2017/05/31 01:19 | 米国 | コメント(2)
トランプの初外遊(中東・欧州訪問)
初外遊となったトランプ大統領の中東・欧州訪問。ワシントンDCでのカオスな状況と比べれば、外交ではそれなりの成果を上げ、得点をかせいでいる、というのがおおむね米国内での評価です。
特徴的なのは、オバマ政権で折り合いの悪かったサウジ、イスラエルとの関係を強化し、逆にオバマ政権ないし伝統的に同盟関係にあった欧州との関係を冷却化させていること。まさにオバマの逆をいくことがテーマとなっています。
●中東
米国大統領の初外遊は隣国であるカナダ、メキシコが通例です。いきなり中東に行くのは異例といえます(「訪問国の順番」も参照)。
背景にあるのは、中東和平への関与の要請とイランへの牽制です。まずサウジは中東和平の当事者であるパレスチナに影響力を行使できる国です。中東和平に力を入れる米国にとっては重要な国です。
また、ロシアとシリアとの関係を悪化させた現在において、「イスラム国」対策を進める上で唯一頼れるキープレイヤーです。サウジ側も、米国へのインフラ投資を支援すべくファンドを立ち上げてトランプの期待にこたえています。
なお最近、サウジでは、クラシック音楽のコンサートが開催されたり、文化面でのリベラル化が進みつつあります。この背景には、このHPで何度も紹介しているムハンマド・ビン・サルマン(MbS)副皇太子の意向が影響しています。
MbSは31歳と若く、サウジを近代化する「ビジョン2030」の策定において中心的役割を果たした人物。リベラルを志向する若者から大きな支持を受けています。
ただ、サウジの実権を掌握したといわれ、日の出の勢いだった以前と比べると、最近は、ムハンマド・ビン・ナイフ(MbN)皇太子一派との勢力争いが拮抗しており、サルマン国王が実は思ったより元気だった(笑)ともいわれている現状では、どちらかというとサウジの政治は国王の掌の上で動いているようだ・・との見立てが有力となっています。
一方、サウジのライバルであるイランとの関係は、悪化する気配があちこちで見られます。今のところトランプ政権は5月に関係法令に基づいて制裁停止を延長していますが、7月にも関係法令の見直しが予定されています。
イランではロウハニ大統領が再選し、穏健派政権が継続しました。しかし、米国の方はサウジへの接近もあり、見通しが明るいとは言えない状況です。
●欧州
G7、NATOとの会談では、トランプはやりたい放題。欧州から顰蹙をかいました。
欧州のメディアを見ると、どれだけトランプが嫌われているかが分かります。バカにされていると言っても良いかもしれません。
特にドイツとの関係は、メルケル首相との初会談の時点ですでに予想されていましたが、トップ同士の折り合いがかつてないほどに悪い状況となっています。
マティス国防長官、マクマスター大統領補佐官らが修復をはかっていますが、米欧関係の悪化は今後の不安材料になりそうです。
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2 comments on “トランプの初外遊(中東・欧州訪問)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
サウジで・・
クラシック音楽コンサート・・
変わりましたね・・いや・・代わりつつあるか・・
こちらは・・
寝起きに古いアラブ音楽聴いているのに・・
今や・・
米国は石油輸出大国・・
トランプもサウジの王様になれる・( ^ω^)・・・(笑)
メルケルさん。
「Brexitでワガママな英国」や「自国ファーストで粗暴・傲慢なトランプのアメリカ」を批判しつつ、「難民にも寛容なリベラル主義のドイツ」を演出することで、結果的に上手く「ドイツ・ファースト」政策を偽装することに成功しているのではないか?と思ってしまいます。
(私は別にドイツがドイツ・ファーストの外交戦略をとることは特に非難されることだとも思いませんけども)
どうもアンチトランプな米メディアは「トランプのせいでメルケルがアメリカから離れていった!」というストーリーで見ているようですが、トランプの言動は自国の独立性・自立性を高めたいと考えていたドイツにとってはちょうど渡りに船の理由付けとして利用できたのに過ぎないという見方もできるのではないかと思うのです。トランプでなくもっとマトモな大統領なら欧と米の関係は今まで通り上手くやれたのに・・・なんていう発想はちょっとオメデタイ発想ではないでしょうか。