2015/08/25 00:00 | 東南アジア | コメント(1)
タイの内閣改造と東南アジアの政治変動
バンコクの爆弾テロですが、以前挙げた4つの可能性に加え、ウイグル族疑惑も浮上しています。中国からタイに亡命したウイグル族をタイ政府が中国に強制送還したことに対する報復とする見解ですが、これも、そうであれば犯行声明を出しそうなものですから、今ひとつ説得力に欠ける気がしますね。
中国のウイグル族迫害については「中国・中央アジア・トルコ①:トルコの反中デモ」をご参照下さい。
さて、本題です。先週、タイで内閣改造がありました。
■ タイで内閣改造、国王が新閣僚らを承認 財務相にアピサック氏(8月20日付ロイター記事)
経済顧問のソムキットが現副首相のプリディヤトーンに代わり副首相に就任し、財務相、工業相、運輸相、商務相といった主要経済閣僚が一新されます。
私が4月にバンコク出張したときから、プリディヤトーンとソムキットが対立していることは現地でよく知られていました。ともに経済閣僚経験があり、豊富なキャリアと知見をもっているのですが、プライドが高く、昔から折り合いの付かない関係が続いていました。
両者の対立は経済政策にも影響しており、たとえば外資導入との関係でいえば、プリディヤトーンは投資調整庁を管轄し独自の投資奨励戦略を打ち出す一方、ソムキットは外国人事業の一般法を管轄し、その間の不整合が問題になっていました。軍事政権の経済政策はビジネス界から評判が悪かったのですが、この実力者の対立も非効率な政策の一因になっていたといえます。
今回の改造により、プリディヤトーンが切られ、経済閣僚はすべてソムキット人脈であることから、ソムキット色が非常に強い陣容になります。少なくとも政策の不整合がなくなるという点で改善が期待できそうであり、軍人出身経済閣僚がいなくなるという点もあって、現地ビジネス界の評判も良いようです。
また、プラウィット副首相兼国防相、アヌポン内相が留任する点も、予想どおりですが注目されます。この二人はプラユット首相が陸軍時代に所属し、昨年のクーデターを主導した「東方の虎」派閥の先輩にあたり、まさに政権の保守・軍部の統制に関して鍵を握る、最重要人物です。
ただ、プラウィットとプラユットの間には、陸軍人事をめぐり意見の不一致があることが4月の時点から指摘されています。一部には、この微妙な関係と今回の爆弾テロを結びつける見解がありますが、前回の記事で述べたとおり、個人的には今ひとつピンときていません。
それにしても、東南アジアでは内閣改造が連続しています。
⚫︎マレーシアの内閣改造(7月28日)
⚫︎インドネシアの内閣改造(8月12日)
⚫︎ミャンマーの内閣改造(+USDP党首解任)(8月12日)
⚫︎タイの内閣改造(8月20日)
そして9月12日にはシンガポールで総選挙ですから、ASEAN主要国で立て続けに政治変動が起きています。ちなみにフィリピン(大統領選)、ベトナム(党大会)、ラオス(党大会)では来年に政権交代が予定されています。また、カンボジアとマレーシアでは2018年に総選挙が予定されています。
今日は早朝から名古屋に出張です。日帰りなのが残念ですが、できるだけおいしいものを食べて帰ってきたいと思います。
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One comment on “タイの内閣改造と東南アジアの政治変動”
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割合・・早い段階で・・容疑者写真・・
だが・・今だに逮捕されていない。
誤認容疑者二人も出た。
付き物のテログループ声明も出ない。
となると・・
国内勢力の犯行の疑いが・・濃厚になる。
きし麺・・三杯・・欲張りすぎでしょう・・・(笑