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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2020/02/03 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(2/2~8)


コービー・ブライアントがヘリコプター事故で突然の死去。米国に住んでいた頃、LAレイカーズはシャックとコービーのコンビの全盛期で、ステープルズ・センターで何度もプレーを見ました。衝撃でしたね・・。

以下の記事で触れましたが、コービー(Kobe)の名前の由来は「神戸」でした。お父さんが来日したとき神戸のステーキを食べて感動したからという。米国でも神戸牛(Kobe beef)はWagyuのブランドとして有名です。この意味で日本との縁もあった人でした。

「英語の歴史」(19/1/25)

レジェンドの訃報に米国中が揺れていました(なぜかイランのアフマディネジャド前大統領もお悔みのツイートをしていました)。R.I.P.(Requiescat in Pace、ご冥福を祈ります。)

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先週の動き
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1/25(土)
・トランプ政権が18年3月に発動した鉄鋼・アルミへの追加関税の対象拡大(くぎや電線、自動車やトラクターに使われる部品等を追加)を発表
・トランプ大統領が18年4月にヨバノビッチ前駐ウクライナ大使を解任するよう命じている動画を選挙資金法違反で起訴されたレフ・パルナス(トランプ大統領の顧問弁護士のジュリアーニ元NY市長の協力者)の弁護人がメディアに公開

1/26(日)
・ボルトン前大統領補佐官による著作(3月発売予定)にトランプ大統領がウクライナ向けの軍事支援再開の条件にバイデン前副大統領の不正疑惑に関する調査をあげたとの記載があるとNYタイムズが報道(トランプ大統領は反論)
・イラクのグリーンゾーンがロケット弾の攻撃を受ける
・WHOが新型コロナウイルスによる肺炎の危険度を「中程度」としてきたこれまでの日報の表記は誤りで正しくは「高い」だったと訂正
・イタリア地方選挙(エミリア・ロマーニャ州知事選で中道左派の与党「民主党」の現職が勝利するも右派の「同盟」の候補が善戦、カラブリア州知事選では右派の「フォルツァ・イタリア」の候補が勝利)
・ペルー議会選挙(中道右派が最多議席を獲得したが単独過半数の政党なし、ケイコ・フジモリが率いる最大野党「フエルサ・ポプラル」は後退)
・安倍首相が新型コロナウイルスによる肺炎の発生地である武漢市のすべての邦人の希望者を帰国させる方針を表明

1/27(月)
・米・イスラエル首脳会談(ワシントンDC)
・トランプ大統領がイスラエルの政党連合「青と白」のガンツ代表と会談(同)
・「イスラム国」がイスラエルへの攻撃を警告する声明を発表
・アフガン東部ガズニ州で米軍機「ボンバルディアE-11A」が墜落(タリバンが関与を主張、米軍は否定)
・中国の李克強首相が新型のコロナウイルスによる肺炎が発生した武漢市を訪問
・アウシュビッツ強制収容所解放75年式典(ポーランド南部)

1/28(火)
・トランプ大統領がイスラエルとパレスチナの中東和平案を発表
・米下院がチベット政策支援法案を可決
・米司法当局が中国政府の人材獲得計画に協力していたことを隠して政府の補助金を受け取ったとして虚偽陳述罪の容疑でハーバード大学の化学・化学生物学部の学部長であるチャールズ・リーバー教授を起訴
・FOMC(~29日)
・習近平国家主席がWHOのテドロス事務局長と会談(北京)
・英国が次世代通信規格「5G」の通信設備についてファーウェイの製品の利用の一部容認を発表
・イスラエルのネタニヤフ首相が検察から起訴された収賄罪等について国会に求めていた免責決議を撤回すると発表(検察はネタニヤフ首相を正式に起訴)
・ペルーの裁判所が不正献金疑惑により起訴された最大野党「フエルサ・ポプラル」のケイコ・フジモリ党首の公判開始までの拘束を命令

1/29(水)
・USMCA実施法が成立
・ポンペオ国務長官が英国、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンを訪問(~2/4)(同行記者団からNPR記者を除外)
・米ホワイトハウスがボルトン前大統領補佐官の著作の出版の差止めを同前補佐官に通知したとの報道
・FOMC最終日(FF金利の誘導目標を1.5~1.75%に据え置き)
・欧州議会がBREXIT協定案を可決
・武漢から日本人を乗せたチャーター機の第1便が到着

1/30(木)
・WHOが新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大について緊急事態を宣言
・米国務省が新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大により中国への渡航の警戒レベルを「渡航禁止」に引き上げ
・米国が大量破壊兵器拡散阻止を目指す大統領令に基づきイラン原子力庁とサレヒ同庁長官を制裁対象に指定
・EU27か国がBREXIT協定案を承認
・ロシア・イスラエル首脳会談(モスクワ)

1/31(金)
・米国がイラン産原油の禁輸措置の違反により中国遠洋運輸(COSCO)の傘下企業に科していた制裁を解除
・米上院の弾劾裁判において新たな証人の招致を求める動議が否決
・英国のEU離脱(BREXIT)

2/1(土)
・トランプ大統領がナイジェリア、ミャンマー、エリトリア、キルギス、スーダン、タンザニアの6か国からの移民受入れを停止する大統領令に署名
・トランプ大統領が対人地雷の使用規制の緩和を発表
・アラブ連盟の外相級会合(米国の中東和平案を拒否する決議を採択)(カイロ)
・イラクのサレハ大統領が新首相にムハンマド・アラウィ元通信相を指名

●トランプ弾劾裁判

米上院の弾劾裁判において新たな証人の招致を求める動議が賛成49、反対51の僅差で否決されました。共和党議員53人のうち2人が賛成に回り、民主党議員47人(無所属2人を含む)は全員賛成しました。

これによりトランプ大統領の無罪評決は確実になりました。報道によれば評決は一般教書演説の翌日となる2月5日に行われる見通しです。

先週に入ってから、NYタイムズが、ボルトン大統領前補佐官の著作(3月発売予定)にトランプ大統領がウクライナ向けの軍事支援再開の条件にバイデン前副大統領の不正疑惑に関する調査をあげたとの記載があると報じました。これによりボルトンを証人として招致すべきとする議論がヒートアップしました。

共和党議員の中からも賛同する声が出て、一気に見通しが不透明になりました。しかし、最終的には本メルマガの当初からの予想のとおり、早期決着に落ち着きました。今回の経緯と今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。

●中東和平案(世紀のディール)の発表

1月28日、トランプ大統領が「世紀のディール」(Deal of the Century)と称する中東和平案を発表しました。

トランプ政権発足以来、クシュナー大統領上級顧問が主導し、イスラエルのネタニヤフ首相と組んで進めてきた構想です。昨年6月に米国はパレスチナ支援策を発表し、いよいよ近いうちにその全貌が明らかになる・・とみられていましたが、ようやく発表に至りました。

「パレスチナの経済支援に関する国際会合」(19/7/1)
 
和平案の発表の前日、ネタニヤフと政党連合「青と白」のガンツ代表はワシントンDCを訪問し、各々トランプと会談。ネタニヤフとガンツはともに和平案を歓迎しました。両氏は和平案の発表の場にも出席しましたが、パレスチナ自治政府の代表者は出席しませんでした。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は「(世紀のディールではなく)世紀の侮辱だ」と述べ、受け入れを拒否する姿勢を鮮明にしています。中東の主要国ではトルコとイランが厳しく批判。非国家主体では、ヒズボラとハマスが非難しています(「イスラム国」も発表前に牽制)。

一方、アラブ諸国では、サウジをはじめとする湾岸(GCC)諸国とエジプトは直接的な評価を避け、米国の和平仲介の努力を評価すると発表。しかしヨルダンは明確に反対。アラブ連盟の外相級会合では和平案を拒否する決議が採択されました。

世紀のディールのポイントは何か。トランプ政権は何を狙っているのか。米国、イスラエル、中東地域にどのような影響をもたらすのか。これらについて今週解説します。

●トランプのUSMCA署名

トランプ大統領が「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の実施法案に署名し、同法が成立しました。トランプ政権にとって大きな外交成果となります。

トランプは選挙公約の実現として大統領選に向けて大いにアピールするでしょう。その姿勢は民主党議員を署名式から排除したことからもうかがえます。

メキシコはすでに協定を批准しており、あとはカナダの批准を残すのみです。カナダの議会は1月27日に再開し、トルドー首相は29日に法案を議会に提出しました。カナダの批准から90日後に協定は発効するので、5月以降になる見通しです。

●チベット政策支援法案の下院可決

米下院がチベット政策支援法案を可決(賛成392、反対22、棄権17)。反対したのは共和党議員と無所属(元共和党)のジャスティン・アマーシュでした。

香港、ウイグルのあとにチベット法案が出てくることは以下の記事で指摘していました。まずはこの法案の上院審議ですが、この後も議会のプレッシャーは続くと予想されます。

「米中の「第1段階」の通商合意の署名」(1/21)
 
●新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大

武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎は拡大を続け、死者は300人を超えました。フィリピンでは中国国外では初めてとなる死者が発表されました。

中国国内での感染者は1万4380人に達し、中国本土以外では26か国・地域で170人以上の感染が確認されたとのこと。WHOは緊急事態を宣言しました。

以下の記事でとりあえずのポイントを述べましたが、その後の状況については国内の報道で皆さんも十分に情報を得ていることと思います。マーケットへの影響は経済ZAP!!のSaltさんが分析してくれるでしょう。ここではあまり報じられていない情報のみ補足します(※メルマガに限定)。

「新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大」(1/27)

●BREXITの実施

BREXITがようやく実現しました。今後の展望については以下の記事と総集編第6弾で解説したとおりです。

「2020年の展望(2)(BREXITの苦難)」(1/22)
「総集編第6号:欧州・ロシア・中南米の転換期とポピュリズム」(1/28)

現地は大変な盛り上がりのようです。これからが大変ですが、やると決めた以上やるしかないわけで、「歴史的なイベント」をむしろ楽しんだ方が良いでしょう。

前日の欧州議会でのナイジェル・ファラージの英国流ユーモア(?)に満ちた演説「オールド・ラング・サイン」での見送りも話題になりました。

●アウシュビッツ強制収容所解放75年式典

以下の記事でお伝えしたとおり、先日、エルサレムで「世界ホロコーストフォーラム」が開催されましたが、先週にはポーランドでアウシュビッツ強制収容所解放75周年の追悼式典が開催されました。

「世界ホロコーストフォーラム」(1/27)
 
エルサレムのフォーラムで演説したプーチン大統領はアウシュビッツでの式典には招待されず不参加でした。ポーランドとロシアは歴史認識をめぐって対立しているためです。

一方、ポーランドのドゥダ大統領はプーチンと一緒に演説することを嫌ってエルサレムのフォーラムへの出席を拒否しました。アウシュビッツがあったポーランドを除く形でフォーラムは開催されていたわけです。

ポーランドの「法と正義」政権は18年にホロコーストに加担していたと批判することを違法にする法律を成立させており、米国やイスラエルが非難しています。それもあってか、アウシュビッツ式典の参加者はエルサレムのフォーラムと比べるとハイレベルが少ない印象でした。

ポーランドは右派政権の修正主義、プーチンは戦勝75周年のためにナショナリズムを盛り上げたい思惑があります。このため歴史観の対立が先鋭化し、それが2つのホロコーストイベントへの各国の対応に影響したわけです。歴史認識をめぐる論争は欧州でも深い爪痕を残しており、その深さはむしろ大きくなっています。

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今週の動き
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2/3(月)
・米大統領選挙民主党予備選開始(アイオワ党員集会)

2/4(火)
・一般教書演説

2/5(水)
・米上院でトランプ大統領の弾劾裁判の評決

2/7(金)
・米民主党の大統領候補者の第8回テレビ討論会(ニューハンプシャー州マンチェスター)

2/8(土)
・朝鮮人民軍創建日(建軍節)
・アイルランド総選挙

●米大統領予備選挙(アイオワ)

いよいよ大統領選の前哨戦ともいえる民主党の予備選が始まります。その初戦となるアイオワ州党員集会の意義と展望については先週の記事で解説しましたが、少し補足します(※メルマガに限定)。

「民主党予備選(アイオワ党員集会)」(1/31)

●米民主党の大統領候補者の第8回TV討論会

今回の討論会の参加条件は前回(1月14日に開催)とほぼ同じです(アイオワ党員集会で代議員を獲得した者は自動的に参加できる点が大きな違い)。

「米民主党の大統領候補者の第7回TV討論会」(1/13)

この基準を満たすのは以下の7人です。数字は支持率(Real Clear Politicsが算定した全米平均支持率)です。

・バイデン前副大統領 27.2%
・サンダース上院議員 23.5%
・ウォーレン上院議員 15%
・ブティジェッジ前サウスベンド市長 6.7%
・ヤン(実業家) 4.7%
・クロブシャー上院議員 4.3%
・ステイヤー(富豪・アクティビスト) 1.8%
(参考)ブルームバーグ前NY市長 8%

今回の討論会は、月曜のアイオワ党員集会での結果を踏まえ、次の予備選である来週火曜のニューハンプシャー予備選を見据えたものになります。

なお、先週、民主党は2月19日にネバダで開催される第9回討論会から参加条件を変更し、政治献金の条件を外すと発表しました。これによってブルームバーグが参加することになります。これは予想外の展開でした。

その背景にはブルームバーグの支持率の急上昇があります。1月31日発表のWSJ/NBCの世論調査では、1位サンダース(27%)、2位バイデン(26%)、3位ウォーレン(15%)、4位ブルームバーグ(9%)、5位ブティジェッジ(7%)、6位クロブシャー(5%)でした。

この点についてコメントします(※メルマガに限定)。

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あとがき
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ユーチューバー年収ランキング、8歳少年が28億円で首位 フォーブス誌(19年12月20日付CNN)

フォーブスによれば世界で最も稼いでいるユーチューバーは8歳の少年とのこと。私自身ツイッターを始めたこともあり、SNSやYouTubeに対する関心が以前よりも高くなっていますが、たしかにツイッターを見ていても、中学生でお金を稼いでいるという人を散見しますね。

たしかに動画で注目を集めるのは一つの「芸」ですから、年齢など関係ないというか、このおもちゃやゲームを紹介する少年のように、むしろ「子ども」であることが有利に働くケースもあるのかもしれません。

ただ、個人的にツイッターを見ていて思うのは、前述の中学生も含め、「人気者」の多くが「どうやったらフォロワー数が上がるか」というノウハウを語っている人が多いことです。それはそれでニーズがあるのは分かりますが、それ自体はノウハウに過ぎませんよね。

極端な話、ツイッターの人たちが全てフォロワーを上げる「テクニック」を語っていて、(そのテクニックとは要するに人気のある人をフォローしてコメントやリツイートをして絡むことなので)相互にフォローやリツイートし合うだけの空虚な空間になっているのでは・・とも思ってしまいます。まあ、そうした絡み合いには関心がなく、独自のコンテンツを発信している人もいるので(私もそうですが)、そんな状況にはならないはずですが、ちょっと寒いなあ・・という気持ちはしました。

こちらの記事の「あとがき」で紹介した世界最強のユーチューバー「ピューディパイ(PewDiePie)」は年収1300万ドルで7位タイだったとのこと。「とても疲れた」という理由で休みを取ると宣言したそうです。

ピューディパイは昨年結婚し、日本で家を買って引っ越すと発表したことも話題になっていました。日本のYouTuberともコラボするのかと思ったのですが、休業するのであればそれはなさそうですね。まあ、これだけ稼げば、あとは日本でゆっくりすればいいのでは・・と思いますが。

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2 comments on “今週の動き(2/2~8)
  1. KB より
    いよいよ

    トランプ弾劾について、最終章に来ましたが、昨年から一貫したJDさんの見通しに沿った結末でした。米国政治の細かな仕組みから国内のムーブメントまで知り尽くしているとはこういうことなのか・・・、と思わずにはいられません。
    今後の目玉は、大統領選に集中というわけでしょうか。今年の一般教書演説はさらに力がこもりそう。
    仮に番狂わせがあっても、メルマガがあれば安心です。

  2. より
    弾劾決着

    あんなに騒いでいた人たちが静かです。本当に面白い。JDさんに聞いていたので、騒いでいた人たちは、どんな反応するか楽しみしてたのに、シーンなんです。まぁあの人が言ったら絶対外すひとたくさん見つけたのでそれはそれでいい情報元ができました。どんどん発言してほしい。
    バイデンさん証言台に出てきて欲しかったなぁ。

    JDさんありがとうございます。では、また

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