プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2005/07/25 09:23  | 金融全般 |  コメント(3)

中国元切り上げ総括


「やったな、中国」での意見に対しましてたくさんのコメントを頂きましたこと、暑く御礼を申し上げます。あまり判断する材料の無い所で書いておりますので、後から見ると??ということも出てくるでしょうが、敢えてそのままにしておきます。改めて有難うございました。

現在に至ってもどういうバスケットにするのか、よくわかっておりません。ただ、今回は物事を逆から見る必要があろうかと思います。つまり、バスケットを採用する事は溜まっていく外貨準備をあちこちに分散する必要から来る事ですよね、と言う解説が多いのですが、中国より外貨準備の多い日本はドルしか持ってないわけです。
ここで逆、つまり中国としてはドル資産はもうこれ以上持ちたくないよ、というメッセージを感じ取る事が大事だと思われます。橋本総理大臣が日本はアメリカ国債を売るかもしれないとハーバーと大学で講演をして、大騒動になったことがありますが、中国はそうはなりたくはない。必要があれば売るからね、他の通貨でもっているし、他の通貨にも連動しているから別にアメリカの金利が上がったり、ドルが暴落してもヘッジしてありますからいつでも売りまっせ、というかなり強烈な脅し、毒を含んでいると読むべきでしょう。アメリカ側、特に議会筋が一応に沈黙してしまったのもこのあたりが読みきれないため、本音がわからない為と考えます。

しかし、中国も厳しい。アメリカの債券を買わないとなると、それに変わる流動性を保有し、規模が匹敵するのはもう日本しかないのです。この日本債券を買うのかどうか、これは悩ましいでしょうね。

もし、私が中国のブレーンで20年くらいのスパンで戦略を立てるなら、日本債券の30%くらいのシェアを握ってしまいましょうと、提案するでしょう。金利が上がるも下がるも自由自在なんて状態を作り出すのが対日戦略上ベストでしょう。「なに、靖国?? 債券売って暴落させちゃうぞ!!」ってなもんで、かなり日本に対する牽制になるのは間違いありません。こういった政治的なロジックを駆使して果たして相当数の円をバスケットに入れていくことができるでしょうか。
所詮日本の外貨準備は全て米国債なのだから、日本債券を買う事は間接的にアメリカ国債を買う事になるし、「いう事を聞かせやすい分」安全だと考えるなら・・・恐るべし、中国であります。

この「安全」について、クレジットという意味ではなく「いつでも売れる」、という安全性については間違いなく日本の方が上でしょう。米国債は全てFEDWIREを通過して決済する事になるので、その気になれば中国政府のアカウントの決済を停止する事は簡単でしょう。日本の場合、国債は日銀ネットで決済するのですが、中国政府が直接日銀NETに入っている訳ではないので、その意味で例えば野村證券経由で大量の国債が売られた場合、それが誰かを判明させること、更には止める事は容易では無い筈です。このあたりの「流動性安全保障」から見ると日本国債の方が上かもしれません。いろいろな意味で「あなが大きい」ということでしょうか。

最後に大事な点を一つ。

The People’s Bank of China will make adjustment of the RMB exchange rate band when necessary according to market development as well as the economic and financial situation. The RMB exchange rate will be more flexible based on market condition with reference to a basket of currencies. The People’s Bank of China is responsible for maintaining the RMB exchange rate basically stable at an adaptive and equilibrium level, so as to promote the basic equilibrium of the balance of payments and safeguard macroeconomic and financial stability.

この文面から判断するなら、中国政府は人民元を全て自分でコントロールできると言い切っているわけです。これを我々のような民主的資本主義のなかでお金を動かしている人間から見ると滅茶苦茶な論理にしか見えない事を付け加えさせていただきいます。大変な人がゲームの中にはいってきちゃったな?、という感じですね。

では!

メルマガの申し込みにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

3 comments on “中国元切り上げ総括
  1. hallick より
    やりましたね、中国

    ご無沙汰致しております。
    急に仕事が忙しくなってしまい、目の廻るような忙しさですが、頭は廻りません。(笑)

    暑中見舞いのかわりに、TBさせて頂きます。

    今後ともよろしくお願い致します。

  2. 有能なBrain

    ぐっちさんほどの有能なブレーンが、中共の
    体制内で無事に生存できるかどうか大いに
    疑わしい、と思うのは私だけでしょうか?
    なにせ、肝心の政治家が無能な独裁体制です
    から、ぐっちさんほど有能な方は邪魔なこと
    この上ありますまい(笑。
    となると、中共が我が国の国債を買い捲る
    シナリオはあまりなさそうですね。もちろん、
    「乃村が売りまくる」なんてことが起きない
    ようにシステムを改良するのは大事です。

  3. ぐっち より
    どうもです。

    ++halickさん
    いつも有難う御座います。書中見舞い有難いんですが、昼間にあれをみてしまったもんで、条件反射を抑えるのに一苦労(笑)5時になって近くのビールバーにすっとんで一気に2杯飲んでしまいましたよ(笑)

    ++おおみや%NEETさん
    いつもお世話様。お褒めに預かり(笑)光栄です。今後ともよろしく!

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。