2017/02/17 00:00 | 米国 | コメント(6)
トランプ失墜のシナリオ①
トランプ政権が発足して4週目。今週が終わればちょうど一か月となります。目まぐるしい動きが続き、マーケットはその言動に揺さぶられていますが、実際のところ、政策面で具体的な成果が出ているわけではありません。
大きな話題を呼んだ入国制限の大統領令も、連邦地裁の差止により阻止されました。米国の統治システムが機能した結果といえるでしょう。また、経済界がトランプ政権ならではの政策として期待する、減税、ドッド・フランク法の見直し、インフラ投資、パイプライン建設・・・これらについても具体化はまだ先です。とはいえ、少なくとも方針が示された点は一定の評価に値します。
そして、外交面については、「トランプ・安倍の初の日米首脳会談」で述べたとおり、少しずつ安定感が出てきています。そういうわけで、実は、今のところ、悪いことばかりでもなさそうな状況です。
しかし、一方で、政権が発足して1か月が経過しようとしている今なお「この政権は長続きしない」という観測が、かなり多くの有識者の間で共有されています。では、トランプ政権が失墜するシナリオとその可能性とはいかなるものなのか。
考えられるのは、弾劾と退任です。いずれのシナリオも、鍵を握るのは共和党議員の動向です。よくたとえられるのはニクソン大統領の弾劾と退任です。ニクソンは、下院で弾劾の検討が進められ、弾劾決議が確実視された時点で、自ら退任しました。
しかし、ニクソンの時代は、上下両院をライバルである民主党が制していました。このため、弾劾の根拠があれば、下院の訴追、上院の裁判により実現する見通しは極めて高かったといえます。だからこそニクソンは決議を前にして覚悟を決めたのです。
これに対して、現在は、上下院を共和党が制しています。共和党議員が、自分たちのリーダーである大統領を追い落とすことは、常識的にみればあり得ない話です。弾劾があり得る、という予測があっても、トランプがニクソンのように先んじてあきらめる可能性は低いでしょう。
したがって、いくらトランプがひどいと言われようとも、実際に弾劾あるいは退任に至る可能性は極めて低い。これが基本的なラインです。
しかし、だからといって、共和党議員が反逆する可能性がゼロとはいえません。まず、共和党議員の中で、本心からトランプを支持している人はほとんどいないでしょう。そもそもトランプは共和党員ですらなかった人です。共和党議員でトランプを仲間と思っている人はいないと言ってよいでしょう。むしろ、自分たちの党を乗っ取られた、とすら感じているはずです。
ですから、本音をいえば、トランプを引きずり降ろして、マイク・ペンス副大統領を大統領に据えたいと思っている共和党議員が多数のはずです。それでも共和党議員の多くがトランプを支持するとみられるのはなぜか。
それは、トランプに乗っかる方が来年の中間選挙で勝てるとふんでいるからです。ですから、逆に言えば、トランプでは中間選挙で勝てない、と考えれば、共和党議員が離反する可能性が出てきます。
また、国家安全保障や共和党の根源に関わる価値観に真っ向から反する事態が生じた場合も同様です。それでは、中間選挙や共和党の価値観において、トランプに対する信頼を揺らがせるトリガーとなるイベントが何か。これは次回述べます。
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6 comments on “トランプ失墜のシナリオ①”
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売らんがなメディアとは雲泥の差…(笑)
で、「中間選挙や共和党の価値観において、トランプに対する信頼を揺らがせるトリガーとなるイベント」があり得るのが怖いところですね…。
トランプ大統領の、大統領を続けることのモチベーションって、何なのでしょうか?
金、権力欲、エリートからの支持率、米国の長期的国益、自分のやりたい事を好き勝手言える究極無責任立場になりたい(そんな人が、実務推進屋さんを出来る訳ないので違う)、も違う。
ぐっちーさん体験だと、トランプ氏は非常に理性的な人で、プロレス的発言はビジネス演技とのこと。では、プロレス実況し続けて、多数の人を良悪関係なしに注目させ続けることがモチベーションなんだろか。
いや見方が違うか。
プロレスアナ経験のある日本人報道アナが、報道番組を辞めてからバラエティ的TVに出演している姿ををチラッと見たら、勝手に脳内に場面を浮かべて、明らかに事実から逸脱したことを、センセーショナルこそが正義的にベラベラ言い続けていた。
自分の発言が、事実に基づく/基づかないはどうでもいい。それは、元報道アナの良心には抵触しない。医師の診断では、脳内のある分野が異常発達しているそうで、ご自身の脳内に浮かんだこと(脳内イメージを浮かべる脳力が異常発達している)を発言し続けることが、睡眠欲同等レベルで自然なんだろうと感じました。
と、ダラダラ失礼しました。
1個人が政府とは異なるルートで外国の当局と接触したのはけしからん!
ということですが、でもそれって他の人達も普通にやってますよね?
安倍総理がヒラリー氏と接触するのはノープロブレム。
でもロシア当局がフリンと接触するのはNG!
政治的ニュアンスがまったく違うというのはわかるのですが、
どうも米メディアは「法的観点から問題だ」というスタンスなのか
「ロシアの如き敵国との接触は安全保障上の脅威であり、政治的観点から問題である」というスタンスなのか、ごちゃ混ぜにしてしまっているように思います。
中間選挙にこのまま行くと、共和党負けると思われるので、
修正してくると思います。
事実上解任された理由は簡単。フリン氏の上司にあたるペンス副大統領に嘘の報告をしたから。
上司に嘘、それもバレバレの嘘、をついたらクビになるでしょう。
私がビックリしたのは、ロシア大使館への電話は常時モニタリング(=盗聴)されている事をフリン氏が知らなかったと思われる点です。
こんなの常識でしょ?National Security Advisor のフリン氏がが知らない?知っていれば、自分がついた嘘は直ぐに暴露る事がわかる筈。
この人は、無知だった事は確かだし、組織の中での動き方を知らないという点で無能でしょう。首になって、日本にとってもプラスですね。
トランプ大統領は政治家ではないし、共和党がソッポを向いているので人材が確保できない状況が続くのではないでしょうか。
教育省長官に承認されたデボス氏については、身内の共和党から反対票が二票出ました。
私は、この人は詐欺師だと思ってます。
労働省長官候補だったパズダー氏も辞退に追い込まれました。
組閣が終わる前に大統領が退任するという事態もあり得るかもしれません。
諸外国の首脳には迷惑このうえない大統領ですが、米国民がマスコミやウォール街のグローバリズムに対し反撃した米国民の正当な選択ですから、合わせるしかないでしょう。いくら政策が矛盾していても、堅い支持があるのだからやってみるしかない。マスコミの偏向報道は改まっていない。
安定性・予見性に欠けるので、政策が同方向ならペンスに昇格してほしいが、そうもいかないでしょう。トランプがいなければ劣化した共和党など負けていた。入国制限もオバマ政権の案に、範囲を少し広げたので違憲となったと思われます。
さて問題は、その矛盾した政策が過去への回帰か、先に向けての改革なのかということ。少なくともグローバル化の後戻りであることは間違いない。しかしサンダースのみならずトランプまでもが改革者グラックスであるという慧眼ぺルドンさんの神託の解釈が、またも我々を悩ませる。また当たるかもしれない(笑)。
国民国家を破壊するグローバリズムを、トランプのやり方だけで修正できるとは思えないが、グローバリズムも中国を見ても解るように既に世界を周回し、自身で元の米国に回帰するのか、また世界を周回するのか解らない。しかし米国から出発しているわけだから、グラックス兄弟が今、その瀬戸際でこれを抑えようとしていることは間違いない。成功するには米国民も損を覚悟でないと虫が良すぎる。既得権者のリベラル・マスコミの反撃も実際すごい。
はたしてこの老兄弟、パワフルではあるが寿命が心配。オバマと違って国際金融資本の奥の院との関係もそうスムーズではないのでは。トランプは特に矛盾している。兄弟の時代に、タイミングを見計らって奥の院が奥の手を出す予感もしないではない(笑)。