2016/02/03 00:27 | 米国 | コメント(12)
米大統領予備選挙:アイオワ党員集会
■Iowa Caucus Results(NYタイムズ)
●トランプの失速
アイオワ党員集会ですが、予想どおりの結末でした。まず共和党について。ドナルド・トランプが実際の選挙に入れば失速することは、直前の記事などで指摘していました。
トランプにとっては次のニューハンプシャーが極めて重要です。ここで負ければ早々に撤退という可能性も十分にあり得ます。
もっともニューハンプシャーは、アイオワと異なり党員集会ではありませんから、アイオワよりもチャンスがあるといえます。また、ニューハンプシャーの判官贔屓も追い風になる可能性があります。
●クルーズの勝利
テッド・クルーズの支持基盤である宗教右派は必ず投票に行く人たちですから、クルーズの勝利が固いことは、直前の記事を含め何度も述べてきました。しかし、ニューハンプシャーでのクルーズの支持率は11.5%にとどまります。
そして、アイオワの勝者はニューハンプシャーでは勝てないというジンクスは「序盤戦のポイント」で述べたとおりです。したがって、クルーズがニューハンプシャーで負ける可能性は十分にあります。勝負はネバダ、サウスカロライナまで持ち越されることになります。
●ルビオの健闘
マルコ・ルビオの支持が伸びていたことは直前の記事で指摘しましたが、予想を超えるパフォーマンスを残しました。その得票率23.1%は、クルーズの27.7%、トランプの24.3%に引けをとらない立派な数字です。
「共和党の序盤戦」で、本流の候補者にとって何より大事なのは、アイオワとニューハンプシャーで、1位はとれないまでも、2位か3位につけて、大敗を免れることであると述べました。ルビオとしては満足できる結果を残したといえます。
また、ジェブ・ブッシュ、クリス・クリスティ、ジョン・ケーシックという他の本流組を圧倒する数字をとったことも特筆に値します。共和党本流組の弱点は、候補者が多すぎて票が分散することにありました。今回のルビオのように他の追随を許さない結果が出てくれば、候補者を一本化する方向に向かいます。そうなれば、クルーズとトランプを上回る支持を得ることは、それほどあり得ない話ではありません。
ただ、現在のところ、ニューハンプシャーでのルビオの支持率は9.5%にとどまります。これはトランプとクルーズはおろか、ケーシックとブッシュより下回る数字です。したがって、ルビオとしては、アイオワの勢いをどこまでニューハンプシャーに持ち込むことができるかがポイントとなります。
以上より、ニューハンプシャーは、クルーズ、トランプ、ルビオの三つ巴にケーシックとブッシュが絡むという展開です。前述のとおりトランプはここで勝たなければ後がありません。クルーズも苦しいですが何とか二連勝を狙いたいところです。ルビオは勝てないまでも、1位と差が開かない2位か3位をとれば御の字です。
ルビオが本命の候補者になると予想されることは昨年8月10日の時点から繰り返し述べてきました。一時は伸び悩みましたが、実際の選挙戦に入って、ついに本領を発揮したといえます。
●ヒラリーとサンダースは引き分け
次に民主党です。バーニー・サンダースの強さが本物であることは、直前の記事を含め何度も述べてきましたが、実際にサンダースは期待どおりの結果を残しました。
ヒラリー・クリントン49.9%に対してサンダース49.6%。これほどのきわどい僅差であれば引き分けといって良いと思います。実際のところ、アイオワは比例配分制をとっているため、代議員はヒラリー23に対してサンダース21となり、ほとんど差はありません。
しかし、ヒラリーにしてみれば、負けを覚悟した戦いでしたから、引き分けでも、実質的には大きな勝利だったといえます。ニューハンプシャーでは、「民主党の序盤戦」で述べたとおり、サンダースの勝利は固いです。しかし、サンダースの勢いはここまででしょう。
サンダースは、アイオワとニューハンプシャーでヒラリーを追い詰めるという強さを見せつけたことで、その役割を果たしたといえます。ヒラリーが独走していた状況に一石を投じ、政策論と選挙戦を白熱させました。おそらくヒラリーの政策はよりリベラルに傾き、また大統領選に向けて民主党陣営は活性化します。これは民主党にとって大きな意味がありました。
まだ色々書きたいことはあるのですが、今日は遅くなってしまい、意識も朦朧としているので(笑)、まずはこのへんで終わりにします。それにしても共和党、民主党とも実に面白く、見応えのある初戦となりましたね。次のニューハンプシャーも楽しみです。
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12 comments on “米大統領予備選挙:アイオワ党員集会”
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トランプ・・投票前の自分の言葉通りの結果・・次を睨んでいる。ニユーハンプシャーは勝てるでしょう・・言葉通りなら・・(笑
ヒラリー陣営は数か月前から・・アイオワ・・必殺の構えだった・・
それを覆されたのは・・ショック・・と専門家・・
取りあえず・・勝利宣言出来た・・一人・・娘さんの顔だけは笑っていなかった・・クリントンはとても嬉しそうに笑っていた・・手練れとの差・・
ロシアの格言を用いれば・・「見知らぬ天使も、知った悪魔も、満足した」
サンダースはすぐに飛行機で・・ニューハンプシャーに・・すぐ演説・・
ヒラリーはその頃・・まだアイオワ・・勝利宣言中・・
ヒラリーの信用度10%・・若者の支持率低く・・年寄りの支持率高い・・
到底・・明日を感じさせない・・
それにしても・・ブルムバーグ・・気になるなぁ・・
いつも鋭い分析、感嘆しながら読んでいます。
今回の両党候補たちを見ると隔世の感がありますね。民主党は女性とユダヤ人。共和党は二人(クルーズ、ルビオ)がキューバ系。勝算がある候補の中でWASPはトランプだけ。もちろん、職業(弁護士)とか学歴(名門私立大)は相変わらずですが。
しかしながら、性別や出身がイシューにもならないのは本当に驚きです。まぁ、そのぐらいアメリカの社会が進歩したということでしょうね。
今回の大統領選挙はJDさんのブログのおかげでとても面白いです。ありがとうございます。
演説の中継は英語ばかりなんですが、米国のスペイン語人口はかなり多いはずなので候補者はスペイン語でも演説するのですか?
移民の受け入れもしているから英語を話せない有権者もいるはずだし、そのへんはテレビに映らないだけでなんですかね?
前にJDさんが英語よりスペイン語の方が早く上達すると仰っていたんですが、どのような勉強をすればよいのでしょうか?
仕事は外国語が全く必要のない分野ですが、ゼロから勉強でもしようかなと思っています。
ニュースで原油価格が取り上げられることが多いですが、最近「原油無機由来説」という言葉を知りました。資源枯渇の可能性があるというのは、西側諸国のでっち上げということらしいのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
初めまして。
内容のレベルの高さにビックリしております。
そこで、厚かましいお願いです。選挙と金の問題を取り上げていただけないでしょうか?
私の周りでは、トランプ氏が優勢だったのは、お金持で選挙資金が豊富だからだと信じている者がほとんどです。
2008年には、オバマ議員が7億ドル程度の資金を使ったはずですが、誰もこの話を信じてくれません。
米国の事情を少し知っている者は、団体献金が禁止されているのに、そんな巨額の資金を集められるはずがない、と主張して頑として譲りません。
演説の上手な候補が何故有利かと言えば、資金集めで大事な武器だからだと思います。
この辺りを解説していただけないでしょうか。お願いします。
サンダース61%・・ヒラリー30%・・
トランプと異なり・・サンダース支持率・・激減ないでしょう・・
ニューハンプシャー・・ヒラリーの金城鉄壁だった・・サンダースが出てくるまでは・・
ヒラリー演説・・
『私を誹謗中傷するのではなく・・米国の明日を話しましょう』・・と・・サンダースに詰め寄る・・
『ウオール街から金をもらっても・・私は左右されない・・オバマ大統領と同じだ』・・
突然・・ブッシュ10%の支持率・・ワォォォ・・
トランプ・・空爆を止めて・・地上戦に・・作戦変更・・・(笑
JD解説・・ひたすら・・待つ・・・(笑
ブッシュ一家総動員・・
前大統領・・弟の為に・・PR放映出演・・
ママブッシュ・・老体をおし・・息子と共にドブ板選挙・・アピール中・・支持率上がった理由・・
御本人・・ルビオを・・後ろから・・他の候補者と組んで・・猛烈キック中・・
トランプ・・サンダースをキックキック・・
民主党でサンダース勝利と踏んだか・・・(笑
トランプはアイオワでは勝てないと悟ったので、期待値を下げるためにやむなく言ったものです。その嗅覚はやはり天才です。
ヒラリーはとにかく「1位」をとれたのが大事。もちろん必勝の構えでしたが、本音は、間違いなく安堵したはずです。
ブルームバーグはどう出るのかまだ分かりませんが、独立候補特集としてそのうち取り上げる予定です。
ありがとうございます。
米国ではすでにマイノリティが37%を占めており、2050年には逆転すると言われていますからね。特に民主党はこれからマイノリティの政党としての性格を強めていくでしょう。それにより多数党の地位を維持できるわけですから。
ありがとうございます。
スペイン語は、話せる人ならそれを武器に演説することはよくあります。
今回の候補者では、ジェブ・ブッシュとマルコ・ルビオがスペイン語を話せます。テッド・クルーズはキューバ系移民ですがヒスパニック色が薄く、スペイン語も話せないようです。
スペイン語の勉強・・私はもはやできるといえるレベルにないので、とてもアドバイスできる立場にはないですが、スペイン語のいいところは、英語と違って音が難しくないところです。ひたすらボキャブラリを鍛えれば十分上達すると思います。
私の専門ではないですが、シェールの登場が大きいですよね。採掘技術が上がれば当然枯渇年数も伸びますから、その意味では無尽蔵といっていいのかもしれませんね。
ありがとうございます。
今の米国ではスーパーPACがあるので、事実上政治資金は無制限に集めることができます。
トランプは自己資金しか使っておらず、他の候補者と比べて使っているお金は圧倒的に少ないですね。
資金集めは大口のスポンサーがいる人が当然優位に立ちますが、最近はネットをつかった小口の寄付が大きな役割を果たしつつあります。今回の選挙ではバーニー・サンダースが記録的な数に上る少額寄付者を味方につけ、金額面でもヒラリーに迫るほどの資金を集めました。
米国の選挙は世界で最もお金がかかる選挙です。テクニカルな話も多いのであまり深入りしたくないのですが、そのうち取り上げてみたいと思います。