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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2016/11/02 00:00  | 東南アジア |  コメント(2)

​ドゥテルテ外交④


「ドゥテルテ外交③」の続きです。

ドゥテルテ外交の今後を読む上で注目すべきは以下の3点です。

●米国の政権交代

ドゥテルテは、任期あとわずかのオバマ政権を相手にしても仕方ないと見切っています。ここは米国が強く出ることができないタイミングとみて、中国との関係を一気に強化することを狙ったのでしょう。

逆に言えば、来年1月に新政権が発足し、米国の外交が固まったところでどう対応するのか。これがまず見極めポイントとなります。

●中国との関係の進展

ドゥテルテの訪中は、​6中全会の直前というタイミングでした。偶然の産物でしょうが、ドゥテルテにとっては僥倖でした。

習近平体制としては、6中全会というハイライトを目前にして、できるだけ無難に、かつ成果をアピールできるような外交を展開したい志向があったからです。ドゥテルテは中国から莫大な支援を引き出しましたが、こうした中国の内政事情からすれば、自らの要求を通すのは容易だったといえるでしょう。

米中という超大国を相手にして、その足元を見て、一気に押し込む。この外交手腕は見事です。中国でも日本でも、彼のスピーチを見ると、暴言が目立つようで、実は周到に計算していることが分かります。

地方政治家に過ぎなかったとしても、さすが百戦錬磨の政治家です。駈け引きと人の心をつかむことにおいては天才といってよいでしょう。

しかし、中国は、甘い相手ではありません。6中全会を終え、体制を固めてきた中国は、フィリピンに対して与えた高い貸しの回収をはかります。

経済支援がどのように実施されるのか。南シナ海の共同開発、スカボロー礁の漁業の問題はどう解決するのか。実際、中国国内では、ドゥテルテの訪中に続く訪日をみて、ドゥテルテは二枚舌ではないか、中国はいいように使われたのでは、という見方が早くも出てきています。

ドゥテルテが中国の期待に応えられなければ、中国はプレッシャーをかけてくるでしょう。

また、フィリピンへの中国人の渡航制限措置が解除され、ミンダナオ島に総領事館が設立されることで、中国人観光客が増加するでしょうが、それがフィリピン人の対中感情にどういう影響を与えるか。

このように、中国との関係が深まることで、中国のイヤな面が沢山見えてくるでしょう。今のタイがそういう状況で、鉄道案件、観光客の問題をめぐって中国との関係が複雑化しています。

南シナ海問題がないタイですらこの状況ですから、フィリピンがどうなるのか。ましてドゥテルテは​「ドゥテルテ外交②」で述べたとおりナショナリズムを重視していますから、尚更です。

中国との関係強化が両刃の剣であることをドゥテルテはどこまで理解しているのか。ここは、まさに​外交経験の不足から甘く見ている可能性があります。したがって、中国との関係の進展により、どれほどドゥテルテが痛い目に合うかが重要なポイントになるでしょう。

●日本の役割

ドゥテルテは大の親日家です。これはエピソードが沢山あり、今回の訪日をみても分かりますが、ことあるごとに日本を讃える発言をしています。

日本は、米国とフィリピンの両方と強固な信頼関係を築いている唯一の国と言ってよいでしょう。その日本がフィリピンと米国の仲介役を担うことは十分に期待できます。

もっとも、​「ドゥテルテ外交③」で述べたとおり、ドゥテルテは、少なくとも現時点においては、米国を叩くことに戦術的利益を見出しています。しかも、​「ドゥテルテ外交②」で述べたとおり、個人的には米国に対して複雑な感情をもっています。

そうした状況で、うかつに仲介の動きに出れば、かえって反発をかう可能性もあるでしょう。ここは、上記の米国の政権交代と中国との関係の展開をみつつ、長い目で慎重に対応することが望まれます。

それも、当然のことながら、日本の外交当局はよく理解しています。首脳会談の概要とその後の共同記者発表をみても、日本側の慎重な配慮が読み取れます。

ドゥテルテ外交の展望を見る上で注目すべきポイントは以上のとおりですが、付け加えると、フィリピンは来年のASEAN議長国なので、この点でもドゥテルテ外交に注目が集まります。面白いことになりそうです。

なお、今回は外交に焦点をあてましたが、ドゥテルテ政治の面白さは実はむしろ内政にあります。ドゥテルテ政権が発足して100日以上が経過していますが、ドゥテルテの「麻薬戦争」と経済政策は、フィリピン国内で極めて高い評価を得ています。

わずか100日間の間に過去の政権が数年かかってもできなかった成果を挙げたと言われ、国内では就任時と変わらず9割近い絶大な支持を得ています。フィリピンは、歴史的な改革を成し遂げる史上例のないリーダーが現れたということで、経済の好調が続いていることもあり、熱気がみなぎっています。

ということで、今後もフィリピンの動向、特にドゥテルテ政権の取り組みは積極的に取り上げていきたいと思っています。読者の方からドゥテルテのチームについてのおたずねもあったので、これも取り上げましょう。

それにしても、フィリピンにこんなに注目が集まるのは大変めずらしく、良いことばかりではありませんが、個人的にはうれしく思っています。

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2 comments on “​ドゥテルテ外交④
  1. ペルドン より:
    JDさん

    外務省に復帰して・・
    フィリッピン赴任は如何ですか・???
    勿論・・骨総て埋める気概で・・
    愛人・・数人・・・遊びに行くな・・・(笑

  2. カマキリマン より:
    フィリピンの解説たのしいです。

    フィリピンの解説たのしいです。
    ありがとうございます。

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