2018/11/28 05:00 | 米国 | コメント(6)
ヒラリー・クリントン出馬報道、米議会の委員会、カバノー効果、言論の作法
読者の方から沢山の質問をいただいているので、本日はそれに対するお答えの回にします。テーマは、最初の3つは米国政治に関するもので、最後の1つは言論についての一般論です。最後の質問への回答のみ(一部を除き)一般公開します。
これら以外にも色々な質問をいただいているのですが、とにかく世界の動きが激しいのでタイミングを逃しています・・忘れてはいませんので(苦笑)、恐れ入りますが少しお待ち下さい。
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ヒラリー・クリントンの出馬報道
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コメント欄でヒラリー・クリントンが次期大統領選に出馬するという報道についてコメントをいただきました。
元ネタになった記事はこちらですが、これを見たときは・・私も目が丸くなりました(笑)。
■ 【寄稿】次の大統領選、ヒラリーはまた出馬する(11月12日付ウォール・ストリート・ジャーナル)
私からのコメントを書きます(※メルマガに限定)。
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米議会の委員会
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コメント欄で以下の質問がありました。
>下院金融サービス委員長
>ドットフランク法が「下院金融サービス委員会」でしばしば話題になりますが、中間選挙後、委員長が共和党のジェブ・ヘンサーリング下院議員から民主党のマキシン・ウォーターズ議員に代わるかもしれない、といわれているようです。
>仮にそうなると、再び金融機関の監視強化、金融機関には向かい風、よってマーケットも軟調・・・というシナリオも見えてきたり。。。
>思惑に振り回されないためにお伺いしたいのですが(笑)、
>そもそも、この委員長というのはどうやって決まるのか?
>委員会ではどのように法律が制定され、施行までの流れはどのようなものなのか?
>既にご説明されていましたら申し訳ございませんが、お時間ありましたらぜひ教えてください。
玄人好みの質問ですね(笑)。私からの回答を述べます(※メルマガに限定)。
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カバノー効果の分析
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コメント欄で以下の質問がありました。
>アメリカ中間選挙に関するJDさんの解説で一番驚きだったのは、「カバノー効果」です。
>「カバノー騒動で、共和党支持者の結束が固まり、トランプ支持率アップに繋がった」ということでした。一方でメルマガでもご指摘の通り、カバノー騒動は穏健な保守層を共和党から遠ざける側面もあったはずなので、以下のような疑問を持っています。
>・プラス面(支持者の結束強化)とマイナス面(穏健な保守層を遠ざける、さらにはリベラル層の結束強化も?)がある中で、何が起こったのかについて、もう少し知りたい。
>・例えば「マイナス面が顕在化するのはもともと民主党が有利なところで、プラス面が顕在化するのは両党せめぎ合っているところだったので、合計するとトランプ陣営にはプラスに働いた」みたいなことがあったのか。
>同じことだが「重要州の知事選においては、プラス面の顕在化が大きかった」みたいなことが?
>・トランプ陣営は、こうした帰結をある程度予測していたのだろうか。
>・民主党陣営がカバノー騒動において、何かしくじりをやったとすれば、それは何なのか。それはどのように有権者に響いたのか。
>こうした論点について、何かご意見があれば伺いたいと思います。
>ちなみに私は、カバノー氏が議会証言で感情をあらわにし、質問に答えず「あなたはどうなんですか」と逆質問で論点回避しているのを見て、「なんで普通に応対できないのだろう」「こんな人が終身の司法の最高位に相応しいのだろうか」と思っていました。私は自分が思っているよりも、リベラルなのかも知れません。
大変興味深いご指摘ですね。私からの回答を述べます(※メルマガに限定)。
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言論の作法
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こちらとこちらのコメント欄で以下のコメントをいただきました。
>メルマガに思うこと
>今週のイギリスのものは
>私にとっては理想的なものでした(笑)
>なぜなら、固有名詞がほとんどない!
>ありがたい、ありがたいと思い読みました
>この概略を学習すれば
>あとは自分で調べればよいと思います
>ありがとうございます
>まず、文章については
>私が良い文章と認めるのは
>1 推測と事実が別の文章になっていること
>2 事実が端的で矛盾がないこと
>これだけです。
>ところが経済評論家や歴史家は
>事実と推測が1つのセンテンスになっている
>読む側からすれば、非常に疲れる
>どこまで事実で、どっから推測なんだよと。
いずれも大変ありがたいお言葉です。そう言っていただけると私もうれしいです。
「固有名詞」は・・私はいつもどおりのペースで書いていますが(笑)、BREXIT協定については制度面の解説が多かったので、そのような印象を与えたのかもしれません。
「事実」と「評価」の峻別はおっしゃるとおりで、私も言論の基本的な作法と思っています。しかし、世の中にはそれすらできていないのに「有識者」然として文章を書く人が多いのも事実です。そもそも文章の書き方以前に、「事実」をきちんと把握することをせず、「評価」とも言えないようなただの「感想」を述べている人もいます。
しかもこういう人に限って、あやふやな知識をごまかしてプライドを守りたいのか、知ったかぶり、根拠のない独りよがりな思い込み、上から目線、大げさなレトリック、思わせぶりな表現が多いようです。私にはただの悪ふざけにしか見えません。こういう人は、何かを語る前に、まずは基本的なところから勉強した方が良いでしょう。
こういったまがい物の「評論」は、不毛なだけなので無視すればよいのですが、事情を知らずに読んだ人がミスリードされるおそれがあります。そんな状況を残念に思ったことがメルマガ・ブログを始めた理由の一つでした。
「事実」に関しては、公開情報であっても、メディアが十分に取り上げていなかったり、日本語では説明がされていなかったり、あるいは専門的で複雑すぎて理解されていないものが数多く存在します。私は、そうした情報を把握・整理した上で、読者の方には、真に重要なポイントだけを絞り込んで伝えるようにしています。
世の中には、王岐山がどうした、バノンが何をした・・といった「噂の真相」のような情報ばかりに飛びつく人がいます。しかし、権威主義体制の要人や公人でない人の動きには不正確・不透明な部分が多く、確かなことは言えません。こういう情報は、私のような情報のプロやインサイダーであれば役に立つこともありますが、そうでない人には扱いきれません。そもそも基本的にどこまで真剣な評価の対象になるか慎重に考える必要があります。ここは那須の山奥の兄ちゃんさんがおっしゃる「固有名詞」に通じる部分かもしれません。
物事の本質に迫る上では、こういった噂の真相よりも、公式な発表や制度といった公開情報の方がはるかに重要な意味をもちます。その膨大な情報を読み解くことこそ本当のインテリジェンスです。これはインサイダーでなくとも知性があれば誰でもできることです。
次に「評価」に関しては、私はいつも、一人で結論を出すことなく、その道の専門家、政府関係者を含むインサイダーや海外(特に米国)の有識者の意見を参考にしています。
私は友人を含め、このテーマならこの人が信頼できるという人たちと常日頃から連絡をとり、複数の意見を突き合わせています。その上で最も主流といえる見方を見極め、それに依拠するか、あるいはあえて独自の見方をとるか、という判断をしています。
このため、少なくとも自分の見方が独りよがりではないという自信があります。また、少なくとも多数の信頼できる専門家が合理的と考えた見立てであれば、ギリギリのところで見通しが外れても仕方ない、と割り切ることができます。
なお、分析の手法については、以下の記事で、(1)正確な事実の把握、(2)推論のフレームワーク、(3)事実の当てはめ、という手順をとることをお伝えしましたが、これについても質問を受けています。その回答も追って述べる予定です。
・「中間選挙のポイント(5):知事・州議会、最後の結果予想」(11/6)
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あとがき
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今さらですが日本版『SUITS/スーツ』、『リーガルV』と弁護士ドラマが人気のようですが、なぜか両方とも弁護士資格がない人が活躍する筋立て。
オリジナルの『SUITS/スーツ』もそうでしたが、この非現実的な設定、個人的には理解ができません・・なんでそういう設定にこだわるのか、それで面白くなるのなら分かりますが、私なんか逆に「ありえねー」と引いた目で見てしまいます。ちゃんとドラマを見ずに言うのもなんですが(笑)。
最近の弁護士ドラマなら『ベター・コール・ソウル』が好きです。ただこれは『ブレイキング・バッド』のスピンオフなので、まずはそちらを見ないと100%では楽しむことができないのが難点。『ブレイキング・バッド』は面白いけどちょっと長いんですよね(苦笑)。
・「ドラマ『ブレイキング・バッド』」(17/10/6)
ちなみにドラマの主人公の名前「ソウル・グッドマン」は「It’s all good, man!」のダジャレ。「ゴーン・イズ・ゴーン!」よりはひねりがあるというか、「It’s all」が「ソウル」に近い音になるのが以下の記事で述べた英語の発音のポイントです。
・「英語のスピーキング(8):音の連結」(17/3/31)
英語の勉強法も近いうち続きを書く予定です。
あとはマンガですが、『イチケイのカラス』。こちらは裁判官が主役で、圧倒的なリアル路線。私は大好きですが、リアル(=地味)すぎて関係者以外誰が面白いと思うのか心配になります(笑)。ドラマ化は・・ないか(笑)。ご関心があれば読んでみて下さい。
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6 comments on “ヒラリー・クリントン出馬報道、米議会の委員会、カバノー効果、言論の作法”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
大変よく分かりました!基本やルールを正確に理解・把握せずにニュースを読み漁っても、身につかず、応用ができないのですが、こうして基本からさらに深堀、今後のポイントまで展開していただけるのは本当にありがたいです。また、今回に限らず、その他の方との双方向のやり取りもシェアしていただけるのも、勉強になります。雑誌や新聞、ネットでの情報発信からは得られない、こちらならではの大変貴重な機会です。
それに、『言論の作法』はとても趣があり、刺さる部分多く・・・。インテリジェンスの補給を引き続きさせていただきます(笑)
私は大昔、90年代インサイダーでした
といっても違法ではなく合法の
今もあるマーケットのある銘柄をみれば
誰が売って、買って、どういう思惑か
たいていわかります
いま、みて思うのは
まだ、あいつこんなこと
やっているのか
とか思っています(笑)
株数をみればたいてい
わかります
数字は客観的なんて大嘘で
その主体の個性が
数字に出ます(笑)
ですからインサイダー情報の
危険性や有用性の違いというのものを
誰よりも深く認識しています
言えることは
基礎知識のないバカに
インサイダー情報を流しては
いけないということ
これほど罪作りなことはなく
素人は
これを知って
知ったかぶりをして
とんでもない目に合う確率が9割以上
要は情報を渡しても
使いこなせない人がほとんどで
素人と自覚している人は
使ってはいけないものだ
という認識が
足りなすぎると思います
その危険性を認識しない人は使ってはいけないもの
と認識しています
インサイダーは
当たったときはバカ儲けですが
外れたときは悲惨
トータルで調査費用を使って
採用することに
意味がない情報ですので
今は、一切、やりません。
この当たったときの快感で
身を亡ぼす人を何人みたことでしょうか
裏情報というのは
悪魔のささやきと一緒で
身を亡ぼす一歩手前だと
私は思います
事実を重ねれば
たいていの場合
未来に何が起こるかわかります
もっと検証すれば
1年後のマーケットに何が
起こるか
ま、ほぼわかると思います
それを実践しているのが
安倍さんで
改元の時期や消費増税の時期に
何が起こるか的確に見通していると
思います。
ウソかもしれませんが
本当です
もう、来年の相場は決まっているのです
こういう現実がわかると
わかったふりして
偉そうに語っている人もわかりますし
ウソもかんたんにわかります
私は法律家ではないですが
事実を積み重ねる大事さ
本当に今、大事なことと理解できました
ただ、固有名詞は
これからも覚えないと思いますけど(笑)
本当に必要な人の名前なんて
何回も出てくるからそのうち覚える
JDさんの指摘した通り
背景も何もわかんない人の
名前
覚えてなんの意味があんの?
ということです。
無駄なことはしない
ここだけは
ぐっちー並みに合理的だと思います
流れがわかっていれば
次に何が起こるか
なんとなくわかると思います
固有名詞を覚えても
私には利益はありません
私の場合はコンセンサスは
一人ですが
幸いに私はバカなので
難しいロジックは
わかりません
だから
誰でもわかることが
コンセンサスになるのが
幸いですよね(笑)
これからもお願いします。
ありがとうございます
ペロシは記憶によると
ゴリゴリのイスラエル擁護派だったとの記憶があります
たしか2007年のイラン攻撃危機に際して
当時のブッシュに賛同していたような
記憶があります
来年のテーマになりますか?
お話の主旨、おっしゃる通りで、まことにわが意を得たりの心境です。
言葉にうまくまとめられないところを、上手にまとめていただいたように
漢字うれしく思いました。ありがとうございました。
現在進行形では、カルロス・ゴーン氏の日産・ルノー関係の記事が
まさに憶測のオンパレード、困ったものです。
ところで、まったく別の質問です。
カショギ受験について、サウジの権力筋は、なぜ総領事館内という、
盗聴その他のスパイ活動がなされている大変危険な場所での暗殺という、
きわめて拙劣な方法をなぜ選んだのでしょう。
「北」は他国の空港を使い、きわめて巧妙に、金正男氏を暗殺しました。もっとスマートに権力者をカムフラージュした殺害の方法はいくらでもあったでしょうに、なぜあんな稚拙な方法をとったのか。あるいは取らざるを得なかったのか?
その疑問がぬぐえず、ずっと釈然としないでいます。
お考えをおきかせいただけるとありがたいです。
英語の勉強方も、
お待ちしております!!
ご感想、励ましのお言葉、ご要望とご質問、どうもありがとうございます。
一つ一つのコメントが大変参考になっています。
ご質問への回答はメルマガで書きたいと思いますので、少しお待ちください。