2016/01/28 01:03 | 米国 | コメント(4)
米大統領予備選挙の注目点③:民主党の序盤戦
序盤州である4州(アイオワ、ニューハンプシャー、ネバダ、サウスカロライナ)について、前回は共和党の選挙戦を説明しました。今回は民主党です。
民主党は、順当にいけば、ヒラリー・クリントンの圧勝です。ところが今本命のヒラリーを破竹の勢いで脅かしているのが、「民主的社会主義者(democratic socialist)」バーニー・サンダースです。
サンダースは、最低賃金引き上げ、ウォールストリート批判、オバマケアよりラディカルな医療保険改革など極端に左翼的なリベラル政策を打ち出し、ある種のムーブメントを作り出しています。
その勢いは本来ヒラリーの支持に対抗できるレベルのものではありません。しかしサンダースが波乱要因となっているのは、アイオワとニューハンプシャーでヒラリーに勝利する可能性があるためです。
両者の支持率は、世論調査によって異なるものの、平均すると、アイオワではサンダース46%、ヒラリー46%と大接戦。ただ、流れとしてはサンダースに勢いがあります。また、ニューハンプシャーではサンダース53%、ヒラリー39%とサンダースがヒラリーを大きく引き離しています。
サンダースがここまで伸びている理由ですが、まずアイオワに関しては、予備選(primary)ではなく党員集会(caucus)である点が大きいです。党員集会は、予備選と異なり、党員しか参加できず、投票は公開投票となります。
このため投票の場は熱気を帯び、結果として、ムーブメントを作り出すタイプ、カリスマがあるタイプの候補者に票が流れる傾向にあります。2008年にオバマがヒラリーに勝利したときも、オバマ人気が大きく影響しました。今回も、サンダースはまさにムーブメントを作り出すタイプですから、アイオワで優位に立つ可能性は高いといえます。
次に、ニューハンプシャーは、サンダースのお膝元であるバーモントの隣接州であることが大きいです。この点がどれほどサンダースに有利に働くかは議論があったのですが、始まってみると思いの外サンダースの影響力が強かったことが分かりました。
ただ、バーモント州を地盤として、泡沫候補からフロントランナーに駆け上がった人物といえば、思い浮かぶのは2004年のハワード・ディーン。ディーンは当初はまったくノーマークの存在でしたが、ブログの活用等で支持を伸ばし、一時は支持率トップに立ちました。ところが、初戦のアイオワで予想外の3位に終わります。
その直後、とてつもない演説(通称「ディーン・スクリーム」「アイ・ハブ・ア・スクリーム」演説)を披露して、一気に失速しました。私はこの「スクリーム」を当時ワシントンDCにいて直後のニュースで見ましたが、あまりのテンションの高さに、ドラッグでもやっているのではないかと心配になったほどです(失礼・笑)。その後この演説はコナン・オブライエンにイジられ、リミックスされ、ネットで何度も再生され、ある意味伝説となりました。
もっとも、ディーンは予備選の直前で既に支持率が低下していました。それに比べるとサンダースは昇り龍の状態です。普通に考えると、サンダースがアイオワとニューハンプシャーで二連勝する可能性は非常に高いです。
最初の記事で、アイオワとニューハンプシャーの両方の州で負けた候補者は最終的に敗北する、と述べました。こうなるとヒラリーは圧倒的不利な状況に追い込まれそうです。
しかし、その後の大規模州であるネバダとサウスカロライナは、保守的な風土があり、かつマイノリティが多い州(ネバダはヒスパニック、サウスカロライナは黒人)ですから、ヒラリーが圧倒的有利に立つと言われます。このため、たとえ両州で負けようとも、ヒラリー優位は動かない・・・というのがヒラリー陣営の読みです。
というわけで、おそらくサンダースが最初の2州でロケットスタートしますが、この段階では何とも言えません。まずはネバダ、サウスカロライナまで様子を見守るべきです。
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4 comments on “米大統領予備選挙の注目点③:民主党の序盤戦”
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ヒラリーはオバマケアをベースに良いものへと修正していくと言い切っています。
批判は一切していませんでした。(すくなくとも前回のPresidential Debateでは。)経済も社会保障も、8年間のオバマさんの「功績」を元に政治を変えていくスタンスです。サンダースさんはドラスティックな改革を訴えています。
ヒラリーさんは、政治家の都合を「実績」や「政策」にすり替えている感があるので、人の生活をよりよいものにするために政治をすると情熱的に訴えるサンダースさんの横に立つと微妙に見えてしまいますね。特にDemocatのターゲット層では、この「情熱」が効いていると思われます。個人的な意見ですが。
また、サンダースさんを社会主義と言っていますが、正確には、「Democratic SOcialist」というすばらしい言葉をつくり、社会によいものとして浸透させているキャンペーンはすばらしいと思いますので、ここでもぜひ、単なる社会主義ではなく「democratic socialist」を採用してもらえれば、誤解もなくなると思います。
「democratic socialist」、これはまさにその通りですね。
「社会主義者」は日本のメディアが使っている表現なので、深く考えずにそのまま流用してしまいましたが、ご指摘もっともと思います。訂正させていただきます。
ありがとうございました。
国務省から・・ヒラリーEメール・・
極秘あった・・と出てきましたね。
当時は極秘ではなかった・・との既成弁明で・・予備選挙ならともかく・・
大統領選挙・・戦えるでしょうか・?
しかもその数が多ければ・・致命傷になりかねない・・
トランプが代表になれば・・
共和党エリート層も・・シブシブとは言え・・後を追わざるをえない・・
彼等は・・ヒラリーEメール全貌・・握っているのでは・・・?
白頭鷲ならぬ・・ブルムバーグ・コンドル・・最大の敵になるのでは・・・(笑
サンダースが・・
シークレット・サービスに・・護衛要求・・
身の危険・・感じ始めた・・
やっと・・民主党大統領候補者としての格が出てきた・・
それを上手にアピール・・・(笑