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2016/01/26 00:00  | 米国 |  コメント(1)

米大統領予備選挙の注目点①:序盤戦のポイント


いよいよ2月1日から米大統領予備選がスタートします。候補者の状況についてはこれまで述べてきたところであり(「米国」カテゴリー参照)、最近もドナルド・トランプテッド・クルーズの激突、サラ・ペイリンのトランプ支持、バーニー・サンダース旋風など色々な出来事が起きています。

しかし、ここではあえて日々のニュースから離れて、まずは一般的・歴史的な観点から、どういった点に注目すべきか整理してみましょう。まず、予備選の展開を予測する上で死活的に重要なのは選挙日程です。

選挙戦は2月1日に始まり6月14日に終わりますが、最も重要なのは序盤戦、すなわち3月1日の「スーパー・チューズデー」までの1か月間です。最初の1か月間に両党ともに約30%の代議員が選出され、選挙戦の大勢が決するか、少なくとも数名に候補者が絞り込まれます。ということで、まずは序盤戦の日程を確認しましょう。

2/1(月)
・アイオワ党員集会

2/9(火)
・ニューハンプシャー

2/20(土)
・ネバダ党員集会(民主党)
・サウスカロライナ(共和党)

2/23(火)
・ネバダ党員集会(共和党)

2/27(土)
・サウスカロライナ(民主党)

3/1(火)「スーパー・チューズデー」
・アラバマ、アラスカ党員集会(共和党)、アメリカ領サモア党員集会(民主党)、アーカンソー、コロラド党員集会(民主党)、ジョージア、マサチューセッツ、ミネソタ党員集会、ノースダコタ党員集会(共和党)、オクラホマ、テネシー、テキサス、ヴァーモント、ヴァージニア、ワイオミング党員集会(共和党)

上記のとおり、スーパー・チューズデーより前にアイオワニューハンプシャーネバダサウスカロライナの4州で選挙戦が行われます。これら4州は「序盤州(early states)」と呼ばれます。まずは序盤州についておさえるべきポイントを述べます。

アイオワとニューハンプシャーの両方で敗北して大統領候補となった者はいない

少なくとも1980年からの予備選を見ると、最終的に大統領候補として指名を受けた者はいずれもアイオワかニューハンプシャーのいずれかで勝利していることが分かります。このため両州で敗北すると早々に撤退するケースが非常に多いです。

もちろんこの2州のあと大票田となる州はいくらでもあるのですが、スタートダッシュをかけると、そこで選挙戦の流れができます。勝利者を軸に選挙戦が展開されることになるので、圧倒的な優位に立つのです。

たとえば2008年の共和党予備選で当初支持率トップを走ったルディ・ジュリアーニは、序盤州を捨てて大規模州であるフロリダに力を注ぐという奇策に出ました。しかし、序盤戦の敗北で勢いを失い、頼みのフロリダでも敗北する結果になるという、後から見れば致命的な戦術的失敗をおかしました。

同じく2008年の民主党予備選でアイオワでオバマはおろかジョン・エドワーズにも負けたヒラリー・クリントンが涙を流したのは記憶に新しいでしょう。この「女の涙」のおかげでヒラリーはニューハンプシャーで勝利し、首の皮一枚をつなぎました。あの勝利への執念、悲壮感は、ニューハンプシャーで負けたら終わりということが分かっていたからです。

唯一の例外は、1992年のビル・クリントンです。クリントンは、アイオワとニューハンプシャーを落としながら、その後スーパー・チューズデーで盛り返して最終的な勝利を収めました。しかし、その背景には、ニューハンプシャーで強い影響力を誇るポール・ソンガス(隣州であるマサチューセッツ州選出上院議員)が同州で1位を獲ることは当然と考えられていました。その中でクリントンはソンガスに僅差で迫る2位という予想外の善戦をみせ、勢いをつけたという経緯があります。

つまり、クリントンも、ニューハンプシャーで満足のいく結果が出せたからこそ最終的に勝利することができたのです。そういうわけで、どの候補者もアイオワとニューハンプシャーで猛烈な攻勢をかけることになります。

そして、今回の選挙戦では、共和党はトランプとクルーズの競り合い、民主党はサンダースが優位に立ちつつあるという展開になっていいます。次回以降に述べます。

アイオワとニューハンプシャーの勝者は異なる

まずアイオワの特徴は社会的保守が強いことです。このため、共和党では、伝統的保守、宗教右派(evangelicals)やティー・パーティーに支持される候補者が優位に立ちます。

2008年にマイク・ハッカビー、2012年にリック・サントラムという伏兵が勝利したのも、ハッカビーは牧師出身、サントラムは強固な保守思想の持ち主だったことが主な要因です。

次にニューハンプシャーの特徴はアイオワで負けた者を勝たせる傾向が強いことです。過去の大統領選を見ると、共和党のアイオワの勝利者はすべてニューハンプシャーでは負けています。

唯一の例外になると思われたのが2012年のミット・ロムニー。1980年以降初めて両州を制した候補者になるかと思われましたが、その後の再集計でアイオワの勝利者がサントラムと判明し、ニューハンプシャーの「判官贔屓」の神話は崩れませんでした。

逆に言えば、アイオワとニューハンプシャーの両方で勝つことは難しいのだから、アイオワで負けたからといってそこまで悲観的になる必要はありません。実際、アイオワで勝利したハッカビーとサントラムは最終的に指名を獲れませんでした。

共和党にとってはサウスカロライナが最も重要

サウスカロライナは南部で最初に選挙戦が始まる州です。共和党にとって南部は、1960年代のバリー・ゴールドウォーターの台頭、リチャード・ニクソンが掲げた「南部戦略」により白人からの支持を固めて以来、最も重要な基盤を形成してきました。

また、近年、南部は、人口、経済の面からますます重要性を増しており、米国の重心をなしていると言われます。大統領選も、南部を制した者が最終的に勝つ、と言われています。大統領選で勝てる候補者と見られるためにも、予備選で南部を押さえることは重要なのです。

このような背景から、サウスカロライナを制した共和党候補者はほとんどすべて最終的に指名を受けています。唯一の例外は、2012年のニュート・ギングリッチです(勝利したのはロムニー)。したがって共和党の場合、サウスカロライナが最も重要な戦場になります。

次回は、これらの一般的なポイントを踏まえて、今回の選挙戦をどう見るべきか分析します。

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One comment on “米大統領予備選挙の注目点①:序盤戦のポイント
  1. ペルドン より
    大統領選

    >>ブルームバーグ氏、米大統領選に立候補検討 無所属で・・

    サンダースとトランプが選出されれば・・という条件だが・・ヒラリー対トランプでも・・出馬するのだろうか・?

    土壇場に来て・・第三者の色目・・
    分析者にとっては・・悩ましい・・
    選挙民にも悩ましい・・

    口に出した以上・・
    ブルムバーグ氏・・面子にかけて・・引き下がれなくなったと考えると・・三人で争っていただくのも・・又結構か・・・(笑

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