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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/01/15 00:00  | 今週の動き |  コメント(3)

今週の動き(1/15~21)


地方では荒れ模様のようですが、東京では晴天が続いていますね。

私は新年早々から仕事が立て込み、ありがたいことですが、バタバタしています。

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先週の動き
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1/8(月)
・金正恩の誕生日
・英国のメイ首相が内閣改造

1/9(火)
・南北閣僚級会談(板門店)
・韓国が慰安婦合意に関する新方針を発表
・スティーブ・バノンがブライトバート・ニュースの会長を辞任
・米下院が米台相互訪問法案を可決
・中仏首脳会談(北京)

1/10(水)
・トランプ大統領が文在寅大統領と電話会談
・カナダが米国をWTOに提訴したと発表

1/11(木)
・トランプ大統領がハイチやアフリカ諸国からの移民を「shitholeから来た人たち」と中傷
・トランプ大統領が2月の英国訪問を中止
・尖閣諸島の接続水域に中国の潜水艦と軍艦が確認

1/12(金)
・トランプ大統領が核合意に関するイラン制裁のウェイバー更新
・ドイツの第1党CDU・CSUと第2党SPDが正式な連立政権交渉入りに向けた政策文書で合意
・チェコ大統領選(~13日)
・安倍首相がバルト3国・東欧3か国を訪問(~17日)

トランプ政権の外交と内政、北朝鮮と韓国について取り上げます。

イラン制裁解除の継続

トランプは核合意に関するイラン制裁のウェイバーを更新し、制裁解除を継続しました。同時に、財務省は、ミサイル開発や人権侵害を理由にイランの制裁対象を拡大。いずれも、先週の記事で予想したとおりの結果です。

「今週の動き(1/8~14)」(1/8)
「イランの反政府デモ(2):米国との関係」(1/11)

しかし、今回、トランプは、議会と欧州に核合意の修正を求め、そうでなければ次の期限(5月12日)ではウェイバーを更新しない・・というレッドラインを設定しました。これは驚きでした。

今回の決定をふまえて、今週、今後の展望を解説します。

●トランプの人種差別発言

トランプが、ホワイトハウスで超党派の上院議員と移民政策について話し合う中で、中米とアフリカからの移民について、「どうしてあんなshithole(=くその穴・・屋外トイレなど、要するに汚いところを意味します)からたくさんやってくるんだ」と発言したとのこと。

トランプはこの発言を否定していますが、会合に参加した民主党議員のリチャード・ダービンと共和党議員のリンゼー・グラムは発言があったと述べています。

トランプには、これまで何度も人種差別の傾向を示す発言がありましたが、今回のはかなり強烈です。報道によれば、ノルウェーのような国から移民を受け入れるべきではないかと語っていたとのことで、その対比をしたかったようですが、発言の背後に白人優位の思想があることは明らかです。

いつものトランプの発言といえばそれまでですが、この一件は共和党に大きな打撃を与える可能性があります。

なぜなら、リンゼー・グラム以外の共和党議員はトランプの発言を「おぼえていない」と述べ、さらに、ミッチ・マコーネルトム・コットンら共和党の有力議員がこの件に関してコメントを避けているからです。

このような共和党議員の態度は、共和党に「白人支配の党」というラベリングをされる危険をはらんでいます。

特に、DACA(若年層の不法移民(「ドリーマーズ」)の居住を認める制度)改革をはじめ移民政策が討議される中で、移民受け入れを厳格化しようとする共和党の主張が人種差別によるものというレッテルを貼られて、その正当性が傷つくおそれがあります。

トランプの奔放な発言によって、共和党のブランドが傷つき、移民政策の議論にもバイアスがかかる・・これまで共和党は忍従していますが、これが果たしてどこまで続くのか。

また、バノン主義について解説した際、米国の政党システムがポピュリズムによって機能不全に陥っていく可能性があると指摘しましたが、その一つの現れとも見ることができます。

「バノン主義とトランプ政権・共和党(1)(2)」(17/10/26・27)

ポピュリズムについては、近いうち、まとまったかたちで論じる予定です。

●南北対話

予想通り、北朝鮮のペースに韓国が飲み込まれた格好です。一時的な緊張緩和にはつながるでしょうが、核・ミサイル開発問題の解決にはまったく貢献しないことは言うまでもありません。

これまで韓国のメンツをことごとく潰してきた北朝鮮がここで方針を変えてきた狙いは明白で、関係国が一致して続けてきた圧力の足並みを乱すことです。

今回の会談だけをみれば、平昌五輪という特殊イベントを考慮し、これまで続けてきた圧力をゆるめるものではない・・という点が確保されている限り、大きな影響が及ぶことはないでしょう。

問題はこれからで、北朝鮮は、開城工業団地、金剛山観光の再開など経済支援を要求してくるでしょうから、それを日米が止められるか・・という点が注目されます。南北対話の後にトランプがすぐに文在寅と電話会談をしていますが、この点に釘を刺したとみられます。

●慰安婦合意

韓国の新方針の発表は、予想できた内容とはいえ、日本側を落胆させるものでした。

ただ、救いがあるとすれば、韓国側も国際合意を反故にすることで失うものが大きいことを認識し、妥協した内容にしていることです。

今回の韓国の決定については、韓国国内でも評価が割れています。主要メディアには、新方針は矛盾を含んでいると指摘し、国際社会でのレピュテーションが傷つくことと日本との関係の悪化を憂慮しているものがあります。

慰安婦に渡されるべき10億ドルを日本に返金することができず、韓国政府が自ら資金を用意する(それによって日本が金を払ったという事実をなくそうとする)措置もかなり苦しいものです。このような厳しい立場に追い込むよう合意を詰めたのは、日本政府の手腕といえるでしょう。

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今週の動き
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1/14(日)
・日・サウジアラビアの「ビジョン2030」ビジネスフォーラム(リヤド)

1/15(月)
・アジア金融フォーラム(香港、〜16日)

1/16(火)
・北朝鮮に関する関係国外相級会合(バンクーバー)
・米・カザフスタン首脳会談(ワシントンDC)

1/17(水)
・カタルーニャ州新議会招集

1/18(木)
・日豪首脳会談(東京)

1/19(金)
・つなぎ予算が失効
・ペンス副大統領がエジプト、ヨルダン、イスラエルを訪問(~23日)

1/20(土)
・トランプ政権発足1年

●政府閉鎖の回避

1月19日でつなぎ予算が失効。政府閉鎖を回避するため、昨年9月と12月(2回)のときと同様、新たなつなぎ予算を成立させる必要があります。

共和党と民主党は、国防費、社会保障費、DACA、壁の建設費用などをめぐって対立しており、その隔たりを埋めることは非常に難しい状況です。

DACAは、昨年9月、トランプが廃止しましたが、6か月後の今年3月5日まで猶予を与えています。それまでに議会に立法措置を求めるという趣旨です。

「今週の動き(9/11~17)」(17/9/11)

民主党はこのDACAのための立法措置をつなぎ予算に盛り込むことを要求しています。

共和党と民主党の立場が大きく異なる中、DACAを含む移民政策で合意するために超党派のグループが結成され、先週、その合意案がホワイトハウスに持ち込まれました。トランプの「shithole」発言はこのときに飛び出したものです。

最近トランプは、DACAと壁の建設費用について軟化する姿勢を示しているそうですが、これはトム・コットンなど保守派から反発が予想されます。このへんの論争がどう決着するのか、今の時点でもなお不透明です。

一方、これまでのように問題を先送りすると、議会の審議を再び費やすことになり、次の立法アジェンダに十分な時間をかけることができなくなります。これも頭の痛いところです。

また、ここで一つ留意したいのは、今年の議会運営です。

昨年の税制改革法案と異なり、今年トランプ政権が実現しようとしているインフラ整備、エンタイトルメント改革などは、いずれも民主党の協力が必要になります。このため、昨年のような強行突破はできず、今年は民主党と貸し借りの関係を作りながら議会運営を進める必要があります。

つなぎ予算をめぐる駆け引きも、こうした事情を反映しています。

●トランプ政権の1年

トランプ政権の1年の回顧と展望については以下の記事でポイントを解説しました。

「2017年の回顧」(17/12/28)
「2018年の展望」(1/5)

このメルマガ・HPでは、この1年の動きを細かくフォローしてきました。過去の記事は、今でもたびたび引用していることからも分かるように、これから起こるイベントを考察する上で有益な資料になります。

そこで、最近このメルマガ・HPを読み始めた方向けに、トランプ政権をテーマにした過去の記事の総集編を作ることにしました。追ってお知らせします。

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あとがき
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マイケル・ウォルフの『炎と怒り』をKindleで読んでいますが、たしかにこれは読み物としては面白い。

トランプをとりまく人間模様の酷さが臨場感をもって伝わってきます。邦訳も早速2月に出るそうですが、売れるのでしょうね。

騒ぎは続いていますが、内容が明らかになったことで落ち着いたところもあり、今週どこかで少しコメントします。

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3 comments on “今週の動き(1/15~21)
  1. ぺルドン より
    10億ドル・??

    相変わらず・・
    ホワイトハウスと韓大統領府の発表・・
    食い違い・・
    ホワイトハウス発表・・信じる・・
    いい加減・・
    韓国は姑息な手段から脱却せねば・・
    尤も・・それが韓国の味・・
    にしても・・
    北の三代目・・コールを吊り上げてきた・・・
    ( ^ω^)・・・(笑

  2. ぺルドン より
    台湾旅行関係法

    トランプ・・
    サインするでしょうか・??!!
    ( ^ω^)・・・(笑

  3. KB より
    よくわかるトランプ

    和製ボブ・ウッドワード、JDが描くトランプの真実

    こんな感じで、こちらもkindleでシリーズ化ですね!

    1年ごとに、episode 1、2、3・・・と出していかれるのはいかがですか? 

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