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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2015/06/29 09:00  | 歴史・法・外交 |  コメント(4)

グローバル人材、執政権


初めてのQ&Aの回です。

●「グローバル人材」

【質問】
最近、政府も教育界も「グローバル人材の育成」と盛んに言っています。
私の住んでる田舎でも、教育委員会が「グローバル人材の育成」を高らかに謳って、人材交流や高校生の留学の後押しやらをやってるようです。
本当の意味で、中高生のためになる「グローバル人材の育成」とは何でしょうか?
選ばれた者だけではなく、一般的な子供たちにもできることを教えていただければ有難いです。

【回答】
私は知らなかったのですが、「グローバル人材」、最近よく言われているらしいですね。どういう人材なのか・・私も教えて欲しいですが(笑)、たぶん、日本という土俵を離れても活躍できる人を言うのでしょうね。

まず、英語が必要になることに異論はなさそうです。これについては、今週金曜あたりから「英語の勉強法」という連載を始めたいと思います。できる限り日本で無理なくできる勉強法を紹介したいと思っていますので、よろしければご覧下さい。

次に、外国人と普通にコミュニケーションできる感覚が重要なんだろうと思います。「外国人と普通にコミュニケーションする」ということは、日本人というバックグラウンドを取り除いて、ネイティブの輪に入って交流できる、要するに一緒に遊べるということを意味しますが、そのためには、語学だけでなく、相手の国や世界的な文化・常識を知っていることが重要になります。

これは、米国で言えば、キリスト教やシェークスピアのような(日本人からすると)ハイブローなものから、ドラマ『フレンズ』のようなポップカルチャー、スポーツのような大衆文化まで、その領域は幅広いです。こうした共通した知識や感覚の土台を身につけていないと、一緒になって遊べるレベルにはなかなかいきません。

こういった土台を築くためには、やはり海外に出て日本人のいないところでネイティブと交わるのが一番でしょうが、そうも言ってられない人も多いと思います。今の時代、日本にいても、ネットやhuluで手軽にニュースやドラマを見られます。便利な時代になったものです。こうした情報を普段から取り入れる習慣をつけると良いと思います。

ポップカルチャーやスポーツも決してバカにできるものではありません。たとえば、バスケやサッカーができれば外国でも溶け込むことが容易になります。この「溶け込む」という感覚が重要なのです。

また、国内にいるとしても、なるべく周りに外国人がいて、外国に行く用事が多い環境(学校、職場)に身を置くのも良いと思います。このへんの文化の話も、今後、このブログで取り上げていきたいと思っています。

あと、余裕があれば、もう一つか二つ英語以外の外国語を勉強すると良いでしょうね。英語もできないのに・・と思うかもしれませんが、よほどの天才でない限り、英語をネイティブレベルに極めることは難しいです。なので、ある程度のレベルに達したら、気分転換も兼ねて、他の語学をやってみるのもアリだと思います。

何の語学を勉強するかは本人の志向によりますが、一般的に言えば、私は中国語とスペイン語を勧めています。ちなみに、ビジネスなど度外視してまったくの趣味として言えば、個人的には、ギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語を勉強したいと思っています(老後の趣味になりそうですが・・笑)。

ところで、ご質問を下さったエンゾさん、お名前は映画『グラン・ブルー』からとっているんでしょうか。

●執政権

【質問】
三権分立は抑制と均衡という論点で機能を説明されることも多いかと思いますが、ここに執政権が加わった時に、執政権に対する抑制等はどのように議論されているのでしょうか。執政権の範囲は外交、軍事、財政などとのことですが、その膨張を抑える仕組みというのも議論の俎上にあるのだろうなと思い興味を持った次第です。

【回答】
執政権の規律に関するおたずねですね。こんなマニアックな議論を大変鋭いかたちで発展して下さって、とてもうれしいです。

これは、執政権をどの政府の機関に分配するか、という切り口から考えることができます。日本のように議院内閣制をとる国であれば、外交、軍事、財政、いずれの作用も内閣に分配されますが、大統領制をとる国であれば、外交と軍事を大統領に分配し、財政を内閣に分配する、という形もあり得ます。

また、これらの作用を「立法府」に分配する形もあり得ないわけではありません。いずれにしても、国家の基本法において明文で規定されるのが通常です。

では、日本国憲法はどうなっているのか。みてみましょう。

73条に内閣が所掌する事務が列挙されています。2号、3号、5号を見れば、「外交」と「財政」が内閣に分配されていることが分かります。しかし、61条を見ると、条約の締結には国会の承認が必要である旨書かれています。これは、(重要な)条約の締結については、民主的統制を及ぼすため、内閣に一任せず、国会のチェックを要求することを示しています。

つまり、憲法は、「外交」という本来的には執政の中核として君主(の継承者である内閣)に専属すべき作用を、行政に分配しつつ、民主主義の意義を重視して、部分的には国会にも分配した、と読むことができます。

これと同様に、83条を見ると、「財政」の処理には国会の議決が必要である旨書かれています。これも、民主的統制の見地から、部分的に国会にも分配したものと読むことができます。このように、外交と財政については、憲法は明文で執政権を内閣と国会の両方に分配し、両者が協働するシステムを設計しているわけです。

さらに細かい話をすると、7条には、天皇の国事行為が定められています。国事行為には、伝統的には執政に分類される作用が含まれます。天皇(君主)は歴史的に執政権の担い手でしたから、歴史的にみれば自然な条文ですが、「内閣の助言と承認」を要求することにより、実質的な執政権を奪っているわけです。これにより、対外的には執政権の担い手として振る舞いつつ、国家の運営においては何ら実権を有しないという象徴天皇制が実現されます。

では、「軍事」についてはどうか。軍事について述べた条文は日本国憲法には一つしかありません。そう、9条ですね。9条は戦争・武力行使の放棄を規定していますから、これにより、「軍事」に関する執政の作用は抹殺されることになります。オットー・マイヤーによる「王殺し」ならぬ「軍殺し」とでも言えるでしょうか。

ところが、日本人の幸福追求権(13条)を守るためには、外敵を除去するために相当の実力(「武力」には至らない程度の強制力)を備えることが必要ですから、これを「軍事」と呼ぶかは別として、対外的な戦闘に関する国家行為を消失させることはできません。

しかし、この点に関する明文の規定はなく、いずれかの条文(たとえば73条)から解釈で導くしかありません。このため、今回の安保法制のような問題、すなわち外敵との戦闘という、本来は執政権が司る作用について、司法権、立法権、行政権のいずれが判断すべきなのかよく分からない(色々な議論があり得る)という事態に陥ってしまいます。

結論としては当たり前のことを言っているようですが(この「当たり前」と感じさせる結論が重要です)、執政権のロジックから考えるとこのように説明できます。日本国憲法には、上記以外に執政と絡む問題として国会の解散(7条、69条)という論点もあり、オットー・マイヤーのごとく意図的にやっているのかそうでないのかよく分からないのですが、本当にややこしい憲法と思います。

●筋トレ

【質問】
写真はJDさんですかな。

【回答】
はい、写真は私です・・笑

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4 comments on “グローバル人材、執政権
  1. エンゾ より:
    当たりです!

    「グランブルー」からです。
    名前も似てますし、映画も好きなので。
    ついでに禿げ方も(^_^;)
    外資の後輩からは「外資系に入ってくる若手社員を観察してると、やはり帰国子女や留学組は議論、ディベートが得意。しかも嫌味なく自己表現が出来る。
    グローバル環境で互角に戦っていくにはこう言った自由闊達な議論の場を普段の学校教育で取り入れる事が大事では。これは留学しなくても出来ますね。
    ケーススタディみたいな正解がない課題を与えてみんなで議論を重ねる。どうでしょう?」との返事でした。

  2. JFKD より:
    大統領制

    英国のように実地で創出していった議院内閣制は以外にも日本の村社会の体質によく馴染み、馴染み過ぎて欠点が目立ち大統領制を望む声もでてきましたが、両国でそれがないのは元首としての王と調整がつきにくいからでしょうか。現天皇制を維持し名称はともかく実質大統領制は可能ですか。首相公選制は論外ですが。

  3. 端株株主 より:
    写真は私

    ブルースリーかと思った

  4. yosh より:
    御礼

    執政権についてのご回答、ありがとうございました!
    せっかくご回答くださっていたのに休暇等のためお礼が遅れ、失礼致しました。
    現在の日本国憲法の条文を用いての解説の展開で、「「当たり前」と感じさせる結論が重要です」とのこと、大変得心しました。
    人は感情の動物だからこそ、この視点が大切なんですよね。

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