2017/06/23 00:04 | 中東 | コメント(3)
ムハンマド・ビン・サルマンの皇太子就任
■ サウジアラビア、ムハンマド副皇太子が皇太子に昇格=国営通信(6月21日付ロイター)
ムハンマド・ビン・サルマン(MbS)が副皇太子に就任してから、わずか30歳にしてサウジの実権を握りつつあることは、このHPで何度も取り上げてきました(「サルマン副皇太子・プーチン会談」、「サウジアラビアとロシアの接近」参照)。
MbSが国王となることは既定路線であり、あとはタイミングの問題であって、ムハンマド・ビン・ナイフ(MbN)皇太子を飛び越えて一気に国王になる可能性はかねてから指摘されてきました。
一方で、MbSの権力集中に対しては反感も高まっていること、実はサルマン国王の権力と判断能力は健在であること、MbSが権力を固めるには時間がかかることから、国王が退位してもまずはMbNが即位し、すぐに退位してMbSが即位する・・という予測が有力でした。
それが、今回、突然のMbNの解任とMbSの昇格。中東に激震が走りました。
これは、MbSの権力固めがいよいよ本物となり、それに伴い、サウジが劇的な変貌を遂げ、新時代に入ることを予感させる、大きな転換点と考えられます。
もともと、サウジはこれまで、外交内政両面において「慎重さ」を特徴としてきた国です。
それが、2015年1月にアブドッラー前国王が死去し、サルマン新国王が即位し、MbSが副皇太子になると、サウジの政策は大きく変わります。
イエメン空爆、ロシアへの接近、イランとの国交断絶とその後の対決姿勢、イスラエルへの接近、パキスタン批判、そしてカタールとの国交断絶・・・こうした激しい外交は、これまでのサウジでは想像もできなかったものです。
内政面でも、石油依存の経済から脱却する「ビジョン2030」を打ち出し、文化面でもクラシックコンサートの開催を許可するなど、若い世代の声を代弁するような政策を打ち出します。
この構造的な背景には、シェール革命による石油の戦略的価値の低下と、それに伴う米国の中東離れ、さらにオバマ政権でのイランへの接近があります。それが、短期的・属人的には、MbSという新たな指導者の出現によって一気に加速した、と考えられます。
これが地域と世界の安定にとって吉と出るか凶と出るかは難しいところです。少なくとも、短期的には、MbSの積極的なリスクテイク路線は、不安定要素となる可能性が高いように思われます。
しかし、サウジのみならず、中東地域も、指導者の世代交代という現実に直面しつつあります。オマーンやクウェートではいまだ高齢の重鎮が支配し、古き伝統に基づく秩序が重視されている感がありますが、世代交代が進むサウジ、UAE、カタールでは新たな動きがみられます。
サウジを含む中東地域が新時代に突入する・・・これも現在の世界情勢を動かす大きな要素になるでしょう。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
3 comments on “ムハンマド・ビン・サルマンの皇太子就任”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
そういえば前は副皇太子でしたね。このニュースはこういう
ふうに読むのですね。
カタール騒動は、サウジの意図がよくわからなかったので、親族関係の揉め事か、サウジ内の勢力争いかと想像していましたが、これで最後のピースがはまりました。
情報を評価・理解できるかが全てですね、ありがとうございました。
間違いなく・・
賽は投げられた・・
と言うでしょう・・・( ^ω^)・・・(笑
皇帝や天皇の太子だから『皇太子』なのであって、国王の太子は当然ながら『王太子』です。
JDさんほどの方には、低俗なマスメディアに倣う事なく正しい日本語を啓蒙して頂きたい。