2018/03/14 05:00 | 欧州 | コメント(3)
ポピュリズムとは(1):欧州の現状
■ 独第2党SPD、党員投票で大連立を承認 メルケル政権4期目へ(3月5日付ロイター)
■ イタリア総選挙、ハングパーラメントへ 右派・ポピュリストに支持集まる(3月5日付BBC)
3月4日にドイツのSPDの党員投票の結果が発表され、CSD・CSUとの大連立が承認されました。これにより4期目のメルケル政権が無事発足することになります。
しかし、ドイツに高揚感はありません。これでドイツ政治は、本流政党の連合と最大野党になった極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の二つの勢力が対峙する構図になります。
また、同日にはイタリアで総選挙が行われました。新興勢力の「五つ星運動」が第1党に躍進したのは予想どおりですが、「フォルツァ・イタリア」よりも反EU的な「同盟」が票を伸ばし、右派連合の第1党になったのは驚きでした。2つの「ポピュリスト政党」が勝利したことになります。
欧州では、さらに4月にハンガリー、9月にスウェーデンで総選挙が行われる予定です。
16年のBREXITとトランプの当選、そして欧州で台頭する新興勢力・・こうした動きは「ポピュリズム」といわれ、今年の世界情勢を見る上で大きなポイントになることは以下の記事で指摘しました。
・「2018年の展望」(1/5)
米国でも、「アメリカ・ファースト」のイデオローグといえるスティーブ・バノンは、以下の記事で述べたとおり、共和党を「ポピュリスト政党」に変えると豪語しました。
・「バノン主義とトランプ政権・共和党(1)(2)」(2017/10/26・27)
バノンの力は、トランプとの決裂、マーサー財団の支援とブライトバート・ニュースという発信手段を失ったことにより、急速に低下しています。しかし、彼の思想はこれからも生き続けるでしょうし、彼自身もどこで復活するか分かりません。このことは以下の記事で述べたとおりです。
・「トランプとバノンの決裂」(1/9)
・「マイケル・ウォルフ『炎と怒り』の真実(1)/(2)」(1/23・25)
今回のイタリアの選挙結果に対しては、2つのポピュリスト政党の勝利を祝福し、両者が連携することを願うと述べています。
ということで、時代を席巻するポピュリズムですが、しかし、この「ポピュリズム」、かなり厄介な概念です。
言葉はよく耳にするが、一体それは何なのか、何が問題なのか、これをどうとらえれば良いのか・・このような疑問をもった人は多いのではないでしょうか。
ポピュリズムは多義的な概念で、その意味は論者や時代、地域によって異なります。かつて「ポピュリスト」を名乗った勢力が現代のポピュリズムとは様相がずいぶん異なることもあります。
また、ポピュリズムに対する評価も様々です。一般的にこの言葉はネガティブな響きがありますが、民主主義の限界の克服や社会の活性化に役立つという見方もあります。
現代のポピュリズムを体系的に論じた文献には以下の二つがあります。
■ 水島治郎『ポピュリズムとは何か』
■ ヤン=ヴェルナー・ミュラー『ポピュリズムとは何か』
どちらかといえば前者は歴史的事実の整理が多く、後者は政治学・法学の枠組みに沿った分析に重点を置いています。ともに頭の整理に有用です。
面白いのは、前者がポピュリズムがもたらす弊害のみならずポジティブな部分を指摘しているのに対し、後者は「ポピュリズムは民主主義の脅威である」と明確に断言しているところです。
この二つの議論は必ずしも相反するものではありません。一つにはそもそもポピュリズムのとらえ方が異なるからです。しかし、こうした議論を通じて、多面的な視覚を養うことは、現代のポピュリズムを正確に理解し、今後の見通しを考える上で非常に有益です。
ということで、今回は、この二つの本の議論も参考にしつつ、私なりのポピュリズムの考え方をお伝えしたいと思います。
いつもと比べると、理論的、学問的な話になりますが、現実に動いている事象との関連性が重要なので、まずは最新の動きを確認します。
その上で、歴史上のポピュリズムとの比較をふまえ、ポピュリズムの特徴と問題点、グローバリズムやナショナリズムといった政策面に与えるインパクト、日本やアジアに与えるインプリケーションなども論じます。
※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。
***********
ポピュリズムとは(1):欧州の現状
***********
●反エリート、反移民、反国際主義、ナショナリズム
●現代欧州のポピュリズム
・イタリア
・ドイツ
・フランス
・イギリス
・オランダ
・オーストリア
・チェコ
・ハンガリー
・スウェーデン
・スロバキア
・ベルギー
・デンマーク
・スイス
・ギリシャ
・スペイン
***********
あとがき
***********
メルマガでは森友文書問題について雑感を書きました。
原稿を書いているところで、ティラーソン国務長官が更迭というブレイキング・ニュース。そしてマイク・ポンペオCIA長官が国務長官になるというトランプのツイートが・・
トランプ政権の新たなる混沌が現実化してきたようです。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
3 comments on “ポピュリズムとは(1):欧州の現状”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
『ポピュリズムという視点で欧州を見る』
まずもって、自分では持ちえない視点。
これからの展開がとても興味深いです。
そして、いつものことながら、「理論」と「現在の状況」がリンクされて話が展開していくと思うと、ワクワクしますね。
森友問題、まさに指摘の通りと思います。今はすべてがごちゃ混ぜになって、打倒安倍麻生、のようになっていますが、そんな場合じゃないですね。
そして、アメリカも、、誰もいなくなる・・・?
メルマガ読みました。ポピュリズムという言葉をどういう文脈で語っているかは話者によってバラバラですよね。その人なりの定義を述べても水掛け論になるので、現代の政治状況を概説し、その意味を周辺から語るのはスマートだと思いました。
霞が関の基準が・・
地方自治体・・市町村並に合わせた・・
これも・・ポピュリズムだな・・・
( ^ω^)・(笑