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2017/03/03 00:00  | 米国 |  コメント(5)

​トランプ大統領の施政方針演説


​■ トランプ氏の施政方針演説、視聴者の7割が「展望明るい」(3月1日付CNN)

遅れましたが、トランプ大統領の施政方針演説。内容についてはすでにメディアやぐっちーさんが述べているとおりなので詳しくは述べませんが、最大のポイントは、トランプの振る舞いが非常に「大統領らしい」ものだったということ。

これまでの演説や記者会見は、メディアやエスタブリッシュメントとの対立をあおり、「忘れられた人々」の怒りをかきたてるダークサイドのプレゼンでしたが、今回は、初めて国民の団結を呼びかけました。この「大統領らしさ」が、トランプ政権の安定を望む人々が最も求めていたものでした。

ポール・ライアン下院議長は、「ホームラン、これまでの演説の中でベスト」と絶賛しましたが、この発言は、政権を支える立場にある共和党指導部の安堵を象徴するものといえるでしょう。トランプのネクタイが英国式のレジメンタルだったことも話題を呼んでいます。これが米国だけでなく、世界を意識している、言葉とは裏腹に視野の広さを示している、という深読み(?)もあります。

マーケットの好反応は驚くほどですが、何しろ元々の期待のハードルが低いだけに、これだけの安定感を見せれば十分に評価されるということでしょう。ただ、中身をみると、具体性や裏付けの乏しさは相変わらず。人の心はつかむが、内容はない・・・その意味では「いつもどおりのトランプ」です。

政権人事は遅れに遅れており、閣僚はもちろん、政治任命の高官ポストも決まりません。民主党政権が8年も続き、共和党系の人材プールの出番がいよいよ来たはずですが、トランプ側は経験豊富な実務家を排除しています。一方で、実務家側もトランプ政権には関わりたくない。ということで、人事が前に進まない状況です。

そういうわけで、政権の機能不全が続き、それが具体的な政策の立案実施につながらない・・・という悪循環です。それでも、政権発足から1か月を超え、当初の不透明感は和らぎ、かなり風景は変わってきました。

スティーブ・バノン首席戦略官・大統領上級顧問を中心とする側近への権力集中メディア排除ツイッターに象徴される場当たり的な発信・・・といった「トランプ流」の混沌の一方で、日米首脳会談フリン補佐官の辞任マクマスター陸軍中将の補佐官就任、そして今回の施政方針演説・・・と伝統路線への回帰の流れが見えてきています。

コメント欄で牧神の午後さんがオバマケア撤廃の修正について指摘されていますが、これは、共和党との関係をこじらせる危険がある一方で、全面撤廃では、あまりに混乱が大きく、国民との関係でももたない、という現実をみた判断ともいえます。そういう意味では、現実路線の現れです。

トランプは、一国の指導者として多くの欠陥を抱えています。しかし、知識はなくともバカではなく、ナルシストですが愛国者であり、感情的ですが融通無碍な合理主義者です。このHPでは、これまで何度もそうしたトランプが抱えるリスクとチャンスの両面を伝えてきましたが、日を追うごとに情報が増えてきましたので、より精度を高めた分析をしたいと思います。

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5 comments on “​トランプ大統領の施政方針演説
  1. ペルドン より
    研究対象としては

    これ程・・
    魅惑的な大統領の出現は・・
    JDにも・・
    知的バイアグラになるのでは・?・( ^ω^)・・・(笑

  2. 空の財布 より
    複雑?単純?

    アメリカ人が、トランプ個人は好きになれないが、その過激な言葉の奥底にあるものに約半数の国民がそこはかとなく共感を感じてるのであれば…なかなかしぶといでしょうね…。
    やはり、オバマ氏にはもう飽きたよ、というのがあるか…。
    人気が落ちるのは、結局何も変わらないじゃん、という現実が目の前に来た時か、そうすると、なかなかこの人気は剥げないか…?
    なにやら、その舞台装置が安倍首相と似ている…?(笑)

  3. 今日も良い天気 より
    映画を観てるようで

    政治に携わったことがないトランプ氏が大統領に、それを支えるのが、ゴールドマンサックス、エクソンモービル、著名な投資家、等々。まるで映画を観てるような。成功物語かコメディか。日本でもしも同じことが起こったら・・・
    少しはましになるのか、もっと問題山積になるのか。日本でも起こって貰いたいと思ってしまう今日この頃。

  4. なかのゆ より
    ほんとに

    いつも楽しく、そして自分を広げてくれる目線の広さに感謝してます
    ほんとばかじゃなきですよね
    感心しました
    でも上がり続けはありません
    日本刀のような切り口たのしみにしてます(´∀`*)

  5. JFKD より
    対露交渉は咎められるが 中国は咎められない

    オバマ政権はプーチンを敵視しウクライナ問題を仕掛けた。オバマも認めている。プーチンはそれに対応しただけ。どうしてもロシアを仮想敵にしたいが、中国は重要なビジネスの相手で、クリントンなど政治家も中国資金にまみれているので、中国には甘い。
    これをトランプは変更したいわけだが、なかなか中国を仮想敵と考える米国人は少ない。中露もいざとなれば米国に助けられてもきた関係だ。しかし中国は、まだまだ張子の虎だが、気付いたときはもう軍事的に米露も手遅れになるのでは。実際、米中露が直接戦闘するわけにはいかないのだ。だからパワーゲームで、台湾・東南シナ海を、中国に譲るとかの結末にならざるを得ない。
    EUは親中だから、日米露が対中で軍事的に結ぶのが、今後のモデルだが、経済的にはそれぞれ中国に依存しているので、足並みがそろうかどうか。自分たちで中国という化け物を育てていると解っているが、やめられない。転びそうになる中国を支えなければ、もう世界経済が立ち行かない構造だ。

    こういう世界をつくったエスタブリッシュを批判してトランプは出て来たわけだが、たしかに日米露の国民は冷戦時代を懐かしむ。できることなら戻りたいのだが、可能だろうか。笑 エスタブリッシュの元締めは奥の院だ。中国に対する計画表にはなんと書かれているのでしょう。あっという間にここまで育ててしまったが。

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