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2016/05/25 00:00  | 米国 |  コメント(6)

米国大統領選:副大統領候補②(民主党)


「米国大統領選:副大統領候補①(共和党)」に続いて、今回は民主党です。

前回述べたように、副大統領候補は大統領候補の弱点を補うという観点から選ばれるのが一般的です。オバマが現副大統領であるジョー・バイデンをランニング・メイトに選んだのも、マイノリティではなく生粋の白人、しかもカトリックというオバマには得ることのできないアドバンテージを備えていたからです。

では、ヒラリー・クリントンの場合、どのような点を副大統領に補完してもらうのか。一つ考えられるのは、中西部の白人、特にブルーカラーを惹き付けることです。

中西部の白人(特に低所得層)は、ドナルド・トランプにとって主要な支持層であり、ヒラリーが大きく遅れをとっている有権者層です。米国全体においても大きな割合を占め、しかもある意味では平均的な米国人像といえることから、この有権者層を惹き付ける人物を選ぶことには大きな意味があります。

もう一つ考えられるのは、絶対的な不人気を挽回することです。分かりやすいのはバーニー・サンダースとの対比です。サンダースは有権者を活気づける(energize)能力に長けており、熱狂を生み出すことのできる政治家です。特に若者を魅了する圧倒的なカリスマがあります。これもヒラリーにとっては喉から手が出るほど欲しい力です。

そういう観点から考えられる候補者は誰か。ここは面倒なので(笑)、かんべえさんのリストを借用しましょう。

・フリアン・カストロ Julian Castro 住宅都市開発長官
・ティム・ケイン Tim Kaine  バージニア州選出上院議員
・エリザベス・ウォーレン Elizabeth Warren  マサチューセッツ州選出上院議員
・マーティン・オマリー Martin O’Malley  元メリーランド州知事・元大統領候補者
・トーマス・ペリッツ Tom Perez  労働長官
・シェロッド・ブラウン Sherrod Brown  オハイオ州選出上院議員
・コーリー・ブッカー Cory Booker  ニュージャージー州選出上院議員
・ジョン・ヒッケンルーパー John Hickenlooper  コロラド州知事
・ブライアン・シュワイッツァー Brian Schweitzer モンタナ州知事
・ジョー・バイデン Joe Biden  副大統領
・バーニー・サンダース Bernie Sanders  バーモント州選出上院議員・大統領候補者
・エバン・バイ Evan Bayh  元インディアナ州選出上院議員
・ジョン・ケリー John Kerry 国務長官
・ジム・ウェッブ Jim Webb  元バージニア州選出上院議員
・ロン・ウィデン Ron Wyden  オレゴン州選出上院議員

まず一番上位にあるフリアン・カストロですが、彼は私が以前に「スーパー・チューズデー」で有力な副大統領候補として紹介したホアキン・カストロ下院議員の双子の兄弟です。この二人が有力候補とされる大きな理由は、「スーパー・チューズデー」でも述べたとおり、何と言ってもヒスパニックだからです。特定分野で強みがあり、票が獲れるという点では副大統領候補としては理想的です。

もっとも、ヒラリーは予備選の結果を見るとヒスパニックに対して絶対的な強みをもっています。この点でトランプに遅れをとることはあり得ません。したがって、逆にヒスパニック対策のために副大統領候補を選ぶ必要はなくなったといえます。

次にエリザベス・ウォーレンは、「TPPとヒラリー、ナンシー、エリザベス」で紹介したとおり「プログレッシブのアイコン」とも言われるリベラルの女王で、人々を熱狂させる要素をもっています。しかし、サンダースとの戦いを経て立ち位置を思い切り左に寄せた今のヒラリーに必要な人ではないでしょう。同様の理由で、サンダースもないと思います。

ここはやはり白人が多く、保守的な風土があって、米国において「平均的」とみられる州で強さを発揮する候補者を選びたいところです。上記のリストの中では、バージニア州のティム・ケインジム・ウェッブ、オハイオ州のシェロッド・ブラウン、コロラド州のジョン・ヒッケンルーパー、モンタナ州のブライアン・シュワイッツァー、インディアナ州のエバン・バイ、オレゴン州のロン・ウィデンが適任でしょう。

あえて人々を熱狂させる、若者を魅了するという点に価値を置くとすれば、「ライジング・スター」といわれるコーリー・ブッカー。ただ、黒人なのでその点でのアドバンテージはありますが、ヒラリーはマイノリティに対しては圧倒的な強さをもっていますから、その意味では不要ともいえそうです。

そういえば以前にかんべえさんとは友達ですか?という問い合わせが空の財布さんからありましたが、かんべえさんとは10年来の友人です。今もときどき気軽に二人でご飯に行く仲です。

ぐっちーさんを紹介してくれたのもかんべえさんでした。といっても、かんべえさんもぐっちーさんに会ったのはそのときが初めてで、そういう不思議な状況で3人で飲みに行ったのでした。なつかしいですね。

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6 comments on “米国大統領選:副大統領候補②(民主党)
  1. 空の財布 より
    めでとうそうろうべし…

    (意味はこれで合ってるのかな…苦笑)
    名前を出して戴き大変めでたいのですが、自分が質問したことを忘れているという、大変おめでたい…(笑)

  2. 溜池通信ファン より
    もしかして

    JDさん=●●さん?

    すみません、諸事情によりコメントを修正させていただきました…JD

  3. 空の財布 より
    それは、

    両党とも、民意の取り込みではないでしょうか。

    某国首都の長選挙で節操もなく裏切り者を担ぎ裏切られるお笑い政党よりよっぽどマシでは…。

  4. パードゥン より
    いずれ双子の兄弟で、大統領選に出れば

     強そう。  選挙演説も応援演説も効率バツグン(笑) 
    今、無理に副大統領になるのは損!

     大統領、副大統領が同じ顔になったら黒澤監督も真っ青な影武者いらず(笑)
    ガードマンは困惑かな?   

     ヒラリーに中西部の荒くれマッチョな男副大統領だと、
    男クリントンが却下しそう(笑)
     

  5. かんべえ より
    使ってくれてありがとさん

    あはは、忘れてた。でも、これは助かります。

  6. 下北のねこ より
    ヒラリーさん、大変そう

    ヒラリーさん、いろんなマイナス要素と闘わなくちゃならない感じで大変そうですね。単純に不人気をカバーし、白人でも若者票は確保できそうなバーニー・サンダースがベストのような気がしますが。
    他の候補だと、質はともかく、サンダースがあれだけ存在感を高めた後ではみんな小粒に見えそうで不安です。

    関係ないですが、かんべえさんとJDさんでだったら、アメリカ大統領選挙の決定版の解説本作れそう。その他、電子書籍が一般化して出版コストが下がってきた今でしたら4年に1度のシリーズを出してもいいですし。

    最近、本屋さんで感じるのは、歴史本の中身が思いっきり変わってることです。かつての物語的なものから、実地調査、文献解析に基づいた、きちんとした分析本になってきてます。大統領選挙も近くで見られるJDさんやずっと定点分析的に見てきたかんべえさんだったら、今までの大学の先生や政治ジャーナリストのとは違う新しいポイントの解説書が残せると思いますよ。

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