2015/07/13 00:00 | 中央アジア | コメント(1)
中国・中央アジア・トルコ①:トルコの反中デモ
■ トルコで反中国デモ、大使館が警戒呼びかけ(7月7日付CNN記事)
■ 反中デモの韓国人誤襲撃、「目が細いから」と擁護 トルコ野党党首(7月9日付AFP記事)
トルコでは、中国がウイグル族に対してラマダンの断食を禁止したことを契機に反中感情が高まっています。なお、中国当局は、表向き信教の自由を保障していることから、断食の禁止は健康上の理由によると説明しているとのこと。
上記記事によれば、韓国人が中国人に間違えられて襲撃を受けたとのこと。トルコ人は強い親日感情を抱いているので(明治時代に日本人がトルコ人遭難者を救った「エルトゥールル号事件」はよく知られているエピソード)、日本人の振りをすれば助かったのかもしれませんが、それだけは中国人も韓国人もイヤだったという、笑えないような話も聞きます。
ちなみに、記事にある「中国人も韓国人も『目が細い』から間違っても仕方がない」と言った「野党」の党首とは、「トルコ総選挙」で説明した極右政党のMHPです。こういう民族主義的な発言をする政党なので、AKPとしても連立の相手とするのが難しいわけです。
さて、本題に戻ると、トルコと新疆ウイグル自治区は地理的にかなり離れているのに、なぜウイグル人の抑圧がトルコ人を怒らせるのか?と疑問に思う人もいるかもしれません。
この背景には、中央アジアでトルコ語系の言語を話す人々(テュルク系民族)を広い意味でのトルコ民族ととらえる思想があります。テュルク系民族が住む地域は「トルキスタン」と言われ、「東トルキスタン」は新疆ウイグル自治区、「西トルキスタン」はトルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン、タジキスタンが該当します。
現代のトルコ共和国にいる人々は、自分たちが純粋なトルコ民族であり、自分たちのトルコ共和国こそが正統なトルコ人の国家である、という国民国家のアイデンティティをもっています。そして、トルキスタンを広い意味での「トルコ世界」として認識し、そこにいるトルコ語系の言語を話す人々を言わば広い意味での「トルコ人」であり、自分たちの同胞と見なしています。
ところが、歴史を見ると、この思想はフィクションであることが分かります。トルコ人・トルコ共和国というアイデンティティは、オスマン朝の一部が切り離されて「トルコ」という近代国家が建設されたとき、指導者であったケマル・パシャが作り出した概念でした。歴史的事実として、中央アジアに広く存在するトルコ語系の言語を話す人々が、この「トルコ人」というアイデンティティをもっていると認めることは困難です。
では、トルコ系民族の歴史とはいかなるものであったのか。これは、中央アジアと中国の歴史に深く関わり、込み入った話になるので、次回に回します。
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One comment on “中国・中央アジア・トルコ①:トルコの反中デモ”
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このあたりは東洋と西洋の間の民族興亡の坩堝ですが、白人、黄色人種入り乱れての不明の歴史です。仕方がないので一応テュルク系らしいと呼ぶ民族がコーカサス地方でもう一回集団白子化したのが金髪碧眼のゲルマン・スラブ民族だという説を聞いたことがあります。ハザール王国のアシュケナージユダヤ人もまあこの系統と思っておけばいいのかも。