2018/12/17 00:00 | 今週の動き | コメント(2)
今週の動き(12/17~23)
ついにぐっちーさんの新著が発売されましたね。売行きも好調とのこと。私も年末の楽しみにしたいと思います。
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先週の動き
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12/9(日)
・ライトハイザーUSTR代表が対中協議の合意期限として定めた19年3月1日は「厳格な期限」と表明
・クシュナー大統領上級顧問がカショギ記者殺害事件後にムハンマド・ビン・サルマン皇太子に個人的なメッセージを通じて事件への対応の仕方を助言していたとNYタイムズが報道
・GCC首脳会議(リヤド)
・アルメニア総選挙(パシニャン首相が率いる政党連合「マイ・ステップ」が勝利)
12/10(月)
・米財務省が金正恩朝鮮労働党委員長の側近である崔竜海副委員長ら高官3人を人権侵害等を理由に制裁対象に指定したと発表
・英国のメイ英首相が12月11日に予定していたBREXIT協定案の採決の延期を発表
・EU司法裁判所が英国による一方的なBREXIT撤回は可能と判断
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・フランスのマクロン大統領が抗議デモを受けて19年1月からの最低賃金の引き上げ等の政策を発表
・インド中銀のパテル総裁が辞任
・リビア大統領選挙・議会選挙
・日本政府が情報通信機器の政府調達に関する運用指針を公表(安全保障上の危険を考慮した内容で19年4月以降に適用)
・NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天(来年秋に参入予定)の携帯電話大手4社が「5G」の基地局等に中国製品を使わない方針を固めたとの報道
・東京地検が日産自動車のカルロス・ゴーン元会長、グレッグ・ケリー元代表取締役、日産を金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で起訴
12/11(火)
・トランプ大統領と民主党指導部(シューマー上院院内総務とペローシ下院院内総務)がホワイトハウスで面談しメキシコ国境の「壁」予算をめぐりお互いを批判
・トランプ大統領が華為技術(ファーウェイ) の孟晩舟・副会長兼CFOの逮捕について安全保障と米中通商協議の進展に資するなら捜査に介入するとの考えを表明
・カナダの裁判所がファーウェイの孟副会長の保釈を認める決定
・国際シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」が同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官マイケル・コブリグが中国政府に拘束されたと発表
・中国の劉鶴副首相がライトハイザーUSTR代表やムニューシン財務長官と通商問題について電話協議
・英国のメイ首相がオランダのルッテ首相、ドイツのメルケル首相、トゥスク欧州理事会議長、ユンケル欧州委員長と会談(アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル)
・EU総務理事会(ブリュッセル)
・インドが中銀総裁にダス元財務次官を任命すると発表
・タイの選挙委員会が総選挙を19年2月24日に実施すると発表
12/12(水)
・NY連邦地裁がトランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエンに対し選挙資金法違反等により禁固3年の判決
・ポンペオ国務長官がマリオット・インターナショナルの顧客情報の大量流出への中国の関与を指摘
・中国が「中国製造2025」の見直しを検討しているとの報道
・英国の保守党がメイ党首(首相)の信任投票(留任が決定)
・イタリアが19年の予算案の財政赤字をGDP比2.04%にする提案を欧州委員会に伝える
・欧州議会が日EU・EPAを承認(19年2月の発効が確定)
・インドの5州(ラジャスタン、マディヤプラデシュ、チャッティスガル、ミゾラム、テランガナ)の州議会選の結果が判明(与党BJPが全州で敗北)
・フィリピンの議会がミンダナオ島での戒厳令の19年末までの延長を決定
・WTO一般理事会(ジュネーブ、~13日)
12/13(木)
・トランプ大統領が元個人弁護士マイケル・コーエンに対し法律違反を指示したことはないとツイート
・米上院がカショギ記者殺害事件の責任はムハンマド・ビン・サルマン皇太子にあるとして同皇太子を非難する決議とイエメン内戦に介入するサウジへの軍事支援停止を求める決議を可決
・ボルトン大統領補佐官がヘリテージ財団での講演でトランプ政権のアフリカ戦略(中ロの「略奪的行為」への対抗)を発表(ワシントンDC)
・中国がカナダ人2人(元外交官のマイケル・コブリグと実業家のマイケル・スペーバー)を安全保障を脅かした疑いがあるため拘束し調査を行っていると発表
・EU首脳会議(ブリュッセル、~14日)
・ECB定例理事会(QE終了を決定)(フランクフルト)
・国連主導のイエメン和平協議の最終日(ホデイダの停戦で合意)(スウェーデン・リンボ)
12/14(金)
・トランプ大統領が大統領首席補佐官代行にミック・マルバニー行政管理局(OMB)局長を指名
・トランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエンがABCのインタビューで元ポルノ女優らへの口止め料支払いはトランプ大統領の指示を受けて行ったと発言
・トランプ大統領とトルコのエルドアン大統領が電話協議
・ポンペオ国務長官が中国に対し拘束中のカナダ人2人の解放を要求
・ポンペオ国務長官がファーウェイの孟副会長の逮捕について「法的な手続きに従う」と発言
・カナダのフリーランド外相がファーウェイの孟副会長の逮捕について政治的な干渉を否定
・中国財政部が米国製自動車・自動車部品への追加関税(最大25%)の適用を19年1月から3月31日まで停止すると発表
・EU首脳会議の最終日(BREXIT協定案の「バックストップ」は一時的な措置であることを強調する文書を採択)(ブリュッセル)
・韓国の光州地裁が三菱重工業に対する元女子勤労挺身隊員の損害賠償訴訟の控訴審判決(三菱重工業の控訴棄却)
12/15(土)
・トランプ大統領がジンキ内務長官が年末に辞任すると発表
・フランス各地でマクロン政権に対する大規模な抗議デモ(5週末連続)
・豪州のモリソン首相が西エルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表
・スリランカのラジャパクサ「首相」が辞任を表明
・国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が閉幕(ポーランド・カトウィツェ)
12/16(日)
・ロシアの沿海地方の知事選挙
・スリランカのシリセナ大統領が10月に解任したウィクラマシンハを再び首相に任命
●ファーウェイの副会長逮捕と中国のカナダ人拘束
華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼CFOの逮捕をめぐり状況が激しく動きました。
まずカナダの裁判所がファーウェイの孟副会長の保釈を認める決定。これから米国への引き渡しが検討されることになります。
そして中国がカナダ人の元外交官マイケル・コブリグと実業家のマイケル・スペーバーを拘束していることが判明。米国では中国側の報復との見方が支配的な状況です。
一方、トランプ大統領は安全保障と米中通商協議の進展に資するなら孟副会長の捜査に介入するとの考えを表明。通商協議とは別の問題とするライトハイザーUSTR代表やロス商務長官の発言とは整合しないように見える発言です。トランプの発言後、ポンペオ国務長官は、カナダとの外務・防衛担当閣僚協議(2+2)後の記者会見で「捜査は法的な手続きに従って行われる」と発言し、カナダのフリーランド外相も政治的な干渉を否定しました。
ファーウェイが中国にとっていかに重要な存在であって、この問題の扱いが今後の米中関係に大きな影響を与えることは、以下の記事で詳しく説明したとおりです。
・「ファーウェイ副会長の逮捕と米中の『ハイテク戦争』」(12/10)
さらに、中国財政部が米国製自動車への追加関税(25%)の適用を19年1月から3月31日まで停止すると発表しました。これにより自動車関税は他国からの輸入車と同様、15%に戻ります(中国は5月に輸入車への関税を15%に引き下げている)。
・「今週の動き(5/28~6/3)」(5/28)
また、中国が「中国製造2025」の見直しを検討しているとのウォール・ストリート・ジャーナル等による報道がありました。
主にファーウェイをめぐる米中の動きと今後の米中協議の見通しについて、こうした先週の動きをふまえ、今週解説します。
●マルバニーOMB局長の首席補佐官代行指名
トランプ大統領が大統領首席補佐官代行にミック・マルバニー行政管理局(OMB)局長を指名しました。
マルバニーはサウスカロライナ選出の元下院議員で2010年の中間選挙で当選した典型的な「ティーパーティー」議員。最も強硬な財政保守派として有名で、下院保守派の議員連盟「フリーダム・コーカス」の創設者の1人です。そのような人物を予算を仕切る大統領直轄組織であるOMBのトップに任命した大胆な人事は驚きでした。
マルバニーは17年2月の就任早々に国務省と環境保護局(EPA)の予算の大幅な削減と社会保障費の削減を主張し、3月に議会に提出された18年度予算教書にその方針が反映されました。一方、国防予算の増額と「壁」の予算は計上され、財政支出の拡大は大型減税による景気浮揚によってカバーされると説明しています。18年2月に19年度の予算教書が議会に提出されましたが、財政赤字拡大に突き進む内容になったことは以下の記事で説明したとおりです。
・「予算教書・インフラ計画」(2/19)
このようにトランプ大統領の下で財政悪化が懸念されていますが、一方、財政保守派であるマルバニーがこれに公然と異を唱えたことはありません。
また、マルバニーは今回の指名の数日前まで消費者金融保護局(CFPB)の局長代行を務めていました。CFPBは住宅ローンをはじめとする不当な貸出から消費者を守ることを目的としてオバマ前政権下で発足した組織で、マルバニーは元々この組織に対する痛烈な批判者でした。気候変動問題に懐疑的だったスコット・プルイットがEPA長官に就任したのと通じる人事です。そしてマルバニーは学生ローンの負担を重くするなど、消費者保護と逆行するかのような措置をとっています。
このようにマルバニーはトランプの志向とかみ合う面があり、またトランプの意向に合わせて動く器用さを見せています。トランプにしてみれば都合の良い人物であり、かねてから首席補佐官にしたいという考えをもっていたとも言われています。マルバニーはワシントンDCの政治を熟知しており、首席補佐官の資質は十分にあるとみられます。
一方、マルバニーはCFPB局長代行の職務からは離れますが(12月11日にキャシー・クラニンガーが就任)、OMB局長は続けるようです。首席補佐官「代行」とされているのは一時的な措置であることを示唆しているのでしょう。
おそらくマルバニーも首席補佐官の職務に就くことに前向きではなく、トランプからの要請を受けて仕方なく引き受けたのだろうと推測されます。ラインス・プリーバスとジム・ケリーの末路を見ても分かるとおり、トランプ政権においてこのポストは誰にとっても引き受けたいものではありません。ペンス副大統領補佐官のニック・エアーズと元NJ州知事のクリス・クリスティが辞退し、人材が払底する中、OMB局長と兼任させるというやや無理な形でマルバニーに引き受けさせた・・とみられます。ライトハイザーUSTR代表かクシュナー大統領上級顧問を就任させるという噂もありましたが、さすがにこれは最後の選択肢だったのでしょう。
トランプ政権において首席補佐官にとって最大の課題は「自らの身を大統領から守ることができるか」です。マルバニーにはそれなりに仕事をこなす適性がありそうですが、前任たちの苦難を見ればどうなるかは分かりません。そのために退路は残したようですが、まずはお手並み拝見となります。
●トランプの元個人弁護士の有罪判決
トランプの元個人弁護士マイケル・コーエンが選挙資金法違反等により禁固3年の判決。その後、コーエンはトランプ大統領が同法違反に当たる事実であるポルノ女優らへの口止め料支払いを指示していたと発言しました。
トランプの顧問弁護士ルドルフ・ジュリアーニは「誰も殺されていない。大した犯罪ではない。」と述べていますが、問題になっている犯罪は「重罪(felony)」であり、決して軽視できる話ではありません。
とはいえこれによってトランプが起訴される可能性は少なくとも大統領任期中はゼロです。共和党は完全に沈黙しており、「トランプ党」化があらためて示されました。
民主党がどう対応するかですが、この問題を追及することでどこまでトランプにダメージを与えられるかは定かではなく、悩ましいところです。少なくとも弾劾を検討する段階にはありません。まずは下院の調査権限をフル活用する中で検討するにとどまるでしょう。米国では大きな注目を集めていますが、この意味で状況を大きく変えるものではありません。
民主党のトランプ攻撃はむしろ政府閉鎖をめぐる議論において先鋭化しています。先週はトランプ大統領、ペンス副大統領、民主党のチャック・シューマー上院院内総務、ナンシー・ペローシ下院院内総務の4人がホワイトハウスで面談し、トランプと民主党の2人が激しくお互いを非難するという異例の事態になりました。
ここでは特にペローシがトランプを巧みに追い込み、「政府閉鎖するならば光栄だ。これは『私の政府閉鎖』だ。」という発言を引き出し、民主党に責任を押し付ける戦術を崩しました。トランプにしてみれば公開の場での言い合いであれば自分に有利と考えたのでしょうが、めずらしく(?)功を奏しなかったようです。両者の間できまり悪そうに沈黙を保つペンスは米国内では格好のネタになりました(笑)。
「つなぎ予算」の期限は今週到来します。例によってドタバタが繰り返されていますが、共和党議員の多くが「大統領にかかっている」と述べ、匙を投げている状態です。おそらく来年1月までのつなぎ予算は成立するのではないかと思いますが、「私の政府閉鎖」発言をみると、本気で短期間の政府閉鎖に突っ込むのでは・・という不安も拭えません。
●BREXIT協定の英国議会での採決の延期
BREXIT協定の英国議会での採決は土壇場で延期。そして保守党がメイ党首の信任投票に踏み切り、200対117で何とか支持されました。
その後メイ首相は欧州を行脚してEU首脳と今後の対応を協議。「バックストップ」を一時的な措置にすることを確認するEU首脳会議での声明を引き出したものの、EU首脳からはことごとく「再協議は無理」という回答。こうした展開は以下の記事で予想したとおりです。
・「BREXIT協定の行方」(11/23)
・「BREXIT協定の行方」(11/26)
また、EU司法裁判所は、先週の法務官の見解を踏襲し、英国による一方的なBREXIT撤回は可能との判断を表明しました。
これらの動きをふまえ、今後の見通しについて解説します(※メルマガに限定)。
●インド中銀総裁の辞任と州議会選挙における与党BJPの敗北
インド準備銀行(RBI、中銀)のウルジット・パテル総裁が突然の辞任。私のようなインド・ウォッチャーにも青天の霹靂でした。しかも翌日、後任総裁にシャクティカンタ・ダス元財務次官を任命。このスピードも驚きでした。
また11月から12月にかけて行われたラジャスタン、マディヤプラデシュ、チャッティスガル、ミゾラム、テランガナの5州の議会選の結果が判明し、全ての州で与党BJPが敗北しました。
これらの動きが意味するものを解説します(※メルマガに限定)。
●GCC首脳会議
カタールからはタミーム首長ではなく外務担当国務相が出席しました。カタールの自信がみてとれます。まだまだサウジとの和解は遠いようです。
・「カタールのOPEC脱退とOPECプラスの減産」(12/10)
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今週の動き
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12/18(火)
・マイケル・フリン元大統領補佐官のロシアゲート疑惑に関する虚偽供述容疑の判決言い渡し
・FOMC(~19日)
・中国共産党11期中央委員会第3回全体会議(11期3中全会)
12/19(水)
・マダガスカル大統領選挙の決選投票
12/21(金)
・米国の「つなぎ予算」の期限
・ソウル高裁が日立造船の元徴用工訴訟で判決
12/23(日)
・コンゴ(旧ザイール)大統領選挙
●政府閉鎖の可能性
「先週の動き」の「トランプの元個人弁護士の有罪判決」で述べたとおりです。
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特別レポート
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メルマガにのみ掲載しています。
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あとがき
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少し前になりますがフィル・ナイト『シュー・ドッグ』を読みました。ナイキの創業者の自伝で、ぐっちーさんも太鼓判を押されていた記憶があります。
ゼロから靴作りを始め、最終的にはアディダスやコンバースの帝国を超えるまでの軌跡が描かれていますが、一番面白いのはやはり草創期の苦労。キャッシュも評判もないところからどうやって難局を乗り越えるか。ギリギリのところまで知恵と努力をふり絞りますが、最後に勝ちを呼び込むのは運と人の縁だったようです。
それにしても元々ナイキのビジネスはオニツカ(現アシックス)から始まった・・と聞いていたのですが、本を読んで驚いたのは、オニツカがフィル・ナイトにとって恩人どころか裏切り者であったこと。私はアシックスとは仕事で関わったこともあり、ちょっとショックでした。その代わり、というわけでもないですが、日商岩井はまさに救世主として描かれています。フィル・ナイトを信じた商社マンの慧眼に恐れ入ります。日本企業と日本人が感謝されているのを見るとやはりうれしくなりますね。
ちょうど1年前の今頃に見ていたドラマ『陸王』(以下の記事のあとがき参照)は日本版『シュー・ドッグ』の趣でした。
・「米国のエルサレム首都認定(2):意図」(17/12/13)
一緒に見るとより楽しめると思います。本もドラマも、落ち込んだときに見ると元気が出てきますね。
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2 comments on “今週の動き(12/17~23)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
メイ首相の発言の真意とその影響や、インド中銀総裁の辞任、それからマルバニーの首席補佐官代行指名、、いずれも私の捉え方、読み解き方の浅かったこと…大変メルマガが役立っています。マルバニーはキャラから政治的スタンスまで丸わかりで面白かったです!
それにしても、これだけの期間日本を離れ、色々が普段と違う中、毎回同じように120%の仕事ができる、その秘訣って何ですか?絶対に臨時休業がないJDさんのお仕事ぶり、、、日々猛烈なスピードで変化する世界情勢をどんな環境でも追いかける秘訣、ありますでしょうか…念入りな準備ですか?
BREXIT協定案否決、メイ政権不信任案提出(コービン登場)・・昨年からここで展開されている通りのシナリオですね。まさに、カオスへの入り口。不信任投票の結果はいかに・・・メイ首相の体調とメンタルが心配です(苦笑)