2017/10/09 00:00 | 今週の動き | コメント(14)
今週の動き(10/9~15)
なんだか急に寒くなってきましたね。私は週末ゴルフでしたが、晴れて良かったです。
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先週の動き
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10/1(日)
・ラスベガスで銃乱射事件
・スペインのカタルーニャ州で独立を問う住民投票
・トランプ大統領が北朝鮮との交渉は「時間の無駄」とツイート
10/2(月)
・米・タイ首脳会談(ワシントンDC)
10/3(火)
・トランプ政権が在米キューバ大使館の外交官15人の国外退去を要請
・ジョン・ハンツマン氏が駐ロシア大使に就任
・マティス国防長官がイラン核合意は維持されるべきと発言
10/4(水)
・トルコ・イラン首脳会談(テヘラン)
・英国保守党の党大会が閉幕(マンチェスター)
10/5(木)
・サウジのサルマン国王がロシア訪問
・スペイン最高裁がカタルーニャ州議会の本会議招集を差し止め
・トランプ大統領が「嵐の前の静けさ」と発言(ワシントンDC)
・ノーベル文学賞発表(カズオ・イシグロ氏)
10/6(金)
・ノーベル平和賞発表
●ラスベガス銃乱射事件
銃規制が再び大きな議論を呼んでいます。しかし、例によって見通しは暗いと言わざるを得ません。
2000年の時点で銃規制が必要と思う米国人は3分の2、銃を持つ権利を支持する人は3分の1でした。それが今は50対50。多くの州で銃規制は緩和されており、米国は銃の保護に大きくシフトしています。
その背景には政治的・社会的な分断があります。保守とリベラル、両海岸と内陸、高学歴と低学歴・・米国の発展から取り残されたと感じる人々は、米国の伝統、家族や自由を守るシンボルとして銃をとらえ、それによってアイデンティティを保とうとする・・そういう構図ができてしまっています。
これは「ラスト・ベルト」、「アメリカ・ファースト」に通じる議論です。トランプ政権はこのトレンドを助長する政権といえるでしょう。
※ラスト・ベルトについては「米国大統領選の注目点(3):激戦州の動向」参照。
共和党にも銃規制を主張する人々がいますが、それはマイケル・ブルームバーグに代表されるNYリベラル的な人たちです。こういった人たちが主役になるようでは、残念ながら分断は深まるばかりでしょう。
今回の事件を受けて、デビッド・ペトレイアス、スタンリー・マクリスタルのような尊敬される軍人も声を上げていますが、おそらく、こういった「銃を使う人たち」が前面に出ることで、政治と社会の断層を超えたムーブメントを生み出す必要があります。難しいことですが。
●新ロシア大使の就任
だいぶ前に指名され、承認には問題なしと言われてたので、ようやくという印象です。
ジョン・ハンツマンは共和党の穏健中道派で、レーガン政権から両ブッシュ政権に至るまで政府高官を務め、中国大使も経験、ユタ州知事、12年大統領選にも出馬という大ベテラン。トランプ政権では国務長官候補とも言われました。
その共和党本流の重厚な経歴、対ロシア強硬派で、「ロシアの大統領選への介入はあった」とも断言していたことから、トランプにとってベストとは言い難かった人選ですが、超党派の支持がとれる人物が他にいなかった故の人選とみられます。
相変わらずトランプ政権の高官人事は進んでいません。北朝鮮を何とかしようにも、中国と北朝鮮いずれとの交渉においても細かい調整が必要になりますが、国務省にも国防総省にも、それを動かせる実働部隊がいないのが実情です。
ハンツマンの就任は、これから共和党主流派の起用が進むことを期待させます。アジア政策でも、ここで何度も取り上げている、ヴィクター・チャ、ランディ・シュライバーらタレント・プールの起用が本格化するとみられます。
●プラユット首相の米国訪問
14年5月のクーデーター以来初となるタイの首相の公式訪問。
トランプは、これで、東南アジアから、ベトナムのフック首相、マレーシアのナジブ首相、タイのプラユット首相をホワイトハウスに迎え入れたことになります。
ナジブとプラユットの歓待には、米国のリベラル系メディアや人権団体からは反発がありますが、中国にやりたい放題されるよりはマシ、という見方も有力です。
トランプ自身は11月にダナンとマニラに行きますが、最近注目される動きが「アジアのトランプ」ことフィリピンのドゥテルテ大統領と元祖トランプの関係の変化です。今週取り上げます。
●エルドアン大統領のイラン訪問
トルコ、イラン、ロシアの3か国が接近していることは、昨年9月、「ロシア・トルコ・イランの三国連携」で解説しました。
このとき書いたトレンドがそのまま続いています。
クルド独立も、トルコには1500万人、イランには670万人ものクルド人がいますから、これを抑えることは共通の課題であり、連携を強める要因として働いています。
●サルマン国王のロシア訪問
先週、「サウジアラビアの新時代①/②」でサルマン国王の生前退位の可能性について説明しましたが、ここにきてロシア訪問。
さらに来年には米国への訪問も予定しています。もともと生前退位は9月中らしいという話だったのがすでに10月になっており、当分ないのだろう・・という観測が有力になりつつあります。
先週の記事で書いたとおり、退位が先送りされることはサウジとムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子にとっては望ましいと考えられます。
ロシアには、15年6月にMbSが訪問しプーチン大統領と会談しています。サウジとロシアの接近はこのときからすでに始まっていました。そのとき書いた「サルマン副皇太子・プーチン会談」、「サウジアラビアとロシアの接近」をご覧ください。
●英国保守党の党大会
メイ首相の演説がひどかったと酷評されていますが、それ以前から、ボリス・ジョンソン外相の攻撃がすさまじく、政権のBREXITとまったく異なる案を発表するなど閣内不一致が公然化していました。
もともとジョンソンを野に放つのは危険と考えられたから入閣させたのですが、ここまで大暴れされると大きなリスクとなります。
党大会の後味の悪さも、こうした英国政治の混迷を象徴する一幕となってしまいました。
●ノーベル文学賞
カズオ・イシグロ氏の受賞。生い立ちも文体も、日本を感じさせるところはない人と思いますが、私にとっても、『日の名残り』と『わたしを離さないで』は、映像化されたこともあり、強い印象を残す作品でした。
村上春樹が選ばれなかったこともニュースになっています。私も、彼の主要作品はすべて読んでいますが、『1Q84』はノーベル賞的な普遍性を感じたものの、『騎士団長殺し』はかつての私小説的な世界に戻ったような気がして、あれ?と思っていたところでした。
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今週の動き
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10/9(月)
・カタルーニャ州議会が本会議を招集
・第5回BREXIT交渉開始(ブリュッセル)
・ノーベル経済学賞発表
10/10(火)
・朝鮮労働党創建記念日
・台湾双十節(辛亥革命記念日)
10/11(水)
・7中全会(北京)
10/12(木)
・G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントンDC、~13日)
10/13(金)
・世銀・IMF年次総会(ワシントンDC、〜15日)
10/15(日)
・イラン核合意の遵守状況の議会報告の期限
●7中全会
来週18日から始まる党大会の準備にあたるための会議であり、リハーサル的な意味をもっています。
党大会の展望については、「王岐山とバノンの秘密会談」(補足)をご覧下さい。
●イラン核合意
イラン核合意については、国務省がイランの遵守状況を90日ごとに判断し、議会に報告することが義務付けられています。
報告はトランプ政権になってからすでに2回行われていますが、もしかしたら次の報告はされないかもしれないという観測があります。トランプはかねてから合意の見直しの必要性を強調しており、最近ではティラーソン国務長官も、合意に期限が付いていることを問題視する発言をしているからです。
一方で、先週、マティス国防長官は、合意は維持されるべきと上院公聴会で発言しました。対イラン強硬派だったマティスが慎重な発言をするのは意外で、状況が流動的になっていることをうかがわせます。
ここは非常にセンシティブで、色々な見方があり、見通しが立てにくいのですが、極めて重要なイシューなので、近いうち取り上げたいと思っています。
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あとがき
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今日は祝日ですが、世界情勢は動いているので、メルマガは通常どおり配信しています。
ほか、四方山話を書いていますが、こちらはメルマガのみ掲載します。
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14 comments on “今週の動き(10/9~15)”
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肌寒い・・日中はパンツのみ・・
車に乗れば・・日中冷房・・朝夕暖房・・
イラン・・流石ペルシャ・・シブトイシブトイ・・
でも・・大使館占拠米国・トランプは忘れていない。いくら賠償金を巻き上げたと言えども・・それに北と絡んでいる・・ミサイル・核・・
トランプは十代の様にイキリタッテいるでしょう・・
正直に申し上げて・・春樹様は通俗小説ぽい・・マラソン愛好は評価します。ロンドン・マラソンにも出たらしい。その時イシグロさんと会った。
イシグロさんは純文学・・
嫌味を述べれば・・初期の作品群の方が引き締まっている・・と思いますね。
想像力を出来るだけ殺して描く・・珍しいタイプの作家。
「私を離さないで」・・中国では法輪功を捉えてはVIP用に内臓を取り出していた。イシグロさんはクローンに置き換えたが・・明らかに中国に対する抗議。
愛妻家で・・創作は奥様が検閲官・・「忘れられた巨人」は50ページも書いたのに・・つまらんと言う検閲官の一言で・・書き直しが決まった。
春樹様を尊敬しているのなら・・マラソンを真似ましょう。一瞥して運動が必要な体になっている。体重をコントロールしているのは分かるが・・
彼は長編作家・・短編集「『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』
長編の書き方で・・短編を書いている。
とあれ・・日本も誇るべき作家には違いないな・・・
( ^ω^)・・・(笑
村上春樹さんの小説の面白い部分って、通俗的な部分だと思いますよ。
村上さんの作品で、私が一番好きなのは、「国境の南、太陽の西」(はっきり言って不倫とエッチの世界)です。あと「カンガルー日和」。(これらを新海誠さんが読めば、「秒速5センチメートル」に変換されます。)
ちなみに「ノルウェイの森」(ビートルズというより、サイモン&ガーファンクルの世界ですね)は「卒業」かよってことで最初の3行で寝ました。
「騎士団長殺し」は前巻は買ったんですが、積ん読のまんま。
イシグロさんの「私を離さないで」。とてもよく似たプロットの短編が昔、確か角川ホラー文庫あたりにあって、どちらが先かなって思ってたんですが法輪功事件が背景にあったんですね。
現在も武漢大学の学生が被害にあってるという記事が今日、載ってました。
イシグロさんや、名前を思い出せないけど作家の人が書くと美しい世界になってしまいます。むしろ、現実のグロテスクさを見せつけるようなセミドキュメンタリー的作品出ないかな。
ベルドンさんも触れていたカタルーニャ独立問題。せっかく、バスク独立運動を長い期間かけて沈静化させたのに。今度は何十年かかるんでしょうね。
関係ないけど、「バスク、真夏の死」(トレヴェニアン)は通俗的なサイコスリラーですがとても美しく、終盤の加速度もあってお薦めです。
下北のねこさん
これをイシグロさんが書いたから・・
ノーベル賞を獲得したのだと思います。
文学委員会としては・・同時代に生きている作家として・・誰かが書かねばならなかった・・それが賞に価したと評価したのでしょう。
村上さんも書ける才能が有りながら・・何故か目を背けた・・イシグロさんよりも早く書いていたら・・ノーベル賞を得られたと思います・・
カタル―ニア・・双方引き下がれない・・大規模なデモが双方で起きている。
熱くなるとスペイン人は・・クレージーになりやすい。教会が仲裁に入っている様子ですが・・ローマ法王でないと無理でしょう・・・
ノーベル文学賞委員会受賞理由
「偉大な感情の力を持つ小説によって、われわれが持つ、世界とつながっているという幻想的感覚の下に隠れた深淵を明らかにした」
「隠れた深遠を明らかにした」・・僕はここにポイントを感じるのです。
法輪功臓器売買は・・リアルな小説よりも・・作家のイマジネーションに任せた方が・・作家の見せ所となるように思いますね。
「控えた想像力」・・イシグロさん・・素晴らしいですね( ^ω^)・・・(笑
平和賞、文学賞、そしてノーベルの名を冠してはいけない経済学賞(遺族も反対したとか)。最もひどいのがオバマの授賞。オバマはその後核兵器の強化をしたのでは。文学にノーベル賞与えるべきなの。なんでボブディランが?。経済学なんて神学より酷いのでは。この三つは廃止すべきでは。ほんとノーベル賞になじまないと感じる。本当のノーベル賞のほうも生きていたもの勝ちの面もあるが、さすがにその権威は絶大だ。
それは暴論ですよ・・
それが分からないようでは・・付いてくるのが難しいのでは・??
( ^ω^)・・・(笑
ノーベル賞は既に、なんであいつがとか、失笑を誘い疑問を呈され権威が揺らいでいませんか?。というかしょうがないよな、人文系だからな、落差があっても、と言う感じか。本流の理系のオマケ程度の価値しかないのでは。よけいな分野に手を出したようにしか見えない。人文系でも単発の賞があるでしょう。そちらで評価されれば、こちらで貶されなくてもいいのでは。笑
イシグロさんは若い頃・・
シンガーソングライターになりたかった。ジョン・レノンの風貌・・ヒッピースタイルで・・レコード会社に売り込んでいた。
挫折して作家になった。それが成功した。
ですから・・ボブ・デュランは好きな歌手なので・・彼の後に受賞出来た事を・・非常に喜んでいた。
それに古代ギリシャは・・最初に詩があった。歌があった。文学の突端は歌・詩なのです。サッホーも若い愛人を連れ・・愛の歌を作り・・各地を吟遊して回った。少し頑なになってませんか・?!
( ^ω^)・・・(笑
を感じている人は結構多いと思いますが。ぺルドンさんは文学好きで専門だから感じないかもしれないが。授賞の累積で歴史とそれなりの役割がができてしまっているからなおさらか。しかし権威の由来はあくまで権威がありすぎる理系のノーベル賞にしかないと思うのですが。こちらはあいつが先かと思っても、実証とか実際の効果の影響度など納得しやすい要因がある。文学などは価値観が異なり過ぎるのでは。人文系は権威を借りているというイメージが避けられない。
違和感の原因はダイナマイトで財をなしたノーベルの複雑な思い、贖罪感にもあるのかもしれない。使い方次第だと思うが。自分が不明な領域も賞の対象にしてしまったのでは。科学の解釈が、理系・人文系で違うというのとも似ているのでは。
わざわざノーベルの名に頼ることもない権威ある純粋な国際的文学賞もあるのだから、そちらで充分と思ってしまいますが。ノーベル賞だと変な色がつく気がするんですよね。人文系も矜持を持って拒否してほしかった。実際文学など特にノーベルの軒先など借りる必要はない。ぺルドンさんの仰る通リノーベルより立派な母屋なのだから。平和賞と経済学賞はその点、怪しい。
ノーベル経済学賞は・・
哲学の分野として・・捉えた方が分かりやすいのでは・?!
( ^ω^)・・・(笑
確かに批判や摘発をそのままだったら、文学でもなんでもない普通の記事、ルポタージュレベルですもんね。(ルポタージュ読むのは大好きです。記憶には残りにくいけど、ちょっと興奮します。)
ただ、きちんと作品にしたイシグロさんはともかく、いつだったか村上春樹さんのイスラエルとかを刺激しないように、批判を控え、悲しみの気持ちというか遺憾の意スレスレのコメント聞いて、それが良識的だと評価されてるのみるとなんか残念な気持ちになります。
しかし、良質な文学小説とヨーロッパ映画って相性がいいですね。
昔、「ソフィーの選択」(原作/ウイリアム・スタイロン)とか、「愛を読むひと」(原作/「朗読者」ベルンハルト・シュリンク)とか「眺めのいい部屋」(原作/E.M.フォースター)とか見た後、ホーっとしてしまうものが多かったです。
ノーベル文学賞もので、私のおすすめはジョン・ゴールズワージーの「林檎の木」を映画化した「サマーストーリー」です。
見つけるのが難しいかもしれませんが、できれば奥様とご一緒にどうぞ。
ギリシャの詩ではなく・・
エデンの園の林檎の木ではありませんか・・?
そんな昔に戻りたいな・・・
( ^ω^)・・・(笑
アダムスミスが哲学から経済学を分派させたように思える。その後はこれを様々に捉え訳が分からないような事態になった。よく盲者が象を触って何者か当てることに喩えられますね。政治学、統計学、心理行動学、数理科学、宗教学などいろいろなセンサーを使って触ってみたがよくわからない。局所的には希に当てた気分になれるが、盲者なのだから全体的に構想しようとすると哲学、いや神学まで戻ってしまう。
そういう高級なアプローチより経済は生きた現実だから実際には貨幣・金利が身に染みる。貨幣は役に立つがコントロールされている気もする。賭場の入場券を持たせられているようだ。個性の技が対価として貨幣に吸収される気持ちになる。貨幣が資本になると権力が生まれる気分になる。資本を転がすとき経済学が局所的に役立つ。貯金では誰かに転がされているらしい。
全体的には偉い人たちが貨幣でコントロールし、それを発行しているらしい。貨幣の根拠は何ですかと聞くと、抽象的には交換を可能とする脳の機能ですと言う。現実的にと言うと、先進国では国家の債務だと言う。その債務は我々が負っているらしい。よくわからないがとにかく彼らが上手くまわしてくれるとのこと。自転車と同じくまわっている限り大丈夫らしい。でも外国との力関係で貨幣の価値が変わってしまうのだそうだ。そして世界には元締めのドルという貨幣があるらしい。他は皆、下請けらしい。本当は単純な仕組みでストーリーが組めるのだという。経済に限らずこの世の全ての動きは波の構造をしているらしい。笑
さすがベルドンさん、どちらもご存知ですね。
映画版には原作を超える強烈な魅力があって、たまには泣く・°・(ノД`)・°・のもいいのかなって思いましたが、さすがにそこまで初心ではなかったか。σ(^_^;)
ジェームズ・ウィルビー(モーリス)やルパート・エヴェレット(アナザー・カントリー)のポスターを部屋に張り(///∇//)、DuranDuranのコンサートを見に、東北本線で仙台まで行った時代に戻りたいのう。