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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/02/28 05:00  | 中東 |  コメント(9)

シリアとトルコの激突の危機


シリアのクルド人勢力、トルコ軍対抗でアサド政権と協力と(2月19日付BBC)
トルコとシリアが直接対峙か、クルド人勢力にアサド政権側の援軍(2月22日付ロイター)

「イスラム国」が駆逐されたシリアで混迷が深まっています。

トルコがシリア北西部アフリンのクルド(PYD)を攻撃した背景については以下の記事で解説しましたが、今度はPYDとシリアのアサド政権が連携を発表。

「トルコによるシリアのクルド攻撃」(1/30)

そして、アサド政権がクルドを支援するため軍(民兵)を派遣したところ、これをトルコが砲撃で牽制。シリアとトルコの直接衝突まで一歩手前の状況に至りました。

さらに、この混乱に米国とロシアが関与し、より複雑かつ予測不能になっています。ロシアと米国が直接衝突する危険も生じつつあります。

本日は、この複雑極まるシリア情勢を解きほぐし、それが世界的リスクに発展する可能性について解説します。

※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。

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シリアとトルコの激突の危機
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●シリア vs トルコ
●米国 vs トルコ
●ロシア+シリア/トルコ
●米国 vs ロシア
●グローバルなリスクを生み出すシリア問題

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あとがき
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月曜には、銃規制について、米国人が銃をもって自らや家族を守ることの価値観を説明しました。

「フロリダ銃乱射事件」(2/26)

この件で思い出すのはクリント・イーストウッドの映画です。彼の初期の代表作である『荒野のガンマン』『ダーティハリー』は、銃という力をもって正義を実現するという、米国の銃肯定派の思想を体現しているかのようにみえます。

ところが、後期の代表作である『グラン・トリノ』は、これとはまったく様相が異なります。

主人公はダーティハリーが老人になったような精悍な元兵士。クラシックな米国車であるグラン・トリノを愛し、アジア系マイノリティや女性に悪態をつき、いかにも保守的な白人の典型のように見えます。

しかし、その彼が最後にとった行動は、かつてのダーティハリーとは真逆でした。銃をもたずに銃を制し、マイノリティに味方して(これには彼の過去が関係しています)、大切なものを守る・・この衝撃的な結末は、ぜひ直接見て欲しいです。

イーストウッドは共和党支持者で、小さな政府を信奉し、銃を所持する権利を尊重しています。しかし、その一方、中絶や同性婚を支持し、銃規制を肯定する一面もあります。カリフォルニア州のカーメル市長も務めています。

このような彼の政治信条は簡単に割り切れるものではありません。彼自身は若い頃から銃規制を支持する立場を明らかにしています。それでも、その作品を見ると、時代を経て米国の人々の考え方が変わったことを感じ取ることができます。

また、『グラン・トリノ』が凄いのは、上っ面だけのポリティカル・コレクトネスの欺瞞を暴いているところです。

前述のとおり、主人公は、一見偏屈な白人の老人で、アジア系マイノリティや友人の白人の移民に対してかなり際どい表現で悪態をつきます。しかし、主人公が人種差別を嫌い、弱者に優しいまなざしを向けていることは、その行動を見れば分かります。

人の真価は言葉に尽きない・・うわべだけ取り繕いながら心では偏見に満ちている人よりも、ポリティカル・コレクトネスを気にせず、人間としての尊厳を見せる人がいる・・これが作品を通じて伝わる一つのメッセージと思います。

トランプの勝利の背景には、行き過ぎた(あるいは歪んだ)ポリティカル・コレクトネスへの反発もありました。イーストウッドもこの点はトランプ(トランプ的な運動)を評価していたようです。非常に深い洞察と思います。

イーストウッドの作品は、『ダーティハリー』のような出演作も、『グラン・トリノ』『硫黄島からの手紙』といった監督作も、いずれも言葉にできない、深く重い感情で満ちています。その裏には、彼自身の深い洞察があるのでしょう。

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9 comments on “シリアとトルコの激突の危機
  1. ぺルドン より
    シリア対トルコ

    中東戦国時代・・
    トルコは宗主国・・
    オスマンの誇り・・
    本当は・・米露が手を引けば・・計算が楽になる・・

    スペインに居た頃・・
    よくマカロニウエスタン・クリントイーストウッドを観ていた・・米国製とは異なる
    イタリア西部劇・・勧善懲悪で面白かった・・そのヒーローが本場で主役になるとはね。お薦めに従って・・グラン・トリノ観ましょう・・・
    ( ^ω^)・・(笑

  2. JFKD より
    探して見ます

    クリントイーストウッドは確かに大変に変りましたね。何があったのか。転機はなんだったのでしょう。
    この映画、ここ最近の米国の問題のキモを示すような内容に思える。見るしかない。

  3. KB より
    シリアと映画

    とっつきにくい、中東特にシリア問題ですが、とにかく余計なことを考えずに素直に読み進めると、最後はアメリカやロシアとの関係や、トルコとの対立までもしっかりと網羅されて理解できる、役に立つ記事でした。

    手順に従って鍋に入れていくとおいしい料理が食べられる、まるで今流行りのミールキットみたいですね(笑)

    映画も観ます!!

  4. 下北のねこ より
    王道

    映画を見るのにも王道ってあるんですね。
    あたしゃ、小さい頃に「ダーティーハリー」を見て、アメリカ版ルパン三世と思い(この時点で意味がわかってない)、今でも年に1,2回はBSで見られる「アイガー・サンクション」を見て、撮影の大変さに気づかず、原作のほうが面白いよっと舐めた感想を持ち(「マディソン郡の橋」も原作のほうがいいと思う主人公カップルなんかイメージに合わない)、「許されざる者」はどうしても睡魔に負けっと、結構散々です。
    西部劇の曲芸ショー一座を題材にした「ブロンコ・ビリー」が意外にイーストウッドさんらしさが濃厚で、やっぱりこの人は西部劇の持つ「アメリカ」「フロンティア・スピリット」が心の核(コア)なんだなあって、感じました。
    イーストウッド作品は知識を持って、系統立てて見ると面白そうですね。

  5. JD より
    下北のねこさん

    色々な作品を見ておられますね。
    好みが分かれるところはあると思います。
    逆に言えば、いつも万人受けする作品を作る人ではないので、作家性が高い、ということかもしれません(B級も多いですが、それも個性的で、私は結構好きなものが沢山あります)。
    また、ご指摘のとおり、社会的背景を考慮しながら見ると、さらに面白くなる、そんな作品が多いような気もします。

  6. 下北のねこ より
    銃弾

    レスコメントありがとうございます。ヾ(@^(∞)^@)ノ
    私が見る作品はともかく地上波で見られるものです。そういう意味では幸せな時代を過ごすことができたのかもしれません。
    荻昌弘さんや淀川長治さん、小森のおばちゃまなど一流の解説で見ることが出来たいい時代でした。ダーティーハリー始め、イーストウッド作品は多かったですね。自社制作のバラエティ番組がまだ少なく、土曜日など、夜中にも映画をやってました。
    関係ないけど、さっきもアイガー・サンクション、CSでやってました。

    イーストウッドでB級というと「恐怖のメロディ」や「白い肌の異常な夜」(///∇//)(ペルドンさんも喜びそうな邦題ですね。)といった傑作スリラー、ともかくガンガン銃弾が車に打ち込まれるシーンが有名な「ガントレット」ってとこでしょうか。
    まえの2つなんか、スティーブン・キングすら影響受けてそうな作品ですね。あれ?キングのミザルーとどっちが先だろう。いずれにせよ、イーストウッドさん、映画製作者としての才能も物凄いことは感じられます。

    タイに行って44マグナムの実弾をぶっ放した私も深層心理で影響を受けてるのかもしれません?(戦車砲も撃てるって言われたけど、お金が無くて見送った。今思えば残念)

    ダーティーハリーやガントレットって言えば、銃弾飛び交う映画ですが、さっきまで狩りガールとお酒飲みながら、くっちゃべってたんですが、アメリカで乱射事件が起こるたびに、日本にも銃砲所持許可のチェック項目が増えたり、銃身の長さ(短くするのがダメ)とか弾丸を手作り(出来合いを買うより、手作りするほうが圧倒的に安いし、薬莢など再利用できるから)するときの薬の配合とかの規則が厳しくなったりするんだよーって話をしてました。
    風が吹けば桶屋が儲かりじゃなくても、世界ってつながってるんですね。

  7. カマキリマン より
    イーストウッドを評価する日本の映画評論界隈

    「15時17分、パリ行き」公開にあわせてか、
    “Clint Eastwood’s Japan critics are always there to make his day”という記事がJapanTimesに出ましたね。
    Tier4のゴミ新聞と日本在住外国人からも侮蔑されているJTですが、たまにはいい記事もありますですな。
    「15時17分、パリ行き」、rotten tomatoesでは壊滅的なまでにボロクソに叩かれていますが、なるほど今のところ日本での評価はそんなに悪くないようで。

  8. カマキリマン より
    ポリコレと言えばもう1つ

    映画「Black Panther」ですが、Rotten Tomatoesの批評家評価では97%のところ、一般視聴者の評価では79%しかついてないんですよね。
    どうも批評家の評価は「ポリコレ的に正しい方向」に高評価が偏りがちなのではないでしょうか。
    未視聴なのでナントモ言えませんが、過剰に美化する方向でのオリエンタリズムの方向に全力で傾いているような設定ではないですかね。
    「王族でもなく、スーパーヒーローでもなく、イケメンでもなく、金持ちでもなく、超文明国の出身でもなく、貴重な鉱物を産出するわけでもない、貧しく遅れたアフリカの国の出身者には価値がないとでもいうのか!」という反感を抱かれても当然ではないかと思ってしまうのですよね。

  9. JD より
    カマキリマンさん

    ありがとうございます。
    この新作自体、恥ずかしながら知らなかったのですが、Japan Timesの記事は面白いですね。次の記事で取り上げさせて下さい。

    『Black Panther』はヒーロー物にしてはずいぶん評論家の評価が高いようですね。上映前からメディアの注目度が異様に高くて、ご指摘のような政治的背景を私も感じました。IMDbでも評価が高く、エンタメ作品として面白いようですが。見たいですね。

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