2018/05/21 00:00 | 今週の動き | コメント(2)
今週の動き(5/21~27)
本当に気持ち良い気候になってきましたね。私はもうクールビズにしています。
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先週の動き
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5/13(日)
・トランプ大統領が「ZTEが事業を再開できるよう習近平国家主席と協力している」とツイート
・トランプ大統領が5月11日に開いた自動車メーカー首脳との会合で車の関税を20%に引き上げることを提案したとの報道
・インドネシアのスラバヤ等で自爆テロ
5/14(月)
・イスラエル建国70周年
・米国の在イスラエル大使館がエルサレムに移転
・ガザで大規模な抗議デモが発生
・ロス商務長官が「ZTE制裁の代替案を迅速に検討する」と発言(ワシントンDC)
・北朝鮮の代表団(朝鮮労働党の朴泰成副委員長ら)が訪中
・ロシア・イラン外相会談(モスクワ)
・ロシア・エジプト2+2会談(モスクワ)
・カタルーニャ州議会が独立支持派のキム・トラ議員を州首相に選出
・EU総務理事会(ブリュッセル)
・インドネシアのスラバヤで自爆テロ
5/15(火)
・中国の劉鶴副首相が訪米(~19日)
・米財務省がヒズボラの資金調達を支援したとしてイラン中銀総裁に制裁を科したと発表
・イラン・英独仏外相会合(ブリュッセル)
・中間選挙の予備選(アイダホ、ネブラスカ、オレゴン、ペンシルバニア)
・台湾の高等法院(高裁)が情報漏えいの罪で起訴された馬英九前総統に対する一審の無罪判決を破棄し懲役4月の有罪判決
・インドのカルナータカ州議会選挙の結果発表
5/16(水)
・北朝鮮国営の朝鮮中央通信が当日開催を予定していた南北閣僚級会談への参加を中止すると発表
・北朝鮮の金桂冠第1外務次官が米朝首脳会談開催を再考するかもしれないとの談話を発表
・米財務省が米国、サウジなど7国が共同でヒズボラのナスラッラー議長ら幹部に経済制裁を実施したと発表
・トランプ大統領の弁護団のジュリアーニがモラー特別検察官は「ロシアゲート疑惑でトランプ大統領を起訴することはできない」との見解を示したと発言
・カナダのトルドー首相が訪米(〜18日)
5/17(木)
・米中通商協議(ワシントンDC、~18日)
・トランプ大統領が北朝鮮の非核化について「リビア方式」を否定し、合意が成立すれば金正恩朝鮮労働党委員長には「強い保護」が与えられると発言(ワシントンDC)
・米財務省がヒズボラの資金調達を手助けした実業家や関係企業を制裁対象に加えると発表
・米上院がジーナ・ハスペルのCIA長官指名を承認
・ロバート・モラーが特別検察官に就任して1周年
・シリア・ロシア首脳会談(ソチ)
・キム・トラ議員がカタルーニャ州首相に就任
・EU・西バルカンサミット(ソフィア)
・ブルンジで大統領の任期延長などを問う国民投票
5/18(金)
・米軍のB52戦略爆撃機による朝鮮半島周辺での共同訓練「ブルー・ライトニング」に韓国軍が当初予定していた参加を見送ったとWSJが報道
・トランプ大統領が退役軍人長官にロバート・ウィルキー同長官代行を指名
・テキサス州の高校で銃乱射事件
・イタリアの五つ星運動と同盟が連立に向けた政策で合意
・独ロ首脳会談(ソチ)
・太平洋・島サミット(いわき市、〜19日)
5/19(土)
・イラク議会選挙の最終結果が発表(サドルの政党連合が第1位)
・英国のヘンリー王子の結婚式
・カンヌ国際映画祭授賞式
●米中通商協議とZTE制裁
ワシントンDCでの第2回米中通商協議が終了。
協議後に発表された共同声明をみると、米中の「意見が一致した」点が強調され、米国の対中貿易赤字の大幅な削減、米国から中国への農産品とエネルギー輸出の拡大、中国の知財保護の強化が合意されるなど、北京での第1回協議と比べれば一定の進展が見られました。
しかし、今回の協議で最も注目されたZTEへの制裁をめぐる問題については、共同声明での言及が一切ありませんでした。
ZTEについては、先週、協議の数日前にトランプ大統領が突然に制裁緩和を示唆。これを受けてロス商務長官も「制裁の代替案を早急に検討する」と発言。
トランプの態度の急変が通商協議の直前のタイミングだったので、突然に最重要アジェンダに浮上した経緯があります。
また、米国メディアは中国が2000億ドルの赤字削減策を提案したと報道しましたが、中国政府はこれを否定。数値目標の設定は受け入れられないとして米側の要求を拒否したとみられます。
この結果をどう評価すべきか。今後の通商協議とZTE問題、そして301条制裁はどうなるのか。これらの点については今週詳しく解説します。
●米朝首脳会談
米朝首脳会談の展望については、最新の状況をふまえて先週の記事で詳しく解説しました。
・「金正恩の再訪中、ポンペオ国務長官の再訪朝、米朝首脳会談の決定」(5/18)
補足すると、「リビア方式」(体制の存続の保証をせずに無条件で核廃棄させる方式)についての論争があります。
すなわち、4月29日にジョン・ボルトン大統領補佐官が「北朝鮮にもリビア方式を適用する」と発言したのに対し、5月17日にトランプはこれを否定し、「金正恩の体制には保護を与える」としてリビア方式を否定しました。
ボルトンの主張は政権入りする前からのものですが、このように政権内で意見の食い違いが顕在化するのはやはり異例のことです。この点について解説します(※メルマガに限定)。
●米大使館のエルサレム移転
ガザで1万人にのぼる大規模な抗議デモが発生し、イスラエル軍との衝突で60人以上が死亡するという大惨事。
デモの発生は予想されていたとはいえ、イスラエルの措置はあまりにも過激でした。国際社会からの糾弾は避けられるべくもありません。
ただ、一つ指摘したいのは、デモが激しく死者が発生したのはガザで、西岸はそこまでではなかったこと。
パレスチナにはパレスチナ自治政府とハマスの二つの「自治政府」が存在しており、両政府のイスラエルに対する考え方にはギャップがあります。
具体的には、パレスチナ自治政府は、イスラエルに第三次中東戦争前の67年のラインを国境とすることを主張し、それで合意できれば平和協定を結べるとしています。一方、ハマスは、イスラエル独立前の47年のラインを主張しており、これはイスラエルの存在自体を認めないことを意味します(ただし最近緩和する動きもみられる)。
ガザでの衝突の理由の一つはハマスのテロリストがデモに混ざっていることです。イスラエルとしては、テロリストの識別が困難のため、治安維持のため必要な行動をとったというわけです。
イスラエルの対応が行き過ぎであったことは明白ですが、こうした状況は冷静に認識すべきです。
●NAFTA再交渉
ポール・ライアン下院議長が年内での議会可決のためには5月17日に議会への通知が必要と発言しましたが、このデッドラインは過ぎてしまいました。
交渉妥結は早くとも今月末。年内での議会可決は極めて難しく、したがって中間選挙後の議会に委ねざるを得なくなりそうです。
●イラク議会選挙
ムクタダ・サドルが率いる政党連合が第1位に躍進。イランの支援を受けて「イスラム国」と戦った元民兵らの政党連合が第2位で、アバディ首相率いる政党連合は第3位に沈むという予想外の結果でした。
サドルは44歳と若いですが、イラクで絶大な支持を得ているカリスマ的な宗教指導者で、15年前にフセイン政権が崩壊した直後には民兵組織「マフディー軍」を結成して独立勢力として台頭。その支配領域は「サドルシティー」と称され、米軍を最も苦しめた人物です。
近年、その存在感を増しており、最近ではサウジに接近する動きを見せたことも注目されていました。
・「サウジアラビアの新時代(1)」(17/10/3)
サドルの勝利はイラク政治の構造を一変させるかもしれません。米国あるいはイランに近く、宗派色が強かった伝統型エリートによる支配を変える可能性を秘めているからです。詳細は追って解説します。
●インドのカルナータカ州議会選挙
BJPが議席を倍増して第1党になりましたが単独過半数にはとどかず(8議席不足)、ハング・パーラメントになりました。
すかさず国民会議派は地域政党のジャナタ・ダルと連立合意を発表。これで過半数を確保できるので、国民会議派が州政権を維持すると思われました。
しかし、BJPと近い関係にある州知事の判断により、5月17日、BJPのイェデュラッパの州首相就任が決定しました。ただし15日間以内に過半数を確保していることが条件とされました。つまりBJPは8議席をどこからか調達しなければなりません。
ところが、国民会議派がこのような州知事の対応は不公平と訴え、翌18日の夜、最高裁が介入。イェデュラッパは19日に過半数の確保を証明する必要があるとされました。イェドゥラッパはこれに失敗して州首相を辞職。結局、週明けに国民会議派とジャナタ・ダルの連立政権が発足することになりました。
インドの29州のうち国民会議派が政権を担う州はわずか3州。その中でもカルナータカは経済規模が大きい重要州であり、ここを落とすといよいよ後がなくなるところでした。なお、BJPは連立政権を含めると20州を制しています。
また、前述のとおりBJPの議席は倍増しており、モディ政権への高い支持が示された事実は変わりません。来年の下院選までまだいくつか州議会選挙はありますが、よほど不測の事態がなければ、BJPはこのモメンタムを維持したまま選挙に臨むことができそうです。
それにしても、インド政治のややこしさとダイナミズムが感じられた一週間でした。
●インドネシアでのテロ
インドネシアのスラバヤ、西ジャワ、スマトラで連続テロ。小規模とはいえ、スラバヤという日系企業も多く進出している中心都市を含め、これだけ連続してテロが起こったことは衝撃でした。
背景にあるのは「イスラム国」の物理的・思想的ネットワークの強化です。物理面では人・物(武器)・資金、思想面ではイスラム保守主義の教育と風潮で、以下の記事で述べたとおり今に始まった話ではありません。
・「インドネシアの課題とジョコ政権の改革(2)」(4/11)
ジョコ政権は治安対策の不十分が責められるでしょうが、来年の大統領選への影響について言えば、おそらくジョコ大統領に有利に働きます。
まず、テロが起こると現職の指導者の求心力は一般的に高まります。しかもジョコは以前からテロ対策法の改正を進めてきました。その取組みは支持され、加速するでしょう。特に8月にはアジア大会があるので、それまでには成果を出すことが求められます。
次に、ジョコはイスラム保守主義の高まりを懸念し、寛容と穏健を主張してきました。プラボウォ・スビヤントはじめ大統領選でジョコに対抗する勢力はイスラム急進派と密接な関わりがあります。テロはこうした勢力への支持を弱める方向に働くでしょう。
●イタリア連立協議
五つ星運動と同盟の間で政策面での合意が成立し、いよいよ連立政権が発足する見通し。ただ新首相の名前はいまだ明らかになっていません。
当初考えられたシナリオの中で最も反EU色が強いものが実現することになります。ただ当初懸念されたユーロ離脱のような極端な主張は相当に修正されている様子。それでも財政支出の拡大はEUのルールとの抵触が懸念され、EUと厳しい局面を迎えることは必定です。
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今週の動き
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5/20(日)
・ベネズエラ大統領選挙
・G20外相会合(ブエノスアイレス、~21日)
5/21(月)
・米財務省が中国の対米投資制限策を提示
・印ロ首脳会談(ソチ)
5/22(火)
・米韓首脳会談(ワシントンDC)
・中間選挙の予備選(アーカンソー、ジョージア、ケンタッキー、テキサス)
・通商法301条に基づく制裁関税原案に対する意見募集の締め切り
・EU通商担当理事会(ブリュッセル)
5/23(水)
・北朝鮮が豊渓里の核実験場廃棄を公開(豊渓里、~25日)
・日米外相会談(ワシントンDC)
5/24(木)
・サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(サンクトペテルブルク、~26日)
・仏ロ首脳会談(サンクトペテルブルク)
・ドイツのメルケル首相が訪中(~25日)
・ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル)
5/25(金)
・APEC貿易相会合(ポートモレスビー、〜26日)
・EU財務相理事会(ブリュッセル)
5/26(土)
・日ロ首脳会談(モスクワ)
●米韓首脳会談
米朝首脳会談を3週間後に控え、トランプと文在寅大統領が最後の大きな詰めを行うことになります。
●ベネズエラ大統領選挙
現職のニコラス・マドゥロ大統領の再選はほぼ間違いないとみられています。
ウゴ・チャベスの後を継いだ反米左派のマドゥロは「独裁」とも非難される強権的な政治運営を行っており、公正な選挙が行われる可能性は低いからです。
ベネズエラの苦境は続いており、マドゥロの勝利後、さらにその状況は深刻化するでしょう。選挙の結果を見てから解説します。
なお、ベネズエラは仮想通貨「ペトロ」を発行し、原油取引のディスカウントなどあの手この手で流通させようとしています。野党はこの通貨を違法としており、マドゥロが万が一にも敗北するようなことがあればおそらく廃止されるでしょう。仮想通貨の将来にも一定の影響を及ぼすイベントといえます。
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あとがき
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『虚栄の篝火』や『ザ・ライトスタッフ』などで知られる米作家のトム・ウルフが死去。88歳とのこと。
いずれも映画化されており、個人的には思い出深い作品です。そういえば、『ライトスタッフ』で「音速を超えた男」チャック・イエーガーを演じたサム・シェパードも昨年に亡くなりました。主役の1人で宇宙飛行士から上院議員になったジョン・グレンは一昨年に亡くなりましたね。
西城秀樹も死去。こちらはまだ63歳とのこと。スターらしいスターがいなくなっていくような印象ですね・・ご冥福をお祈りします。
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2 comments on “今週の動き(5/21~27)”
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ここまで来れば・・・
( ^ω^)( ^ω^)
イスラエルの難しい決断が、溝を深くすることにならないとよいのですが。。立場の違い、考え方の違い、世界情勢を正しく理解する上では重要ですね。
しかし、「ボルトン」の性格もなかなかですね。一緒には仕事をしたくないタイプですが、とても、面白く読みました!
ヘンリー王子とメーガンさんの結婚式には、SUITのキャストが勢ぞろいしていましたね!とても微笑ましいニュースで、最高の目の保養でしたー(笑)