2015/06/10 00:00 | 東南アジア | コメント(1)
インドネシア・ジョコ政権の200日③
「インドネシア・ジョコ政権の200日②」の続きです。
●外交
ジョコ大統領は、政権発足前から「海洋国家」構想をかかげており、これが具体的な政策にどう反映するのかいまだ分かりにくいところもありますが、かねてから問題視されてきた外国密猟船に対しては、拿捕・爆破という強硬措置に踏み切りました。また、豪州等の関係国からの申し入れに動じず、外国人麻薬犯の死刑執行を断行しました。これらの毅然とした姿勢は国民から支持を受けました。
これらの措置は、いずれも自国の海洋資源の保護、麻薬対策という意味で、主権に則った正当な判断ではありますが、同時に、対外関係を深く考慮せず、ナショナリズムにうったえて国民の支持を得ようとするものではないか、との批判もあります。
個人的には、これらの措置に関しては、特に深刻な問題を生じさせるものとは思いませんが、ナショナリズムはこの政権を見る上で重要な視点の一つと思われます。この点は最後に述べます。
ジョコ政権は、前回の記事で述べたとおり、インフラ整備を優先課題としていますが、この点に関しては、中国の積極的な姿勢が目立ちます。3月の訪中の際には、400億ドルの資金提供が表明され、数多くのMOUが締結されました。4月のバンドン会議では、ジョコは習近平国家主席(と安倍首相)を自らの隣りに立たせた上で、旧来の国際金融秩序に挑戦し、新しい秩序を構築するという、AIIBを意識したスピーチを行い、中国に配慮する姿勢を見せました。
もっとも、中国は資金提供や投資のプロジェクトを発表するものの、実行の段階には至っておらず、その進出はまだまだこれからという状況です。インドネシア側としても、中国は威勢は良いが、なかなか実行しない国であるという印象を抱きつつあります。実際に大規模な進出が始まれば、ベトナムやスリランカのように、その強引な手法が問題視され、反中感情を生み出す可能性もあります。
バンドン会議の発言も、この会議の歴史的沿革を考慮すれば、そこまで驚きのない内容ではありますし、実際のところ中国との関係の強化はまだまだこれからという印象です。
●民主化と国家の発展
インドネシアは、スハルト政権の崩壊後、短命政権が続き、政治的に安定するのに時間がかかりましたが、2004年の初の直接選挙を経て、本格的な民主政権であるユドヨノ政権が成立し、2期10年の間、安定した政権運営をみせ、ようやく民主主義を定着させるに至りました。
これにより、民主国家としてのかたちは完成したものの、同時に、民主化は、国民の権利意識を高め、利害調整を複雑化し、「決められない政治」という問題を生み出したともいえます。
そして、第1回目の記事で述べたとおり、ジョコ政権は、国民からの圧倒的な支持を受け、インドネシアの旧体制を変革する政権として発足しました。改革を強く志向する政権ではありますが、国民の支持を拠り所としていることは、その歓心を得るために、ポピュリズム的な政策、ナショナリズムに訴えかける政策に陥る傾向を内包しているといえます。
前回の記事で述べたとおり、外資の導入、インフラ整備を必要とする一方で、これをなかなか進められない状況は、上記の民主化を実現したことで直面せざるを得ない問題が顕在化したためとも言えます。エネルギー分野の国営企業、地場金融は外資の進出を阻害していますし、インフラのための土地開発は無数の利権を巻き込み、様々な政治勢力を動かします。
巨大な市場は拡大を続け、設備投資も持続していることから、長期的にみればその高いポテンシャルが発揮されることが期待できます。今は痛みを伴う改革を進めて、5~6年後の更なる発展を待つ忍耐の時期であり、それをどこまで受け入れることができるかがポイントとなるのでしょう。
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適切なる解説・・
連日の投稿・・
感服・・
お尻を蹴飛ばされる思い・・
パウダーモンキー・・休憩時間消える・・止めてくれー・・・(笑