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2015/06/25 00:00  | 東南アジア |  コメント(4)

マハティール、NYタイムズで大暴れ


今日は天気が良かったですね。早くスカっと夏になってもらいたいものです。さて、本日のお題はマレーシアです。

Malaysian Ex-Prime Minister Unleashes Criticism(6月17日付The New York Times記事)

マハティール元首相がNYタイムズのインタビューにおいてナジブ首相に対する批判を大展開。これに対し、アニファ・アマン外相がNYタイムズに対して公開書簡を送り、真正面からマハティールに反論。

Anifah Aman: Regrettable to see Dr M undermine country(6月17日付The Star記事)

マハティール氏の批判は無謀で根拠のない中傷であり、元首相の地位と言論の自由を濫用するものとして、党の長老を手厳しく攻撃しています。政権与党(UMNO)内で泥仕合のようになっていますが、「マレーシア・ナジブ政権の苦境」で述べたとおり、「ドクターM」(マハティールの通称)の放言は今に始まったことではありません。

ただ、NYタイムズがアジアの政局をこんなに大きく取り上げるのは珍しいことなので、少し驚きました。余談ですが、このNYタイムズのインタビュアーのThomas Fullerは私の友人で、4月のバンコク出張の際にも一緒に飲みました。

マハティールの批判の内容は、マレーシア政府の投資ファンド「1MDB」の巨額の負債と不正経理が主な部分を占めています。1MDBの問題については以前の記事で述べたとおりです。ただ、この他にも(これも今に始まった話ではないのですが)ナジブ首相夫人の派手な振る舞いやモンゴル人モデル殺害事件への関与といった私生活の不祥事に及んでいます。

マハティールは、リー・クアンユーと並ぶアジアの賢人として、今年も「日経アジアの未来」に招かれて講演していましたが、もう89歳、非常に無軌道、というか無責任な言動が目立つ老人です。かつてはアンワルを追放し(「マレーシア・野党連合の苦境」参照)、アブドラ・バダウィを退任させたように(「マレーシア・ナジブ政権の苦境」参照)、2人の後継者を葬るほどの権力をふるいましたが、もはやUMNO内部では相手にされていません。

NYタイムズでここまで大々的に取り上げられたことでマレーシア国内の報道も沸き立っているようですが、ドクターMの非難が決定的な問題になることはないと思います。

問題は何と言っても1MDBのスキャンダルです。こちらは依然として中銀、会計検査院の捜査が行われているところであり、その結果によっては政権に重大な影響が及ぶ可能性があります。この関係では、マハティールのインタビューの直後、2013年の総選挙において1MDBがナジブ首相を支援していたとの報道が出ました。

マレーシア政府系ファンド、総選挙で首相支援 巨額負債で疑惑も(6月19日付ウォールストリートジャーナル記事)

この件についても捜査が進められるようですが、UMNO内部で政権批判が高まるようだと心配になります。一方で、野党連合も、イスラム主義政党PASが穏健改革派と保守派に分裂し、華人政党DAPはもはやPASとの連立は存在しないと述べるなど、事実上瓦解している状況です。

Malaysian Opposition Coalition Falls Apart(6月16日付The Wall Street Journal記事)

これも「マレーシア・野党連合の苦境」で述べたとおりの展開です。そんなわけで、マハティールの暴走はいつものことですが、マレーシア政界の混乱からは目が離せない状況が続きそうです。

11月には、現職大統領としては66年のジョンソン以来というマレーシア訪問を昨年に果たしたオバマ大統領の再訪問が予定されています。その頃までにどんな状況になっているのかちょっと不安です。

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4 comments on “マハティール、NYタイムズで大暴れ
  1. ペルドン より
    オバマ再訪問

    何故でしょうねぇ・・・??(笑

  2. JD より
    再訪問

    マレーシアは今年ASEAN議長国なので、オバマは毎年やっているASEAN関連の首脳会議に出るためにマレーシアに行くのです。大した意味のある訪問ではありません。

  3. ペルドン より
    再訪問

    もっともつと・・
    深い意味がないと・・
    最近・・オバマ大統領・・鼎が軽くなったのでは・・

    トランプ・・勝っちちちまうのでは・・博打打だから・・
    ヒラリー様・・お歳だし・・・(笑

  4. JD より
    再訪問

    はあ、そう言われてもね・・オバマはASEAN首脳会議をサボったことがあるので(ドタキャンでびっくりしました)、行くこと自体がアジア・ピボットとも言えますが。

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