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2016/09/08 00:00  | 東南アジア |  コメント(3)

アジアにおけるテロの脅威


タイ各地で爆発、24時間で11回 4人死亡(8月12日CNN)
比南部ダバオで爆発、14人死亡 大統領「テロ行為」(9月3日CNN)

「バングラデシュ人質事件」で、東南アジアにおけるテロの脅威について書きます・・と言っているうちに、フィリピンでテロが発生しました。

東南アジアの国々でもテロの懸念は高まっています。この1年から数か月の間、イスラム過激主義によるテロが起こっているのは、タイ、インドネシア、マレーシア、そしてフィリピンです。

また、シンガポールでも、当局が「イスラム国」によるテロが発生する可能性があると警鐘を鳴らしています。ただし、バングラデシュには前回の記事で述べたとおり固有の事情(土着のテロリズム、政府の対応の弱さ)があったように、これらの国々の事情もそれぞれ異なります。

フィリピン

まずフィリピンですが、今回のテロを実行したとみられるアブ・サヤフは、1991年からミンダナオ島で活動を開始した武装勢力で、元々はミンダナオ島の独立を目指す武装勢力MNLFから分派した組織です。

アルカイダとは協力関係にありましたが、「イスラム国」より昔から存在する組織であり、必ずしもそのネットワーク下に組み込まれたものではありません(一部のグループが忠誠を誓う声明を出していますが、直接的な連携がどこまであるかは疑わしいです)。

フィリピン政府はミンダナオ島のイスラム過激派武装勢力と長く戦闘を続けていましたが、アキノ政権において歴史的な和平合意(バンサモロ包括合意)が成立しました。

ただ、和平プロセスに合意したのは、MILFという有力な武装勢力であり、アブサヤフは戦闘を継続しました。6月に発足したドゥテルテ政権は、8月から大規模なアブサヤフ掃討作戦を開始していました。今回のテロは、このドゥテルテの攻勢に対する反撃という見方が有力です。

なお、直近の報道によれば、アブサヤフは犯行を否定しており、そもそもテロではなく、ナイトマーケットの縄張り争いであるとか、麻薬密売人のドゥテルテに対する報復ともいわれています。

●タイ

タイで起こった連続爆破テロ、放火事件は、真相は明らかになっていませんが、発生した場所の多くが深南部の4県(パッタニー、ヤラー、ナラーティワート、ソンクラー)であること、爆弾の種類と爆発の手口から、深南部で長年にわたり独立闘争を展開しているイスラム過激主義勢力によるもの、という見方が有力です。

今回のテロは、深南部にとどまらず、ホアヒンのような中部の観光地、それも王室の保養地で起こったことがこれまでにないパターンと異なり、その意味では衝撃を与えましたが、それでも「イスラム国」とのつながりは見えません。

インドネシア、マレーシア、シンガポール

インドネシアとマレーシアでは、「イスラム国」の関係者と断定されるテロがいくつか発生しています。しかし、いずれも組織力、攻撃力が限定されており、このため日本ではほとんど報道されていません。

背景にあるのは、政府が実施している厳格なテロ対策です。

インドネシアは、ユドヨノ政権時代からバリでの大規模テロを契機にテロ対策法を制定、ジョコ大統領はその強化をすべく法改正に取り組んでいます。

マレーシアは、ナジブ政権がテロ対策法、国家安全保障会議法を制定しており、その強権的な政治運営には批判もありますが、テロリストの摘発に幾度となく成功し、テロ専門家から高い評価を得ています。

シンガポールも、得意の監視カメラ網で徹底的にテロリストの動きをマークしており、容疑者を捕らえて封じ込めをはかっています。

東南アジアにおけるテロの脅威

このように、東南アジア各国の状況はそれぞれ異なりますが、総じて言えるのは、「イスラム国」のネットワークの侵食は、否定できないまでも、現時点での組織力、攻撃力は、バングラデシュや欧州と比べれば、かなり限定されています。

各国で起こっているテロは、「イスラム国」のような国際的ネットワークとは直接の関係をもたない、長年にわたり活動を続けてきた土着的な過激主義武装勢力によるものがほとんどであり、要するに、今に始まった話ではないのです。

そして、東南アジアの政権は、これらの武装勢力と長年にわたり闘争を続けており、時間とリソースをかけて対策を打っていることは留意すべきです。

テロから身を守る方法

テロリストが従来型のイスラム過激主義であれば、「イスラム国」が発する警告に注意を払い、テロが頻発するラマダンや金曜日には外出を避け、特にイスラム教の宗教施設に近づかないといった行動を実践することで、ある程度は対策を打つことができます。

また、万が一の場合に備え、イスラム教の信仰告白である「ラー・イラーハ・イッラッラー、ムハンマド・ラスール・アッラー(アッラーの他に神はなし、ムハンマドはアッラーの使徒である)」を憶えておくと良いでしょう。

もっとも、最近の「イスラム国」の攻撃は、イスタンブール空港でのテロを見ても分かるとおり、無差別テロの様相を呈しています。こうなると、前述の伝統的な対策にも限界があると言わざるを得ません。とはいえ、バングラのように、ローカルのイスラム教徒が主導するケースであれば、まだ通用する余地はあります。

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3 comments on “アジアにおけるテロの脅威
  1. ペルドン より:
    聖なる文を・・

    流暢に喋れるように特訓すれば・・
    欧米で・・トッ捕まる可能性あるな・・
    日本だって怪しい・・・(笑

  2. パードゥ より:
    1%が皆して世界の不安を煽ってる

     アメリカは、何故あの時、右の頬を叩かれたときに
    左の頬を差し出さなかったのか?
    犯人の国籍は少なくともサウジ多数なのに、アフガンだ
    イラクだ叩きまくったのか

     ”中産階級の厚みがテロを抑止する”というあたり前の事に
    戻るべき   
    先進国の1%はテロだテロだと表面現象に騒いで
    本業を忘れている    
    アジアは同じ過ちの道を歩かないようにしないと

  3. パードゥン より:
    ラオスでの日米首脳会談中止

     中国からの牽制ですか?   プーチン来日問題?
    後者なら、極東問題をヨーロッパ問題から切り離して
    話し合い易いように、ロシア側にも
    極東担当相をおいてもらったらどうですか?

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