアゲートとトランプ弾劾の行方」(8/8)

また、中長期的な米国政治の展望についていえば、アイデンティティ政治の強まりがより顕著になっているといえます。このアイデンティティとは、かつてはエスニシティや宗教でしたが、今は共和党か民主党かという党の所属に収斂しつつあります。

この現象を促進しているのがトランプ・バノンといえます。そして、それは、長期的には、逆説的に、伝統的な二大政党システムの衰退につながる可能性があります。このへんはタイミングを見て解説します。

●サウジ・イラク首脳会談

イラクのアバディ首相がサウジを訪問し、サルマン国王と会談。サウジ・イラク調整会議を設立。

サウジとイラクの接近については、以下の記事ですでに説明していました。その流れに沿った動きです。

「サウジアラビアの新時代(1)」(10/3)

スンニ派のサウジとシーア派のイラクが連携することに驚く方もいるかもしれません。たしかにこれは注目すべき新しい動きです。

その背景にあるのは、上記記事で述べたとおり、イラク・ナショナリズムの高まり、イランへの対抗、そしてムハンマド・ビン・サルマン皇太子です。

●ティラーソンの中東訪問

(サウジ)

アバディ首相のサウジ訪問のタイミングでティラーソン国務長官もサウジを訪問。

ティラーソンはサルマン国王、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子らと会談し、さらに、サウジ・イラク調整会議の設立会合にも参加しています。

米国としては、反イランでサウジと結束を固め、さらにサウジと協働してイラクを取り込みたい。その意向が鮮明に表れている動きです。オバマからトランプに政権が変わったことで方向性が大きく変わったポイントの一つです。

さらに、この後、ティラーソンはカタールを訪問。そしてアフガンとイラクをなんと一日で電撃訪問。

(カタール)

米国は、なんとかカタールの断交問題について仲介しようと努力を続けていますが、今回も成果はなかったようです。

「カタールの断交とトランプ政権の混沌①/」(6/14・15)

(アフガン)

アフガンについては、次に述べる南アジア訪問との関係が深く、インドと組んでパキスタンに圧力をかけ、アフガンのテロとの戦いを前進させるのが主な狙いです。

(イラク)

イラクについては、クルド独立問題の沈静化が大きなアジェンダでした。

クルドについては、先週以下の記事で解説しましたが、読者の方からの質問とその後のアップデートがあり、近いうち解説を補足します。

「クルド独立投票とイラクの進軍」(10/24)

●ティラーソンの南アジア訪問

ティラーソンは、中東の後、パキスタンとインドを訪問。

その狙いは、インドとの戦略的提携の強化とパキスタンへの圧力の強化です。以下の記事で解説したトランプ政権の新アフガン戦略に沿ったものです。

「中国とインドの対立(2)」(9/19)

インドとは「2+2」(外務と防衛の閣僚級協議)を早期にスタートすることで合意。最近、米印は戦略的提携の強化に迷うことなく突き進んでいます。正式な同盟国となるのも時間の問題かもしれません。

一方、パキスタンとは、「テロリストをかくまうのはやめろ」「テロリストをかくまったりなどしていない」と相変わらず議論が平行線。このまま関係の悪化が続きそうです。

●ロヒンギャ危機

米国がいよいよ制裁の検討を始めたとの報道が出ています。

ただ、これは国務省の発表に基づくものですが、よく読むと、何らかの制裁の対象となるのは軍関係者に限られており、包括的な経済制裁は検討されていないことが分かります。

国務省は、文民政権と国軍を切り分け、前者は支援するが、後者には圧力をかけるという従来からの方針を堅持しています。アウンサン・スーチーがロヒンギャ問題に対処できない事情をよく理解しているので、スーチーを窮地に追い込むことは避けようという配慮がみえます。

「ロヒンギャ危機とアウンサン・スーチーの苦境」(9/21)

ひるがえってみるに、かろうじてミャンマーにとって幸運だったと言えるのは、文民政権が発足していたことです。これが事実上軍に支配されていた前政権であれば、米国は、容赦なくミャンマーに厳しい制裁を科していたでしょう。

アウンサン・スーチーはたしかに非難を浴びていますが、それでも国際社会、そしてロヒンギャに人々は、彼女を責めることが解決の道ではないことを認識しています。むしろ、軍を抑えるために政権はサポートしなければならない・・そこまで理解させられるかがミャンマー政府にとって課題となります。

スーチーとしては、今はポーズだけでもいいので、前向きな取り組みをしていることをアピールし、それにより国際世論を誘導することが最大の役割となります。それはまさに文民政権、アウンサン・スーチーというシンボルの力を最大限発揮できるところといえます。

とはいえ、米国の対応は予断を許しません。国務省がこうした方針を表明する一方、議会では制裁を検討する動きが高まっているからです。

いま、上院外交委員会の民主党トップであるベン・カーディン上院議員が中心になって法案を検討しています。これが成立することがあると、潮目が変わる可能性があります。

もう一つ注目されるのは、次の「今週の動き」で述べるトランプのアジア歴訪です。東南アジアを訪問する際にトランプがこの問題について何を語るのか、大いに気になるところです。

●トランプ政権のアジア外交

ランディ・シュライバーが国防次官補に指名される方針との発表。これは、このHPとメルマガで何度も予想してきたとおりの人事です。

「トランプ政権人事:アジア外交チーム」(2/3)
「今週の動き(10/9~15)」(10/9)

この人と駐韓大使に就任するであろうヴィクター・チャは、私とは旧知の仲で、今年も夏に会っています。

共和党の若手アジア・ハンドの中では経験、知見とも抜きんでた存在であり、トランプ政権のアジア外交の実務を支え、安定させる上で大きな力になるでしょう。

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今週の動き
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10/30(月)
・TPP首席交渉官会合(〜1日)

10/31(火)
・FOMC(〜1日)

11/3(金)
・トランプ大統領がハワイ訪問

11/5(日)
・トランプ大統領が訪日(〜7日)

(未定)
・トランプ大統領がFRB次期議長を決定

●トランプのアジア歴訪

いよいよ今週末から始まります。これについては今週解説します。

●FRB議長

これはぐっちーさんの解説に任せましょう(笑)。結果が出たら私もコメントしたいと思います。

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あとがき
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週末に、日本経済研究センター(日経のシンクタンク)と国問研(外務省のシンクタンク)が毎年共催する富士山会合が開催されました。米国からは、私の友人も何人か参加しており、挨拶に来てくれました。

トランプ政権の内情については、この会合に参加するような本流の専門家は蚊帳の外にいるため、話していると、米国のみならず様々なところで情報を収集している私なんかの方が詳しかったりします(笑)。それでも、こうした米国の知識人の感覚や空気を知ることには大きな意味があります。

トランプ政権だから、リチャード・アーミテージマイケル・グリーン、そのグループにいる若手などの言うことを聞いても仕方ない・・などと短絡的に考えるのではなく、こういう時期だからこそ、パイプを維持して、これまで以上に連携を高めることがむしろ重要です。

また、シュライバーやチャの例をみてもわかるように、これから共和党のプロ人材が政権に加わる可能性も十分にあります。その意味でも要フォローです。

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One comment on “今週の動き(10/30~11/5)
  1. ペルドン より
    トランプとバノン

    共和党を乗っ取るか・・
    新しい血を輸血して・・
    あるいは・・第三政党が脳裏にあるのか・・
    露西亜ゲートも・・民主党が絡んで来て・・トランプを誹謗中傷したフェイク・
    ニュースは・・源は民主党にあるとなるのでは・?!

    JD中国分析興味津々・・・( ^ω^)・・・(笑

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