2016/04/27 00:32 | 中東 | コメント(4)
「イスラム国」の後退
■「イラク軍 要衝ラマディ中心部を奪還」(2015年12月28日付BBC記事)
■「シリア政府軍、中部パルミラをISISから奪還」(3月28日付CNN記事)
■「米軍、ISISナンバー2「財務相」殺害を発表」(3月26日付CNN記事)
最近、イラク、シリアにおいて、「イスラム国」の領域が劇的に縮小しています。イラクでは、「ラマディの制圧」で書いたとおり、2015年5月に「イスラム国」が要衝ラマディを制圧していましたが、上記記事のとおり、12月にイラク軍が奪還しました。
「イスラム国」は昨年10月~11月にベイジとシンジャールという要衝も失っています。イラク軍は、次は「イスラム国」の「首都」モスルの奪還に向けて攻勢を開始しています。
シリアでは、「パルミラの陥落」で書いたとおり、2015年5月に「イスラム国」が要衝パルミラを制圧していましたが、上記記事のとおり、3月にシリア軍が奪還しました。シリア和平協議が4月13日から再開しましたが、ちょうどその直前に「イスラム国」の後退が明らかになった格好です。「イスラム国」はその直前にシャダーディーとティシュリーン・ダムという要衝も失っています。
この他、上記記事にある米軍による「財務相」暗殺、石油収入の激減、ジハード主義の運動のモメンタム低下など、「イスラム国」を取り巻く環境は厳しさを増しています。ただ、悩ましいのは、シリアとイラクにおける「イスラム国」の後退は、海外におけるテロ活動の活発化につながる可能性があることです。
海外の脆弱なターゲットを狙うテロは苦境を挽回するのに好都合の手段です。また、ネットワークの弱体化は、外国人の「イスラム国」への参加を困難にしますが、それは送り出し側の国の中に潜在的なテロリストを滞留させることになるからです。
バングラデシュ、フランス、インドネシア、ベルギーでのテロもこうしたトレンドの中の動きとみることができます。とはいえ、一時的にはテロ活動が活発化するとはいえ、長期的には「イスラム国」の打倒につながることは確かです。
一方で、「イスラム国」の資金や武器を活用した組織的で破壊力の高いテロは低減しても、「イスラム国」的なイデオロギーが存続する限り、ローン・ウルフ型のテロは消滅しません。また、これを完全に防ぐことは不可能でしょう。そういう意味では、グローバル・ジハードに脅かされる状況は継続することになります。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
4 comments on “「イスラム国」の後退”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
シモン委員会は1000万人受け入れとか言っているようですが、
安価の労働力とだけとらえている感はいなめないので、安物買いの銭失いに
なりそうです 他の費用が沢山、かかる。
海外2世の日本戻り組でさえ、苦労しているようで3世は又、戻ろうと
しているくらい同化は大変なようです
面倒をよほどみる受け入れ態勢を考えないといけませんね
江戸時代のオランダ、スペインの混血の人々は大変だったろうに
よく、あまり問題をお越しませんでしたね
歴史だと、ベルドンさん詳しいかな?
癌細胞と同じ・・
大きい患部を切除しても・・
あちこちに転移・・
抗癌剤(反テロ対策)で対応以外ないが・・
根治出来ない・・・(笑
これまでの通り公式的には基本大勢の外国人を受け付けないというスタンスでは、
もしも大勢の難民流入が起こった時の体勢を急には整えられないからではないかと
思っておりますがいかがでしょうか。
最悪100万人ぐらいは、期せずして入ってきてしまっても何とかやり過ごすための
体勢を整えておくという意味があるのではと思っておりますが、
考えすぎでしょうかね。
陰謀論みたいですけど、「イスラム国」ってなんかアメリカやイスラエルなんかにとって最初から都合がいい存在な感じがします。
困ってるのはアラブの国々と若者の供給源にされてる先進国のイスラム教徒であって、アメリカにとっては、原油価格を下げる口実を作ってくれるわ、アメリカで生産している兵器をサウジアラビアなんかが買ってくれるわ、イスラエルから目を逸らしてくれるわで意外にありがたい存在じゃないかと思うのですが。
(しかし、サウジアラビアって、飢餓輸出というか原油を大量に安値で輸出し続けてる上、貴重なお金でアメリカから兵器を買い続けている、なんか、文字通りの「カモ」なんじゃないかなあ)
だから、生かさないけど、滅ぼさない感じでかなり丁寧に攻めてるのかなって思います。
正直、組織の縮小が進んでるとすれば、資金源を断つことも、軍事的にとどめを刺すことももう容易な段階じゃないのかなあ。
ただ、無差別テロのヨーロッパへの拡散は予想はされていても、計画初期の段階で情報が伝わっていたにも関わらずヨーロッパ各国が対応できなかったことが計算外だったと思います。
いずれにせよ、そんなことをやらかした段階でもうあらゆる意味で役割は終えた連中なのかなあって思います。
あと、シリア政府のISIS制圧に名を借りた反政府派地域への攻撃やそれを支援するロシアの姿勢は制御出来ないものです。
アメリカ大統領選挙でトランプさん当選したら、ここはより状況が悪化しそうに思えてなりません。
しかし、目的がわかんないテロや誘拐、婦女暴行繰り返すことを計画するより、イスラム教に両性の本質的平等を実現させる、時代にあった改革を訴えるような智者、勇者はイスラム圏にいないのかなあ。
テロや戦争より、宗教改革をみてみたいなあ。