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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/09/24 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(9/24~30)


今週も3連休だったのですね。私個人は働き続けているので、あまりそういう印象がなかったのですが・・何にせよ、世界情勢に休みなし・・ということでメルマガは配信します。

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先週の動き
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9/16(日)
・連邦最高裁判事に指名されたカバノー判事から1980年代に性的暴行を受けたと主張する大学教授がワシントン・ポストに掲載されたインタビューで同判事を非難

9/17(月)
・米国が中国製品5745品目(2000億ドル相当額)に対する10%(19年以降は25%)の追加関税を9月24日に発動すると発表
・トルコ・ロシア首脳会談(シリアのアサド政権が奪還を目指すイドリブに10月15日までに非武装地帯を設置することで合意)(ソチ)
・シリアのアサド政府軍の対空ミサイルが誤ってロシア軍機を撃墜
・サウジアラビアの政府系ファンド「PIF」が国際銀行団から110億ドルの融資を受けることで合意したと発表
・パキスタンのカーン首相がサウジアラビアを訪問

9/18(火)
・米国が9月24日に中国製品への追加関税を発動した場合、中国は米国製品5207品目(600億ドル相当額)に5%または10%の追加関税を課すと発表
・トランプ大統領が、中国が米国の追加関税に報復した場合、さらに中国製品(2670億ドル相当額)に25%の関税を課すと表明
・南北首脳会談(平壌、~20日)
・米・ポーランド首脳会談(ワシントンDC)
・ロシア・ハンガリー首脳会談(モスクワ)
・アルゼンチンの連邦裁判所がフェルナンデス前大統領を収賄罪の容疑で起訴
・国連人権理事会の国際調査団がロヒンギャ問題に関する報告書を提出
・EU非公式首脳会議(ザルツブルク、〜20日)
・国連総会(NY、〜30日)

9/20(木)
・トランプ大統領がOPECに原油価格の引き下げを再度要求するツイート
・米国がロシア制裁強化法に基づき、ロシアの地対空ミサイルシステム「S400」と戦闘機「スホーイ35」を購入したことを理由に中国中央軍事委員会装備発展部と同部部長を制裁対象に指定
・トルコが2021年までの中期経済計画を発表
・自民党総裁選(安倍首相が3選)

9/21(金)
・ローゼンスタイン司法副長官が昨年春トランプ大統領の発言を秘密裏に録音して政権メンバーが大統領職を解任できる憲法修正規定の発動を提案していたとNYタイムズが報道
・ベトナムのクアン国家主席が死去
・インドが来週予定していたパキスタンとの外相会談の中止を発表
・メキシコのロペスオブラドール次期大統領が米国とカナダの協議がまとまらなかった場合にはカナダとも新たに二国間での貿易協定を結ぶ方針を表明

9/22(土)
・イランの軍事パレードに向けて武装集団が銃撃(アフワズ)

●米国の対中追加関税第3弾

米国の対中追加関税第3弾の正式発表がありました。第1弾(340億ドル)、第2弾(160億ドル)、そして今回第3弾(2000億ドル)と合計2500億ドル相当額の中国製品に追加関税が課されることになります。

以下の記事で述べたとおり、9月6日に意見募集が締め切られ、発動の手続きが整っていたので、予想どおりの展開です。

「トランプ政権の対中関税第3弾」(9/10)

これに対し中国側も第1弾(340億ドル)、第2弾(160億ドル)、そして今回第3弾(600億ドル)と合計1100億ドル相当額の米国製品に追加関税を課すことで対抗しています。

今回の追加関税の発表後、米国の株価は上昇しました。これを驚きをもって伝えているメディアもありますが、このメルマガを読んでいる方にはそれほどの違和感はなかったと思います。米国経済の強さについては、ぐっちーさんがいつもおっしゃっているとおりですね。

米中の「貿易戦争」については以下の記事をはじめ、何度も書いていますが、株価の上昇含め、現在の状況に照らして、今週あらためて解説します。

「習近平体制の動揺と『貿易戦争』の行方」(7/25)

●カバノー最高裁判事候補の性的暴行疑惑

連邦最高裁判事に指名されたブレット・カバノー判事が上院で指名承認を得られるか。以下の記事で述べたとおり、米国ではこの問題が大きな関心事となっています。

「カバノー判事の最高裁判事承認の公聴会」(9/10)

上記記事で述べたとおり、コーリー・ブッカーカマラ・ハリスといった民主党の次期大統領候補といわれる有力な上院議員が、自身のアピールを狙って色々ないちゃもんをつけてきましたが、どれも大した話ではなく、共和党の目論見どおり10月1日までの承認はほぼ確実・・とみられていました。

ところがその後、上院司法委員会の民主党筆頭理事であるダイアン・ファインスタインが過去にカバノーから性的暴行を受けたという女性から手紙を受け取っているとして捜査当局に報告したと発言。その数日後の9月16日、ワシントン・ポストに、カリフォルニア州パロアルト大学のクリスティン・ブレイジー・フォード教授が1980年代に15歳の頃に参加したパーティーで、当時17歳だったカバノーから性的暴行を受けたと語る記事が掲載されました。

このため調査が必要ということになり、上院司法委員会は今週(9月26日で調整中)にあらためて公聴会を開くことを決定し、フォード氏に証言を依頼しました。フォード氏は態度を保留していましたが、委員会が設定した期限ギリギリの週末、ついに証言することに同意しました。

まさに『スキャンダル』などの米国の政治ドラマで描かれたような劇的な展開になりました。今の米国で最も注目される政治イベントになっています。指名承認の展望と米国政治に与える影響を解説します(※メルマガに限定)。

●南北首脳会談

文在寅大統領の訪朝と3度目の金正恩との首脳会談。簡単にコメントします(※メルマガに限定)。

●ベトナムのクアン国家主席の死去

ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席の死去の発表。前日まで党務と公務をこなす様子がテレビでも放映されていたので、この急死は衝撃でした。

国家主席(President)は党書記長に次ぐナンバー2で、首相とともにベトナムの3人の最高指導者の一角を構成する存在です。その点では大きなニュースですが、以下の記事で述べていたとおり、クアン主席は以前から重病を患い、長期間姿が見えなくなるなど、存在感の低下が顕著でした。

「ベトナム現代史・政治経済の特質と展望」(8/22)

本件が意味するものについて解説します(※メルマガに限定

●パキスタンのカーン首相のサウジアラビア訪問

パキスタンではイムラン・カーン首相率いる新政権が7月に発足しましたが、カーン首相は初外遊としてサウジを訪問。

また、インドとの関係では国連総会の機会に3年ぶりに外相会談を行うことが合意されました。早速に活発な動きを見せています。

ところが、その直後、インドは外相会談の中止を発表しました。カシミールでパキスタンに拠点を置く武装集団がインドに侵入したことを理由に挙げています。

パキスタンについては以下の記事で現代史と外交について解説しています。カーン新政権の動向と展望については今週、続きの記事で解説しますが、今までの記事だけでも、最近の動きについてある程度ポイントを読み取ることができると思います。

「パキスタン現代史(1):イスラム国家誕生の苦難」(9/14)
「パキスタン現代史(2):軍事政権の支配と激動の外交」(9/21)

●自民党総裁選

安倍首相の3選。首相の在任期間が佐藤栄作を超え史上最長となることも視野に入ってきたとのこと。

私からは前回の記事から付け加えることはありません。とりあえず「今週の動き」で述べる日米首脳会談が最初の厳しい仕事になりそうです。

「自民党総裁選」(9/17)

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今週の動き
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9/23(日)
・安倍首相が国連総会出席のためNY訪問(~28日)、トランプ大統領と夕食会
・モルディブ大統領選挙
・広深港高速鉄道が全線開業
・OPEC非加盟国減産監視委員会(アルジェ)
・英労働党大会(リバプール、〜26日)

9/24(月)
・米国が中国製品5745品目(2000億ドル相当額)に対する10%(19年以降は25%)の追加関税を発動
・中国が米国製品5207品目(600億ドル相当額)に5%または10%の追加関税を発動
・国連で薬物対策会合(トランプ大統領が演説)(NY)
・米韓首脳会談(同)
・第2回日米通商協議(FFRの閣僚級協議)(同)

9/25(火)
・国連総会一般討論演説(NY、~10/1)
・FOMC(~26日)

9/26(水)
・日米首脳会談(NY)
・国連安保理でトランプ大統領が議長になってイラン問題を協議(同)
・上院司法委員会がカバノー最高裁判事候補の性的暴行疑惑について公聴会を開催(調整中)

9/27(木)
・トルコのエルドアン大統領が訪独(〜29日)

9/30(日)
・クルド自治政府議会選挙

●国連総会

各国首脳が一般討論演説を行い、日米首脳会談はじめバイ会談も開催されますが、やはり最も気になるのはトランプ大統領。一般討論演説、安保理議長としてのリーダーシップが大いに注目されます。

特にイランとシリアの問題についてどのような姿勢を見せるのか。北朝鮮はポンペオ国務長官にお任せで新しい話はないでしょうが、パキスタンやアフガンにも触れるのか。今後の見通しを考える上で大きなヒントがあるかもしれません。

●日米首脳会談

安倍首相が3選を果たした直後に国連総会出席のためNYを訪問。トランプ大統領との会談に臨みます。

その直前にはFFRの第2回閣僚級協議。通商問題の詰めを行ってから首脳会談へ・・という流れですが、日程のタイトさとトランプの不規則な動きを考えると、事務方は大変でしょうね。

結果を見てから解説しますが、とりあえずコメントします(※メルマガに限定)。

●モルディブ大統領選挙

現職のアブドラ・ヤミーン大統領と野党党首のイブラヒム・ムハンマド・ソリの一騎打ちになっています。

モルディブでは2月に非常事態宣言がありました。以下の記事で解説しましたが、最高裁が野党指導者のナシード元大統領らの釈放と議員資格復活を命じる判決を言い渡したのに対し、ヤミーン大統領が反発し、治安部隊を最高裁判所に突入させ、最高裁長官を拘束するという強権を発揮して判決を覆させたことが背景にありました。

「モルディブの非常事態宣言」(2/14)

ヤミーンが露骨に中国に傾斜して支援と開発を進めるのに対し、ナシードらはインドに介入を求め、モルディブは中国とインドの代理戦争の場になりました。

今回出馬したソリはナシードの支援を受けています。与党・親中派 vs 野党・親印派という対立が再び顕在化しますが、ヤミーンの強権と汚職疑惑に対する批判が強く、ソリが勝つ可能性が十分にあります。このためヤミーンが選挙を延期か中止する可能性もあるといわれています。

選挙が行われ、ヤミーンが敗れたとしても、選挙結果を無効にする可能性があります。ヤミーンが勝っても反体制派がデモなどを行うかもしれません。混乱が生じることが懸念されます。そうだとしても首都マレ近郊にとどまるでしょうが、モルディブへの旅行は控えた方が無難でしょう。

ちなみにモルディブでは16年に日本大使館が開設されています。河野外相も今年1月に訪問しました。

大使館の開設が議論された当時、河野外相は行政改革相を務め、コスト軽減を主張し定員4人の「ミニマムマイナス公館」とさせました。ところが訪問後、「4人では無理と分かった。自分の判断は失敗だった。」と率直に語りました。就任前は過激な言動が不安視された河野外相ですが、就任後は様々な場面で存在感を発揮し、省内での評判も上々のようです。

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あとがき
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毎週、ネタが多すぎて記事が長くなっています。これでもメリハリを利かせているつもりなのですが・・あとがきも色々書きたいことがあるのですが、本文が長すぎるので今回は短めに。

今月は樹木希林さんの訃報がありました。まだ75歳だったのですね。

ニュースで夫の内田裕也さんの姿を久しぶりに見ました。相変わらずロックでしたね。私にとっては『水のないプール』『十階のモスキート』『コミック雑誌なんかいらない!』、そして都知事選の政見放送の人です。

こうして思い出すとそんなに前のことではないような気もしますが、その多くは昭和の記憶でした。来年4月末には平成も終わる・・時代の流れを感じます。何か毎回こんなことを言っているような・・(笑)。

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2 comments on “今週の動き(9/24~30)
  1. ペルドン より
    取りあえず・・

    最高裁判事の聴聞会・・
    共和党は・・弁護士を代理人に質問としているのに対し・・
    証人は上院議員による質問・・を要求とか・・返答時間を制限せずに伸ばせとか・・当時の同級生達の証人とか・・あれこれ条件を付けていて・明らかに伸ばしてダメージを与える作戦の様子ですね。
    結局日程を月曜から金曜日に伸ばすと共和党が妥協。
    殺害予告が出て・・証人と家族は家を出て・行方知れず。FBIが保護しているのでしょうか・?マフィアの証人の様に大事になってますね。
    結局・・大山鳴動して鼠一匹・・になるのでしょうか・?!( ^ω^)

  2. KB より
    ドラマ+ドキュメンタリー

    「カバノー最高裁判事候補の性的暴行疑惑」
    JDさんの描き方が、”史実に基づく検証”と、”現在の状況の緻密な分析のもと今後の展開を予測する”、という2本立てになっていて、ドキュメンタリーとドラマ、両方の要素で成り立っているので、とても読み応えありました!

    ベトナムもパキスタンも、いずれも最近のメルマガ記事とリンクしていて、こちらも読み応え抜群です。

    過去と現在、あるいは未来の連続性があるので、好奇心をくすぐられます。

    そして最後はいつも、、、
    「相当色々インプットしていないと、こういう風に体系立ててアウトプットできないよなぁ・・・。」と唯々関心してしまうのです、苦笑・・

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