2015/07/07 00:00 | 中東 | コメント(4)
イラン核協議:最終合意の行方
今日は七夕なんですね。いつの間にか7月・・もう一年の半分が過ぎているとは。月日の流れる早さに驚きますね。
さて、今日はイランについて。
■ 米国務長官:イラン核協議の最終合意の楽観論否定-記者団に(7月6日付ブルームバーグ記事)
当たり前のように6月30日の最終期限が延期され、交渉が続いているイラン核協議。まあ、6月末に合意が成立すると考えていた人は最初からいなかったので、ある意味想定どおりの展開です。以前の記事で述べたとおり、両国は何が何でも合意を実現させる覚悟ですから、おそらく何とかなるのでしょう。
では、どのタイミングでまとまるのか。ポイントとなるのはコーカー・メネンデス法(レビュー法)です。同法の定めるレビュー期間は30日間とされていますが、最終合意が7月9日を過ぎるとこの期間が60日間に伸びます。そうすると、米国議会は夏休み(recess)に入ってしまうので(今年は8月10日~9月7日)、レビューを終えるのがものすごく先になってしまいます。これは避けたいので、おそらく7月9日にはまとまるだろう、と多くの人が考えています。
欧州は制裁解除後のビジネスに向けてやる気満々で、既に多くの国が経済ミッションを送り込んでいます。もっとも、合意が成立しても、制裁解除が進むのはだいぶ先、早くとも来年にはなるでしょう。その間に何が起こるか分かりませんから、まだまだ不透明な状況です。
ところで、この合意が本当に中東を良い方向に導くのか、色々な議論があることは以前の記事で述べたとおりですが、私の印象をいえば、基本的に、イランは交渉が可能な国だと思っています。
イランは世界中の色々なところでもめ事を起こしている、覇権主義である、といった見方がありますが(これが米国の基本的な見立てですが)、イランの戦略の基本は、おそらく自国の体制の防衛にあり、それが積極的・先制的な形で展開されている、と考えると大体の辻褄が合います。レバノンやイエメンのような遠いところにまで手を伸ばして派手にやっているではないか、と思うかもしれませんが、これらの地域はイランの防衛ラインに入っているのです。
イランとしては、自国に対して直接に攻撃が及ぶことを避けたいので、自国領域から離れたところで紛争を起こし、火の粉が及ばないようにしたい、そして、その範囲は、シーア派住民が多い地域の外延となります。すなわち、西の端であるレバノンからシリア、イラク、そしてイラン本国を経由して、アラビア半島の東のバーレーン、南のオマーン、イエメンに至る三日月の地域です。これは、イランがちょっかいを出している地域と重なります。
そもそも、イランは、ペルシアの時代から、またシーア派という宗派の特徴から、自分たちは抑圧を受けている立場にあり、それに抵抗しなければならない、という世界観をもっています。その攻撃的な防御思想は、こうした被害者意識の強い国民性から来ているともいえます。
以前の記事で述べたとおり、今の中東は30年戦争にたとえられるほどの混沌に陥っていますが、この段階に至っては、域外のプレイヤーである米国と国連が秩序を回復させることはおそらく困難です。「トルコのゼロ・プロブレム外交の挫折」で述べたように、この地域のキープレイヤーは、エジプト、サウジアラビア、イラン、トルコ、イスラエルの5大国です。これら域内のプレイヤーがお互いに調整を行わなければ、事態の改善は難しいと思います。
今後どのような調整を行うことができるのか、非常に見通しが困難ですが、その可能性が地域の安定の鍵を握ることになるでしょう(一つの可能性は「イスラム国」対策、特にイラクへの支援かもしれません。ここは全ての関係国が同じ方向を向いているところなので)。その意味で、イランを建設的な形で巻き込んでいくことは、あり得る選択肢のように思われます。
めずらしく私見を長々と述べてしまいました。まあ、たまにはこういうのもいいでしょう。考えるヒントにしてみて下さい。
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4 comments on “イラン核協議:最終合意の行方”
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どうでしょうか・?
日にちの限定は・・弱みでもあり・・それが原因でオバマが飲めば・・
軟弱さをまたもや暴露することになる。
今日のBBCで、極最近までCIAのホワイトハウス中東責任者のインタビュー・・
オバマのミスを遠慮なく・・突っ込まれると否定・・だが顔面の動きは肯定・・
今回も・・ケーリーが日にちで妥協するなら、サウジが半月刀・・オバマに抜くな・・・(笑
7月10日になりましたね。
一つ片付いた・・
サウジの出方は・?
共和党の出方は・?
凍結したイラン資金・・全解除・・半分程度で・・担保確保の方が・・反対派を説得しやすいと思うが・・
そこは・・イラン・・信頼の試金石・・と頑張ったか・・オバマの焦り・・感じるな・・・(笑
サウジの反応はまだよく分かりませんが、イスラエルに比べると抑制が効いているようです。ここでもサルマン副皇太子の路線が注目されます。
共和党は「attack plan」を作成しているらしいです(笑)。
制裁解除プロセスは、私もまだ精査してませんが、予想どおり、かなり曖昧ですね。これからまた何度も問題になってくるのでしょうね。