2017/03/10 00:00 | 映画・文学・芸術 | コメント(9)
ドラマ『Veep』(米国の副大統領)
北朝鮮をめぐって様々な憶測が流れています。ただ、こういうハードな話とかトランプばかりだと皆さんも疲れると思うので(笑)、少し趣向を変えて、海外ドラマの話です。
Huluで配信されている米国ドラマ『Veep/ヴィープ』。米国の副大統領に就任した女性の奮闘を描くコメディーですが、これがなかなか面白いです。
まず、米国の副大統領は、基本的に影が薄いポストの代名詞的存在です。
地位はもちろん高いですが、政権の政策は、トップの大統領、その直属のホワイトハウスの官僚、さらに関係官庁というラインで決定されるので、基本的に副大統領の出番はないのです。
一つだけ明確にされている重要な役割は大統領の代理。代表的なケースは大統領に不測の事態が起こったときに代行する役割です。最悪、大統領が死亡すれば昇格しますから、その意味では言うまでもなく超重要。
もっとも、そんな不測の事態はめったにありません。ただ起こったときに備えて、なるべく身軽にしておく必要があります。そのためにも、副大統領には、ある案件の担当とか恒常的な業務を任せることは好ましくありません。それもあって仕事がない、という状態になります。
現実には、大統領が忙しくて出られない行事に代理として出るとか、儀礼的な役割が多くなるわけです。
このため、大統領を目指す者が副大統領になることが良いのか悪いのかは、議論があります。
副大統領になればその政権では大統領の影に隠れることを覚悟しなければなりません。自分が大統領選に出るときはその政権の評価をまるまるかぶることになるので、良くも悪くも自らの評価はその政権の功績に依存することになります。
実際、副大統領だった人が大統領選で勝ったケースはそう多くはありません。最近の代表的な例はレーガン政権の副大統領ジョージ・H・W・ブッシュ。これはレーガン時代の人気をそのまま生かすことができた稀有な例です。
これに続くと思われたのがクリントン政権の副大統領アル・ゴア。結果的にはジョージ・W・ブッシュに敗北を喫しましたが、フロリダの集計まで争う接戦、得票率で上回ったことからすれば、大統領になってもおかしくない支持を十分に得たといえます。クリントン時代の好況、ゴアの優れた知性と実績によるものでしょう。
一方、まれに副大統領が例外的に大きな政治力を行使する例があります。
最近の代表的な例はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領ディック・チェイニー。彼は当時「影の大統領」と言われました。大統領をはるかに上回る実績、人脈、政治力をもっていた人物であり、相当に強い支配力をもっていたことは間違いないでしょう。
こういう人が副大統領になるのは、もう大統領を目指す段階ではなく、表舞台からは去っていく(しかし公職に就かずとも、背後で影響力を行使する)ようなシニアな立場にある人の場合が多いです。
ドラマの話に戻ると、主人公は、大統領を目指すほどの野心や政治的資産はなく、実績あるシニアでもないものの、たまたまいきがかり上副大統領になったというケースのようです。そういうわけで、誰からも頼られず、何かしようとすると空回り・・・という日常を面白おかしく描いています。
この日常の風景が、『ハウス・オブ・カーズ』や『ザ・ホワイトハウス(The West Wing)』のように、ホワイトハウスの実務の動きをリアルに感じさせるところがあって、単なるコメディーを超えた面白さがあります。
人気が高いのでシーズンが続いており、私はまだ見ていませんが、シーズン3では大統領の辞任に伴い大統領に昇格するようです。そのあとは大統領選で敗北するようですね。私も、脚本家であればそういう展開にすると思います(笑)。
さて、現職の副大統領のマイク・ペンスですが、彼がユニークなのは、政権の実質を担う期待と実績、さらに次期大統領を狙う野心を同居させていることですね。
これは、トランプ政権という、支持政党である共和党に十分な支持基盤がない政権だから起こったことです。日米首脳会談では、ペンス副大統領が日米経済対話のトップを務めることになりましたが、こんな重要かつ恒常的な業務を副大統領が担うことは通常あり得ません。トランプ政権だからこそ実現したウルトラCといってよいと思います。
例によってまたトランプの話になってしまいましたね(笑)。
何とか最後にドラマの話に戻すと、「グローバル人材」で述べたましたが、おそらく「グローバル人材」とは外国人と普通にコミュニケーションできる人のことを指すのでしょう。そうしたコミュニケーションをするためには、語学だけでなく、相手の国や世界的な文化・常識を知っていることが非常に重要です。
そうした知識を得る上で、海外のドラマは格好の素材となります。会話のネタになることはもちろん、それ以上に、彼らがどこに今関心をもっているのか、どこを面白いと思っているのか、そういう基盤を与えてくれます。ある意味、一般教養としての意味をもっています。
なお、私がこれまで見た中で一番思い出深い米国のドラマは、『サインフェルド』と『フレンズ』。
この二つは、米国では毎日、色々な時間帯でしつこいぐらいに再放送されているので、私は米国に住んでいる間、すべてのエピソードをおぼえるくらいに見ました。それぞれ米国の80年代と90年代を代表する国民的シットコムといわれており、米国における影響力は絶大です。米国人と話すとき、この二つのドラマの内容を知らないと会話にならないことがあるくらい、基本常識とされています。
ちなみに、『Veep』の主人公ジュリア・ルイス=ドレイファスは、『サインフェルド』の主役の一人エレーンを演じた人。このため、私にはエレーンにしか見えません・・・おそらく多くの米国人もそうした印象をもっているでしょう。
こうした感覚も、どうでもよいと思うかもしれませんが、現代の米国の姿を理解する上では意外と重要なものです。
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9 comments on “ドラマ『Veep』(米国の副大統領)”
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「ハウス・オブ・カーズ」
以外見ていない。
ハウス・オブ・カーズは五月にシリーズ5が放映されるとか。
これは楽しみ・・
トランプは新しい番組を作らないとフォロー出来ないでしょう。
しかも・・間だ生きている・・引退していない・・源悦・・
途轍もない面白い作品になるでしょう・・
喜劇も入れられる( ^ω^)・・・(笑
見たことはないのですが、視聴興味あり。
シーズン10まであるのですね。全87時間!(笑)。
Amazonで13,000円弱で買えるようです。
ご推薦とあれば、見てみようかな…。
potetoのスペリングを間違えたこと以外に
何も記憶にない副大統領でした・・・
ハードな話オンリーでも個人的には大歓迎ですw
ありがとうございます!
>米ケーブルテレビ局HBOは9日、2016年の米大統領選を題材にしたTVミニシリーズの製作を計画していると明らかにした。
せめてものメディアからの逆襲ですかね?
北朝鮮並みにトランプファミリー礼賛ドラマだったりして…(笑)
tapのスペルを間違えたことも含めて、色々と記憶に残る大統領になりそう‥‥
>今後は眺める立場で楽しませてもらいます。
従い今後、「空の財布」あるいはこれをもじった名前は私の投稿ではありません(笑)。
偽物注意と言う・・
偽物も多い・・
名前を変えれば・・という甘言に乗っかり・・
隙を見せたばかりに・・
名前を乗っ取られた・・
第三者からは・・
何方が元祖なのか本家なのか・・判らない・・
生き馬の目を抜く・・は生きている( ^ω^)・・・(笑
アハハ…(笑)。
究極のところ、私だけが分かってたら良いのかなと…苦笑。
貴方のように他人が文体を真似出来ない場合はすぐに見分けが付きますがね。