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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2020/10/05 00:00  | 今週の動き |  コメント(5)

今週の動き(10/4~10) トランプコロナ感染、米経済対策第4弾、ナゴルノ・カラバフ衝突、クウェート首長死去


最大の目玉イベントだったはずの大統領候補の討論会が終わったと思ったら、まさかのトランプ大統領のコロナ感染。東証の取引停止、石原さとみさんの結婚発表もあり、週後半は激動の数日間になりました。

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先週の動き
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9/26(土)
・米商務省が9月25日付通知で中国半導体受託生産の中芯国際集成電路製造(SMIC)に米国企業等が特定製品を輸出する場合に同省の事前許可を得るように求めたことが判明

9/27(日)
・NYタイムズがトランプ大統領の納税申告書を入手した(16年と17年の所得税の納税額は750ドル、その前の10年間はゼロ)と報道(トランプ大統領は否定)
・ワシントンDCの連邦地裁がTikTokの配信禁止措置の差止めを命じる判決
・ポンペオ国務長官がギリシャ、イタリア、バチカン、クロアチアを訪問(~10/2)
・G20エネルギー相会議(テレビ会議、~28日)
・アゼルバイジャンとアルメニアがナゴルノ・カラバフ自治州の周辺で軍事衝突(継続中)
・マリのバ・ヌダウ暫定大統領が軍事クーデター後の移行政権の新首相にモクタール・ウアンヌ元外務・国際協力相を指名

9/28(月)
・米国務省が外国からキューバへの送金を手がけるアメリカン・インターナショナル・サービシーズ(AIS)を制裁対象に加えると発表

9/29(火)
・米大統領候補の第1回テレビ討論会(オハイオ州クリーブランド)
・英下院がBREXIT協定の一部を無効化する「国内市場法案」を可決
・英国とカナダがベラルーシのルカシェンコ大統領ら8人に大統領選での不正疑惑や人権侵害を理由に制裁を科したと発表
・フランスのマクロン大統領がベラルーシの野党指導者チハノフスカヤと会談(リトアニア・ビリニュス)
・クウェートのサバーハ首長の死去が発表
・日ロ首脳電話会談

9/30(水)
・トランプ大統領がミネソタ州ダルースで選挙集会
・バイデン前副大統領がペンシルバニア州ジョンズタウンで選挙集会
・米大統領候補のテレビ討論会の運営を担う委員会が討論のフォーマットを見直すと発表
・クウェートのナワーフ皇太子が新首長に即位

10/1(木)
・米仏ロの首脳がアゼルバイジャンとアルメニアに対し即時停戦を求める共同声明を発表
・ポンペオ国務長官がバチカンを訪問(ローマ教皇は会談を拒否)
・米国で12月11日までの連邦政府の歳出を可能にする「つなぎ予算」が成立
・米下院が2.2兆ドルの経済対策案を可決
・中国国慶節
・EU臨時首脳会議(ブリュッセル、~2日)
・ベルギーでアレクサンダー・デクロー副首相兼財務相が新首相に就任(7政党の連立政権)
・ロシアの野党指導者ナワリヌイが神経剤で攻撃された事件について「背後にプーチン大統領がいる」と述べたインタビュー記事がシュピーゲルに掲載
・東京証券取引所がシステム障害で取引停止

10/2(金)
・トランプ大統領の新型コロナウイルスの検査結果が陽性だったとツイート(トランプ大統領はワシントンDC郊外のウォルター・リード米軍医療センターに入院)
・ペンス副大統領の新型コロナウイルスの検査結果が陰性だったと発表
・ホープ・ヒックス大統領顧問、ケリーアン・コンウェイ元大統領顧問、マイク・リー上院議員、トム・ティリス上院議員、ロン・ジョンソン上院議員らの新型コロナウイルスの検査結果が陽性だったと発表
・バイデン前副大統領の新型コロナウイルスの検査結果が陰性だったと発表
・バイデン前副大統領がミシガン州グランドラピッズで選挙集会
・米財務省がベラルーシのカラエフ内相ら同国当局者8人を制裁対象に指定したと発表
・EU臨時首脳会議最終日(ベラルーシへの制裁で合意)(ブリュッセル)

10/3(土)
・トランプ大統領の主治医のコンリー氏が同大統領の状況について説明(ウォルター・リード米軍医療センター)

●トランプ大統領のコロナ感染

トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。トランプはその日のうちにヘリコプター(マリーン・ワン)でワシントンDC郊外の米軍医療施設「ウォルター・リード軍医療センター」に入院。入院前に撮った動画も配信しています。

コンリー主治医は翌日の記者会見で、「とても元気」「前日には軽い咳と鼻づまり、倦怠感があったが、いまはすべて完治か改善している」「過去24時間は発熱していない」「警戒はしているが楽観的」「入院は予防的措置」「現時点では酸素吸入を受けていない」「レムデシビルの投与を始めた」と述べました。入院前には、未承認のリジェネロン社の抗体カクテル「REGN-COV2」が投与されたことも別の医師が明らかにしています。

これに先立ちNYタイムズは、前日にトランプがホワイトハウスで酸素吸入を受けていたと報じていました。またメドウズ首席補佐官は、過去24時間は「とても憂慮すべき」状況だった、次の48時間が非常に重要と米メディアに述べたと報じられています。

トランプの感染発表の直前にはホープ・ヒックス大統領顧問がコロナに感染したと発表されていました。ヒックスはトランプの大のお気に入りの側近で、テレビ討論会やその後のミネソタ訪問にも同行しており(マスクをしていない姿も目撃)、トランプへの感染を危惧する声が上がっていました。

また、トランプの感染発表後、ケリーアン・コンウェイ元大統領顧問、マイク・リー上院議員、トム・ティリス上院議員、マクダニエル共和党全国委員会委員長、ジェンキンス・ノートルダム大学学長、ホワイトハウス担当記者3人の感染が発表されました。これらの人々は、いずれも先々週(9月26日)にトランプがエイミー・コニー・バレット判事を連邦最高裁判事に指名したときのホワイトハウスでのイベントに参加していたので、このときにクラスター感染が発生したことが疑われています。

さらに、ビル・ステピエン選対本部長、ロン・ジョンソン上院議員、クリス・クリスティ前NJ州知事も感染したとのこと。ステピエンは7月にブラッド・パースケールの降格後に昇格し、それ以降の選挙戦略を仕切ってきた重要人物です(以下の記事参照)。

「トランプの大統領選延期発言と郵便投票、バイデンの副大統領候補」(8/4)

なお、パースケールは、最近、自殺すると脅して自宅で暴れて妻が警察に通報、拘束されて入院するという騒ぎがあり、先週、ストレスから選対幹部を辞任すると発表しました。どうも、トランプ陣営と関わると不幸になる人は多いですね・・。

一方、ペンス副大統領とバイデン前副大統領は、検査結果は陰性だったと発表しました。今週予定されている副大統領候補の討論会は予定どおり実施されると発表されています。ただ、ペンスは、先に述べたホワイトハウスでのイベントに出席しており、まだ感染の疑いがあるのではないかとの指摘もあります。

先週には大統領選終盤の山場であるテレビ討論会が行われましたが、それが吹っ飛ぶほどの大きなサプライズでした。まだ状況が流動的ですが、大統領選を1か月後に控える中で、選挙結果に大きな影響を与える動きになる可能性があります。今後の展望について、明日解説します。

●米大統領候補の第1回テレビ討論会

討論会の直後に以下の記事で解説しました。その後のトランプ大統領のコロナ感染で霞んでしまいましたが・・。

「米大統領候補の第1回テレビ討論会」(10/2)

●米経済対策第4弾

米下院が民主党提出の2.2兆ドルの経済対策案を可決しました。また、トランプ大統領は、コロナ感染後に追加経済対策の成立を呼びかけるツイートをしています。

マーケットは経済対策の成立に期待をかけて好感したようですが、果たしてどうなるのか。今後の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。

●ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突

アゼルバイジャン西部の山岳地帯ナゴルノ・カラバフ周辺で、アゼルバイジャンとアルメニアの間で大規模な軍事衝突が発生しました。死者は100人以上に上っていると報じられています。

ナゴルノ・カラバフ(ロシア語で「カラバフの山岳地帯」の意味)は、ソ連成立以前からアゼルバイジャンとアルメニアの間で領土紛争が繰り広げられてきた地域です。ソ連が成立すると、アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国への帰属が決定しましたが、人口の大部分はアルメニア人だったため、「ナゴルノ・カラバフ自治州」として自治が認められました(周辺の地図はこちらのリンク参照)。

その後も両国間の領土紛争は続き、ソ連が崩壊すると、アゼルバイジャンとアルメニアはそれぞれ独立しますが、このときナゴルノ・カラバフも独立を宣言しました(「アルツァフ共和国」を自称)。しかし国際社会から独立は認められず、アブハジア、南オセチア、沿ドニエストルと同様、未承認国家という扱いになっています(なおこれらの未承認国家はナゴルノ・カラバフを国家承認しています)。形式的にはアゼルバイジャン領ですが、実態としてはアルメニアの支配下にあり、保護領のような状況になっています。

その後も両国の衝突は続いていましたが、今年7月頃から双方が大規模な軍事演習を行い、小競り合いも発生して、緊張が大きく高まっていました。そして先週、ついに大規模な衝突に至ります。

米仏ロは、ナゴルノ・カラバフ紛争を調停するための枠組みとして欧州安保協力機構(OSCE)に設置された「ミンスク・グループ」の共同議長を務めており、3か国の首脳はアゼルバイジャンとアルメニアに対し即時停戦を求める共同声明を発表しました。アルメニアは停戦を受け入れる用意があると表明しています。

一方、トルコは、かねてからアゼルバイジャンを支援してきましたが、エルドアン大統領は、アルメニアがまずナゴルノ・カラバフの占領をやめるべきと主張し、OSCEの停戦要求は受け入れられないと表明しました。トルコは傭兵をアゼルバイジャンに派遣しているとも報じられています。

今回の衝突の背景と今後の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。

●クウェートのサバーハ首長の死去

クウェートのサバーハ首長が死去。ナワーフ皇太子(サバーハ首長の異母弟)が新首長に即位しました。

サバーハ首長は91歳。40年間外相を務めた後、06年に即位しています。以下の記事で述べたとおり、1月に死去したオマーンのカブース国王(79歳で在位50年)と並ぶ湾岸アラブ世界の長老でした。

「オマーンのカブース国王の死去」(1/13)

クウェートは、イラン、イラク、カタールといったサウジらと伝統的に敵対的な関係にある国々とも一定の関係を維持し、仲介的な役割を担ってきました(以下の記事参照)。それは、サバーハ首長の外交力による面が大きかったといえます。

「カタールの国交断絶とトランプ政権の混沌(1)」(17/6/14)

一方、若い指導者が台頭するサウジ、UAE、カタールと比べると、旧世代を代表する人物でもあり、UAE・バーレーン・イスラエルの国交正常化に対しても慎重な姿勢を見せています。

サバーハ首長の死去も湾岸アラブ世界の世代交代を感じさせる出来事ですが、しかしナワーフ新首長も83歳。これまでの外交や伝統を重視する姿勢に大きな変化は生じないと考えられています。新首長の高齢もあり、次の皇太子が誰になるかが早くも注目されています。

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今週の動き
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10/4(日)
・ポンペオ国務長官が日本を訪問(韓国とモンゴルの訪問は中止)(~6日)
・仏領ニューカレドニアでフランスからの独立を問う住民投票

10/5(月)
・ユーロ圏財務相会合(オンライン)
・ノーベル医学生理学賞発表(ストックホルム)

10/6(火)
・日米豪印外相会談(東京)
・EU財務相会合(オンライン)
・ノーベル物理学賞発表(ストックホルム)

10/7(水)
・米大統領選の副大統領候補のテレビ討論会(ユタ州ソルトレークシティ)
・ノーベル化学賞発表(ストックホルム)

10/8(木)
・ノーベル文学賞発表(ストックホルム)

10/9(金)
・ノーベル平和賞発表(オスロ)

10/10(土)
・双十節(中華民国の建国記念日)
・朝鮮労働党創立記念日

●米副大統領候補のテレビ討論会

大統領候補の討論会に続き、ペンス副大統領とカマラ・ハリス上院議員の討論会が行われます。場所はユタ州ソルトレークシティのユタ大学。司会はUSAトゥデイのワシントン支局長のスーザン・ペイジです。

ペンスとハリスのコロナ検査結果は陰性だったということで、予定どおり実施されると発表されました。ただ、「先週の動き」で述べたとおり、ペンスは、エイミー・コニー・バレット判事の連邦最高裁判事指名イベントに参加しており、本当に大丈夫なのか、不安があります。討論者の間の距離をさらに長くするなど、感染対策を強化することで対応するようです。

ペンスはトランプのような極端な割り込みを見せることはなく、まともな討論会になるでしょう。ペンスは16年の討論会でも、持ち前の鉄仮面のような落ち着きを発揮し、良いパフォーマンスを見せました。一方、ハリスは元気さと積極的な雄弁が持ち味。面白い討論会になりそうです。

●ノーベル平和賞

ノーベル平和賞が発表されますが、注目されるのは何といってもトランプ大統領が受賞するかどうか。私のコメントは以下の記事で述べたとおりです。

「イスラエル・バーレーンの国交正常化合意」(9/14)
「イスラエル・UAE・バーレーンの国交正常化の調印式」(9/21)

しかし、今回の候補者は、プーチン大統領、ナワリヌイチハノフスキーチハノフスカヤ・・など政治的に呉越同舟な人たちがいて、メンツが濃いですね。まあ、推薦のハードルは低く、300人以上が候補になっているとのことなので、そこまで驚くべき話ではないのですが。

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あとがき
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長きにわたる大統領選が終局を迎える場面で、まさかのトランプ大統領のコロナ感染。分析者としての視点を離れて、素朴な感想を言えば、ドラマとしか言いようがないですね・・。

トランプ政権の4年間は、息もつかせぬジェットコースターのような興奮のシーンの連続でした。大統領選で勝利して、物語はシーズン2に進むのか、それともここで終わるのか。終わるとすればどうなるのか・・と思っていたら、え、こうなるの?という展開。これでエンディングとなれば、映画作品として完璧という気もします(注:あくまでも選挙の敗北という意味です。まずはできるだけ早い回復を私も祈っています)。

その作品は、見る人次第で、傲れる者は滅ぶという「因果応報」譚にもなれば、英雄の悲劇とその遺志の継承という「殉教者」譚にもなります。どちらにせよスターウォーズのような壮大な物語になり、「トランプ神話」として米国史に深く刻まれるでしょう。ナルシストのトランプとしては本望かもしれません。まあ、これからの1か月、一波乱も二波乱もありそうで、まだまだ気は抜けませんが、こういう終幕もまたトランプらしいのかな・・と思ったりもしました。

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5 comments on “今週の動き(10/4~10) トランプコロナ感染、米経済対策第4弾、ナゴルノ・カラバフ衝突、クウェート首長死去
  1. KB より:
    太字!(笑)

    東証は太字じゃないけど、石原さとみさんの結婚は太字・・・(笑)分かりみが深い!お気持ちお察しします。。。

    「米経済対策第4弾」マコーネルの意向をしっかりとらえることができて、大変有益でした。
    時間も限られていますし過度な期待をせず、むしろトランプ体調リスクとその影響について、地に足付けてしっかりみていきます。よろしくお願いします!

  2. ださださ より:
    そこ!!

    まさか、JDさんが石原さとみ結婚に触れてくるとは思いませんでした。
    大笑いしてしまいました。(笑)

  3. メルマガ愛読者 より:
    メルマガ質問

    ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突にて「アルメニアは、独立以来、アリエフ一族が独裁を維持」と記載がありましたが、アゼルバイジャンの間違いではありませんか??

  4. JD より:
    KBさん、ださだささん

    はい、石原さとみ結婚もオクトーバー・サプライズでした。笑

  5. JD より:
    メルマガ愛読者さん

    おっしゃるとおり、こちらは誤記でした。今朝配信のメルマガで訂正しております。大変失礼しました。

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