2020/01/14 05:00 | 中東 | コメント(2)
イランによる米軍基地への報復攻撃(1)
■ ザリーフ外相のツイート(1月8日付Javad Zarif)
■ トランプ大統領のツイート(1月8日付Donald J. Trump)
■ Remarks by President Trump on Iran(1月8日付The White House)
■ トランプ大統領の記者会見の動画(1月9日付The White House)
1月7日、米国の空爆により殺害されたイランの革命防衛隊の「コッズ・フォース」のソレイマニ司令官の葬儀がケルマンで行われました(ちなみに私はケルマンにも滞在したことがあります。10年以上前ですが)。これによりハメネイ最高指導者が述べていた3日間の服喪期間が終了し、イランがどのような対応に出るかが注目されました。
・「イランのソレイマニ司令官の殺害」(1/6)
その夜(8日未明)、イランの革命防衛隊がイラクにある米軍基地を弾道ミサイルで攻撃。米国防総省によれば、イランが発射したミサイルは16発で、このうち11発がアサド空軍基地に着弾し、1発がクルド自治区の首都エルビルの基地に着弾したとのこと。
イラン国営メディアは米兵80人が死亡したと発表しました。しかしトランプ大統領はすぐに「すべては順調だ!(All is well!)」とツイートし、米軍とイラク軍からは死傷者が出たとの発表は出されませんでした。トランプは翌朝に声明を出すと述べてこの日は終わりました。
米国はどのような対応をとるのか。イランに反撃するのか。もしかしたら「第3次世界大戦」が始まるのでは・・との不安の声も上がりました。世界中が固唾を飲んで見守る中、トランプの記者会見が始まりました。トランプは「犠牲者は出なかった」「米国は軍事力を使うことを望まない」と表明しました。
イラン側もザリーフ外相らがこの攻撃をもって矛を収めるという趣旨のメッセージを出しており、事態は収束に向かいました。ただし、イランのメディアによれば、革命防衛隊の幹部は「近くさらに激しい報復を行う」と述べています。
また米財務省はイランの政府高官8人と鉄鋼・繊維等の産業の17団体を制裁対象に追加しました。
一方、イランのミサイル発射直後、ウクライナ国際航空のボーイング737型機がテヘランのイマーム・ホメイニ国際空港を飛び立った後に墜落するという事態が発生しました。
これに対してはイランはすぐに「技術的な問題から生じた事故」と説明。しかしその後、カナダのトルドー首相と英国のジョンソン首相が「イランのミサイルにより撃墜されたことを示す証拠がある」「撃墜は誤って行われた可能性がある」と発表。トランプも「誰かが間違いを犯したのだろう」と述べ、さらにポンペオ国務長官も「イランのミサイルによって撃墜されたと確信している」と発表しました。
すると、イランは説明をあらため、誤って撃墜したとして謝罪の意を示しました。革命防衛隊の航空宇宙軍のハジザデ司令官は記者会見で、米国からの反撃を予想し、厳重な警戒態勢にあった中で、担当者が航空機をミサイルと誤認し、上官との連絡が通信不良でとれず、発射を決定したと説明。革命防衛隊に全責任があり、撃墜を知ったときは「死にたいと思った」とも述べました。
また、ミサイル攻撃に先立つ1月6日、イランは無制限にウラン濃縮を進める方針を表明しました。核合意の義務履行停止の第5弾です。
イランの攻撃、トランプ大統領の発表、ウクライナ機の撃墜、そして核合意の義務履行停止が意味するものは何か。米国とイランの今後はどうなるのか。これらの点を解説します。
なお、米・イラン関係については、読者の方からコメント欄で以下の質問をいただきました。
>本当に双方に交戦に意思はないのか?ということに疑義を非常に抱きます。
>イランに交戦の意思がないのであればイラク大使館襲撃などバカげた行為をするはずがないということが言いたいのです。
>そもそも前提条件である双方に交戦の意思がないという条件がまちがっているからこのイランの挑発的行為が読めなかったのではないか?
また、ツイッターでは以下の質問をいただきました。
>(この『現代ビジネス』の)記事によればトランプはイランに対して戦争を仕掛けるつもりだそうです。その目的の一つは中国潰しとか。そうなんでしょうか?
これらの点についても私からの回答を述べます。
※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。
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イランによる米軍基地への報復攻撃(1):米・イランの衝突
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●イランの報復攻撃
●トランプの対応
●緊張の緩和?
●読者の方からの質問への回答
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あとがき
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■ 英政府の「変人」募集にユリ・ゲラー氏が応募、「超能力」外交をアピール(1月9日付AFP)
BREXIT法案が可決され、いよいよ今月末にはBREXIT実現・・というタイミングで、ボリス・ジョンソン首相の側近でBREXITの陰の立役者である鬼才ドミニク・カミングス(以下の記事参照)が首相官邸スタッフに「異能の奇人・変人(weirdos and misfits with odd skills)」を募集したところ、超能力者のユリ・ゲラーが応募。
・「ボリス・ジョンソンのBREXIT交渉」(19/9/16)
ユリ・ゲラー、私はリアルタイム世代ではないですが、超能力ブームのシンボルとしてその名は懐かしく響きます。73歳ですか。英語の報道では「magician」という肩書が一般的な模様。
「故ゴルダ・メイア元イスラエル首相が所有していたとされるスプーンをジョンソン首相に贈った」とありますが、テルアビブ生まれのユダヤ系なんですね。たしかに「ゲラー」はユダヤ系に多い名前。『フレンズ』のロスとモニカもそうでした。
さて、本号は記念すべきメルマガ通算第400号になりました。ここまで続けられたのも読者の皆様のご支援のおかげです。どうもありがとうございます。
世界情勢の混迷が一層深まっていることもあってか、本メルマガの購読者数も今年に入って一段と伸びています。ツイッターや「経済ZAP!!」との相乗効果もあるかもしれません。またFBコミュニティのスタートもあり、読者の方々からのご質問やご意見も沢山頂戴しています。
いずれも大変励みになることです。私にとって何より楽しいのは読者の方々とのコミュニケーションです。メルマガ発信を続ける大きな目的でもあります。これからもさらなるパワーアップを追求しますので、よろしくお願いします。
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2 comments on “イランによる米軍基地への報復攻撃(1)”
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おめでとうございます!そして、いつもありがとうございます!
この複雑さをはじめから自分で理解するのは、…無理ですね(苦笑)
ただ、これほどまでに政治や外交というのは、それぞれの立場で筋が通っていて、構造がしっかりしているものなんだ、というのがよく分かります。
今の私には、これだけ要素の多い中東情勢、どこから手をつけたらいいのか分からないので(苦笑)メルマガ頼りですが、ゆくゆくはこういった多方向に思考を巡らせながら、ロジックを組み立てていきたいものだなぁ、と思った次第です。
これからも応援していきます!
Twitterは、マスコミより、今回の一件では、凄かった。特に専門家の皆さんが次々とツイートしてくださるので、間違い訂正もはやく、ついていくの面白かったです。今回は、トランプ大統領のツイートに、直接ツイートの返信機能を使ってトランプにちゃんと伝わるようイラン最高指導者が返信する。次の日にアメリカがミサイル攻撃するという、歴史的なことが起こったとおもっています。このイラン最高指導者の英語の返信内容の日本語訳で専門家が適切に訳され、「やれるものなら、やってみろ』には、アメリカからのミサイル後、思いだし、ふるえました。