2020/08/17 00:00 | 今週の動き | コメント(1)
今週の動き(8/16~22) カマラ・ハリス副大統領候補指名、イスラエル・UAEの国交正常化、アザー訪台、米中協議の延期、経済対策第4弾、ベラルーシ大統領選
今月、本メルマガは3周年を迎えました。記念すべきメルマガ第一号記事はこちらでした。
・「トランプ政権のパワーポリティクス(政権発足6か月)」(17/8/2)
今読むと隔世の感がありますね。ここからよく3年も書き続けたものだと思います。ひとえに読者の皆様のサポートのおかげです。これからもよろしくお願いします。
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先週の動き
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8/9(日)
・アザー厚生長官が台湾を訪問(~12日)
・北戴河会議(先週から開催中)(推測)
・ベラルーシ大統領選挙(ルカシェンコ大統領の得票率が80%と発表、各地で抗議デモが発生)
・レバノン支援に関する国際会議(テレビ会議)
・モーリシャスの沖で日本の貨物船が座礁し重油が流出した事故について同船をチャーターしていた商船三井が謝罪
8/10(月)
・トランプ大統領がG7サミットを11月の大統領選挙後に延期する意向を表明
・アザー厚生長官が台湾の蔡英文総統と会談(台北)
・中国が米国の香港制裁への報復措置としてマルコ・ルビオ、テッド・クルーズ、トム・コットン、パット・トゥーミー上院議員、スミス下院議員、ヒューマン・ライツ・ウオッチのケネス・ロス代表、フリーダムハウスのマイケル・アブラモウィッツ代表、全米民主主義基金のカール・ガーシュマン会長ら米国人11人に制裁を科すと発表
・香港警察が香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏と民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏を香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕(翌日に釈放)
・レバノンのディアブ首相が内閣総辞職を発表
・アフガニスタンのガニ大統領がタリバンの重罪捕虜400人を解放する布告に署名
8/11(火)
・ポンペオ国務長官がチェコ、スロベニア、オーストリア、ポーランドを訪問(~15日)
・バイデン前副大統領が大統領選挙における副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を選んだと発表
・ベラルーシの大統領選挙の野党候補のチハノフスカヤがリトアニアに滞在していると同国のリンケビチュウス外相がツイート
・ロシアのプーチン大統領が国内で開発を進めてきた新型コロナウイルスのワクチンを政府として正式に承認したと発表
8/12(水)
・ポンペオ国務長官がチェコ議会で演説(中国共産党の脅威を強調)(プラハ)
・アザー厚生長官が李登輝元総統の追悼場を訪問
・バイデン前副大統領とハリス上院議員が共同で演説(デラウェア州ウィルミルトン)
・ベラルーシのツェプカロ元駐米大使が反体制派組織「ベラルーシ共和国救国戦線」の設立を発表(ウクライナ)
・EUがカンボジアに対する制裁(特恵関税の一部停止)を発動
8/13(木)
・19年度国防授権法(NDAA)で定めた米政府機関によるファーウェイ、ZTE、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファの製品・サービスでの調達禁止の最終規則が施行
・ポンペオ国務長官がワシントンDCの「孔子学院」を外交機関に認定する声明を発表
・米司法省がイェール大は入学選考でアジア系や白人を違法に差別していると認定する調査結果を発表
・ゲーム「フォートナイト」の開発元であるエピックゲームズがスマートフォンのアプリ配信・課金システムが独占に当たるとしてアップルとグーグルを提訴
・イスラエルとUAEが国交正常化に合意したと米国が発表
・ベラルーシ当局が身柄を拘束した抗議デモ参加者1000人以上を釈放
8/14(金)
・トランプ大統領がバイトダンスに対しTikTokの売却を命令
・ポンペオ国務長官が中国の通信機器は安全保障上問題と発言(ウィーン)
・米司法省がベネズエラに向けて航行していたイランの石油タンカー4隻を拿捕したと発表
・国連安保理が米提案のイランへの武器禁輸措置の無期限延長の決議案を否決
・北朝鮮の朝鮮労働党政治局会議(金正恩委員長が出席、開城の完全封鎖を解除、首相等の指導部の交代を決定)
・韓国の慰安婦記念日
・ベラルーシの大統領選挙の野党候補のチハノフスカヤが自身の勝利を主張する動画を配信
・ベラルーシが拘束したロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員33人をロシアに引き渡したとロシア検察庁が発表
・EU臨時外相会議(ベラルーシへの制裁で一致)(オンライン会議)
8/15(土)
・トランプ大統領がイランに対する安保理制裁を復活させる手続きを近く始める意向を表明
・トランプ大統領がエドワード・スノーデン容疑者の恩赦を検討する意向を表明
・米中閣僚級通商協議の延期
・台湾高雄市長補選(民進党の陳其邁前行政院副院長が勝利)
・韓国の光復節(文在寅大統領が演説)
・北朝鮮の解放記念日
・インドの独立記念日(モディ首相が演説)
・ベラルーシのルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領が電話会談
・終戦記念日
●バイデンによるカマラ・ハリスの副大統領候補指名
バイデンがカマラ・ハリス上院議員を自身のランニング・メイトに指名しました。以下の記事で述べた私の予想は的中しました。
・「トランプの大統領選延期発言と郵便投票、バイデン副大統領候補」(8/4)
バイデンとハリスは早速そろって登場してスピーチを披露。トランプ政権のコロナや人種問題への対応を批判しました。今週は民主党全国大会がありますが、いよいよバイデンも地下壕から出て、ハリスとともに前線でアピールすることになります。
一方、トランプ大統領は、早速にハリスを猛攻撃。「Phony Kamala(いんちきカマラ)」、「とても性格が悪い(nasty)」などと呼んで罵りました。
ハリス指名の意味、それを踏まえた大統領選の最新の展望について、明日解説します。
●イスラエル・UAEの国交正常化
イスラエル・UAE・米国が共同声明を出し、イスラエルとUAEの国交正常化について合意に達したと発表しました。イスラエルがアラブ諸国と国交をもつのは、79年のエジプト、94年のヨルダンに次いで3か国目になります。
・「イスラエル現代史(9):リクードの台頭とエジプトとの和平」(19/9/20)
・「イスラエル現代史(11):中東和平への道」(19/10/9)
共同声明によると、今回の合意を受けてイスラエルはヨルダン川西岸の一部併合を凍結。イスラエルとUAEは数週間以内に投資や直行便、大使館開設などに関する合意に署名する予定であり、調印式はホワイトハウスで行われる予定です。
トランプ大統領は「歴史的成果」と強調しました。アラブ諸国ではエジプトやバーレーン、オマーンが支持を表明しています。一方、サウジは現時点では公式なコメントを出していません。また、パレスチナ自治政府、ハマス、イラン、トルコは「恥ずべき行為」として強く非難しました。
今回の国交正常化は、トランプが述べているとおり「歴史的」といえるほどのインパクトがあります。また、発表は電撃的でしたが、以下の記事でお伝えしていたとおり、近年のイスラエルと湾岸諸国の関係改善の流れに沿った動きといえます。
・「イスラエルのアラブ外交」(18/11/12)
今回の国交正常化の意味と今後の展望について、今週解説します。
●アザー厚生長官の訪台
アザー厚生長官が台湾を訪問、蔡英文総統と会談し、李登輝元総統の追悼場を訪問しました。民主主義がコロナ対応に有効に機能したことを強調し、もし台湾や米国で発生していれば容易に制圧できていた可能性があると述べ、中国の対応を批判しました。
しかし米国の台湾政策についてインパクトのある演説を行うことはありませんでした。中国は猛烈に非難していますが、報復措置はとられていません。まずは以下の記事で述べたとおりの展開です。今後の見通しについても同記事を参照下さい。
・「米国の対中攻勢の強化」(8/11)
●米中閣僚級通商協議の延期
米中閣僚協議(オンライン会議)は延期になったようです。報道によれば、中国側の事情とのこと。まだ詳細が分かりませんが、ちょうど北戴河会議が開催されている時期なので(公式発表は出ないので推測)、何らかの影響を及ぼした可能性があります。
第1段階の通商合意については、先週もクドロー大統領補佐官らが楽観的な見通しを述べており、今回の延期をもって直ちに暗雲が立ち込めたとは言えないでしょう。基本的には以下の記事で述べた見通しのとおりで、変わりはありません。
・「米国の対中攻勢の強化」(8/11)
ただ、米中対立がこれだけ先鋭化し、トランプ大統領にとって選挙戦の中心テーマとして重要性が高まる中で、米国が方針転換を検討する可能性も出てきています。後日あらためて解説します。
●米国の経済対策第4弾
経済対策第4弾については、共和党と民主党の間に歩み寄りはみられず、合意は持ち越しになりました。以下の記事で述べたとおりの展開でした。
・「米国の経済対策(大統領令)」(8/10)
上記記事で述べたとおり、今週から上院は休会に入るので、次の本格的な協議は9月になります。最新の状況を補足します(※メルマガに限定)。
●ベラルーシ大統領選挙
ベラルーシ大統領選挙は、中央選管の発表によればルカシェンコ大統領が80.1%を得票して6選を決めました。野党候補のチハノフスカヤの得票率は10.1%でした。
しかしチハノフスカヤは自身が60~70%の支持を得ていたと主張。多くの国民が選挙の不正を訴え、各地で大規模な抗議デモが発生しました。その後のEUの制裁の決定を含め、以下の記事で述べたとおりの展開です。
・「ベラルーシ大統領選挙」(8/3)
その後、チハノフスカヤはリトアニアに出国し、子どものことを考えて厳しい決断をしたとの動画メッセージを発信。また出国前に選挙結果を受け入れ、国民には抗議デモをやめるよう呼びかける動画も配信されました。
しかし、チハノフスカヤは出国前に中央選管に7時間にわたり拘束されたことが判明。出国前の動画は、おそらく当局に脅されて強制的に文章を読み上げられさせられたものとみられています。
しかし当局の弾圧にもかかわらず、抗議デモはやむことがなく、今のところ平和的な形で継続しています。警察の中にデモに理解を示す動きや、体制支持派であるはずの国営企業でも相次いでストライキが起きるなど、異例の事態に発展。
そして、ベラルーシ当局は身柄を拘束した抗議デモ参加者1000人以上を釈放。内相が負傷した人への謝罪を表明するなど、これまた強権体制のベラルーシではありえないような展開になりました。
その後、チハノフスカヤは新たな動画メッセージを配信し、自らが勝者であることを宣言。政府に暴力の停止と対話を要求し、自身の支持者には投票の再集計を求めるオンライン請願書に署名することを求めました。
また、有力候補ながら出馬を認められなかったツェプカロ元駐米大使も、ウクライナで反体制派組織の設立とチハノフスカヤ支持を表明しています。
このようにベラルーシではかつてなかった異例の動きが続出し、情勢は極めて不透明になっています。現時点での状況と展望について解説します(※メルマガに限定)。
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今週の動き
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8/16(日)
・中国の東シナ海における休漁期間の終了
・ドミニカ共和国のアビナデル新大統領の就任式
8/17(月)
・米民主党全国大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー(ただし大半はオンライン開催)、~20日)
8/18(火)
・米韓合同軍事演習(8月16日開始予定だったが参加者にコロナ感染があり2日間延期)(~28日)
・レバノンのラフィク・ハリーリ元首相暗殺事件について国際法廷「レバノン特別法廷」が判決
8/20(木)
・米民主党全国大会最終日(バイデン前副大統領が大統領候補の指名受諾演説)(デラウェア)
8/22(土)
・RCEP閣僚会合(ハノイ、~29日)
●米民主党大会
バイデンによるカマラ・ハリスの副大統領候補指名に続き、いよいよ民主党は全国党大会を開催します。
初日には、ミシェル・オバマ、バーニー・サンダース上院議員、ジョン・ケーシック前オハイオ州知事(共和党)が登壇するようです。政治の表舞台にはなかなか出てこないミシェル、急進左派の支持を得る上で鍵を握るサンダース、共和党でありながら中道の立場からトランプに反対するケーシック・・と刺激的な顔触れがそろいました。これは面白そうですね。
もちろん、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントンらも登場します。バーチャル党大会ですが、大きな盛り上がりが期待できそうです。バイデンは最終日に地元デラウェアで指名受諾演説を行います。
参加者の華々しい顔ぶれを見ると、例によってバイデン以外の人に光が当たるという人もいると思います。しかし、バイデンに求められているものは「トランプを倒せること」の1点です。そのためには、彼に注目を集めてその弱点を露呈してしまうよりも、ハリスをはじめとする他のタレントたちの強さを見せ、オールスターで勝負する方が合理的です。民主党・バイデン陣営としても、バイデンが陰に隠れようが気にしない、もうこれで良い(笑)・・と腹をくくっている感じがします。
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あとがき
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■ Trump’s Mind-Numbing Interview with Axios(8月5日付NowThis)
Axiosのジョナサン・スワン記者によるトランプ大統領インタビューが話題になりました。
上記リンクは一部の抜粋ですが、これだけでもその面白さ(?)が伝わると思います。たとえばこちらの場面です。
トランプは、米国におけるコロナの被害は、他国と比べて大したことがない・・ということをさかんに強調しますが、その論理は完全に破綻しています。その破綻をスワンは粘り強く詰めることで明らかにしています。
なお、その支離滅裂な姿については、コメディードラマの『Veep』(以下の記事参照)で副大統領を演じたジュリア・ルイス=ドレイファスも、「神様、これが私たちのようなバカなショーだったら良かったのに」とコメントしていました。
・「ドラマ『Veep』(米国の副大統領)」(17/3/10)
あらためて気づくのは、トランプの論点のすり替えの多さです。相手の質問には答えず、別の話を持ち出して煙に巻こうとします。スワンはそこを逃がさず、徹底的に問い詰めたところが良かったと思います。
また、トランプは書類をバサバサめくりながら、「ここに書いてある」と見せ、それを見たスワンは顔をしかめ、また追求する光景など、ビジュアル的にもイケていません。こういう絵を撮らせること自体が不可解というか、日本では考えられません。トランプ陣営はよくこのインタビューを受け入れたものだと思います。まあ、おそらく大統領自身がこうしたかったということで、誰も止められなかったのでしょうが・・。
ということで、失礼ながら醜態を晒したとしか思えなかったインタビューでしたが、驚くべきことに、その後の記事によれば、トランプ本人は「良いインタビューだった」と満足していたそうです。自分自身の言葉と身振りで説明して、やり切ったという満足感でしょうか。このあたりもさすがというか、常人の感覚では計り知れませんね・・。
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コロナに民主党党大会のWEB開催。ミシェル・オバマの登場とは、盛り上がりそうですね。
バイデン当人の当選、ではなく「打倒トランプ」がその目的になる時、様々なキャラクターが舞台に上がり、もはや政策のぶつかり合いではなく、イベントの様相を呈している感じもします。
ワクワクしてしまって、目的を忘れそうですので、ぜひどっしりとしたJDさんの分析を心待ちしにしております(笑)