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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/01/29 00:00  | 今週の動き |  コメント(3)

今週の動き(1/29〜2/4)


先週はすごい雪と寒波でした。

でも天気が良くなれば寒くても気分は良くなりますね・・と思うのは私だけでしょうか。

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先週の動き
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1/20(土)
・トランプ政権発足1年
・トルコがシリアのクルド勢力(PYD)を攻撃
・タリバンがカブールのインターコンチネンタル・ホテルを襲撃

1/21(日)
・ティラーソン国務長官が英仏、スイス、ポーランド訪問(~27日)

1/22(月)
・つなぎ予算が可決(政府閉鎖が解除)
・米政権が太陽電池と大型洗濯機にセーフガードを発動
・ペンス副大統領がイスラエル国会で演説(エルサレム)
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・アフリカ連合(AU)サミット(アディスアベバ、~23日)

1/23(火)
・NAFTA再交渉第6回会合(モントリオール、〜29日)
・米司法省当局者がモラー特別検察官のチームによるセッションズ米司法長官の聴取を発表
・世界経済フォーラム(ダボス会議)(ダボス、~26日)
・インドのモディ首相がダボス会議で基調講演(同)
・カナダのトルドー首相がTPP署名を表明(同)
・バングラデシュに滞在するロヒンギャ難民がミャンマーに帰還開始
・EU財務相理事会(ブリュッセル)

1/24(水)
・ブラジル連邦第4地裁がルラ元大統領に有罪判決
・米・トルコ電話首脳会談

1/25(木)
・トランプ大統領がTPP復帰検討を表明(ダボス)
・米英首脳会談(同)
・トランプ大統領がモラー特別検察官を昨年6月の時点で解任しようとしていたとの報道
・インド・ASEAN首脳会議(ニューデリー)
・国連主導のシリア和平協議(ウィーン、~26日)

1/26(金)
・トランプ大統領がダボス会議で演説(ダボス)
・チェコ大統領選挙の決選投票

1/27(土)
・カブールで自爆テロ

1/28(日)
・フィンランド大統領選挙

●ダボス会議

度肝を抜いたトランプ大統領のTPP復帰検討宣言。

そして「アメリカ・ファースト」は「孤立主義」ではないとして、世界のビジネス・エリートに米国の経済力とビジネスチャンスをアピール。

トランプはダボスというグローバリズムの宮殿に「アメリカ・ファースト」を掲げて乗り込み、世界のエリート相手に暴れるのだ・・と予想する人が大半でしたが、さすがトランプ、いつものように凡人の発想を軽々と飛び越えてきます(笑)。

TPP発言の最大の要因は、TPP復帰を望む産業界の働きかけです。産業界、特に農畜産物を輸出する業界はかねてからTPP復帰を政権に強く働きかけてきました。これはトランプが大統領選で勝利し、共和党の力が強い州に多く、重要な支持基盤です。

TPP脱退はトランプの支持基盤である労働者向けアピールでしたが、これは中国の不公正慣行を叩くことでカバーできる(その旨演説でも強調)と踏んだのでしょう。

例によってトランプの行動は衝動的であり、過度な期待は禁物ですが、まずは日本にとっては朗報といえます。

ただ、本当にトランプ政権がTPP復帰に向けて動き出すとなると、再交渉の是非とやり方も含め、大変な困難が予想されます。日本国内でも再びTPP論争が持ち上がる可能性があります。前途は多難です。

また、トランプは1月11日に訪英を中止していましたが、ダボスではテレーザ・メイ首相とも会談。

「今週の動き(1/15~21)」(1/15)

トランプは、メイとは「仲が悪い」とも言われていたようだがそれは「間違った噂であって正したかった」「両国は素晴らしい関係」と述べ、両者は良好な関係を演出。

昨年12月、トランプが英国の極右団体「ブリテン・ファースト」の反イスラム的な動画をリツイートしたことをメイ首相が批判、これにトランプが「こっちのことは気にするな」と言い返し、公然と口論する結果になりました。

「今週の動き(12/4~10)」(17/12/4)

しかし、これに関しても、メイ首相との会談直後の英TVのインタビューで、自分はこの団体について何も知らなかった、リツイートに対しては謝る、と素直に反省の弁。

もともとトランプは就任してすぐにメイ首相とワシントンDCで最初の首脳会談を行い、オバマ時代に撤去されていたチャーチル像を執務室に戻すなど、英国に対するシンパシーを見せていました。

母がスコットランド出身であり、自身もスコットランドにゴルフ場を所有することから、英国には個人的な愛着もあります。メイ首相も友好関係を演出し、安倍首相とともに「トランプに取り入る首相」として揶揄されたほどでした。

両者の関係がぎくしゃくした背景にはトランプの英国における評判の悪さもあります。

いずれにしてもトランプがダボスという機会を生かし、こうした大人の対応によって関係の修復を図っている点は評価できるでしょう。

トランプはビジネスリーダーとも会合を行い、税制改革と規制緩和が評価され、非常に良い雰囲気をつくっています。ダボスにトランプが出席した理由はこのように世界のビジネス・エリートから賛辞を受けたかったことにあるでしょうが(笑)、こうしたビジネスマンならではの外交もトランプらしい一面ではあります。

●政府閉鎖の解除

2月8日までのつなぎ予算が成立し、政府閉鎖は3日間で済みました。

移民問題については、2月8日までに合意に至らなければ上院で法案を審議することを共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務が約束。これをもって妥協しましたが、約束したのは「上院の審議」にとどまり、法案の成立まで保証したものではないので、民主党が相当押し込まれた格好です。

政府閉鎖が短期間で済むことは先週の記事で予測したとおりです。

「今週の動き(1/22~28)」(1/22)

また、民主党が腰砕けになったのも、移民問題を持ち込む戦術のまずさに要因がありましたが、これも上記記事で指摘していました。

今後の展望ですが、2月8日までに移民問題(移民規制とDACA)、国防費などの問題を解決することは極めて困難であり、おそらくもう一度つなぎ予算を繰り返すことになるでしょう。

そうなると、相変わらず議会はこの問題にエネルギーを費やされ、他の立法アジェンダに支障をきたします。

ここで浮上してくるのが債務上限引き上げ問題です。

昨年9月、「ペローシ・シューマー・トランプ合意」によって債務上限は一時的に引き上げられましたが、その応急措置は昨年12月8日に失効しています。

「ペローシ・シューマー・トランプ合意」(17/9/12)

このため、米議会予算局(CBO)は債務上限が引き上げられなければ財務省の資金は3月末か4月初旬までに底を尽くとの試算を示しています。

ということでこれが喫緊の課題になるのですが、予算をめぐるドタバタがこの問題への対応をかなり複雑化させると予想されます。

さすがにデフォルトは回避されるでしょうが、議会の見通しはさらに混迷を深めるでしょう。

●トランプ政権の1年

先週、「トランプ政権の1年」と題する過去記事の総集編を配信すると述べましたが、諸事情により配信の予定が少し遅れました。今週、お知らせします。

●トルコによるシリアのクルド攻撃

トルコがシリア北西部アフリンのクルド勢力(PYD)を攻撃。さらにその東のマンビジュにも作戦を拡大しようとしています。

これをみて焦ったのが米国でした。すぐにトランプ大統領とエルドアン大統領は電話会談を行い、調整を図っています。

いったい何が起こっているのか・・これは少し複雑で、説明を要します。今週解説します。

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今週の動き
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1/29(月)
・NAFTA再交渉第6回会合最終日(モントリオール)
・シリア国民対話会議(ソチ、〜30日)

1/30(火)
・一般教書演説
・FOMC(〜31日)

2/3(土)
・イエレンFRB議長の任期終了(パウエル氏が新議長に就任)

●一般教書演説

世界が注目するトランプ大統領初めての一般教書演説。文句なく今週最大のイベントです。

ダボスでの衝撃から間もないところで何を語るかですが、この演説は本質的に米国民向けです。外向けのダボスと異なり、インフラ整備、移民政策、不公正貿易慣行の是正・・といった内向きのメッセージが中心になるでしょう。

しかし、例によってこちらの発想を飛び越えてくるトランプですから、何が飛び出すか。もはや楽しみになってきました(笑)。

●NAFTA再交渉

どうも、18年3月までの交渉妥結は難しいので、メキシコ大統領選が終わった後、19年まで交渉を続ける、という観測が有力になりつつあるようです。

最近トランプは、相変わらず発言にブレはありますが、交渉は急がない(いきなり離脱はしない)と示唆することが多くなっています。こちらも米産業界、特に自動車業界は離脱を食い止めるべく必死に政権に働きかけを行っていますが、TPP復帰示唆をみると、こういう業界の声が相当に効いているのでしょう。

日本政府は、米国のTPP復帰、NAFTA維持に向けて努力すべきだ・・という声はよく聞かれますが、政府間でいくら言ったところで限界があります。大統領は選挙民しか見ていないからです。ましてNAFTAは当事国でもないのだから政府としてどうこういう筋合いではありません。

大統領、あるいは議会を動かすのは、何と言っても業界団体です。日本政府ができること、すべきことは、こういう業界団体と連携し、彼らから政権と議会に働きかけをするよう誘導し、その手助けをすることです。

こういうことは私などに言われるまでもなく当然に行われていることですが、公には出せません。外から見ることはできませんが、重要な外交活動の一つです。

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あとがき
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寒い寒い・・といっているうちにもう1月が終わろうとしています。早いですね。

暖かいところに行きたいものです。

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3 comments on “今週の動き(1/29〜2/4)
  1. ぺルドン より
    紅梅 白梅

    少し・・
    回復してきた様子なにより・・
    暖かい処に逃避するよりも・・
    暖かい者をお布団に入れれば・?!

    日本では報道されませんが・・
    まだ司法省とFBIへの捜査・・
    クリントン夫妻・・ひいては・・トップだったオバマへの蛇行線・・
    まだまだ・・先が読めない見えない・・

    韓国には・・ペインと手をつなぎ・・関白殿脅しに行くのでしょうか・?!
    蝋燭精神大統領・・
    身が危ういのでは・?!

    トランプ・・中国に強烈な圧力・・はよ・・いてこませ・・というのでしょうか・?!

    寒い寒い・・やはり女房殿は若くて・・炬燵代わりになる方を・・・
    ( ^ω^)・・・(笑

  2. KB より
    日本政府

    多少自分の得意分野だったり、仕事に関連しているような事柄だと、メディアなどで表に出ている情報と、その本質的なところを、多少理解できるものですが、
    私などは、正直、「外交」とか「政治」などの分野の本質的な部分や、表に出ていない部分がなかなかわかりません(涙)

    ですから、このように国際的な観点で、日本政府のやっていること、やろうとしていることを示してもらえることはとても有益と思います。

    オリンピックの開会式に安倍首相が行くのも、背景に政治的、国際的な意図があるとすれば、やっぱり正しく情報を得て、理解しておきたいと思いますし、さまざまな立場と視点をもって考えたいと、改めて感じますね。

  3. 下北のねこ より
    タフ・ゴネシエーター

    COP21パリ協定の再交渉用意発言もTPP復帰検討宣言も同じ「アメリカファースト」文脈でトランプさん得意の直接交渉に持ち込んで、自分たちに都合が良ければって感じなんでしょうね。
    しかし、なんとかとハサミはって言うけど、共和党も産業界もなかなかどうしてトランプさんを巧く使いこなしているように見えます。
    トランプさん、乗ってきたというか、大統領として、結構、様になってきてるように感じます。
    なんか、日本にとって実害のない政権って、妙な緊張が無くていいですね。

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