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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/03/18 00:00  | 今週の動き |  コメント(1)

今週の動き(3/17~23)


昨日は東京ドームでシアトル・マリナーズと巨人のプレシーズンマッチがありましたね。メジャー選手のイチローを日本で見るのは感慨深いものがあります。ぐっちーさんの思い入れが深い丸選手もファインプレーを見せたようですね。といっても私はテレビで見ただけですが(笑)。

それにしても、東京ドームでの国際試合というと、ぐっちーさんと一緒にWBCのゲームを見たことを思い出します。いつだったかと確認したらもう10年前。ついこの間のことと思っていたのに、月日の流れは早いものです。

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先週の動き
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3/10(日)
・インドの選挙管理委員会が総選挙(下院選)を4月11日~5月19日に実施し5月23日に開票すると発表
・北朝鮮の最高人民会議代議員選挙
・パレスチナ自治政府のアッバス議長が新首相にファタハの幹部ムハンマド・シュタイエを指名
・ギニアビサウ議会選挙

3/11(月)
・トランプ政権が20年度予算教書を議会に提出
・米財務省がベネズエラ国営石油会社PDVSAへの支援を理由にロシアの民間銀行エブロフィナンス・モスナルバンクに経済制裁を発動したと発表
・ポンペオ国務長官が在ベネズエラの米国大使館から全ての外交官を週内に引き揚げると発表
・ペローシ下院議長がトランプ大統領の弾劾を支持しないとの見解をワシントン・ポストのインタビューで表明
・米民主党全国委員会が20年大統領選挙の候補者を選ぶ党大会を20年7月13~16日にウィスコンシン州ミルウォーキーで開催すると発表
・メイ首相とユンケル欧州委員長が会談(アイルランド国境問題の見直しで合意)(ストラスブール)
・ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル)
・イランのロウハニ大統領がイラクを初訪問
・マレーシア高裁が金正男の殺人事件の容疑者として起訴されていたインドネシア人のシティ・アイシャを釈放
・アルジェリアのブーテフリカ大統領が4月に予定していた大統領選挙への出馬断念と選挙の延期を発表

3/12(火)
・米国がドイツに対しファーウェイの「5G」の通信網構築への参加を容認すれば機密情報等の共有を制限すると3月8日に警告していたことが判明
・英下院がBREXIT協定案を否決
・欧州委員会がEU・中国関係を見直す「10項目の行動計画」を策定(3月21~22日のEU首脳会議での採択を目指す方針)
・EU財務相理事会(ブリュッセル)
・国連安保理の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが年次報告書を発表

3/13(水)
・トランプ大統領が2度の墜落事故を起こしたボーイングの新型機737MAXの運航停止を発表
・米上院がイエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援を停止するよう求める決議案を可決
・ワシントンDC連邦地裁がポール・マナフォート元トランプ選対本部長に司法妨害罪等で禁錮3年7月の実刑判決
・米国とインドが原発施設の建設を含む安全保障と民間分野における原子力協力強化で合意したと発表
・英下院がEUからの合意なき離脱に反対する動議を可決
・ロシア軍がシリア北西部イドリブ県の反体制派武装勢力の武器保管庫を空爆

3/14(木)
・トランプ大統領がトヨタの対米投資拡大を賞賛するツイート
・米上院がトランプ大統領の国家非常事態宣言を無効にする決議案を可決
・米下院がモラー特別検察官からバー司法長官に提出されるロシアゲートの捜査報告書の全面公開を求める決議案を可決
・ムニューシン財務長官が米中首脳会談は3月中には開かれないとの見方を表明
・民主党のベト・オルーク前下院議員が20年大統領選挙への出馬を表明
・シャナハン国防長官代行とダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会の公聴会で証言
・英下院がBREXITの延期をEUに求める動議を可決
・ベネズエラのマドゥロ大統領が電力の完全復旧を宣言(実際には不安定な状態が継続)
・マレーシア高裁が金正男の殺人事件の容疑者として起訴されていたベトナム人のドアン・ティ・フォンの起訴取り下げ請求を却下

3/15(金)
・トランプ大統領が国家非常事態宣言を無効にする決議に対し拒否権を発動
・米財務省がロシアによるウクライナ艦船の拿捕への関与を理由にロシア治安当局者を含む6個人・8団体に経済制裁を科したと発表(EUとカナダも追加制裁を発動)
・ポンペオ国務長官が国際刑事裁判所(ICC)による米兵や米政府当局者に対する捜査や起訴を防ぐためICCの判事や検察官の入国制限措置を検討すると発表
・第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議の閉幕(外商投資法を可決)(北京)
・北朝鮮の崔善姫外務次官が北朝鮮は2月の米朝首脳会談での米側の非核化要求は受け入れられないとの立場を表明し交渉中断を警告したとロシア国営タス通信が報道
・NZのクライストチャーチのモスクで銃乱射事件

3/16(土)
・フランス各地でマクロン政権に対する大規模な抗議デモ(18週末連続)
・スロバキア大統領選挙

●BREXITの延期要請の決定

先週は、BREXITをめぐり3日間にわたり重要な採決が行われました。すなわち、3月12日に2度目のBREXIT協定案の否決(反対391・賛成242)、13日に合意なき離脱に反対する動議の可決(イヴェット・クーパー議員の提案は賛成312・反対308、政府案は賛成321・反対278)、14日にBREXIT延期をEUに要請する動議の可決(賛成413・反対202)がありました。なお、2度目の国民投票を行う動議(独立グループのサラ・ウォラストン議員の提案)は否決されました(反対334・賛成85)。

大筋は以下の記事で述べたとおりの展開でしたが、採決に際して議会は直前まで混乱し、メイ政権の分裂と議会の混迷が一層鮮明になりました。

「BREXIT協定案の議会採決」(3/4)
「BREXIT協定案の議会採決」(3/11)

BREXIT延期をEUに要請する動議は、まず3月20日に3度目となるBREXIT協定案の議会採決を行い(協定案の採決は「meaningful vote」と名付けられているので「MV3」と呼ばれる)、可決された場合に3月29日の離脱期限を6月30日までの3か月間延期するというものです。その翌日である21日にEU首脳会議が開催されるので、そこで英国がEUに離脱延期を申請し、EUが承諾することをもって離脱延期が正式に決定します。

この時点で、様々な不確定要素があることに気づくと思います。3月20日のMV3が否決された場合はどうなるのか。離脱延期を申請してもEUは承諾するのか。延期された後はどうなるのか。以前から述べているとおり、BREXITをめぐる動きはカオスを極めており、何が起こるのかは誰にも分かりません。それでも、重要なポイントを見極め、大局的な見取り図を描くことはできます。明日、この点を解説します。

●国家非常事態宣言を無効にする決議案の可決

米上院がトランプ大統領の国家非常事態宣言を無効にする決議案を59対41の賛成多数で可決しました。下院は2月にすでに可決しているので、上院の可決により決議は成立しますが、直後にトランプは拒否権を行使したため、宣言の効力は失われません。拒否権を覆すには3分の2の特別多数が必要ですが、それは無理なので、宣言はそのまま有効になります。ここまでの展開は以下の記事で述べたとおりです。

「トランプの国家非常事態宣言」(2/20)

上記記事で述べたとおり、共和党が多数を占める上院が可決するかが見どころでしたが、結局、12人の共和党議員が造反したことで可決に至りました。その議員は、ミット・ロムニー(ユタ)、マイク・リー(同)、マルコ・ルビオ(フロリダ)、ロイ・ブラント(ミズーリ)、ラマー・アレクサンダー(テネシー)、パトリック・トゥーミー(ペンシルヴェニア)、ロブ・ポートマン(オハイオ)、ジェリー・モラン(カンザス)、スーザン・コリンズ(メイン)、リサ・マコウスキ(アラスカ)、ランド・ポール(ケンタッキー)、ロジャー・ウィッカー(ミシシッピー)です。

また、上院はイエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援を停止するよう求める決議案を可決しています。同内容の決議案が昨年12月に可決されていたのですが、昨年末まで下院の多数を共和党が占めていたので、採決されなかった経緯があります。

この決議案には7人の共和党議員が支持しました。その議員は、マイク・リー(ユタ)、スーザン・コリンズ(メイン)、スティーブ・デインズ(モンタナ)、ジェフ・フレーク(アリゾナ)、ジェリー・モラン(カンザス)、ランド・ポール(ケンタッキー)、トッド・ヤング(インディアナ)です。

このように共和党の上院議員が独自の判断でトランプの行動を抑制する動きが目立っています。しかし、こうした議員は一部にとどまる上、その多くが20年上院選には不出馬を予定ないし改選時期にあたらないため、トランプの攻撃を恐れる必要がないという事情もあります。現時点で大統領選や弾劾等に影響を与える見通しはありません。ただし、これまでトランプが思うように動かしてきた外交・通商政策にある程度の制約になる可能性はあります。

●シャナハン国防長官代行とダンフォード統合参謀本部議長の議会証言

シャナハン国防長官代行とダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会の公聴会で証言。「グーグルの中国での活動が中国軍に恩恵になっている」「グーグルは米軍への支援が不足している」といった発言や、米軍の駐留経費の総額に5割を上乗せした金額を各国に要求する案(通称「コスト・プラス50」)が検討されているとの報道について、そうした事実はない、と否定したことが注目されました。ポイントを解説します(※メルマガに限定)。

●ベト・オルークの米大統領選挙への出馬表明

ベト・オルーク前下院議員(テキサス選出)が大統領選への出馬を表明しました。以下の記事などでお伝えしてきたとおり、オルークはテキサス州のエルパソ出身、IT起業家から政治家に転じ、若く(46歳)ハンサムで雄弁、スケボーやパンク・ロックをこなし、スペイン語も流暢。

全国レベルで驚異的な人気を誇り、昨年の中間選挙の上院選では選挙資金調達額の記録を更新し、共和党現職のテッド・クルーズをあと一歩のところまで追い詰めました。

「中間選挙のポイント(3):上院の展望」(18/10/31)

オルークは、人々を活気づかせるムーブメントを起こす力、テキサスという重要州の地盤、ヒスパニックへのアピールという点で大きな強みをもっています。国政のリーダー的存在である上院議員を経験しておらず、また州でも連邦でも政権運営に関わったことがないことが弱みですが、トランプが勝つ時代ですから決定的な要素とはいえません。

政策については、移民の受け入れや国民皆保険について急進左派的な発言がありますが、大統領選に向けて何を打ち出すかはほとんど白紙の状態です。このためどう化けるかは未知数で、08年の大統領選でオバマが一気に駆け上がったイメージに重ね合わせる見方も多いです。

これで民主党の立候補者は16人。あとは現時点の最有力候補であるジョー・バイデン前副大統領を待つのみです。バイデンの判断が分かったところで、大まかな見取り図を描くことができます。そのときにあらためて解説します。

●ロウハニ大統領のイラク初訪問

イランのロウハニ大統領が初めてのイラク訪問。イラクは、フセイン政権崩壊後、多数派のシーア派が実権を握るようになり、「イスラム国」との戦いを経て、イランの影響力が強まっていることは以下の記事で述べてきました。

「イラク議会選挙(1)/(2)」(18/6/1・6)
 
イラクでは昨年5月に選挙があり、ムクタダ・サドル派が第1位、シーア派民兵を母体とする親イラン派が第2位、アバディ前首相派が第3位、マリキ元首相派が第4位になりましたが、いずれも過半数をとれず、連立交渉が長く続きました。約半年を経た昨年10月、ようやくアブドルマハディ元石油相がサドル派と親イラン派の政党連合から支持を受けて首相に就任しました。ここまでの経緯は以下の記事で説明したとおりです。

「クルド議会選挙」(18/10/8)
「今週の動き(10/29~11/4)」(18/10/29)

アブドルマハディは元々エコノミストで、副大統領や財務相を経験した実務家肌の人物です。政治力のあるリーダータイプではありませんが、サドル、シーア派、軍、宗教界、クルド、国際社会から幅広く支持を得ており、堅実な手腕を発揮することが期待されています。

ロウハニは、訪問中、アブドルマハディ首相とサレハ大統領はもちろん、国会議長、アバディ前首相、マリキ元首相、シーア派最高権威のシスタニ師らと会談しました。今回の訪問の意義について解説します(※メルマガに限定)。

●ニュージーランドでの銃乱射事件

NZのクライストチャーチにあるモスク2か所で銃乱射事件が発生し、49人が死亡という同国史上最悪のテロ事件が発生しました。犯人とみられる人物が銃撃を始める様子をフェイスブック上で実況中継し、その動画が拡散したことも大きなインパクトを与えました。

この人物は豪州国籍の白人で、事件前にネットに非白人への憎悪を述べた「マニフェスト」を公開しており、ネオナチ思想と欧州への移民流入が動機になったとみられています。NZのような治安が良好な国で、白人人種差別主義者の反イスラム・テロとみられる事件が起こったことの意味について解説します(※メルマガに限定)。

●インド総選挙の日程発表

インド選挙管理委員会が総選挙(下院選)の日程を発表しました。4月11日から5月19日の期間を7つのフェーズに分けて投票日を設定し、5月23日に開票するとのこと。総選挙の展望については以下の記事で論じましたが、説明を補足します(※メルマガに限定)。

「インドとパキスタンの空爆と戦闘」(3/4)

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今週の動き
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3/18(月)
・EU外相理事会(ブリュッセル)

3/19(火)
・米・ブラジル首脳会談(ワシントンDC)
・ポンペオ国務長官がクウェート、イスラエル、レバノンを訪問(~23日)
・FOMC(〜20日)
・EU総務理事会(ブリュッセル)

3/20(水)
・英下院がBREXIT協定案を採決

3/21(木)
・EU首脳会議(ブリュッセル、〜22日)

3/22(金)
・習近平国家主席がイタリアを訪問(〜24日)

●BREXIT協定案の議会採決とEU首脳会議

3月20日に3度目のBREXIT協定案の議会採決(MV3)が行われます。その意義と展望については、上記「先週の動き」の「BREXITの延期要請の決定」で述べたとおり、明日述べます。

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あとがき
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諸事情により先週は2回の記事配信になりました。読者の方から「心配になった」とのご連絡をいただきましたが、元気にしていますので、ご安心下さい(笑)。ただ、配信頻度にかかわらず、おさえるべきポイントは漏れなく押さえ、一つの記事の密度もさらに濃いものになるよう工夫しています。

先週にも少し述べましたが、(特に米国・トランプ政権については)これからさらに踏み込んだインサイトをお伝えすることを検討しています。そのために数よりも質を優先して、凝縮した記事を配信することもあると思いますので、ご期待下さい。

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One comment on “今週の動き(3/17~23)
  1. KB より
    踊らせる人、踊っちゃう人

    コスト・プラス50を例に挙げた、「情報の読み解き方」のアドバイス重みがありました。「情報の出し手が誰であるか」は本当に重要と思います。特に国際情勢となると、利害関係者も複雑で素人にはお手上げです。 (自分で見取り図が書けるようになるのはいつのことやら・・・)
    しかし、こうした冷静かつ正しい情報を発信し続けていただけるのはとてもありがたいことですし、何より建設的な議論をするための土台が養えるので、貴重です。
    JDさんは向こう側(?)の世界にもいらした方、こういった情報へのアプローチの仕方はとても興味深いものがあります。
    複雑化する情報のアップデートとともに、さらに掘り下げた分析や考察まで、さらに進化を遂げるメルマガ、楽しみにしております!お元気そうで安心しました(笑)

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