2018/11/26 00:00 | 今週の動き | コメント(4)
今週の動き(11/26~12/2)
もう11月も終わりということで、冬の到来を感じる気候になりましたね。私も薄いコートを着るようになりました。
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先週の動き
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11/17(土)
・トランプ大統領がギュレン師のトルコ送還は検討していないと発言
・米国務省がカショギ記者殺害はムハンマド・ビン・サルマン皇太子の命令だったとCIAが断定したとの報道を「不正確」として否定
・APEC首脳会議(ポートモレスビー、~18日)
11/18(日)
・トランプ大統領がFOXのインタビューで複数の閣僚の交代を考えていると発言
・独仏首脳会談(ベルリン)
11/19(月)
・米ホワイトハウスがCNNのアコスタ記者の入館証を返還
・ロシア・トルコ首脳会談(イスタンブール)
・ドイツがカショギ記者殺害事件に関与した疑いのあるサウジ人18人のシェンゲン加盟国への渡航を禁止、サウジへの武器売却を凍結
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・イエメンの反体制武装組織「フーシ派」がサウジやUAEへのミサイル攻撃の停止を発表
・日産のゴーン会長が金商法違反(役員報酬の虚偽記載)の容疑で逮捕
11/20(火)
・トランプ大統領がカショギ記者殺害事件と米・サウジ関係について声明を発表
・USTRが中国の貿易・投資慣行を不公正とする報告書を発表
・米財務省がシリアのアサド政権によるイラン産原油の調達を支援したとしてロシア企業やシリア人経営者に制裁を科したと発表
・習近平国家主席がフィリピンを訪問(〜21日)
・TPP首席交渉官会合(東京、〜21日)
11/21(水)
・トランプ大統領がイヴァンカ・トランプ大統領補佐官が公務で私用メールを使っていたというワシントン・ポストの報道を認める
・マティス国防長官が来年春に予定される米韓合同軍事演習「フォール・イーグル」の規模縮小を発表
・ロバーツ連邦最高裁長官が判事の独立性についてトランプ大統領に反論する声明を発表
・英国のメイ首相がユンケル欧州委員長と会談(ブリュッセル)
・英国とEUがBREXIT後の英国とEUの将来関係の大枠を定める「政治宣言」案で大筋合意したと発表
・欧州委員会がイタリアの19年度予算案はEUルールに違反し制裁手続き入りは正当と判断
・国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)が新総裁として韓国出身の金鍾陽総裁代行を選出したと発表
・韓国が15年の日韓合意に基づき設立された慰安婦被害者支援のための「和解・癒し財団」の解散を発表
11/22(木)
・サンクスギビング
・トランプ大統領が2000億ドル分の中国製品への追加関税は19年1月に10%から25%に引き上げられるとあらためて発言(パームビーチ)
・米国が華為技術(ファーウェイ)の製品の使用を控えるよう同盟国に要請しているとWSJが報道
・サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がUAEを訪問
・世耕経産相がフランスのルメール経済・財務相と会談(パリ)
・日産の取締役会が全会一致でゴーン会長を解任
11/23(金)
・米下院司法委員会が16年大統領選直前でのヒラリー・クリントン民主党候補の私用メール問題の捜査再開決定に関し、コミー元FBI長官とリンチ元米司法高官に12月3日と4日に証言を求める内容の召喚状を発行したとの声明を発表
・パキスタンのカラチの中国総領事館が襲撃、「バルチスタン解放軍」が犯行声明
・25年国際博覧会の開催国を決める博覧会国際事務局(BIE)総会(大阪開催が決定)(パリ)
11/24(土)
・英国のメイ首相がユンケル欧州委員長と会談(ブリュッセル)
・台湾統一地方選挙(与党民進党は高雄、台中の2つの直轄市等で大敗、蔡英文総統が党首辞任)
●トランプの米・サウジ関係に関する声明
トランプ大統領は声明を出し、ムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子がカショギ記者殺害を把握していたとしても、サウジは米国のパートナーだ、と断言しました。以下がその声明ですが、「アメリカ・ファースト!」と副題をつけ、のっけから「世界はとても危険な場所だ!」と叫ぶという型破り(苦笑)なものです。
■ Statement from President Donald J. Trump on Standing with Saudi Arabia(11月20日付ホワイトハウス)
これでトランプ政権はカショギ事件の幕引きを図るつもりでしょう。以下の記事で予想したとおりの展開です。
・「カショギ記者殺害事件」(10/29)
議会は党派を超えてサウジへの追及を主張し、さらなる制裁が行われる可能性もあります。しかし結局のところMbSを追い詰めることはなく、米・サウジ関係はこのまま存続するとみられます。
一方、MbSは今週ブエノスアイレスで開催されるG20首脳会議に出席すると発表。直前のUAE訪問とあわせ、カショギ事件以来初めての外遊になります。各国首脳から袋叩きに合うことは必至ですが、この機会に自分の健在を国内外にアピールし、トランプとエルドアン大統領に会って混乱の回収を図るつもりでしょう。MbSの詰めの甘さを考えるとそんなにうまくいくかは疑問ですが・・。
さて、トランプの声明に戻ると、サウジ擁護と並んで注目すべきポイントは、「サウジは原油価格を抑えるという私(トランプ)のリクエストを聞いて、協力してくれている」と謳っているところ。
さらに翌日のツイッターでも「原油価格は下落している。素晴らしい!世界中にとって減税のようなものだ。ありがとう、サウジアラビア!」とした後、「だが、もっと低下させよう!」とキツイ一言。
こうした言動の裏にあるトランプの思惑についてコメントします(※メルマガに限定)。
●APECの首脳宣言の採択断念、アジアの多国間の枠組み
APEC首脳会議については先週の記事で取り上げましたが、最終日の11月18日に初めて「首脳宣言」が採択できなかったことが話題を呼びました。
・「ASEAN・APEC首脳会議と米中の『貿易戦争』」(11/19)
米中の対立のため合意に達することができなかった・・とのことですが、実際は、首脳宣言案に反対したのは中国一国で、「『全ての』不公正な慣行と闘う」との文言を首脳宣言に盛り込むのが許せなかったからとのこと。報道によれば、中国の代表団は議長国のパプアニューギニアの執務室に押し入って圧力をかけたそうで(中国は否定)、議場では長い演説をふるって強引に時間切れにさせました。
まあ中国らしいといえばそれだけの話であって、今さら驚きはない、という反面、それにしても粗暴に過ぎるというか、「韜光養晦」の時代にはあり得ないやり方だっただろうなあ・・とも思います。現場の代表団が上司の意を忖度して強硬な手段に訴えた(それによって上層部にアピールした)ということでしょうが、これも習近平体制の息苦しさの現れでしょうか。
一方、「首脳宣言」を出せなかったことにはどれほどの意味があるのか。この点に関し、那須の山奥の兄ちゃんさんからコメント欄で以下の質問がありました。
>APECの問題は
>さまざまな合意や団体があり
>日本は何がやりたいのか
>ということがあります
>ASEAN統合が2020年までと言う合意があったり
>また東アジア共同体とか
>自由貿易圏構想が最終目標だと思いますが
>もう団体やら合意がありすぎて
>なんのこっちゃさっぱりわからない
>この辺も解説していただけるとうれしいです
たしかに、アジアの多国間枠組みは、APEC、ASEAN+3、東アジアサミットなど色々あって、分かりにくいですよね。複雑な話になるので説明が面倒な割に、得るものが少ない・・というのが悩ましいところですが(笑)、今回の首脳宣言の失敗にも絡むテーマなので、ポイントを解説します(※メルマガに限定)。
●BREXIT協定の行方
BREXIT協定案の合意については、以下の記事で詳しく協定案の内容と今後の展望を述べました。
・「BREXIT協定の行方」(11/23)
先週はメイ首相とEUのバルニエ代表が二度にわたり会談し、協定案とワンセットになるBREXIT後の英国とEUの将来関係の大枠を定める「政治宣言」案でも合意に達しました。これをふまえ説明を補足します(※メルマガに限定)。
●台湾統一地方選挙
与党民進党が高雄、台中の2つの直轄市含め多くの首長選で敗北し(13から6に減少)、大敗の責任をとって蔡英文総統が党首を辞任。2020年総統選に暗雲が立ち込めました。
近年、中国の台湾に対する圧力と取り込みはますます強まっていますが、今回の選挙結果には、米国との関係を配慮して抑制的な反応を見せているようです。近いうち台湾の政治経済の状況と展望についても解説します。
●日産のゴーン会長の逮捕と解任
日産に収益を依存するルノーの構造、日産とルノーの不均衡な資本関係、ルノーが日産の支配を強めようとしていたとの見方、ルノーと日産のトップを兼任するカルロス・ゴーンの利益相反の疑い、司法取引・・様々な事実とそれに基づく推測からその背景が語られていますが、個別の日本企業のビジネスや自動車産業の動向は本メルマガの範囲外なので立ち入りません。
ただ、この件はフランスの国内政治と日本との二国間関係に波及する可能性があります。ルノーの最大株主(15%)はフランス政府、その収益の半分は日産からの配当、マクロン大統領の支持率は25%に低下している現状にかんがみれば、純粋に民間ビジネスと法の支配の問題と割り切ることはできず、政治・外交問題に発展しても不思議はないからです。そうなるとまさに世界情勢に関わってきます。
先週、早速に世耕経産相とルメール経済・財務相が会談して本件が取り上げられました。今のところフランス政府の出方について確たることは言えませんが、現地では、ゴーンのような偉大なビジネスマンが罠にはめられたのではないか・・というナショナリスティクな論調も見受けられます。
そういうわけで、本メルマガでは、フランス政治と日仏関係に影響を与えるテーマの一つとしてこの件をフォローします。
余談ですが、私は法律の専門家でもあるので、有価証券報告書の虚偽記載を理由にした内部告発と司法取引の活用も関心をもったところでした。特に前者の点ではオリンパス事件を思い出しますが(ただし関係者の構図は対照的)、この事件は個人的に関わったこともあり感慨深いです。
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今週の動き
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11/25(日)
・EU臨時首脳会議(ブリュッセル)
・ヨルダンのアブドッラー国王が訪日
11/27(火)
・ミシシッピ上院選の決選投票
11/28(水)
・ロシア、トルコ、イランがシリア情勢めぐり協議(アスタナ、~29日)
11/29(木)
・G20財務相・中銀総裁会議(ブエノスアイレス)
・韓国大法院が三菱重工業の元徴用工訴訟で上告審判決
・ソウル中央地裁が新日鉄住金の元徴用工訴訟で二審判決
11/30(金)
・G20首脳会議(ブエノスアイレス、~12/1)
12/1(土)
・メキシコの大統領にロペスオブラドールが就任
(調整中)
・米中首脳会談(ブエノスアイレス)
●EU臨時首脳会議
上記「BREXIT協定の行方」(11/23)で述べたとおり、ここで協定案と政治宣言が承認されるかが最初の関門になります。その展望も同記事で解説したとおりです。
●米中首脳会談
いよいよトランプ大統領と習近平国家主席が相まみえます。展望については以下の記事で述べたとおりですが、補足します(※メルマガに限定)
・「ASEAN・APEC首脳会議と米中の『貿易戦争』」(11/19)
●ロペスオブラドールのメキシコ大統領就任
ついに新時代の革命派アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(通称AMLO(アムロ))がメキシコ大統領に就任。その背景と意義については以下の記事で解説したとおりです。
・「メキシコ現代史(1):革命の時代とその終焉」(8/31)
・「メキシコ現代史(2):AMLO新政権と新たなる革命の始まり」(9/5)
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あとがき
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■ 164th General Assembly of the BIE(Bureau International des Expositions)
2020年東京五輪に続く大型国際イベントとして2025年大阪万博開催が決定。
日本のプレゼンは「4:00:00」から始まります(その直前の準備のところで私の友人の谷口さん(内閣官房参与)の姿が見えますね)。世耕大臣と民間人3人のプレゼンもなかなか良かったと思います。
プレゼンターの一人であるパナソニックの小川理子さんという方は『会長島耕作』に出てくる女性役員のキャラクターに似ているなあ・・と思ったら、どうやらモデルだったようですね。
万博というと、私が思い出すのは1985年のつくば万博。私は小学生でしたが家族で見に行きました。当時はパソコンに熱中していたので、その関係の展示に猛烈な興味があり、今でも何を見て何をしたのか、細かいところまで鮮明に記憶が残っています。
2005年の愛・地球博のときはワシントンDCにおり、米国でのアピール活動に関わりました。たしかモリゾーとキッコロを英語で説明したような気がします。ただ実際に見に行く機会はなく、思い入れが少なかったこともあり、こちらはもう記憶があいまいです。
それにしても一週間前の記憶よりも小学生の頃の記憶の方が鮮明だったりする。不思議なものですね。先週末は久しぶりに高校の同窓会があり、なおさらそんな思いを強くしました。
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4 comments on “今週の動き(11/26~12/2)”
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監査法人に対して、大企業が雇用して高額の報酬を払ってる時点で逆らえないんでしょうね。せっかく事実関係、把握できていたのにもったいない話です。
きちんと高額な報酬を隠さず有価証券報告書に記載するよう突っぱねることができていたなら、ゴーンさんには不本意な形でも、法令違反をする愚を犯さず、事件にならずにすんだはずです。ルノーの株式総会で報酬3割減と引き換えに留任できたそうですが、日産の株主総会だったら、高額報酬でもゴーンさんの言い訳押し通せたんじゃないかなあ。外国人は堂々とやらかした方が得ですね。
ただ、結果的に有価証券取引法違反を構成して、みんなに弱みを握られ、日産経営主導権争いの切り札に利用されたことは、瓢箪から駒的なところあるのかなあ。
個人的には舛添要一さんの分析がなるほどって思いました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181121-00000550-sanspo-soci
裏報酬みたいにするくらいだったら、役員報酬総額を100億にして、半分をゴーンさん、残りを他の役員に分配する形にすればよかったのに。口封じくらいはできたかもしれませんよ。
だけど、日産役員や法務部の反乱はルノーへの吸収が現実味を帯びたからこそ、起きたんでしょうね。
カエサルを倒したブルータス、織田信長を倒した明智光秀にしてもそれぞれに大義名分が存在して、どうにもならないからこそ、近い人が反乱を起こしたんでしょう。そういう意味では、西川社長の決断は日産の人間としては自然で仕方のないものだと思えます。ブルータスは必要だったのでしょう。
ただ、ルノーとの合併が現実味を帯びなければ、ほったらかしだったかもしれませんね。
多分ですが、今までゴーンさんがルノーとの合併に反対してきたのは、日産が自分の財布だったからで、賛成に回ったのはフランス政府にそれがバレたからじゃないかと想像します。任期を伸ばすという話もあってそれが理由だそうですが。
ゴーンさん合併反対のままだったら、どうだったんでしょうね。
パナソニックって、言えば、昨日の女子駅伝の完全優勝見事でしたね。創立100周年だとか。会社がまとまって盛り上がってる雰囲気で素敵でした。
つくば万博って、初めて聞きました。かっぺを久々に自覚しました。
トランプへのツッコミが今週はさらに鋭くて、とても面白かったです。トランプのTwitterだけでなく、ホワイトハウスの声明文に突っ込めるとは、やはり一味も二味も違いますね。
万博のプレゼンの立役者の方は、『トランプ外交』のところで出てこられた方、とてもお近しい方ですね?JDさんの確かな情報ソースの一端を垣間見たきがします。
また、BREXIT協定で丁寧に補足・修正、さらに修正の理由をご説明されている点、私たち読者に対する誠意のような、JDさんの誠実な姿勢を改めて感じます。WEBという媒体の中でも、こうして情報の発信者と受信者に信頼関係というのが成り立つのですね。
ルノーのEU以外の主要市場は、ロシア、トルコ、ブラジル、イランです。
このうち、ロシア、トルコ及びイランはアメリカと関係が悪い国です(ブラジルとアメリカの関係はよくわかりませんので、解説していただけると助かります)。
特に、イランはアメリカの制裁対象になっています。しかし、今のところ、ルノーは、イランから撤退する気は無さそうです。
ルノーの大株主であるフランス政府とアメリカ政府の関係が悪化している現状を含めて考えると、ルノーはアメリカから制裁対象となり得る存在です。
現状では、北米を主力市場としている日産(のルノー以外の株主)にとっては、ルノーとの統合はリスク要因でしかありません。
今後、三社の統合の議論が進んでいった場合、アメリカとの間の政治問題に発展する可能性(アメリカ政府の介入の可能性)は無いのでしょうか?
興味深いご質問ありがとうございます。
メルマガで取り上げたいと思います。
とりあえずブラジルと米国の関係だけお答えすると、基本的に良好です。新大統領とのウマも合いそうですね。
イランが一番微妙なところですね。
特にEUがイランとのビジネスを守ろうとしていることにトランプは苛立っていますから。