2018/04/09 01:00 | 今週の動き | コメント(5)
今週の動き(4/9~15)
春本番・・と思ったらまた寒くなったりして、落ち着かない感じのようですね。とりあえずゴルフに行くとき天気が良ければ良いのですが。
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先週の動き
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3/30(金)
・国連安保理が北朝鮮との密輸などに関わっていたとして21の海運会社と1個人、27隻の船舶を制裁対象に追加
・ロシアが新型ICBMの発射実験の成功を発表
・パレスチナ自治区ガザで大規模デモ
・ミャンマーの新大統領にウィンミン前下院議長が就任
4/1(日)
・中国が米国の鉄鋼・アルミへの追加関税への対抗措置として128品目(豚肉、アルミ、ワイン等)に最大25%の追加関税を課すと発表(2日から実施)
・トランプ大統領がDACA終了とNAFTA離脱示唆をツイート
・米韓合同軍事演習(~5月)
・金正恩が韓国芸術団の公演を観覧(平壌)
4/2(月)
・エジプト大統領選結果発表(シシ大統領が再選)
・サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が米誌アトランティックのインタビューでイスラエルの生存権を認める発言
4/3(火)
・USTRが中国の知的財産権侵害に対して発動する制裁関税の原案(約1300品目(自動車、航空機、電子機器、産業機械、通信衛星、半導体等、500億ドル相当額)に25%の追加関税)を公表
・トランプ大統領がシリアからの撤退について近く判断すると表明(ワシントンDC)
・米・バルト3国首脳会談(ワシントンDC)
・ユーチューブ本社で銃撃事件(サンブルーノ)
・中朝外相会談(北京)
・トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領がトルコ初の原子力発電所の起工式典にアンカラからのビデオリンクを通じて参加
4/4(水)
・中国が米国の知的財産権侵害を理由とする追加関税の準備への対抗措置として106品目(大豆、牛肉、トウモロコシ、自動車、飛行機等、500億ドル相当額)に25%の追加関税を課す方針を発表
・中国が米国の知的財産権侵害を理由とする追加関税についてWTOに提訴
・トランプ大統領がメキシコ国境への州兵配備を指示
・ホワイトハウスがシリアでの米軍駐留を当面継続すると発表
・ロシア・トルコ・イラン首脳会談(アンカラ)
4/5(木)
・トランプ米大統領が中国の知的財産侵害に対する制裁関税について1000億ドル相当額の製品の追加の検討をUSTRに指示したと発表
・中国が米国の鉄鋼・アルミの追加関税についてWTOに提訴
・金正恩が習近平国家主席と会談した際、「6者協議」への復帰に同意する考えを示していたことが判明したとの報道
・南北実務者協議(板門店)
4/6(金)
・米国がロシアのサイバー攻撃などを理由にプーチン大統領に近いオリガルヒを含む38の企業と個人を対象とする追加制裁を発表
・ソウル地裁が朴槿恵前大統領に懲役24年の実刑判決
・ネパールのオリ首相がインド訪問(~8日)
4/7(土)
・南北実務者協議(板門店)
・マレーシア下院が解散(60日以内に総選挙)
●金正恩の訪中(補足)
金正恩の訪中については、先週の「今週の動き」でとりあえずのコメントを書きましたが、その後の推移をふまえ補足します(※メルマガに限定)。
・「金正恩の電撃訪中」(4/2)
●米中の「貿易戦争」
米国が鉄鋼・アルミへの追加関税を発動すれば中国もすぐに追加関税を発動。米国が知財侵害を理由とする追加関税案(500億ドル対象)を発表すれば中国も追加関税案(500億ドル対象)を発表。これを受けて米国はさらに追加関税(1000億ドル対象)を検討・・。
マーケットは心理的・反射的に動くので、一つ一つのアクションに敏感に反応し、激しく動いていますが、実体経済への影響はまだ生じていません。派手な打ち合いをしているようで、実はまだお互いのカードを見せつけただけの状況です。
前述(メルマガ限定部分)のとおり、米中の「貿易戦争」は突き詰めると米中の歌舞伎芝居のようなところがあります。最終的には落ち着くところに落ち着くでしょう。
とはいえ、301条に基づく追加関税を発動する可能性は十分にあります。60日間の意見公募期間を設定したとはいえ、米中間で本格的な交渉はまだ始まっておらず、またトランプ大統領の性格からして、まずは一発ぶちかまして本気を見せる、交渉はそこからだ・・というシナリオを描くことは十分に考えられるからです。
そして、さらに深刻な問題は、トランプが中国に何をさせたいのか、具体的な結論が見えてこないことです。おそらくトランプは抜け目なく落としどころを考えているのではないかと思いますが、そうだとしても少なくとも当面は不透明な状況が続くことは避けられないでしょう。
●シリアをめぐるグレートゲーム
トランプがシリアからの撤退方針を示唆する一方、ロシア、トルコ、イランというシリアで大きな影響力を発揮する3国の首脳がアンカラで会談。米国と3国がそれぞれ同じタイミングで対照的な姿勢を明らかにしました。
その後、NSCでの議論を経て、「イスラム国」の残党を掃討するために米軍駐留は必要という政府関係者の主張をトランプは受け入れた模様。
しかし、裏を返せば、トランプは、米国は「イスラム国」掃討後のシリアにはコミットしないと言っているわけです。「イスラム国」はすでに壊滅状態にあり、トランプは掃討作戦は「数か月で完了する見込み」と明言したとのこと。
シリアについては、以下の記事で述べたとおり、トルコによるクルド(YPG主体の「シリア民主軍」)攻撃が各国の関係を複雑化させていますが、米軍が撤退すれば、とりあえず米・トルコの衝突は避けられる一方、トルコがマンビジュを奪うことが確実になります。
・「シリアとトルコの激突の危機」(2/28)
そしてシリアのアサド政権は反体制派を圧倒しつつあります。こうなると、シリア(ロシア、イラン)が国土の大部分、トルコとクルドが一部を支配する形で固まっていくことになりそうです。
■ シリアの支配勢力の地図(Liveuamap Syria)
クルドはすでにトルコとの対抗上シリアに接近しており、米国から離れてアサド政権と手打ちすることで領域を確保すると予想されます。
ロシア、イラン、トルコは米国への対抗という点において一致するものの、それぞれが異なる思惑をもっています。
しかし、この中で特に猛威を振るうとみられるのはイランです。ロシアは国内世論もあってある程度慎重な姿勢をとり、トルコはクルドに関わる部分にのみ関心をもっている(しかもアサド政権とは対立している)一方、イランはシリア全体に積極的に影響力を拡大しようとしています。
今やシリアには20万人以上の親イラン戦闘員がいるといわれます。イランはシリアを支配下に置くことで、石油地帯とイラクとレバノンへの接続という大きな利益を手にすることになります。
こうした状況から、多くの米国の安全保障専門家は米国の撤退に異を唱えています。政権内でもマクマスター前大統領補佐官、ティラーソン前国務長官、マティス国防長官がシリアへの関与方針を明らかにしていましたが、これは今なお国防総省と国務省を代表する意見といえます。
とはいえ、トランプはやると決めたら突き進むでしょう。マクマスターとティラーソンの退場はトランプのストッパーがマティスだけになったことを意味します。
一方、ここで新たな要素が加わります。それはマイク・ポンペオ次期国務長官(現CIA長官)とジョン・ボルトン新大統領補佐官です。
ポンペオとボルトンはともに強硬な反イラン派で、かつ(トランプと違って)戦略的思考の持ち主です。シリアに関してはこの二人がトランプの新たなストッパーになる可能性は十分にあります。今回トランプが米軍の駐留継続を受け入れたのもポンペオの具申が強く影響したようです。
そういうわけで、シリア政策がどう展開するかは、今後、新チームが機能するかを見極める試金石になりそうです。
●ネパール首相のインド訪問
ネパールのオリ首相は、昨年の総選挙での自党「ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派」と友党「マオイスト・センター」の左派連合の勝利を受け、2月に就任しました。今回のインド訪問が初外遊となります。
「マルクス・レーニン主義」とか「マオイスト(毛沢東主義者)」とか、いつの時代の話だと思うかもしれませんが(笑)、これには経緯があり、詳しくは追って解説しますが、現在、彼らの「共産主義」は名ばかりで、イデオロギー上の意味はありません。
ただこれら左派政党は、もう一つの有力政党「ネパール・コングレス党」と比べるとインドから距離を置き、中国との関係を強化してバランスをとってきた経緯があります。昨年の勝利も、当時、インドの国境封鎖により(ネパール国内のインド系民族の不満が背景)インドの関係が悪化したことが大きな要因でした。
このため新政権は「親中」路線に傾斜するのでは・・との見方があった中、今回の初外遊はこれまでの慣例どおりインドということになりました(その後、ボアオ・アジアフォーラム出席のために訪中)。
もっとも、そもそもネパールは歴史的・民族的にインドの文化圏に属し、ほとんどすべての物資がインドを経由する必要があるため(中国との国境はヒマラヤを超える必要があるので物資の流れはわずか)経済的にもインドに依存しています。インドを離れて生きていくことはできません。
この点、日本を含む海外メディアは「ネパールの中国傾斜」を過剰に強調する傾向があります。おそらくインド側の視点に影響されているのでしょう。この点については、中国側の視点も含め、追って詳しく解説します。
また、昨年の選挙はネパールの歴史の転換点ともいえる重要なイベントでした。これもあわせて説明します。
●マレーシア総選挙
ついに下院が解散。総選挙は今月下旬か来月上旬に行われる見通しです。
ポイントについては以下の記事で解説しました。
・「マハティールの復活」(2/16)
この後、ナジブ首相は、選挙区割りの変更、「反フェイク・ニュース法」の成立、そしてマハティール率いる政党「マレーシア統一プリブミ党(PPBM、ベルサトゥ)」の活動禁止命令といった措置を次々に実施。ナジブの強権発動は今に始まった話ではありませんが、ここまでやるかというほどの強引さです。
上記記事で述べたように、与党連合の勝利の可能性が高く、その状況に変わりはありません。問題はどこまで議席をとれるかとみられています。まずは選挙日程が決まるのを待ちましょう。
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今週の動き
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4/8(日)
・ハンガリー議会選挙
・ボアオ・アジアフォーラム(海南省、~11日)
・サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が訪仏
4/9(月)
・ジョン・ボルトンが大統領補佐官に就任
4/10(火)
・ロ朝外相会談(モスクワ)
4/11(水)
・北朝鮮の最高人民会議
・アゼルバイジャン大統領選挙
4/12(木)
・トランプ大統領が南米を訪問(〜16日)
4/13(金)
・米州首脳会議(リマ、~14日)
4/15(日)
・北朝鮮の太陽節(金日成の誕生日)
●北朝鮮外相のロシア訪問
この意味については「先週の動き」の「金正恩の訪中(補足)」(メルマガ限定部分)で説明したとおりです。
●トランプの南米訪問
トランプ大統領がリマで開催される米州首脳会議に出席し、コロンビアに行きます。これが大統領就任後初のラテンアメリカ訪問。
自由貿易の重要性を訴え、中国を牽制するつもりだそうですが・・ラテンアメリカ諸国は冷ややかに受け取ることでしょう。昨年11月のアジア歴訪の際の東南アジア諸国とイメージが重なります。
・「トランプのアジア歴訪」(17/11/13)
・「米中のアジア外交」(17/11/20)
オバマ前政権の外交上のレガシーの一つはラテンアメリカへの影響力拡大でしたが、「壁」の建設とNAFTA再交渉でメキシコと衝突し、キューバとは外交関係は維持したものの制裁は強化され・・これも隔世の感があります。
・「オバマ大統領のキューバ、アルゼンチン訪問」(16/4/6)
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あとがき
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映画『ウィンストン・チャーチル』を見ました。ちょっと美化しすぎというか、こんな庶民的な人だったのかな?と思いましたが、絶望の中で悩みながらも信念を貫き、言葉で人を動かす描写には引き込まれました。『ダンケルク』とあわせて見ると良いですね。
それにしても我々も今の時代、もはや他人事とは思えないというか、このチャーチルと英国のように戦い抜くことができるだろうか・・と考えさせられます。
あと韓国芸術団の平壌公演にチョー・ヨンピルが参加していましたが、韓国では国民的歌手で、過去にも平壌で単独公演をしていたのですね。子どもの頃に父親がカラオケで歌っていた「釜山港に帰れ」が思い出されます。
そして大谷翔平。すごいですね。米国メディアでも「イチローといい日本の人材はすごい」と大きく取り上げられていました。サンデーモーニングは見てませんが、ハリさんは「あっぱれ」を出していたのでしょうか。
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5 comments on “今週の動き(4/9~15)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
「あっぱれ」はまだです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180408-00173338-nksports-base
ハリさんに言わせれば「まぐれなのか、アメリカのピッチャーのレベルが落ちたのか、両方あると思うけど・・」(;^_^Aだそうです。
個人的には、日本人選手の体の進化がまだ進んでるってことだと思ってます。
投手で成功する人多くても野手で少ないっていうのは、体で負けてるんだと思います。大谷くんは、イチロー選手や松井秀喜選手レベル、あるいはそれ以上のフィジカルを持ってるんだと思います。
あとやっぱり、花巻東高校の佐々木監督~プロ野球日本ハムの栗山監督って、本当に素質を伸ばすことにとても気を使ういい監督に素直に育てられ、それを当たり前の基準にメジャーのチームを選べたのは幸せだと思います。
オリエント急行じゃあるまいし・・
24両編成の特別列車・・
米の偵察衛星の監視下・・
会談後・・
習帝大変疲れ切った顔・・
毛沢東そっくりスタイルそっくりの北王に・・
余程手古摺ったらしい・・
newsweekが下賜品を発表・・
時代錯誤的品々推定40万㌦・・
欲しい物は無かった・・北王も同じだろう・・
倍返しには何を献納するのだろう・??・・・
( ^ω^)・(笑
北朝鮮関連の様々な水面下の動きの把握と、その真偽を見極めるのはとても難しいのですが。。各国の動静や金正恩の一挙手一投足まで、JDさんの丁寧な分析による解説のおかげで、日々のニュースが面白くなっています。
それにしても、混迷の度合いを深めているシリア情勢。新体制の戦略的思考に”あっぱれ”といいたいところですが、こちらもお預けでしょうか・・・
いよいよ緊張が高まっていますね・・。
MbSも軍事行動に参加の意思表示。
トランプのロシアへのけん制も強まるばかり・・。
先日のプーチンの時代(1)(2)を読んでも、やはり米ロの衝突は避けられないのか、と思ったり。
非常に気が重い話題ではありますが、各国の利害のぶつかり合い、手を組んでいるようで水面下では必ずしもそうではない、複雑な事情は大変興味深いところです。
またダイナミックな見方を楽しみにしております!
この記事で「米中貿易戦は歌舞伎芝居のようなもの。実体経済への影響は生じておらず、落ち着くところに落ち着く」とJDさん仰っています。
コメントを書いている今は9月。実は、米国の市場関係者がまるっきり同じことを言っていて、驚きました。
「Dollar climbs vs. yen as investors shrug off trade war jitters」(2018年9月18日付けReuters)
https://www.reuters.com/article/us-global-forex/dollar-steady-as-us-china-escalate-trade-war-idUSKCN1LY00X
の中で
“So far, all of the trade tariff maneuvers have not had any meaningful impact, either on Chinese growth or U.S. growth,” he said.
“They are treating it like Kabuki theater for now,” he said, referring to a form of Japanese theater characterized by dramatization and elaborate costumes.
という箇所が。書いた人も、メルマガ読者かと・・・(笑)
JDさんの冷静な見通しと、世界に通じる表現の奥深さに改めて感動しました!!