2017/10/24 05:00 | 中東 | コメント(2)
クルドの独立投票とイラクの進軍
■ クルド独立巡る住民投票、自治政府議長が「賛成多数」と表明(9月27日付ロイター)
■ イラク政府、クルド自治政府に住民投票の無効化要求 孤立へ圧力(9月28日付ロイター)
■ イラク軍がキルクーク市を掌握 クルド人勢力は退却(10月17日付BBC)
■ イラク軍、クルド軍事組織と交戦 北部進軍で(10月18日付CNN)
9月25日にイラクのクルド自治区で独立投票が行われ、9割超が独立を支持しました。
この投票に法的効力はありませんが、クルド自治政府のマスード・バルザーニ議長は「勝利宣言」をしてイラク政府にアピールしました。
これに対し、イラク中央政府は国際線の運航を停止してクルド自治区を封鎖。自国にクルド人を抱えるトルコもクルド自治区を発着する航空機にトルコ領空の使用を禁止。イランも国内のクルド人に対する締め付けを強めます。
そして、先週、イラク軍がキルクークを含むクルドとの係争地に進軍。
そもそも、キルクーク油田などイラク北部の地域は、もともとイラク中央政府が実効支配していたのですが、「イスラム国」が台頭してこれをイラクから奪いました。イラク軍が「イスラム国」との戦いに苦戦する中、これらの地域を奪い返したのがクルドの精鋭部隊「ペシュメルガ」です。
ところが、イラク政府としてはもともとこれらは中央政府の直轄地だったという理解ですから、「イスラム国」がイラクから駆逐された今、クルドはイラクに占領地を返還すべき、ということになります。
油田を得たことで経済力を高め、自信をつけたクルドは、今回の住民投票に踏み切ります。住民の多数が独立を支持しているという事実をイラクに突き付け、独立に向けた交渉を要求したのです。
また、バルザーニとしては、後述するように、内部での批判が高まる中で、自らの求心力を高める狙いがあったとみられます。
しかし、イラクはこれに応じないばかりか、前述のとおり、クルドの封じ込めをはかります。クルドの独立投票は国際社会からの支持を得られず、トルコとイランからもプレッシャーを受けます。そして、今般、イラクは軍事力で係争地の奪還をはかりました。
クルドとイラクの全面衝突か・・と一気に緊張が高まりました。
しかし、クルドは、地域によって交戦に至ったものの、大規模な攻勢に出ることはなく撤退し、全面的な軍事衝突は回避されました。
なぜクルドはキルクーク油田をあっさりとイラク側に明け渡したのか。
クルドの動きの背景には内部での政治闘争とイランの影響力(革命防衛隊の特殊部隊の暗躍)があります。本日は、その内情と今後の展望を解説します。
※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。
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クルドの独立投票とイラクの進軍
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●クルド人の内部対立
●イランの影響力
●革命防衛隊(ソレイマニ)の暗躍
●今後の展望
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あとがき
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クルドの問題は、独立運動時代からの内部での主導権争い、イラク・イラン・トルコという多様なプレイヤーの思惑が絡み、歴史的経緯と地域をまたがる民族・宗教が関わる問題です。
複雑ですが、こうした構造的な諸要因と最新の情報を組み合わせた分析が本メルマガの腕のみせどころと思っています。今後の情勢も引き続き丁寧にフォローしてお伝えします。
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2 comments on “クルドの独立投票とイラクの進軍”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
二つの組織に別れ・・
内紛を続けているようでは・・
独立等夢の又夢でしょうし・・
利用され続けるでしょう・・・
( ^ω^)・・・
中東関連のニュースや問題って、本当に難しくて、コンプレックスすら感じます。
JDさんの仰るように、「歴史的経緯」「地域を跨いだ民族」「地域を跨いだ宗教」そして、「当事者とそれを取り巻く国々の思惑」が複雑に絡み合っているから当然ですね。
でも、こうして丁寧に足元の情報から解説していていただくと、理解しやすいかも!と思いました。
これまで、つい”頑張って”「歴史」から入っていたので、そりゃ近現代までたどり着かなくて挫折しますよね(笑)
今更勉強するなら、こうやって丁寧なレクチャーで近現代から遡っていくのも、良い勉強方法なのかな、と思いました!