2016/01/20 00:00 | 東南アジア | コメント(1)
ジャカルタの爆弾テロ
■ジャカルタのテロ、ISISが犯行声明(1月15日付CNN記事)
結果的に被害は小規模にとどまりましたが、ジャカルタ中心部という場所で、複数の実行犯による組織的なテロが起こったことは大きな衝撃でした。
インドネシアでこの類の大規模テロがあったのは2009年のマリオットとリッツ・カールトンで同時に発生した爆弾テロ事件以来。
この数年も、1年に数件、テロリストによる襲撃事件はありましたが、いずれも警察署に対する銃撃で、今回のように爆弾(IED)を使ってソフト・ターゲットを狙うものではありませんでした。
また、今回のテロは東南アジア初の「イスラム国」名義のテロでした。インドネシアから「イスラム国」には500~700人が参加していると言われており、いずれはこんなことも起こると予想はされていましたが、とうとう来てしまった・・・という印象です。
もっとも、武装グループの装備は銃器と爆発力の低い爆弾にとどまり、現時点では攻撃力が限定されていることが露見しました。
また、「イスラム国」の犯行声明をみると、犯行の説明が曖昧で、テロの実行犯の数に食い違いがあるなど、どこまで直接的に主導したのか不明です。
インドネシア政府の説明では、「イスラム国」に参加したインドネシア人の元受刑者ということですが、国内のイスラム過激派が「イスラム国」のブランド(と支援)を利用するグローバル・ジハードを窺わせます。
最近は、インドネシア、フィリピン、パキスタンなど、各地のインドネシア過激派組織が「イスラム国」への忠誠を誓い、当該地における「イスラム国」代表の立場を争うという現象が起こっています。
過激派組織にとっては若者のリクルートが重要な課題となりますが、ジェマ・イスラミーア(JI)、アブ・サヤフ、ラシュカレ・トイバ(LeT)といった老舗のブランドより、「イスラム国」という新しいブランドの方が、現代の若者にとってはクールで心に訴えかけるようです。
今回のテロが与える影響ですが、まず当面に関していえば、経済的にも政治的にも限られたものになるでしょう。
前述のとおり、被害は小さく、テロリストの技術的能力の不十分さも明らかになりました。
テロ直後にルピアが売られましたが、すぐに落ち着き、中銀もテロと同じ日の14日に予定どおり利下げを実施しました。
政治面では、ジョコ大統領は従来よりテロや外国との紛争(密漁船の拿捕・爆破、外国人死刑囚の死刑執行など)に対して強い立場をとっており、今回のテロをきっかけに、国民が大統領の下でテロ対策のために結束する方向に働くとみられます。
ただ、今後、テロリストの技術が向上することも懸念されます。インドネシアも、他のアジアの国々も、国内のテロ対策を徹底するということに尽きます。
そして、「イスラム国」の力の源泉の一つは海外の過激派から人的支援を受けることにありますから、各国が自国内のテロリストを叩くことは、長期的にはイラクとシリアの「イスラム国」の弱体化につながります。
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One comment on “ジャカルタの爆弾テロ”
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中東からの帰国過激派百名程度と・・
その数倍としても・・
ここは政府によって・・抑えきってもらわないと・・
燎原の野火になりかねない・・・