2015/05/28 00:00 | 中東 | コメント(4)
「イスラム国」のラマディ制圧
■ イラク軍、ラマディ奪還へ攻勢 米副大統領は「犠牲と勇気」評価(5月26日付ロイター記事)
シリアではパルミラが陥落しましたが、イラクではアンバール県の県都であるラマディが占領されました。
ティクリートを奪回し、立て続けに重要なターゲットの暗殺に成功し、次の目標は敵の本陣モスルかアンバール県かと思ったところで、シリアとバグダッドをつなぐ要衝を失う衝撃の事態。カーター国防長官が落胆するのも分かります。
もっとも、ラマディの周辺地域では、従来より一進一退の攻防が続けられており、これ自体はそれほどのサプライズではありません。パルミラの制圧のような大きな戦略的転換点というよりは、戦術的な一局面に過ぎず、すぐにイラクが奪還する可能性も十分にあります。
しかし、根本的な問題として、イラク軍の士気の低さと弱さは、米国が失望の念を表明せざるを得ないほど深刻なものであることが露わになりました。イラク軍兵士の敗走の主な原因は、ラマディがスンニ派地域なので、自分たち(シーア派)とは関係ないし、シーア派民兵や革命防衛隊に任せておけばよいと考える、責任感のなさと思われます。
結果として、ますますシーア派民兵に頼らざるを得ず、それもあってスンニ派との融和はまったく前進しません。最大の問題は、テロ集団の脅威というよりは、イラク自身がどこまで国家としての体をなすことができるかでしょう。
また、空爆、特殊部隊、イラク軍の育成、シーア派民兵の排除といった従来の米国の戦略も見直しを余儀なくされるのかもしれません。
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4 comments on “「イスラム国」のラマディ制圧”
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ISISのラマディ占拠・・
充分な兵力と装備がある政府軍が・・戦闘を交えず・・武器弾薬を放置・撤退・・との報道が正しければ・・そりゃ金の取引があったと考えるのが常識でしょうねぇ。兵士達に給料が長く払われていない・・政府軍の背景があるのではないでしょうか・?
『我々にも養う家族がいるんだ』
との兵士がCNNのインタビューで答えていた。
イラク革命防衛隊が上手くISISを利用している・・操っている・・との見方はあながち誤判断とも言い難い。
イラクでスンニ派無視をシーア派が続けるなら、問題の解決には増々程遠くなる・・との観測・分析が正しいように思えてくるのですが・・オバマ・バイデンさんには飲み込めているでしょうか・??・・・(笑
ヌスラ戦線などシリアの反政府勢力とISの兵士は、どっちが高い給料を払うかで行き来していると聞きます。
これに対し、イラク国軍は今のところシーア派兵士で構成されているので、ISに買収されて寝返ることはないでしょう。でも、給料が支払わなければ逃げるでしょうね。ラマディはスンニ派地域ですから、自分たちとは関係ない話だし、シーア派民兵と革命防衛隊に任せればよいと思っているでしょうから。
米国は、スンニを取りこむことをずっとイラクに言い続けているのですが、イラク政府がやらないわけです。それもあって米国はマリキを見限りました。もっとも、イラク政府の幹部にしてみれば、旧フセイン時代の恨みは骨髄に染みてますから、言うは易く行うは難しですね。
どの専門家も・・
イラク国軍解体が・・大失策・・
それが・・今なお・・尾を引いている・・と必ず言いますね・・・(笑
出発点に遡ると、国軍からスンニ派を排除したのは米国でしたから、その意味で米国の責任は重いです。
ただ、米国は2006年に覚醒評議会を設立して以来、米軍とスンニ派武装勢力の連携を追求しています(その後米軍は撤退したので覚醒評議会も解消しましたが)。それを前提にお答えしたつもりです。
今日見た日経の記事です。一次情報はまだ確認していませんが。
米国防長官、対IS戦略の修正に言及 2015/5/29 9:29
【ワシントン=川合智之】カーター米国防長官は28日、イラクなどで勢力を伸ばす過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)に対抗する戦略を修正する可能性に言及した。「極めて重要なのはイスラム教スンニ派部族を戦いに関与させることだ」と述べ、宗派や民族の対立を乗り越えてISに対抗する必要性を訴えた。
アジア安全保障会議が開催されるシンガポールに向かう機中で語った。スンニ派に対し米国が「訓練と装備」を提供することで、ISが制圧したイラク中西部の要衝ラマディの奪還作戦などに向けて戦力を強化する。AP通信によると、米国防総省高官は戦略のつくり直しではなく、微修正だと説明した。
カーター氏は24日、ラマディでイラク治安部隊が「戦意を見せなかった」と批判し、イラクのアバディ首相の反発を招いた。一方、イラクでは米が約束した武器提供が遅れるなど、不満の声があがっていた