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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/03/11 00:00  | 今週の動き |  コメント(3)

今週の動き(3/10~16)


相変わらず寒暖の差がありますが、天気が良いときはすっかり春の趣になってきました。桜もそろそろですね。花粉は気になりますが・・。

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先週の動き
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3/3(日)
・米国防総省が毎年春に実施する大規模な米韓合同軍事演習(野外機動訓練「フォール・イーグル」と図上演習「キー・リゾルブ」)を中止し新たな米韓合同の野外機動訓練や図上演習を行うと発表
・米国務省が在エルサレム総領事館(パレスチナ代表部として機能)を3月4日に大使館に統合すると発表
・中国人民政治協商会議(政協)の第13期全国委員会第2回会議の開幕(北京、~13日)
・エストニア総選挙(最大野党の改革党が第1党、与党の中央党が第2党、EU懐疑派の保守人民党が躍進)

3/4(月)
・米下院司法委員会がトランプ大統領による司法妨害や権力乱用の疑いに関する捜査を始めると発表、81個人・団体に協力を求める書簡を送付
・米商務省が通商拡大法232条に基づきスポンジチタンの輸入制限に関する調査を開始
・キューバ政府が革命後に接収した財産に関し米国が亡命キューバ人を含む米国人による損害賠償請求訴訟の提起を認めると発表
・ヒラリー・クリントン元国務長官が20年大統領選挙への不出馬を表明
・民主党のジョン・ヒッケンルーパー元コロラド州知事が20年大統領選挙への出馬を表明
・ロシアのプーチン大統領が中距離核戦力廃棄条約(INF条約)の義務履行を停止する大統領令に署名
・ベネズエラのグアイド国会議長(出国禁止命令を無視して2月22日から外遊)が帰国
・韓国が新駐日大使(南官杓前国家安保室第2次長)、駐中国大使、駐ロシア大使を内定
・IAEA理事会(ウィーン、〜8日)

3/5(火)
・第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議の開幕(北京、~15日)
・マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が20年大統領選挙への不出馬を表明
・バーニー・サンダース上院議員が民主党員としての大統領選出馬を民主党全国委員会に誓約
・英国のバークレイEU離脱担当相とコックス法務長官がEUのバルニエ首席交渉官と会談(ブリュッセル)
・フランスのマクロン大統領がEU加盟国の主要紙に「親愛なる欧州」と題する寄稿
・日産自動車のゴーン元会長が保釈(特別背任等の容疑・起訴により108日間の身体拘束)

3/6(水)
・トランプ大統領が北朝鮮の東倉里のミサイル発射場の復旧に関する北朝鮮分析サイト「38ノース」の情報について「本当ならとても残念、金正恩朝鮮労働党委員長に失望するだろう」と発言
・トランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエンが下院情報特別委員会で非公開の証言
・ライトハイザーUSTR代表とマルムストローム欧州委員が会談(ワシントンDC)
・ペンス副大統領がマドゥロ政権の高官や家族など77人のビザの取消を発表
・米下院が反ユダヤ主義、反イスラム主義を含む敵対的・不寛容な言動を非難する決議を可決
・ベネズエラのマドゥロ政権が在ベネズエラのドイツ大使に国外退去を要請
・カナダの裁判所がファーウェイの孟晩舟副会長の米国への身柄引渡しに関する審理(バンクーバー)

3/7(木)
・バージニア州連邦地裁がポール・マナフォート元トランプ選対本部長に詐欺罪等で禁錮3年11月の実刑判決
・トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエンが「トランプ・オーガニゼーション」に対し弁護士費用等の未払いを主張し支払いを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に提起
・シェロッド・ブラウン上院議員が20年大統領選挙への不出馬を表明
・韓国国防省が例年8月に実施している米韓合同軍事演習(図上演習)「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」を打ち切る方針を表明
・北朝鮮分析サイト「38ノース」が北朝鮮の東倉里のミサイル発射場の復旧が急速に進み正常な稼働状態に戻ったとみられると発表
・ファーウェイが米政府機関による中国企業の製品の調達を禁じる19年度国防授権法は憲法違反としてテキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表
・ベネズエラ全土で停電
・タイの憲法裁判所が次期首相候補に王女擁立を試みたタクシン元首相派のタイ国家維持党に政党法違反の罪で解散を命令
・ECB理事会(フランクフルト)

3/8(金)
・トランプ大統領が民主党は下院でイスラム教徒の女性下院議員イルハン・オマルによる反ユダヤ的とみられる発言を非難する代わりに民族差別的な言動を非難する決議を可決させたとして同党を「反イスラエル」「反ユダヤ」と批判
・クドロー大統領補佐官(NEC委員長)が米中首脳会談は3月下旬から4月上旬に開催されるかもしれないと発言
・米国のヘザー・ウィルソン空軍長官が5月末に辞任すると発表
・ホワイトハウスがビル・シャイン大統領次官補佐官(広報担当)(ホワイトハウス広報部長)の辞任を発表
・韓国が新統一部長官に金錬鐵・韓国統一研究院長を任命すると発表(7閣僚を交代)

3/9(土)
・ベネズエラでマドゥロ政権と野党勢力の支持者がそれぞれ大規模な集会を開催
・フランス各地でマクロン政権に対する大規模な抗議デモ(17週末連続)

●全人代の開幕

第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が開幕しました。李克強首相が政府活動報告を行い、19年の経済成長率の目標を6~6.5%と18年の6.5%前後から2年ぶりに引き下げ、雇用対策、減税、大規模な景気対策などを打ち出しました。

昨年までは3年連続で言及があった「中国製造2025」が取り上げられなかったことが注目されています。ただ、中国製造2025が重点産業としていた次世代の通信技術、生体医療、EV等の新産業の育成は掲げられています。

また、全人代で外国企業の技術の中国への強制移転の禁止等を定めた「外商投資法」が制定される見通しです。これらの動きと米中通商協議の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。

●米韓合同軍事演習の縮小

3大米韓合同軍事演習といわれる「フォール・イーグル」「キー・リゾルブ」「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」の中止と規模を縮小した合同軍事演習への切り替えが発表されました。昨年も、これらの演習は米朝首脳会談を受けて中止ないし縮小されていたことは、その意味も含め、以下の記事でお伝えしていました。

「中朝首脳会談と米韓合同軍事演習の中止」(18/6/25)

この件を含め、米朝首脳会談後の米朝の動きについてコメントします(※メルマガに限定)。

●ヒラリー・クリントン、マイケル・ブルームバーグ、シェロッド・ブラウンの不出馬表明

ヒラリー・クリントンの不出馬は、以下の記事で予想していたとおりでした。他の候補と違って公式に再出馬の検討を述べたことはなかったので、わざわざ表明する必要もあったのかな、と思いますが、党内の混乱を避ける意味で妥当な判断だったといえるでしょう。

「ヒラリー・クリントン出馬報道」(18/11/28)

マイケル・ブルームバーグも、77歳という高齢、大富豪、元共和党員という属性から、現在の民主党の予備選では勝ち目がないとみて撤退したとみられます。こちらも合理的な判断であり、驚きはありません。

この中で最も特筆すべきはシェロッド・ブラウンの不出馬でした。民主党にとっては、中西部、それも白人の労働者層にアピールできる貴重な候補を失うことを意味します。以下の記事で述べたとおり、現在立候補している候補の中でこのタイプとして期待できるのはエイミー・クロブシャーのみ。あとはジョー・バイデンがどのような決断をするかです。

「民主党の左傾化と路線対立のリスク」(2/22)

●民主党主導の敵対的な言動を非難する下院決議と反ユダヤ主義

米下院が反ユダヤ主義、反イスラム主義を含む敵対的・不寛容な言動を非難する決議案を賛成407、反対27(すべて共和党員)の圧倒的多数で可決したことが議論を呼んでいます。というのも、今回の決議の背景には、民主党の新人で初の女性イスラム教徒の下院議員であるイルハン・オマルが、先月、米国の対イスラエル政策はAIPAC(強力なイスラエル・ロビーの団体)から影響を受けているという主張やイスラエル批判を繰り返していたことがあったからです。ペローシ下院議長ら民主党指導部はオマルの言動を「反ユダヤ的でイスラエル支持者に偏見を抱かせる」として批判し、オマルは謝罪に追い込まれていました。

その後も反ユダヤ主義の言動は議会で取り上げられ、民主党は何らかの対応を示さざるを得なくなりました。その対応が今回の決議案だったのですが、その内容は、反ユダヤ主義のみならず反イスラム主義を含め、極めて一般的で具体的な意味を欠くものになりました。トランプ大統領はこれを目ざとくとらえて、「民主党は反ユダヤだ」と攻撃しました。この件についてポイントを述べます(※メルマガに限定)。

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今週の動き
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3/10(日)
・北朝鮮の最高人民会議代議員選挙
・ギニアビサウ議会選挙

3/11(月)
・マレーシアのナジブ前首相の汚職疑惑に関する初公判(~12日)
・ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル)

3/12(火)
・英下院がBREXIT協定案を採決
・EU財務相理事会(ブリュッセル)

3/14(木)
・ワシントンDC連邦地裁がポール・マナフォート元トランプ選対本部長に判決
・トランプ大統領の元ビジネスパートナーでロシア系米国人のフェリックス・サターが下院情報特別委員会で証言

3/15(金)
・第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議の閉幕(北京)

3/16(土)
・スロバキア大統領選挙

●BREXIT協定案の議会採決

以下の記事で述べたとおり、先月の議会採決に基づき、3月12日にBREXIT協定案に関する採決が行われる予定です。

「BREXIT協定案の議会採決」(3/4)

しかしEUとの協議は依然として難航しており、あらためて採決にかける新協定案が出てくるのかも定かではありません。何らかの協定案を採決にかける可能性がありますが、否決される可能性は高く、そうなると3月13日に合意なき離脱の是非を問う採決を行い、それが否決された場合14日に離脱延期を問う採決を行うことになります。おそらく離脱延期が決定されるでしょう。

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あとがき
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パキスタン対立の「顔」インド軍操縦士、特徴的なひげが話題に(3月6日付ロイター)
インドで「英雄のひげ」が人気 パキスタンで一時拘束の操縦士への称賛広がる(3月5日付BBC)

パキスタンが解放したインド人パイロットのひげについては、私含め多くの人が気になったかと思いますが、インドでもやはり注目度が高かったようです。

私は頻繁にインドに行っていますが、たしかにここまで見事というか、個性的なスタイルは見たことがありません。「カイゼルひげ」は口ひげの毛先が跳ね上がっているイメージですが、ヴァルタマン中佐の髭の毛先は跳ね上がっておらず、口ひげというよりは頬ひげと顎ひげの合わせ技の発展形のようです。

それにしても、中佐が登場していた戦闘機はソ連時代のMig-21。インドとパキスタンの交戦は、様々な情報が錯綜していますが(たとえばインドもパキスタンのF-16を撃墜したと発表したがパキスタンは否定)、インドはSu-30、ミラージュ2000、Mig-21、パキスタンはF-16、ミラージュIII、JF-17を出撃させたようです。Mig-21はこの中で圧倒的な旧型なので、中佐も気の毒だったのでは・・と思います。

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3 comments on “今週の動き(3/10~16)
  1. KB より
    読み解き方

    北朝鮮の情報が少ない中で、「制裁」はどの程度効いているのかと思っていましたが、こういう読み解き方があるのですね。様々な種類の制裁が課されている中で、どの分野の制裁がどの程度効いているのかを、米朝交渉のやり取りから裏付けていく点がとても興味深かったです。
    イルハン・オマルの話もありがとうございます!(オマールではなく、オマルなのですね)トランプの親イスラエル政策がどう作用するか、までは考えが広がらず・・・(トランプがそんな地位を築いているとは全く分かりませんでした)今後、コトはより複雑になりそうですね。続編も楽しみにしております。

  2. 那須の山奥の兄ちゃん より
    質問

    北朝鮮とアメリカが譲歩する余地などあるのでしょうか?

    この仮説を正しいとして
    その後の報道をみると
    どうしてもこの仮説が正しいとしか
    思えません。

    要するに
    北朝鮮の暴発リスクや
    韓国の無茶苦茶な言い分
    融和ムードなどない
    と私は思いますが
    いかがでしょうか?

    南北統一など夢また夢と
    考えています
    無茶苦茶な報道と世論、解説ばかり
    と考えています
    むしろリスクがもとに戻ったと考えるのが
    正解だな、と感じます

  3. より
    これからはじまるイギリス議会

    イギリス議会がはじまります。ドラマでは、なく現実だと思いながら、この二日、三日楽しみです。
    ベトナムでおこなわれた米朝会談。トランプ大統領から金正恩委員長?に文書を手渡しが最大の成果だと思っています。ここまですれば制裁解除だと。そう想像してます。直接手渡しですからね。

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