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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/10/15 00:00  | 今週の動き |  コメント(4)

今週の動き(10/15~21)


ずいぶん涼しくなりました。すっかり秋本番という趣です。

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先週の動き
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10/7(日)
・ポンペオ国務長官が北朝鮮・韓国を訪問(~8日)
・国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉総裁に違法行為があったとして調査していると中国共産党中央規律検査委員会と国家監察委員会が発表
・ICPOが孟宏偉総裁の辞任を発表
・ブラジル大統領選挙(ボルソナロが1位、アダジが2位、10月28日に決選投票)・議会選挙(ボルソナロの政党PSLが下院で2位に躍進)
・サウジアラビア政府を批判してきたサウジ人の著名記者がトルコのサウジ総領事館内で殺害された疑いがあるとの報道
・ボスニア・ヘルツェゴビナ大統領選挙・議会選挙

10/8(月)
・トランプ大統領がローゼンスタイン司法副長官を解任することはないと発言(ワシントンDC)
・ポンペオ国務長官が訪中
・国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が温暖化の特別報告書を公表(仁川)
・日・タイ首脳会談、日・ベトナム首脳会談、日・カンボジア首脳会談、日・ラオス首脳会談(東京)
・ノーベル経済学賞発表(イェール大学のノードハウス教授とNYUのローマー教授が受賞)

10/9(火)
・トランプ大統領が米朝首脳会談の開催時期は11月6日の中間選挙後になると発言(ワシントンDC)
・ヘイリー国連大使が年末に辞任すると発表(ワシントンDC)
・フィリピンのドゥテルテ大統領のがん検査の結果が陰性だったと発表
・日・メコン首脳会議(東京)
・南アのラマポーザ大統領が汚職疑惑が浮上していたネネ財務相の辞任と後任にムボウェニ元準備銀総裁を指名したことを発表

10/10(水)
・トランプ大統領が株価の下落を受けて「FRBは狂った」と発言(ペンシルバニア)
・米財務省が8月に成立した対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する法に基づく対米投資規制の詳細を発表
・米司法省が産業スパイの疑いで中国の国家安全部の高官を起訴したと発表
・ハリケーン「マイケル」がフロリダ州に上陸
・パキスタンがIMFに支援を要請
・双十節(中華民国の建国記念日)
・朝鮮労働党創立記念日
・日豪外務・防衛担当閣僚協議(2+2)(シドニー)

10/11(木)
・トランプ大統領が株価の下落はFRBの利上げが原因と発言(ワシントンDC)
・英国のメイ首相が英国はTPPに参加する用意があると表明
・G20財務相・中銀総裁会議(バリ、~12日)
・コンスタンティノープル総主教庁がロシア正教会からの独立を主張してきたウクライナの教会を承認すると発表

10/12(金)
・トルコの裁判所が米国人牧師の自宅軟禁と出国禁止措置の解除を認める判決、同牧師は釈放(イズミル)
・IMF・世銀年次総会(バリ)

10/13(土)
・トランプ大統領がトルコのサウジ総領事館内でのサウジ人記者の殺害が判明した場合、サウジに「厳しい処罰」を加えると警告
・トルコがサウジ人記者の殺害疑惑の捜査にサウジが非協力的と非難
・マレーシア下院補選(アンワル元副首相が当選)
・タリバンが米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表と10月12日にカタールで協議したと発表
・世銀・IMF合同開発委員会(バリ)

●ポンペオ国務長官の北朝鮮・日中韓訪問

ポンペオ国務長官の4度目の訪朝。こんなに頻繁に米国の閣僚が北朝鮮を訪れ、金正恩も面談に応じるとは。時代も変わったものです。

ポンペオは北朝鮮の後、韓国、日本、中国を訪問して帰国。その直後、トランプ大統領は米朝首脳会談は中間選挙後になると発言しました。以下の記事のメルマガ限定部分で「中間選挙前の実現は極めて困難」と述べましたが、そのとおりの展開になりました。

「米韓首脳会談と米朝外相会談」(10/1)

現時点の状況についてコメントします(※メルマガに限定)。

●ニッキー・ヘイリー国連大使の辞任

トランプ政権の中核的存在だったニッキー・ヘイリー国連大使の突然の辞任表明。ヘイリーは辞任の理由を詳しく述べず、ただトランプ大統領を讃え、これからも支持を続ける、自分(ヘイリー)は2020年の大統領選には出馬しない、今後の予定は未定・・と述べました。

トランプは後任の候補に1月に大統領次席補佐官(国家安全保障・戦略担当)を辞任したディナ・パウエルの名前を上げました(その後の報道によれば同氏は辞退)。イヴァンカ・トランプも「適任」といいながら「指名したら身内びいきと批判されるだろう」と述べています。

辞任の理由ですが、将来の大統領選に向けた準備、ポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官との確執、巨額の負債(財務情報は開示済)返済のため民間企業で働く必要がある・・などと言われています。

どれももっともに聞こえますが、真相はどうなのか。この点を含め、今回の辞任が意味するものを解説します(※メルマガに限定)。

●孟宏偉ICPO総裁の拘束

ICPO(通称インターポール)の孟宏偉総裁が突然行方不明になりました。中国当局に拘束されたらしい・・と噂が飛び交いましたが、中国の国家監察委員会が身柄を拘束して捜査を行っていることが発表されました。

ICPOは世界各国の警察によって組織された有名な国際機関で、ルパン三世の銭形警部も所属していたことからなじみのある人も多いでしょう(笑)。ある意味で世界の警察のトップが突然に中国当局に拘束されるという・・衝撃のニュースでした。

そもそもICPOの総裁が中国人、それも公安部の幹部出身であることに驚いた人も多いでしょう。今回の事件の背景や憶測についてコメントします(※メルマガに限定)。

●サウジ記者のトルコでのサウジ総領事館における殺害疑惑

ワシントン・ポストのコラムニストでもあるサウジ人の著名記者ジャマル・カショギがイスタンブールのサウジ総領事館を訪れた後に消息を絶ったことが大きな波紋を呼んでいます。殺害されたとの疑いがあり、トルコ当局は捜査を行っています。

カショギはサウジの主要紙の編集長などを歴任しながら、サウジの圧制、特に最近ではムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子による強権的な統治を糾弾する稀有な存在でした。

もしサウジ政府とMbSがカショギ殺害に関与しているとすれば大変なスキャンダルになります。また元々悪化していたサウジ・トルコ関係もさらにこじれています。これらの点について解説します(※メルマガに限定)。

●トルコにおける米国人牧師の釈放

16年10月にクーデター関与の疑いで拘束され、今年7月から自宅軟禁に移されたトルコ在住の米国人牧師アンドリュー・ブランソン氏が釈放されました。先週の記事で述べたとおりの展開です。

「トルコの米国人牧師の拘束」(10/8)

釈放の意味と今後の展望についてはこれまでの記事で述べてきたとおりです。状況の推移を見て適当なタイミングにアップデートをお伝えします。

●ブラジル大統領選挙・議会選挙

ジャイル・ボルソナロが1位(46%)、フェルナンド・アダジが2位(29%)、10月28日に決選投票と事前予想どおりの結果になりました。

しかしボルソナロの勢いがここまで圧倒的だったのは予想外でした。過半数まであと一歩のところまで支持を伸ばしたのは衝撃でした。

大統領選挙と同時に実施された議会選挙でもボルソナロが率いる社会自由党(PSL)が大躍進。上院では議席ゼロから4議席、下院では1議席から52議席と大幅に増加。下院では1位の労働者党(PT)(56議席)に次ぐ2位になりました。

ブラジル政治については、決選投票後に詳しく解説する予定ですが、現時点の分析を述べます(※メルマガに限定)。

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今週の動き
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10/14(日)
・ドイツ・バイエルン州議会選挙
・ルクセンブルク議会選挙

10/15(月)
・トルコとロシアが合意したシリアのイドリブでの非武装地帯の設置期限
・BREXITに関する首席交渉官会合(ブリュッセル)
・EU外相理事会(ルクセンブルク)

10/16(火)
・EU総務理事会(ルクセンブルク)
・安倍首相がスペイン、フランス、ベルギーを訪問(〜20日)

10/17(水)
・EU首脳会議(同、~18日)
・APEC財務相会合(ポートモレスビー)

10/18(木)
・ASEM首脳会合(ブリュッセル)
・ASEAN防衛相会合(シンガポール、〜20日)
・ブータン議会選挙

10/20(土)
・アフガニスタン下院選挙
・豪州の下院補選(ターンブル前首相の議員辞職による欠員)

●EU首脳会議とBREXIT交渉

BREXIT交渉の大きな山場になります。本来であればここで「離脱協定案」と将来の通商関係の大枠を示す「政治宣言」について合意することが予定されていましたが、交渉の難航から9月の時点でこの計画は断念。今回の首脳会議で何とか議論の進展を示した上で、11月に臨時のEU首脳会議を開いて合意を目指す方針です。

ここにきて英国のメイ首相、EUのバルニエ首席交渉官らが口をそろえて「合意は可能」と驚くほど前向きな姿勢を見せています。しかしアイルランド国境問題と通商協定の方針をめぐる議論は平行線をたどり、英国内でもメイ政権の方針への反発が強くガタガタ・・とても楽観視できる状況にはありません。

今回の会議で進展を示すことができなければ、合意なき離脱(クリフエッジ)の可能性は大きく高まります。仮に政府間の交渉で合意がまとまっても、EU27加盟国・欧州議会・英議会で承認を得る必要があり、これは特に英国の現状を考えれば至難の業。しかも残された時間もわずかです。見通しは暗いとしか言えませんが・・まずは結果を見守りましょう。

ところで、「ハードBREXIT」「ソフトBREXIT」「クリフエッジ」という言葉をご覧になることがあると思います。

元々「ハード」と「ソフト」は、英国とEUが自由貿易協定はじめどこまでの関係を白紙に戻すのかという交渉路線の違いを示していました。いずれの路線であってもBREXITの合意が成立すれば、一定の移行措置(たとえば1年の移行期間)を経てBREXITは計画どおりに実施されます。

ところが最近、合意なき離脱が現実味を帯びてくると、そのケースをもって「ハードBREXIT」と呼ぶ人が出てきました。この場合は移行措置を含め合意が一切ないので、来年3月29日のBREXIT実施日に英国とEUとの間の協定が突然に無効になります。

これは前述の合意に基づく「ハードBREXIT」とは意味が異なるのですが、言葉が同じなのでややこしいと思います(たとえば英国内にはボリス・ジョンソン前外相やデービッド・デービス前EU離脱担当相など多くの「ハードBREXIT派」がいますが、当然のことながら彼らも合意なき離脱を望んでいるわけではありません)。

そこで私は、誤解を避けるために「ハードBREXIT」「ソフトBREXIT」「クリフエッジ」という3つの用語を使い分けています。たとえば以下のBBCの記事も同様の使い分けをしています。

Brexit: What are the options?(17年6月12日付BBC)

言葉の問題に過ぎず、厳密な定義もないので、誤解がなければいずれの語法でも構いません。ただ混乱される方もいるかと思うので頭の整理の一助になればと思います。

●アフガニスタン下院選挙

以下の記事で取り上げましたが、アフガニスタンでは今週に下院選、来年に大統領選が予定されており、政治プロセスと和平を進める上で重要な機会になります。追って詳しく解説します。

「パキスタン現代史(3):イムラン・カーンの新政権」(9/28)

●豪州の下院補選

8月にターンブル首相が辞任しましたが、同首相は下院議員も辞職しました。このため空席を埋めるために補選が実施されます。

「豪州のターンブル首相の退陣」(8/27)

豪州の下院(定数150)では与党自由党がギリギリ過半数(76議席)を維持している状態です。このため今回の選挙で自由党の候補が敗北すると過半数割れしてしまいます。

世論調査では自由党の候補が優位にありますが、自由党自体の支持率は首相交代後も変わらず低迷しており、番狂わせが起こる可能性もゼロではありません。

豪州は安全保障上差し迫った懸案がなく、経済も好調が続いており、平和で恵まれた国です。しかし政局はゴタゴタが続く。これは半分雑談ですが、国が安泰なだけに国民は政治にエンタメ的な刺激を求める傾向がある・・と聞いたことがあります(苦笑)。

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あとがき
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カニエ・ウエストさんがホワイトハウス訪問、トランプ氏ハグし大熱弁(10月12日付AFP)
トランプ米大統領がMMAに署名、新時代に合わせた音楽著作権法が成立(10月12日付ローリング・ストーン)

カニエ・ウエストキッド・ロックマイク・ラヴは、かねてからトランプ大統領への支持を公言している人気アーチストです。それが立て続けにホワイトハウスを訪問してトランプと会談。

先週の記事のあとがきテイラー・スウィフトが民主党支持を表明したことをお伝えしましたが、それに張り合っているのでしょうか(笑)。

ちなみにテイラー効果は予想以上で、インスタの投稿から48時間で24万人が新規の有権者登録をしたとのこと。これは看過できないインパクトですね。私も、「あとがき」ではなく記事本文に書くべきだったかもと思いました(苦笑)。

なお、白人のキッド・ロックとマイク・ラヴはともかく、アフリカ系のカニエ・ウエストがトランプを支持していることに驚いた方もいるかもしれません。米国のマイノリティの中には、反リベラル的でトランプ大統領を支持している人たちが存在します。数は多くありませんが、カニエのような著名人は結構います。

この点については読者の方からも質問を受けたことがありました。後日、詳しく解説します。

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4 comments on “今週の動き(10/15~21)
  1. KB より
    イッキ読み

    面白すぎて、一気食いならぬ、一気読み。
    記事のタイトル見たら、寝るわけにはいかぬと、読み始めたら止まりませんでした!(笑)

    インターポールにサウジ、もうドラマみたいに面白い!

    カニエウエストもJDさんにかかるとインテリジェンスを感じます。

    ちなみに、ブランソン氏がトランプに祈りを捧げていましたが、あぁいった動画も今後の選挙選に効いてくるものでしょうか?

  2. ペルドン より
    ラーメン二郎のテンコ盛り

    減量の為・・
    you tubeで・・大喰いラーメンをうっとりと見ている。
    JDのレポート・コラムもそれに似てきた。
    購読者は・・満腹したお腹を擦りながら・満足しているだろう。
    序に・・違うやり方で・可愛い女性のお腹も・膨らませない様に・・・

    ( ^ω^)

  3. JD より
    KBさん

    トランプは海外にいる米国人を取り戻す点では実績を上げていますね。
    祈りのおかげでエヴァンジェリカルの支持は得られそうです。ただ最近は支持離れが起きているとも言われますね。

    肝心な部分はすべて「メルマガ限定」で・・・ブログ読者は悶絶しますね、と外務省の友人から言われました・・・笑

  4. KB より
    JDさん

    いつもありがとうございます!
    やはりエヴァンジェリカルは支持しますよね。
    でもそもそも支持率下がってきているので、焼け石に水、でしょうか。もう1か月切りましたもんね。次は何が出るでしょうか?(笑)

    最近JDさんの「続きはメルマガで」「続きは次回」の振りが敏腕プロデューサーみたいになっていますよね(笑)絶妙な焦らし、まさに悶絶ですね。

    引き続き楽しみにしております!!

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