2015/08/07 00:00 | 東南アジア | コメント(2)
インドネシアの経済ナショナリズム
昨日は某大学に行って英語で講義をしてきました。その後の飲み会もあり、結構疲れましたが、やはりフィードバックを得られるのは良いことですね。このHPも色々なコメントをいただいて、大変刺激になっています。いつもありがとうございます。
さて、本題です。
■ インドネシア、国内取引で外貨の使用禁止へ(6月30日ウォールストリートジャーナル記事)
この話は、私が4月にインドネシアを訪問した頃に発表されており、当時、現地の外国企業の間で大きなニュースになっていました。資源、輸入関係の企業はもちろん、多くの外国企業が国内取引でもドル決済をしていましたから、影響は甚大です。
ルピア決済を強いられることは当然に為替リスクを背負うことを意味しますが、ルピア安の傾向は止まっておらず、既に97年通貨危機以来の低水準に達するほどですから、かなり迷惑な話です。もっとも、この手の突然のルール変更はインドネシアにはつきものであり、またすぐに変更される可能性も高く、現地の外国企業は、良い意味で諦めムードというか、冷静に対応している印象です。
この件に限らず、最近のインドネシアの経済政策には保護主義的な傾向が目につきます。様々な部門でインドネシアの内需、国産品、資本を優遇する傾向が見られます。
金融では、今回の外貨取引規制の他、金融機関の外資規制を強化する法案が審議されています。鉱業では、ユドヨノ政権末期、昨年1月から適用されている新鉱業法(未加工鉱石の輸出禁止)が存続しており、外国企業による鉱物資源の輸出が激減しています。
石油・ガス事業では、国営石油企業プルタミナの上流における主導権を強化する新石油・ガス法案が審議されています。また、外国企業とインドネシア政府が締結した石油・ガスの生産契約の期間が満了する際、インドネシア資本の出資比率を上げるという交渉が行われています。
最近では、INPEXとトタルが50%ずつもっていたマハカム鉱区について、契約期間満了後にはその権益の70%をプルタミナに割り当て、プルタミナをオペレーターとするという発表がありました。現代型の「接収」といえるかもしれません。
さらに、外国人就労ビザの要件を厳格化して(大卒、インドネシア語能力など要求)、外国人が働きにくい環境に傾いています。これらの動きの背景にあるのは、「インドネシア・ジョコ政権の200日②」で説明した、ジョコ・ウィドド大統領の政治基盤の弱さです。
ジョコ自身は改革を志向しており、そのためには外資の導入が不可欠であることをよく理解しているはずですが、一方で、保守的な政治家やビジネス界からは既得権の保護の圧力を受けています。また国民の支持を得るためにポピュリズム的政策が求められることもあり、こういった背景にある動きが一連の経済ナショナリズムにつながっているとみられます。
しかも、大国意識と投資ブームから、外国人は来たいなら来ればよい、ただ技術を提供したらさっさと出て行って欲しい、という余裕(慢心)が感じられます。「インドネシア・ジョコ政権の200日③」で述べたとおり、インドネシアは数年後、現在行われているインフラ投資が実を結べば、巨大な市場というアドバンテージを活かしつつ、高度かつ安定した成長軌道に乗ることが期待されています。
今は我慢の時期ですが、そのために外資の導入を図らなければいけないこの時期に不整合な政策が採られていることは懸念材料といえます。長い目で見ればインドネシアは「買い」の国と思いますが、現在の政局を眺めている限りでは明るい兆しが見えないので、当面は、経済ナショナリズムによりさらにどのようなリスクが生じるのか注視する必要がありそうです。
ところで米共和党の大統領候補者によるテレビ討論会が日本時間本日の午前10時から行われます。今のところトランプ対その他大勢(笑)という構図になってますが、楽しみですね。
猛暑が続いた一週間でしたが、ようやく金曜日。よい週末をお過ごしください。
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2 comments on “インドネシアの経済ナショナリズム”
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死んだふりして・・
匍匐前進・・
それを・・早く・・バンザイ突撃をした・・
付けを・・払わされるでしょう・・新興国の悲しさ・・
政治エリート達は・・トランプを馬鹿にするが・・存在が余りにも弱い・・一山いくらになっている・・
彼を見くびってはいけません。現にトランプ対共和党になっている・・・(笑
第一回共和党候補者討論会・・
是非・・感想・分析を・・・(笑