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2015/09/10 00:00  | 東南アジア |  コメント(2)

インドネシア高速鉄道計画の中止


インドネシア高速鉄道、日中案採用見合わせ 大統領判断(9月4日付日経新聞記事)

日中が受注を競っていた高速鉄道計画、まさかの白紙撤回。その理由は、①ジャカルタ・バンドン間の距離の短さ(140キロ)、②日中ともインドネシア政府が希望する財政条件(インドネシア政府は支出しない、政府保証もつけない)をクリアしなかった点にある、とのことです。

①については、それを今さら言うのか・・・という気分になりますが(苦笑)、私が4月に出張したとき会ったインドネシア関係者からも、今のインドネシアに高速鉄道が本当に必要なのか、疑問を感じる、とは聞いていました。このため、個人的にはそこまで驚く事態ではありませんでした。

高速鉄道案件は、タイ、ベトナム、インドでも進められていますが、やはり同様の疑問の声を聞くことがあります。たしかに、道路や鉄道による物流の強化については、「インドシナの物流をめぐる主導権争い」でも述べたとおり、いくら強調してもし過ぎることはない話ですが、旅客の高速輸送については、採算性に疑問がつくところです。

日本としては、東南アジアにおける中国との熾烈なインフラ輸出競争において、優位をアピールできる案件ですから、推し進めたいところではありますが、現地のニーズとの兼ね合いは避けては通れないでしょう。

②については、中国が有利な条件を出していましたが、両方とも袖にされたのは、外交関係への配慮でしょう。ただ、それでもインドネシアが信頼しにくい国だな、というイメージを与えてしまうのは避けられないところです。

「インドネシアの経済ナショナリズム」でも述べたとおり、近年、インドネシア政府は保護主義の色彩を強めており、国の発展に必要であるはずの海外投資が遠のいてしまうことが危惧されています。今回の一件が更なる悪影響を及ぼすことも懸念されます。

ただ、ジョコ政権は、8月に内閣改造を行っており、新しく入閣したダルミン・ナスチオン経済担当調整相、リザル・ラムリ海事担当調整相は、経済通として知られ、既得権のしがらみもなく、活躍が期待されています。特にリザル・ラムリは(ジョコ大統領のイニシアチブを阻害する守旧派の一人とみられる)ユスフ・カラ副大統領を公然と行うなど、少し危なっかしいところもありますが、停滞する改革にはずみをつける起爆剤となる可能性があります。

経済成長率の鈍化、インフレ、ルピア安と、マクロ経済的には暗い話が多いインドネシアですが、以前の記事でも述べたとおり、ポテンシャルの高さは比類のないところです。今は我慢の時期ですから、少しでも健全な政策を行って未来につなげて欲しいところです。

全体的に失速気味の東南アジアですが、その中でポテンシャルの高さと元気の良さを兼ね備えているのがフィリピンとベトナムです。

フィリピンについては以前の記事で現状を紹介しました。ベトナムは、ベトナム戦争終結40周年、米越国交正常化20周年、共産党大会など、面白いポイントが沢山あるので、近いうちに取り上げたいと思っています。

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2 comments on “インドネシア高速鉄道計画の中止
  1. ペルドン より
    JDさん

    火傷しながら・・
    盟神探湯の達人に・・
    その内・・
    背中の入れ墨・・・(笑

  2. Aki より
    内閣改造

    8月の内閣改造はどのような背景から行われたのでしょう。知日派といわれているラフマット貿易相の退任がまさに(日本からの輸出、規制緩和が進まなくなる等)気になるところです。

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