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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/09/25 00:00  | 今週の動き |  コメント(3)

今週の動き(9/25~10/1)


あっという間に9月後半に。残暑の時期もなく、気づいたら完全に秋の雰囲気ですね。

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先週の動き
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9/18(月)
・安倍首相が国連総会出席のためNY訪問(〜22日)

9/19(火)
・国連総会一般討論演説(トランプ、マクロンら)(NY)
・ミャンマーのアウンサン・スーチー国家顧問兼外相が演説(ネピドー)
・FOMC(~20日)

9/20(水)
・国連総会一般討論演説(安倍首相、メイ、ロウハニら)(NY)

9/21(木)
・日米首脳会談(NY)
・日米韓首脳会談(同)
・トランプ大統領が北朝鮮制裁強化の大統領令に署名

9/22(金)
・金正恩委員長が「史上最高の超強硬対応措置を検討」との声明
・北朝鮮外相が太平洋での水爆実験を示唆(NY)
・北朝鮮の党機関紙が中国共産党系2紙を名指しで非難
・CNNの世論調査によればトランプ大統領の支持率が40%に回復
・英国のメイ首相がBREXITについて演説(フィレンツェ)

9/23(土)
・米国防総省が米空軍のB1戦略爆撃機とF15戦闘機が北朝鮮東方沖の国際空域を飛行したと発表
・北朝鮮外相が米国に武力行使の兆候あれば「先制行動」をとると発言(NY)
・トランプ大統領が北朝鮮外相の演説受け「彼らの先は長くない」とツイート
・北朝鮮で地震が観測
・NAFTA再交渉第3回会合(オタワ、~27日)

9/24(日)
・ドイツ議会(下院)選挙

●トランプの国連演説

これは非常に面白い演説でした。

日本では、北朝鮮の拉致問題を取り上げたことだけが強調されています。たしかにこれは意義深いことですが、この演説の真のポイントは、国連という世界の指導者が集まる場において、トランプ大統領が政権の外交理念(トランプ・ドクトリン)を初めて明らかにした点です。

主要な米国メディアは、例によって反トランプの立場をとり、厳しい論調。ただ、ウォールストリート・ジャーナルなど保守寄りのメディアや保守系の専門家は、新しい外交方針を示した点を評価しています。

トランプを批判するメディアは、「アメリカ・ファースト」は健在だ、一方的なナショナリズム、一国主義を強調するものだ、国を名指しするヘイトスピーチだ・・などと言いますが、今回のトランプ・ドクトリンはそんな単純なものではありません。様々な新しい要素を含んでおり、今後のトランプ外交を考える上で示唆に富んでいます。明日、解説します。

●アウンサン・スーチーの演説

これについては先週、詳しく解説しました。「ロヒンギャ危機とアウンサン・スーチーの苦境」(9/21)をご確認ください。

●北朝鮮

トランプと北朝鮮の舌戦が激しさを増し、米軍機の北朝鮮沖への飛行、北朝鮮メディアの中国メディア批判という動きもありました。

北朝鮮、米国、中国の動きについて、基本的なポイントは「北朝鮮と中国、ロシア」(9/13)、「北朝鮮の核・ミサイル問題の補足」(9/8)などこれまでの記事で述べてきたとおりです。

先週の一連の動きであらためて確認できたのは、米国の北朝鮮に対する方針にブレがないこと、中国と北朝鮮の関係悪化が止まらないことです。

米国については、トランプの国連演説の解説で説明します。

また、中朝関係については、双方のメディアがお互いに非難をしていることに加え、中国のメディアや学者が北朝鮮崩壊後のシナリオを公然と語るようになった点も注目に値します。これも近いうち取り上げます。

●欧州

ドイツの総選挙は、メルケル率いるCDU・CSUの優位は変わらず、メルケル四選は確実の見通し。

英国も、メイ首相がBREXITについて2年の移行期間を設けることを提案。

いずれも欧州の安定に向けた一歩となりそうです。

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今週の動き
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9/25(月)
・イラクのクルド自治区で独立を問う住民投票

9/26(火)
・アラバマ州の上院議員の補選の共和党予備選の決選投票

9/27(水)
・タイの最高裁がインラック前首相の職務怠慢容疑について判決

9/28(木)
・臨時国会召集、衆議院解散

(未定)
・米上院がオバマケア改廃法案を採決

●オバマケア改廃法案

「オバマケア改廃はオバマケア廃止をめぐる闘争(代替法案の採決延期)」(6月29日)で述べたとおり、ほぼ断念されていましたが、9月13日、共和党上院議員であるリンゼー・グラムビル・キャシディが新たな改廃法案(グラム・キャシディ法案)を上院に提出しました。その採決が今週行われる見通しです。

トランプはこの法案を賞賛していますが、上院の共和党は52人ですから、3人の造反者が出ると法案は通りません。すでにジョン・マケインは反対を表明しており、前回反対したスーザン・コリンズ、リサ・マコウツキらも続くでしょう。したがって可決はほぼ無理といって過言ではありません。

共和党議員は、リバタリアン哲学と反オバマの精神から、オバマケア改廃に大変な熱意をもっていますが、共和党の有権者は必ずしもこれを支持していないのが最大の問題です。多くの低所得者層はオバマケアがなくなると困るからです。それが分かっているので、公聴会を開くこともなく可決しようとしています。これでは支持は得られません。

●アラバマ州上院予備選

ジェフ・セッションズが司法長官に就任したことで空席になったアラバマ州の上院議員の補欠選挙が12月に予定されており、そのための共和党予備選の決選投票が実施されます。このため先週、トランプは自身が支持する候補の応援のためアラバマ入りして、スピーチを行いました。

通常であればさほど注目されない選挙ですが、今回は盛り上がりを見せています。それは、トランプが支持しているルーサー・ストレンジ候補が世論調査で2位になっており、ロイ・ムーア候補の後塵を拝しているからです。ムーアは州最高裁の前首席判事で、州裁判所の庁舎内に十戒の石碑を設置したこと(!)で有名な超保守派です。

アラバマ州はトランプの人気が非常に高い州です。この州ではトランプ主義の風潮が極めて強く、このためストレンジとムーアはともに自分が真のトランプ主義者であるとして競い合っています。ストレンジはトランプの支持を得ているので当然として、ムーアは、トランプはミッチ・マコーネルらワシントンDCの熟練した政治家に取り込まれている、だから自分が真のトランプ主義を実現するのだ・・というアピールをしています。

トランプは、「トランプの方針転換(民主党への接近)」(9月20日)で述べたように、超党派の方針に舵を切りましたが、それが支持率の上昇につながっています。

一方、アラバマでは、トランプ主義のシンボルを奪い合うというまったく違う政治の風景が展開されています。トランプ主義の根強さ、あるいは更なる強まりを示しているといえます。

上記「トランプの方針転換(民主党への接近)」(9月20日)で、トランプは中間選挙の改選議員に踏み絵を踏ませることで取り込みをはかっていると書きましたが、その有効性を見る上でも参考になる動きです。

特に、「シャーロッツビル事件と南部の文化」(8月24日)で解説しましたが、米国政治を見る上で南部の動向をおさえることは死活的に重要です。

こういう機会に議員と市民の動きをフォローすることが正確な理解につながります。地味ですが丁寧にフォローしましょう。

●クルド独立

イラクのクルディスタン自治区(KRG)がイラクからの独立を問う住民投票を行います。

「イスラム国」との戦いは、クルドの政治力を向上させた面があり、今「イスラム国」が掃討される中で、クルドの独立が今後のイラクの統治を左右する問題として再び浮上しています。

クルド問題については「トルコとクルド(2):クルド人の対立・トルコ政局・イスラム国」(15年8月15日)で解説しましたが、今回の独立投票の結果を見てからまた取り上げたいと思っています。

●サウジの王位継承

なお、中東については、最近、サウジアラビアのサルマン国王の生前退位の可能性がホット・イシューとなっています。そうなれば、ムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子が32歳の若さにして名実ともに大国サウジの盟主として君臨することになります。

これは、実現すれば、中東全体の秩序に大きな影響を与える、今年の最重要イベントとなるでしょう。

MbSについては、すでに何度も取り上げており、直近では「ムハンマド・ビン・サルマンの皇太子就任」(6月23日)で解説しましたが、近いうち、あらためて最新の状況を解説します。

●衆議院の解散

「大義」のない解散・・などとマスコミは言いますが、解散は総理大臣の専権事項であり、政局判断を含めて行うのは当然のことでしょう。これに本気で意を唱えるなら、解散権を制限するための制度論を語るべきです。

当事者意識や責任感もなく、中身のない理想論だけを唱えて批判する・・建設的な提言はない・・政府で仕事をしていたときから思っていることですが、こういうのを見るたび、マスコミの仕事は楽なものだと思います。

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あとがき
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3 comments on “今週の動き(9/25~10/1)
  1. ペルドン より
    バノンと王岐山の対談

    行われたとすれば・・
    非常に意義深い・・
    JDは何と観察しますか・??
    ( ^ω^)・・・(笑

  2. Polly より
    トランプ演説

    仰るとおり、沢山の内容を含む演説でしたね。読んだ時、読んでも読んでもマスコミが言う北朝鮮話が出てこないので戸惑いました (笑) トランプはその気になればこんな演説もできるんですね。ゴーストライターが練りに練ったのでしょうけれど。
    北朝鮮以外の部分の解説、よろしくお願いいたします。
    また北朝鮮、米国の方針はぶれていないとのこと。確かにぶれていませんが、その方針に従った結果、軍事衝突の可能性を遂に本気で覚悟したようにも見えます?

  3. KB より
    是非!

    今週のメルマガが楽しみになる、月曜日記事ですね。

    そして、引き続き、これまで様々な経験をされてきたJDさんの広い見地から、マスコミのあり方にも一石を投じてください。ぐっちーさんほど暴れるかは、お任せします(笑)。

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