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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2018/01/05 05:00  | 回顧と展望 |  コメント(3)

2018年の展望


年始ということで、2018年の展望について考察しましょう。

まず、予定される大型イベントは以下のとおりです。

1月 一般教書演説
3月 イタリア総選挙、中国全人代、ロシア大統領選挙、G20財務相・中銀総裁会議(ブエノスアイレス)
未定 エジプト大統領選挙
4月 G7財務相・中銀総裁会議(ワシントンDC)
5月 イラク議会選挙
6月 G7サミット(シャルルボワ)
7月 メキシコ大統領選挙
9月 自民党総裁選
10月 ブラジル大統領選挙
11月 米国中間選挙、APEC首脳会議(ポートモレスビー)、東アジアサミット(シンガポール)、G20サミット(ブエノスアイレス)

●トランプ政権の展望

誰もが気になるトランプ政権の展望ですが、最大の山場は11月の中間選挙です。

トランプの命綱は何と言っても共和党との協力関係です。「2017年の回顧」で述べたとおり、トランプ政権が成し遂げたことは、少なくとも内政面においては「共和党の成果」といっても過言ではありません。

「2017年の回顧」(17/12/28)

中間選挙で共和党が後退することがあれば、トランプ政権の実行力はこれまで以上に低下するでしょう。それどころか、政権の存続を揺るがす可能性すらあります。政権の存亡は共和党議員の意思にかかっているからです。

トランプと共和党指導部は何度も衝突を繰り返してきましたが、最後に大きな禍根を残したのはアラバマ州上院補選でした。

「アラバマ州上院補選」(17/12/19)

ロイ・ムーアは元々はスティーブ・バノンが支持した候補でした。それがスキャンダルに見舞われた後は、トランプが支持を決め、結局はアラバマ州という鉄壁の州で敗北を喫することになりました。

これは、共和党内では、トランプの責任を問う声が上がるのはもちろん、「トランプ主義」という神通力がもはや通じなくなったのではないか・・という疑念を生じさせます。

加えて、税制改革とオバマケアの骨抜きを達成したことも共和党がトランプから離れる要因になる可能性があります。共和党にしてみれば、悲願を達成して、これ以上トランプに頼る必要はない・・と考えるかもしれないからです。

税制改革後の立法アジェンダは具体的になっていません。トランプはインフラ整備を掲げていますが、その内容について政権と共和党の間で合意は成立していません。

エンタイトルメント(社会保障)改革もターゲットですが、これも十分な議論はされていません。今年は立法上の成果を何も生み出すことなく、そのまま中間選挙に突入・・というシナリオも十分に考えられます。

この状況下で、共和党が大幅に議席を減らすようなことがあれば、共和党がトランプを見限る可能性が出てきます。このときロシアゲートの捜査が進んでいれば、もしかしたら、いよいよ弾劾の道が開かれるかもしれません。

とはいえ、今回の中間選挙は、改選議席の面では共和党が有利です。上院の改選議席が民主党25(無所属2含む)に対して共和党8と大幅に少ないからです。しかも、民主党の改選議席にはトランプが大統領選で大きな支持を得た州が数多く含まれます。

中間選挙は基本的に現職大統領の政党が敗北するケースが多く、また、バージニア州知事選とアラバマ州補選で民主党が連勝しています。とはいえ、トランプ政権が倒れるほどの結果に至るには、相当のモメンタムが必要になるでしょう。

●北朝鮮

一方、外交・軍事面では、トランプは、昨年以上にアグレッシブなアプローチをとる可能性があります。大きなターゲットになると予想されるのはイランと北朝鮮です。

その理由ですが、まず、前述のとおり、内政面での進展が期待できないことがあります。内政でフラストレーションを感じるトランプは、自らの裁量で物事を動かせる外交と軍事に関心を向けるかもしれません。

次に、国務長官の交代があります。以下の記事で述べたとおり、昨年11月、ティラーソン国務長官は今年の早い段階で更迭されるとの観測が流れました。

「ティラーソン国務長官の去就」(17/12/4)

ティラーソンの辞任が時間の問題であることは本メルマガで何度も指摘してきました。後任はマイク・ポンペオCIA長官で、CIA長官の後任はトム・コットン上院議員と言われています。

この二人は共和党でも屈指の外交タカ派なので、トランプが本気で強硬路線を採る場合にはその背中を押すことも十分に考えられます。

それでも、まだまだ現時点では、北朝鮮に対する軍事オプションの可能性は低いでしょう。北朝鮮外交も、基本的には、恫喝し、揺さぶってから交渉に入るというトランプ流「Art of the Deal」の一環とみられます。昨年11月のアジア歴訪中に、金正恩と「友達になれるよう努力する」「いつかはその日が来るかもしれない!」とツイートしたことはその現れです。

元旦には、金正恩が「新年の辞」で、核ミサイルの実戦配備を宣言するとともに、南北対話への意欲を示しました。金正恩としては、核とミサイルの開発を国内に向けて十分にアピールできたとみて、新たな動きに向けたシグナルを発した可能性があります。

「今週の動き(1/1~7)」(1/4)

アジア太平洋担当国防次官補にランディ・シュライバー(上院が承認)、東アジア太平洋担当国務次官補にスーザン・ソーントン(指名)、駐韓大使にヴィクター・チャ(指名内定)と北朝鮮交渉チームがようやくそろいつつあります。これは本メルマガで予想していたとおりのラインアップです。

大きな決断をするのはトランプとホワイトハウスの安保チームなので、外交担当の事務方の影響力は限られていますが、とりあえず前進と評価できるでしょう。

●日中関係

中国に関しては、権力の集中を実現した習近平が何を目指すのかが大きな注目点です。これは、今年1年というより、任期の5年、10年という長いスパンでのテーマになります。

状況が動いていることもあり、簡単にまとめることはできませんが、とりあえず今年1年の間で大きく動く可能性があるのは、日本との関係です。

習近平にとって最も重要な目標は中国共産党の正当性を高めることであり、そのための重要な手段の一つは持続的な経済の発展です。そのために、日本との関係を良好に維持することは重要であり、習近平自身とその周りからは関係改善に向けた姿勢が見えていました。その動きは権力闘争の中で後退を余儀なくされましたが、習近平の権力基盤が固まり、一貫した政策が可能になったことで、日本政府との連絡が急速に緊密になっているようです。

その中国側の動きに対応するかたちで、日本側からも、「一帯一路」を支持するというメッセージを出す動きが出てきました。そもそも「一帯一路」は看板に過ぎず、結局はプロジェクトごとの是々非々の判断ですから、これ自体に実質的な意味はありませんが、一つの前進といえるでしょう。

そして、「一帯一路」と「インド太平洋戦略」を連携させる構想も出ています。そもそも「インド太平洋戦略」は、TICAD(アフリカ開発会議)で打ち出されたことからもわかるとおり、アジアとアフリカをインド洋を経て連結させるという、経済協力・開発に出発点がある構想ですから、「一帯一路」と連結させることはそれほど不自然ではありません。

他方、トランプのアジア歴訪前から、日米が連携して中国に対抗する、かつての「自由と繁栄の弧」のような自由と民主主義の価値観を強調するようになりました。しかし、「2017年の回顧」で述べたとおり、この戦術に関係国がどれほどついてこられるかは定かではありません。

中国の脅威に対抗することが必要なことは当然ですが、そのやり方はよく考える必要はあるでしょう。「一帯一路」と「インド太平洋戦略」の連結は、現時的な選択肢の一つと評価できます。

●中東

だいぶ長くなってしまったので、残りは簡潔にいきます(笑)。

中東は、「2017年の回顧」で述べたとおり、まずサウジの風雲児ムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子の改革がどうなるか。私の見立ては、MbSはかなりしたたかに権力集中と支持獲得に成功しており、サルマン国王の急逝といった不測の事態がない限り、このまま突き進む・・というものです。

次に、サウジとイランの勢力争いです。これは、米国の反イラン姿勢がどこまで本格化・具体化するかが鍵を握ります。今月、早速にトランプのウェイバー更新の判断と議会報告があるので、これが試金石となります。

私の見立ては、基本的には、トランプは、例によって「Art of the Deal」・・恫喝と交渉の二本立てのアプローチをとり、極端な強硬策には出ない・・というものです。ただ、前述のとおり、強硬化に傾くトリガーイベントがあるので、そこは注視が必要です。

最後に、あまりこれまで述べたことがなかったですが、アフガン情勢も注目です。昨年、トランプは「新アフガン戦略」で米軍のコミットメントを明らかにしました。

「中国とインドの対立(2)」(17/9/19)

アフガンは、カブールの政権が掌握しているエリアは多く見積もっても国土の半分、残りはタリバンが制圧しています。米国は、カブールを支援しタリバンを排除する方針を崩していませんが、裏ではタリバンの取り込みを検討しています。

これが前進すればアフガン情勢は安定に向かい、パキスタンをはじめとする南アジアの国々をめぐる国際関係も変化する可能性があります。このテーマはタイミングを見て取り上げます。

●欧州

今年の大型選挙はイタリア議会選。ポピュリスト政党「五つ星」のみならずシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」がどこまで票を獲るかが注目されます。フォルツァ・イタリアは中道右派ですが、極右政党と右派連合を組んで昨年11月のシチリア州の選挙で勝利しており、今年の総選挙にも同様の連合で臨むとみられています。

ベルルスコーニ自身は脱税で有罪判決を受けたため19年まで出馬できず(欧州人権裁判所に控訴中)、直ちに首相になる可能性は低いです。それでも、フォルツァ・イタリアが勝てば、実質的なキングメーカーとして影響力を行使することになるでしょう。

その他、チェコ大統領選、ハンガリー議会選、スウェーデン議会選、ポーランド地方選があります(なお、欧州という意味では、ロシア大統領選もあります)。16年から続くポピュリズム、反難民・移民、極右の台頭のトレンドが気になります。

あとはBREXIT交渉ですが、一つ注目すべきは欧州経済の好調です。政経分離の様相を呈しています。これも追い追い取り上げます。

●東南アジア・南アジア

大型イベントには入れていませんが、カンボジア、マレーシア、タイ、パキスタンで議会選挙が予定されています。

カンボジアとマレーシアは与党が勝ち、タイはタクシン派がおそらく勝ちますが、軍政が権力を維持できるシステムが確立しているので、政権交代につながることはありません。

パキスタンは実施できるかまだ分かりません。いずれも詳しくは追って説明します。

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あとがき
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今年は戌年ということで、犬と世界情勢との関わりを考えてみました。とりあえず私の頭に浮かんだのは、大の犬嫌いであるメルケルに会うときにプーチンがわざわざ愛犬を連れてきたというエピソード。

プーチン氏の犬にメルケル首相たじたじ 「悪気なかった」?(16年1月13日付CNN)

プーチンは大の犬好きで、秋田県知事から秋田県を贈られたこともあります。

プーチン大統領、日本から贈られた秋田犬を連れて会見に(16年12月14日付CNN)

しかし、プーチンほどの男がメルケルの過去を知らなかったとは考えられません。これもKGB流の心理術なのでしょうか。メルケルは東ドイツ出身ですから、何か異様なプレッシャーを感じたのかもしれません。

「プーチンの世界」(17/1/26)

最近では、トランプが犬を飼わないというエピソードも思い浮かびました。

トランプに拒絶された仔犬「パットン」(17年10月26日付ニューズウィーク)

歴代大統領でペットを飼わない人はほとんどいなかったとのこと。そういえば、ホワイトハウスは犬と猫の写真を公表することがたまにありますね。

読者の方から教えていただきましたが、年末にはこんなニュースもありました。

トランプの呪い?ペンス副大統領のペットが相次いで息引き取る(17年12月8日付ニューズウィーク)

考えてみると、たしかに米国人は動物好きですね。私の友人も、特に犬を飼っている人が多いです。こういうところもトランプは異色ですね。

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3 comments on “2018年の展望
  1. KB より:
    世界一周

    広い視点での展望、ありがとうございます。

    改めて、このWEBとメルマガでの分析が連なって、この先の2018年の出来事を作っていっている、「連続性」を感じます。

    なかなか自分の頭だけでは、体系的に見ることが難しいですが、また今年もメルマガの力をお借りして、世界情勢のダイナミズムを感じたいと思います!

    トランプは潔癖だからなのか、そういう意味でも異色なんですね。
    しかし、弾劾の可能性とは、やはり今年も沢山の”事件”が彼の周りでは起きそうですね。。。

  2. 牧神の午後 より:
    Fire and Fury

    「家政婦は見た」のホワイトハウス版みたいな本が出版されました。

    米国大統領職というのは、威厳があり、命懸けで取組むだけの価値がある任務だったはずなのですがね。

    堕ちる所まで堕ちた感じです。

  3. 下北のねこ より:
    All the President's Men

    昔、ウォーターゲート事件を題材にした映画があって、ロバート・レッドフォードやダスティン・ホフマンがとってもかっこよくって、スリルもサスペンスもあって、当時の現実の方も迫力のある展開だったんですが、今のトランプさんのはなんかコメディタッチではたから見ると笑えるところがなんか好きです。
    早く日本語訳出ないかな。

    やっぱり、プーチンさんは怖い人ですね。

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