2020/09/14 00:00 | 今週の動き | コメント(1)
今週の動き(9/13~19) ウッドワード新著、イスラエル・バーレーン国交正常化+UAE調印式、米経済対策第4弾、TikTok買収期限、米国務次官訪台、中EU首脳会議、ルカ・プーチン会談
大坂なおみ選手が全米オープンで2度目の優勝。4大大会では3度目の優勝。まさに快挙でしたね。
各試合で米国の黒人の犠牲者の名前を書いたマスクを着用して登場しましたが、決勝まで進んだことで、その名前は7人に上りました。ブリオナ・テイラー、イライジャ・マクレーン、アマード・アーベリー、トレイボン・マーティン、ジョージ・フロイド、フィランド・カスティール、タミル・ライスでした(これらの人々については、私も以下の記事で解説していました)。
・「ミネアポリスでの黒人男性死亡事件(抗議デモと暴動の激化)」(6/1)
・「米国の警察改革」(6/16)
勝ち続ける前提でマスクを用意していたということですね。その覚悟と結果を出す実力、見事でした。
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先週の動き
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9/6(日)
・トランプ大統領とサウジのサルマン国王が電話会談
・香港で立法会選挙の延期に対する抗議デモ
・ベラルーシで大規模な反体制デモ・集会
・ルワンダ当局が映画『ホテル・ルワンダ』のモデルになったホテルの元支配人ポール・ルセサバギナ氏をテロ容疑で逮捕
9/7(月)
・レイバーデー
・トランプ大統領が中国についてコロナの責任を追及すると述べ、経済面での「デカップリング」を検討していると表明
・トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエンの暴露本『Disloyal: A Memoir』が出版
・ペンス副大統領がウィスコンシン州ラクロスを訪問
・バイデン前副大統領がペンシルバニア州ハリスバーグを訪問
・ハリス上院議員(民主党副大統領候補)がウィスコンシン州ミルウォーキーを訪問
・サウジの裁判所がカショギ殺害事件の容疑者8人に禁錮7〜20年の確定判決(5人の死刑判決を撤回)
9/8(火)
・米議会が再開
・米共和党指導部が上院に5000億ドル規模の新型コロナウイルス対策法案を提示
・NY州ロチェスターで3月23日に黒人男性ダニエル・プルード氏が警官に飛沫防止の袋をかぶせられ窒息死した事件を受け、ロチェスターの警察署長が辞任
・習近平国家主席が新型コロナウイルスの抑制に貢献した医師や軍人らの表彰式で演説(「利己主義や責任転嫁は自国だけでなく世界に損害をもたらす」と発言)(北京)
・中国の王毅外相が中国政府がデータのセキュリティに関する国際標準の基準作りを進めると発表(北京)
・豪州が中国から出国禁止を命じられていた豪国籍の特派員記者2人の帰国を発表
9/9(水)
・トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染が広がる前の2月時点でコロナの危険を知りながら、対外的には「パニックを避けるため」危険性を低く見せる発信をしていたことをボブ・ウッドワードに話していたことが判明
・トランプ大統領から90年代に性的暴行を受けたと主張する女性による同大統領への名誉棄損訴訟についてホワイトハウスが司法省に弁護の引継ぎを依頼しているとバー司法長官が表明
・米中央軍のマッケンジー司令官がイラク駐留米軍を9月末までに現在の5200人から3000人、アフガン駐留米軍を11月までに現在の8600人から4500人に削減する方針を表明
・米国土安全保障省のウルフ長官代行がオレゴン州ポートランドでの暴力行為に白人至上主義者と無政府主義者が関与していると発言
・米国土安全保障省の情報部門の元高官ブライアン・マーフィー氏がロシアの選挙介入に関する分析をやめ、代わりに中国とイランの介入について報告するようウルフ長官代行から指示されたことを内部告発
・バイデン前副大統領が「メード・イン・アメリカ税制」を発表(ミシガン州ウォーレン)
・東アジア首脳会議(EAS)の外相会議(オンライン会議)
・ASEAN外相会議(同)
・英国のジョンソン政権が1月に発効したBREXIT協定の一部を無効化する「国内市場法案」を下院に提出
・ベラルーシが反体制派の有力指導者マリア・カリスニコワとマキシム・ズナクを拘束したと発表
9/10(木)
・トランプ大統領がイラク駐留米軍を短期間で2000人程度に削減すると表明
・米国務省が米国の大学や研究機関から知的財産や重要技術が流出するのを防ぐため6月以降に中国人1000人以上のビザを取り消したと発表
・米財務省がロシアのエージェントとして偽情報を拡散して大統領選への干渉を図ったとしてウクライナのデルカチ議員に制裁を科したと発表
・米上院が共和党提出の5000億ドル規模の新型コロナウイルス対策法案の採決に向けた動議を否決
・米・ASEAN外相会議(オンライン会議)
・マイクロソフトがロシア、中国、イランのハッカーがトランプ陣営とバイデン陣営にサイバー攻撃を仕掛けていると発表
・台湾の国防部が中国軍の戦闘機による9月9日と10日の防空識別圏への侵入を非難
・中印外相会談(モスクワ)
・ECB定例理事会(フランクフルト)
・ベイルートの8月4日の大爆発の現場で火災
9/11(金)
・トランプ大統領がイスラエルとバーレーンの国交正常化の合意を発表
・トランプ大統領とバイデン前副大統領がペンシルベニア州シャンクスビルでの同時多発テロの追悼式典に出席(バイデンはNYでの式典にも出席)
・中国が米国による中国外交官の活動の規制を受けて米国外交官の活動を規制したと発表
・中比国防相会談(マニラ)
・中国外交部の趙立堅報道官がディズニー映画『ムーラン』への新疆ウイグル自治区当局の協力に対する批判について反論
・ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合(オンライン会議)
・ユーロ圏財務相会合(ベルリン)
・EU財務相会合(ベルリン、〜12日)
・日英EPAの大筋合意
9/12(土)
・トランプ大統領がネバダ州ミンデンで選挙集会
・アフガン政府とタリバンの恒久停戦に向けた協議(ポンペオ国務長官も参加)(ドーハ)
・米州開発銀行(IDB)の次期総裁に米国のマウリシオ・クラベルカロネNSC上級部長(西半球担当)が選出されたと発表
・パリで政府に対する抗議デモ(「黄色いベスト」運動)
●ボブ・ウッドワードの新著『Rage』
今週(9月15日)、ボブ・ウッドワードの新著『Rage(怒り)』が発売されます。18年9月に発売された『Fear: Trump in the White House(恐怖の男 トランプ政権の真実)』に続くトランプ政権の内幕本(以下の記事参照)に続く第2弾になります。
・「ワシントン・ポストでのボブ・ウッドワードの新著の抜粋とNYタイムズでの匿名の政府高官によるトランプ批判」(18/9/10)
前著『Fear』と同様、今回も発売前に抜粋がワシントン・ポストに掲載されました。今回、ウッドワードはトランプ大統領に対して合計9時間ものインタビューを行っており、録音もすべて許可されたとのこと。ワシントン・ポストではその音声の一部も公開されています。
新型コロナウイルス、米軍人、北朝鮮、オバマ、ロシアの介入といった様々なテーマについて、トランプの肉声が伝えられていますが、最も注目を集めたのはコロナ対応でした。トランプは、2月時点でコロナが危険な感染症であることを知りながら、対外的にはその危険性を意図的に低く見せるようにしていたと語っていました。
トランプは、この発言が事実であることを認め、人々が冷静を保てるようにするためだったと説明。自らの行動をチャーチルやルーズベルトが国家の危機に瀕して行った演説になぞらえました。トランプの発言は波紋を呼び、バイデンは「国民を裏切った」として非難しています。
北朝鮮については、ウッドワードはトランプと金正恩の往復書簡27通を入手し、その内容を説明しています(そのうち2通はCNNが公開)。金正恩の書簡はトランプに対する称賛の言葉であふれており、トランプは金正恩の書簡を「ラブレター」と呼んでいます。
トランプは、その「ラブレター」に対し、シンプルで率直な言葉使いで応え、「映画とかゴルフ行こうぜ!」など述べています。女性からのロマンチックな求愛に男らしい態度で応えているような趣きです。
そして、金正恩は、合同軍事演習が完全に中止されなかったのに対し、「閣下、私はとても気分を害しています。でもこの気持ちを貴方には隠したくない。そういう率直な気持ちを貴方に共有できる関係を私は誇りに思っています」と執筆。怒りと嘆きをぶちまけながら、なお求愛を続ける・・本当に恋人同士のようですね(苦笑)。
では、ウッドワードの新著はどのような意味をもつのか。大統領選への影響を中心にコメントします(※メルマガに限定)。
●イスラエル・バーレーンの国交正常化合意
トランプ大統領がイスラエルとバーレーンの国交正常化の合意を発表しました。バーレーンは、今週(9月15日)に開催されることになったイスラエルとUAEの調印式にも参加する予定とのこと。
以下の記事で述べたとおり、バーレーンが続くことは予想されていましたが、それにしても迅速でした。ポンペオ国務長官の訪問も効いたのでしょう。
・「イスラエル・UAEの国交正常化」(8/19)
今後、オマーンなどが続くでしょうが、やはり最も注目されるのはサウジです。オマーンとサウジの事情については上記記事で説明したとおりですが、バーレーンとサウジの関係を考えると、これだけ早い動きを見せたことは示唆に富みます。
ホワイトハウスでの国交正常化の調印式にはネタニヤフ首相が出席しますが、UAEのムハンマド・ビン・ザイド(MbZ)皇太子は出てこないとのことです。ここでネタニヤフと握手すれば、後世まで歴史的映像として残るでしょうが、アラブ世界の反発を考えると、現時点では、さすがにそこまではできなかったのでしょう。
イスラエルとUAE・バーレーンとの国交正常化は、トランプ政権にとっては大きな外交成果といえます。先週、トランプがノーベル平和賞候補に指名されましたが、個人的には受賞してもおかしくはないと思います。ノーベル平和賞の発表は10月9日。受賞すれば選挙に向けた格好のアピール材料になります。
なお、ノーベル平和賞の候補になるには、各国首脳や国会議員など一定の資格者が推薦すれば良いので、これ自体のハードルは高くありません。18年には米朝首脳会談を理由に指名されたので、今回は2回目です。
●米国の経済対策第4弾
上院が共和党提出の5000億ドル規模の新型コロナウイルス対策法案の採決に向けた動議を否決しました。以下の記事で述べた通りの展開でした。
・「米国の経済対策第4弾」(9/7)
今回の否決の意義と今後の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。
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今週の動き
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9/13(日)
・ロシア地方選挙
9/14(月)
・中国・EU首脳会議(テレビ会議)
・ロシア・ベラルーシ首脳会談(ソチ)
・自民党総裁選(両院議員総会)
9/15(火)
・イスラエルとUAEの国交正常化合意に関する調印式(ワシントンDC)
・ボブ・ウッドワードの新著『Rage』が発売
・米商務省のファーウェイに対する事実上の禁輸措置の強化措置が発効
・TikTok買収交渉の期限
・FOMC(~16日)
・国連総会開幕(NY)
9/16(水)
・EUのフォンデアライエン欧州委員長の施政方針演説(ストラスブール)
・臨時国会召集(首相指名選挙)
9/17(木)
・米国務省のクラック次官(経済担当)が訪台(~19日(未発表))
・ADB総会(テレビ会議、~18日)
9/19(土)
・台湾の李登輝元総統の告別式(台北郊外)
●イスラエル・UAEの国交正常化合意の調印式
「先週の動き」の解説を参照下さい。
●TikTok買収の期限
マイクロソフトなどによるTikToKの買収交渉が期限を迎えます。先週、トランプ大統領は「期限は延長しない」と述べています。
中国は、8月28日に「輸出禁止・輸出制限技術リスト」の改訂を発表しています。輸出禁止・制限の対象にはAIやアルゴリズムと解釈される文言が追加されており、TikTokの技術が引き渡されるのを拒むための措置とみられています。TikTokの強みはAIとアルゴリズムによる画像加工とレコメンデーション機能にあるので、買収交渉には大きな影響を与えることになります。
トランプは8月6日に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づきバイトダンスとテンセントとの取引(TikTokとウィーチャットに関わる取引)を45日後に禁じる大統領令に署名しています。したがってこれも今週(9月20日)に発効することになります。
●米国務次官の訪台
台湾外交部がキース・クラック国務次官(経済担当)の訪台を実現させる方向で調整していると発表しました。今週実現する可能性があると報じられています。コメントを述べます(※メルマガに限定)。
●中国・EU首脳会議
習近平国家主席がフォンデアライエン欧州委員長、ミシェル欧州理事会議長、メルケル首相とテレビ会議で会談する予定です。ポイントを述べます(※メルマガに限定)。
●ルカシェンコとプーチンの会談
ベラルーシのルカシェンコ大統領がロシアのソチを訪れ、プーチン大統領と会談することになりました。8月の大統領選とその後のデモの発生から初めての首脳会談になります。ポイントを述べます(※メルマガに限定)。
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あとがき
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■ サンフランシスコの空がオレンジ色に 米の山火事が深刻化(9月11日付BBC)
カリフォルニアの山火事の煙の影響で、サンフランシスコやオークランドの風景が一変しています。SF映画に出てくる世界の終末を感じさせるような光景ですね。SNSでは画像や動画が拡散し、「核の冬」「ブレードランナーの世界」といったコメントも見かけます。
ちょうど先週、カリフォルニアに住む友人とオンラインで話しましたが、リアルタイムにその状況を伝えてくれました。大気汚染で外にも出られないとのことです。
カリフォルニアには私も昔、2年間住んだことがありますが、その気候の良さに感動したものです。2年前に久しぶりに出張で訪問したときにもやはり感動しました。それがこうなるのは衝撃ですが、いつも天気が良く、乾燥し過ぎているために、山火事が起こると止められなくなるとも聞きます。
また、近年、地球温暖化が影響していると指摘されます。今回の山火事と大気汚染を受けて、オバマ前大統領やカリフォルニア州のニューサム知事は気候変動への取り組みを強調しています。
それにしても、ニューサムの動画は、服装や色彩のためか、これまたブレードランナーの一場面のように見えますね。映画俳優のようなニューサムのルックスも関係しているような気がしますが。
ちなみに山火事のような事態が重大な大気汚染を生み出すことは、インドやインドネシアでも見られます。これらの地域では、農地や森林で大規模な「野焼き」が行われます。その煙が都市や隣国にも及び、デリーなどでもヘイズに包まれた光景が生まれるのです。インドの場合、野焼きは収穫が終わった11月頃に行われるので、大気汚染は冬に最も悪化します。インドに行った人が「大気汚染が怖かったが、そうでもなかった」というのを聞くことがありますが、その人が行った時期が夏だった可能性もあります。
大気汚染というと長期的・構造的な課題という印象を受けますが、実はこういった短期的な動きも大きいわけですね。中国も、「APECブルー」とか、コロナのロックダウンで大気汚染が改善したといったことがありました。もちろん一番重要なのは持続的な取り組みですが。
私は環境問題の専門家ではなく、「グリーン・ニューディール」のような極端な政策にはどちらかといえば懐疑的です。しかし、中国やインドでは市民にとって切実な問題です。豪州などもそうです。世界の方向性を見通す上では、こうした感覚を理解することも重要でしょう。
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ご了承のうえ、ご利用ください。
毎回、詳細な分析だけでなく、議会の協議の行方や大統領の権限なども丁寧に解説いただいているのでとても助かります。
経済対策は大統領選のカードになると思っていただけに、肩透かしの印象がぬぐえませんでした。さらに見通しとして、かなり長い道のりになりそうで、この先どうなるのか気になります。
それにしても、トランプは「仲間に入れて欲しい」とはまた随分な理由ですね(笑)。経済対策についても必ずしも共和党にネガティブに作用するとは限らない状況ですから、ますます大統領選の行方が気になります。