2015/07/30 00:31 | 東南アジア | コメント(3)
マレーシア・ナジブ首相のムヒディン副首相更迭
■ マレーシア首相が副首相を解任-疑惑めぐり対立拡大も(7月28日付ブルームバーグ記事)
ナジブ首相が突然のサプライズ内閣改造。これによりムヒディン・ヤシン副首相が更迭されました。マレーシアの投資ファンド「1MDB」の巨額の負債、不正経理疑惑をめぐる問題により、ナジブ首相が批判されきたのは今まで述べてきたとおりです(「ナジブ政権の苦境」、「マハティール、NYタイムズで大暴れ」をご覧下さい)。
さらに、7月2日、WSJが、1MDBからナジブ首相の個人口座に7億ドルが流れたというスクープ記事を出し、同首相に対する非難は激化しました。野党とマハティール元首相からの攻撃はこれまでどおりですが、今回は、一応は身内のはずのムヒディン副首相までが「疑惑は追及すべき」「首相は説明責任を果たすべき」といった厳しい姿勢を打ち出していました。
もともとムヒディンはマハティールに近く、保守的な政治家であり、表立った批判は控えていたものの、ナジブとの関係は良好ではありませんでした。今回の人事が、ムヒディンのようにナジブに対して批判的な態度をとっている閣僚を更迭し、それにより自身の求心力を高めることを狙ったものであることは明らかです。
しかも、新任の副大臣のうち4名は、1MDB問題の調査を担当していた超党派の公的会計委員会(Public Accounts Committee)のメンバーであり、彼らが委員会を抜けることで、新たに委員が任命されるまで1MDBの調査はストップすることになります。さらに、内閣改造発表と同じ日に、1MDB問題の捜査を担当していた法務長官が「健康上の理由」から退任し、あらたにナジブに近い関係にある保守的な裁判官が就任しました。
正直言って、私も、ここまでやるのか・・・と驚きました。これ以前にも、1MDB問題を取り上げた経済紙を発行禁止処分にしたり、WSJを名誉毀損で訴えるとか言ったり、強権的な振る舞いが目立っていましたが、真の意味で強権を発動した格好です。
ナジブも相当に追い詰められているのでしょうが、とりあえず今回の措置により、UMNO内部からの批判リスクは抑えられ、1MDBの捜査もスローダウンし、政権は安定することになりそうです。
もっとも、捜査結果によって違法行為が明らかになれば、政権の命取りになることは避けられないでしょう。すべて捜査の帰趨にかかっているといえそうです。
ちなみに、あらたに副首相に就任したザヒド・ハミディ内相は、マレー民族主義をとなえる保守的な政治家として知られ、1月にムルデカ・センターが実施した世論調査によれば、次世代の指導者候補として3位につけています。なお、1位はヒシャムディン・フセイン国防相、2位はカイリー・ジャマルディン青年スポーツ相でした。
最後に、同性愛罪で収監中のアンワル・イブラヒム元副首相(「野党連合の苦境」参照)、WSJに寄稿してナジブ政権を批判していました。相変わらずの鋭い舌鋒。服役を終える頃には70歳を超えていることになりますが、まだまだやる気は衰えないようです。
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3 comments on “マレーシア・ナジブ首相のムヒディン副首相更迭”
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刃の上の綱渡りだな・・・(笑
調査委員会・・
「寄付であつた・・公金ではない・・不正はない」
さるファウンドからの・・
これが認められるとすれば・・賄賂と寄付の区別がつかない。賄賂取り放題になる・・これで済むとは思えないが・・・(笑
同旨の記事を読みました。詳細は分かりませんでしたね。
それに、これは汚職対策庁のコメントでした。特別捜査チーム(法務庁、連邦警察、汚職対策庁、中銀)の合同コメントでないのが気になります。ナジブは、今のところ、法務庁、中銀と各個撃破を試みているようなので・・うがった見方かもしれませんが。